私の願うもの・二人の願った未来
「それでさ、やっぱり泉が―――」「相変わらずなんですね……」今日は真堂先輩とデートだった。先輩が卒業して数ヶ月、毎日会えないのは少し寂しいけどこうやって週に1回は一緒にいる時間を作ってくれている。今はもう帰る途中で、駅に向かう見慣れた道を先輩と2人で歩いていた。 先輩は優しく、幸せそうな笑顔で話しかけてくれている。私は、その笑顔に見入ってしまっていた。「ん?顔に何かついてる?」「い、いえ。なんでもありません……」私は恥ずかしくなりつい顔を背けてしまった。確かめてはいないが、顔はトマトのように真っ赤に違いない。高校に入り、自分がこんないろんな表情が出来るんだっていう事を初めて知った。昔の私が、今の私を見たらきっと驚くに違いない。それはきっと、大切な親友と呼べる子と、大好きな先輩に会えたからだと思う。気がつくと、もう駅のすぐ近くに来ていた。もうすぐ先輩と離れなければいけない。そう思った私は、つい歩く早さを遅めてしまう。それに気づいた先輩は、「みなみ、どうかした?」と、聞いてきた。私は無言で先輩の手を握り、体を先輩の方に寄せた。先輩は一瞬びっくりしたような表情の後、手を強く握ってくれた。
駅に着いた私たちは、電車が来るまで話していた。けれど、その時間も無限ではなく……「〇〇行きの電車が参ります」別れを告げるアナウンスが流れた。「そろそろ時間だね」「そう、ですね……」「帰ったら、また連絡するよ」「はい……」「それじゃあね」「……先輩っ!」体が勝手に動いていた。振り向いた先輩に軽く口づけをする。私の想いを全てのせるつもりで…。急なことで驚いたのか、慌てながら顔がどんどん赤くなっていく先輩。そんな先輩に私は、今出来る精一杯の笑顔で言った。「先輩、さようなら」そして、帰っていく先輩が見えなくなるまで私は小さく手を振り続けた。私は思う。先輩といられるということが、「当たり前」に変わる日がくればいいと。大好きな先輩の笑顔が、「見慣れた」と思える日々が訪れればいいと。そんな日常が永遠に続けばいいと。「先輩、大好きです……」私は、心の中で呟きつつ先輩にメールを送った。
「はぁ…。ビックリしたぁ……」俺は帰路につきながら、彼女である岩崎みなみの別れ際の行動に驚いていた。今までも、キスする事はあったが彼女からしてきたのは初めてだった。あまりのことで慌てながらも理由を聞いたら、「したく…なったんです……」と、少し顔を赤く染めながらイタズラっぽい笑顔で答えた。みなみも、初めて会った時と比べると別人のように色々な表情をするようになった。一度その事をみなみに言ったら、「それはきっと、ゆたかと先輩に会えたからです……」と、恥ずかしがりながら言ってくれたっけ。あれは、かなり嬉しかったなぁ。そんな事を考えながら歩いてると、携帯のバイブが震えだした。誰かと思い見てみるとみなみからだった。内容をみると、「またすぐに会いたいです」と、書いてあった。幸せ者だなぁ、俺。
早速返信をした後、買うものがあったことを思い出しコンビニに入る。レジを済まし出ようとしたとき、今日聞いたばかりの曲が店内で流れていることに気がついた。「ありがとう~、心から~……」この曲……今日みなみが教えてくれたやつだ。この前田村さんに聞かせてもらって好きになったって言ってたっけ。「ふふふふふ~ん、ふふふふふ~ん」歩きながら鼻歌まじりにあの曲を歌ってみる。この曲を教えてくれた時のみなみの笑顔が思い浮かび、思わず顔がほころぶ。端から見たらキモイかも知れないけどいいのさ。幸せだから。俺は思う。みなみといられるということが、「当たり前」に変わる日がくればいいと。大好きなみなみの笑顔が、「見慣れた」と思える日々が訪れる日々がくればいいと。そんな日常が、「相変わらず」だって2人で笑いあえていければいいなと。「みなみ、大好きだよ」俺は心の中でそう呟きつつ、同じ気持ちだったらいいなと思いながら家路を急いだ。
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