岩崎みなみの溜息3
―――夕方、岩崎邸。みなみ「・・・・・・」準備はできた。先程、告白してきた彼の机に、明日昼休みに待っている旨を綴った手紙を入れてきた。話す言葉も、ゆたかと二人で徹底的に固めた。・・・すべては、万端。・・・・・・でも。みなみ「・・・先輩は・・・あの時、・・・どんな気持ち・・・だったのかな」・・・ふと、考えていた。あの時。ゆたかが、先輩に告白しに行った時。先輩は、どんな気持ちだったんだろうか。嬉しい気持ち?舞い上がる気持ち?どうだろう。
思いを向けてくれるのは、嬉しい。自分を、好きになってくれた。一目惚れ、って言ってたけれど、それでも。・・・でも、それに応えることは、できない。私は、先輩が好きだから。今、恋人同士だから、ってことだけではなく、ずっと・・・どんどん好きになってるから。みなみ「・・・・・・先輩・・・・・・」聞きたい。先輩は。いったい。どんな。気持ちで。―――トゥルルル・・・「(ピッ)・・・はい、もしもし、岩崎さん?」みなみ「・・・先輩・・・」
良いのだろうか。みなみ「・・・すみません・・・先輩・・・その・・・」これは、裏切り?みなみ「・・・あの・・・ぇと・・・」「・・・どうしたの?言い辛いこと?」みなみ「・・・・・・」信じていたクセに。先輩を、ゆたかを。みなみ「・・・いえ・・・その・・・実は・・・」「・・・・・・・・・」アレは、二人にとってはとっくに終わったこと。今更、どんな。みなみ「・・・すみません、やっぱりなんでもないんです。」「・・・岩崎さん?」・・・やっぱり駄目。これは、先輩にも、ゆたかにも失礼。みなみ「・・・ちょっと・・・声が聴きたくなっただけです。すみませんでした。」「・・・・・・・・・」・・・終わろう。明日、きっぱりと断って、それで終わり。
みなみ「・・・切りますね。先輩、おやすみなさい。」「・・・・・・・・・・・・うん、またね・・・岩崎さん」―――プツッみなみ「・・・ハァ・・・」携帯を閉じる。溜息を、ひとつ。自分が、情けなくてたまらない。たったこれだけのことで、動揺して、悩んで。知らないことも、知らない気持ちも、まだまだ多すぎる。少しは、成長したはずだったのに。やっぱり、私は子供だ。みなみ「・・・ハァ・・・」また、溜息。もう何度目か。気がつけば、もうすぐ9時。みなみ「・・・・・・ねよう。」早く寝て、明日の心構えをしておこう。みなみ「・・・その前に・・・お風呂・・・」ピンポーンみなみ「・・・・・・お客?こんな時間に・・・」
何か急な用事だろうか。まぁ母が応対するだろう。それより、早く風呂に・・・母「みなみーっ、お客様よー」みなみ「・・・・・・・・・?私に?」誰だろう。ゆたか・・・なわけはない。こんな時間に。じゃあ、一体―――みなみ「・・・お客って、誰・・・・・・っ!!!」一瞬、目を疑う。幻?違う。では何故?わからない。でも。その人は確かに、今、私の目の前にいる。私の・・・・・・一番大切な、人。「やっ、岩崎さん。遊びに来たよ」みなみ「・・・せっ、先輩!?」
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