日下部さんと 峰岸さんと
ある日の、できごと。「・・・それにしても、峰岸さんと日下部さん、ホントに仲良いよね」「んー?まーな。長い付き合いだからな~。」「なんか、まるで姉妹みたいだよね。つかささんとかがみさんみたいな」―――最近、良くみんなで居るようになって感じたことを、そのまま口に出してみる。ほんとに、姉妹だって言われても違和感のないくらい、自然に感じる。見た目は全然違うけれど。・・・と。「あぁ。なんたって、近いうちにホントの姉妹になるんだからなっ。」「っ!!み、みさちゃんっ!///」「・・・・・・ハ?」・・・今、なんつった?「・・・いや、実はさ~、私の兄貴とあやの、付き合っててな、高校出たら結婚するんだよ」「・・・マ、マジで!?結婚?ホントに?」「・・・う・・・うぅぅ・・・//////」真っ赤になる峰岸さん。どうやら、卒業後すぐかどうかはともかくとして、かなり具体性のある話ではあるようだ。「へー。結婚・・・かぁ。考えたこともないなぁ。凄いね、峰岸さん。」「べ、別に私は何も・・・ま、まだ、ホントに何も決まった訳じゃないし・・・」「いやいや、でもさ、そーゆーのを本気で考える位には、お互いを想ってるってことでしょ。」「///うぅぅ・・・あんまり、からかわないで・・・///」あらら、茹で蛸みたいにまっかっか。
「峰岸さんって、あんまり、こーゆーいじられるのって慣れてないんだ?日下部さんとかかがみさんとか、ちょいちょいからかったりしないの?」「・・・たまにはあるけど、女の子同士だし・・・男の子に言われるのって初めてだから・・・」なるほど。たしかに、男に言われるのと女の子同士でからかうのとは違うかもなぁ。・・・でも、なんか、良いよなぁ。「・・・峰岸さんって、可愛いよね。なんか、その彼氏の気持ち、良く分かるなぁ」「・・・っっっっっ!?!?!?」・・・あら?止まっちゃった。「・・・お前、やっぱりものすごい奴だな・・・」「・・・・・・え?」「・・・知るか、ヴァカ」・・・?なんか悪いこと言ったか?俺峰岸さんは、さっきみたいな赤い顔でも、普段の優しい顔でもなく、ただボーっと硬直している。「・・・えぇと、ゴメン峰岸さん。なんか気を悪くしたなら謝るよ。」俺の声に、ハッと気がつく峰岸さん。「・・・ぇ、ううんっ。私こそゴメンナサイ。何でもないの。びっくりしちゃっただけで・・・」「・・・そう?」「うん、大丈夫。」「・・・なら、よかった。嫌われちゃうかと思ったよ。ゴメンね。いきなりちょっと遠慮がなさすぎたよ。」こなたさん達と居る時なんかは、言いたいことははっきり言わないと、ペースを握られるからなぁ。
「・・・うぅん。それくらい、私達とも仲良くなったってことだもの。きっと、良いことなのよね。」「・・・うーん、まぁアレか、ダチに遠慮はいらねー、ってことにしといてやるかっ」「・・・良かった、ありがとう二人とも。」肩をなで下ろす。せっかく仲良くなったのに、よくわからないのに嫌われるところだったよ。「・・・でも、友達が、家族になるって、凄いよねぇ。日下部さん、どんな気持ち?」「どんな、って、別に変わりねーよ。お前だって言ったろ、今も姉妹みたいだって」「・・・まあ、そうだけどさ。それでも、なんか思うことない?」・・・俺の質問に、日下部さんはちょっとだけ考えて。そして、口を開く。「・・・まぁ、アレ、かな・・・。もし・・・もしも、だぞっ、兄貴と別れちゃったらどうなるかな、って・・・考えたことならある」「・・・えっ?」「・・・みさ、ちゃん?」・・・なんとなく真剣身を帯びた声に、俺も、峰岸さんも、声が止まる。「・・・な、何固まってんだ。だから『もしも』って言ってんだろ。例えばの話だよっ!悪いかよっ。私だって、真剣に悩むことくらいあるぞっ」「・・・い、いや、いきなりすぎて、気持ちがついていかなかった。ゴメン」「みさちゃん・・・」
峰岸さんが、日下部さんを見つめる。その目には、何がこめられているのか。俺には、わからなかった。「う、いや、だってさっ。付き合い始めの頃の話だぞ?百パーセント絶対にない、なんて考えらんないだろ。」峰岸さんに見つめられて、たじろぐ日下部さん。それでも、なんとか言葉を続ける。「あやのは、私の友達だよ。それは、その時だって一緒だったさっ。・・・でもさ、もし、兄貴と別れちゃったら、私とも気まずくなったりするかもしれない。・・・だから、別れて欲しくなんかない。このまま、ずっと一緒で、兄貴と結婚して。そんで、私とも家族になって、ずっとずっと一緒にいるんだ。・・・そんな風に考えて、わるいかよっ」プイッ、と顔を背ける日下部さん。・・・それを見つめる峰岸さんの表情は、さっきと特に変わってはいない。・・・でも、今度はわかった。峰岸さんの気持ち。・・・それはまるで、幼子を慈しむ母親のような、無限の・・・愛情。「・・・もう。みさちゃんったら」「・・・あやの」峰岸さんが、日下部さんに優しく語りかける。「・・・たとえ、そうなったとしても、みさちゃんとはずっと友達だよ。今の私がいるのは、誰よりも、みさちゃんのお陰、なんだから。」「・・・あやの・・・グスッ、あやのぉ・・・」
・・・抱き合う、二人。「・・・うぅ、ゴメンあやのぉ」「ううん、いいのよみさちゃん。」ポンポン、と背中を叩く峰岸さん。やっぱり、母親みたいだ。・・・しばらく抱き合って、離れる二人。日下部さんは、少し気まずそうに俺をみている。「へ、へへ・・・恥ずかしいトコ、見せちゃったな・・・」鼻をかく日下部さん。その姿は、とっても・・・可愛く見えた。「・・・そんなことないよ。二人はホントにお互いが好きなんだな、ってわかったもの。」「っ///バ、バカっ!!」「・・・ウフフッ」照れる日下部さん。微笑む峰岸さん。・・・うん、やっぱりいいな、この二人。「・・・あ、そうだ、あのさ・・・今の二人、写真に撮っていい?」「・・・え?い、今?」「うん。俺さ、最近写真にハマっちゃって。今の二人なら、きっとすごくいい絵になるよ。」「・・・そ、そうか?」「・・・うん、撮ろうよみさちゃん」ちょっと困り顔の日下部さん。乗り気の峰岸さん。
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