岩崎みなみの溜息6
「言ってみれば、出来レースって言うか。相手は俺が当然断るのを知ってて、相手もそれを望んでいて、俺もそれをわかっていて。それでも、そうせざるを得ない状況で。」みなみ「・・・・・・・・・・・・」「・・・苦しかった」苦悶。先輩の横顔は、ひどく歪んでいた。「『ゴメン』、って、ただ一言言えば、それで終わりなんだけれど」「・・・どうしても、言葉にならなくて」「・・・ただ、しばらくじっと固まってた」「そうしたら、小早川さんが、言ったんだ」―――『ゴメンナサイ。先輩を困らせるつもりじゃなかったんです』『ただ、伝えたかっただけ』『答えは、いりません』『だから、せめて』『・・・嫌わないで、いて下さい』『・・・それだけが、私の願いです。』みなみ「・・・・・・・・・先輩」「これで終わり。・・・情けないよなぁ、俺には、岩崎さんがいるのに。」
みなみ「・・・そんなこと、ありません」よく、わかる。私だって、そうだから。ほとんど知らない人に言われた私でさえ、こんなに心苦しいのに。・・・先輩は、ゆたかに言われたのだから。みなみ「・・・先輩」「・・・・・・・・・」みなみ「・・・先輩は、情けなくなんか、ないです。」「・・・でも、俺は・・・」みなみ「先輩」私は、先輩の手を、取って。みなみ「・・・情けないから、断れなかったんじゃ、ないです。」先輩の手を、強く握って。みなみ「・・・それは、きっと。」・・・先輩の目を、見て。みなみ「・・・先輩が、優しいから。優しすぎるから。」それは、時には、ただの優柔不断に思われるかもしれないけれど。みなみ「優しすぎて、壊れてしまうくらいに」みなみ「・・・先輩の心が、暖かいから。」
「・・・岩崎、さん」みなみ「・・・ありがとう、ございます」みなみ「少しだけ、わかりました」みなみ「・・・人に、好きに、なってもらった気持ち」みなみ「嬉しいけど、苦しい気持ち」みなみ「・・・とっても、難しい気持ち。」「・・・それじゃあ、おじゃましました。」母「ええ、またどうぞ。・・・でも、できれば今度は、昼間にね?」「・・・う///ハイ。」母「それじゃ。みなみ後はよろしく~」・・・もう、日は変わった。明日も学校だ。先輩も早く帰らなくては。「・・・岩崎さん、ゴメンね?相談に乗りに来たのに逆に乗られちゃった感じだ。」みなみ「・・・そんなこと・・・ありません。すごく参考になりました。ありがとうございます」「そう?」みなみ「ハイ」「・・・・・・なら、良かったよ。また明日、っと、今日、か。学校でね?」みなみ「・・・・・・はいっ」
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