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「岩崎みなみの憂鬱2」(2008/04/09 (水) 16:46:54) の最新版変更点
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<p>ゆたか「先輩は、週末どうするんですか?」<br />
「うーん、まだ決めてないんだよ。岩崎さんは用事があるって言うし」<br /><br />
用事。本当はそんなもの投げ出して先輩といたいけれども、母に頼まれたら仕様がない。<br />
それに・・・『一緒にいたい』なんて・・・言えない。顔から火が出そう。<br /><br />
ゆたか「そうなんですかー。それじゃあ、ウチにきませんか?<br />
お姉ちゃんが、新しいゲームを買ったんです」<br />
「それって、もしかして今話題の?」<br />
ゆたか「はい!」<br />
「うーん・・・」<br />
ゆたか「・・・で・・・」<br /><br />
二人の会話に、私は入らない。<br />
いや、入れない。私とは流れる時間がまるで違うから。<br /><br />
以前は、私を中心に並んで歩いていた。<br />
会話も、私とゆたかの日常が主だったと思う。<br /><br />
いつだったか、お互いに用事ができて、三人ではなく二人組交互で帰ることが増えた時があって。<br />
それが終わった頃には、この並びだった。</p>
<div class="mes">
<p>「・・・さん、岩崎さん?」<br />
みなみ「・・・えっ!?」<br /><br />
気がつくと、私は立ち止まっていた。<br />
先輩と、ゆたかが・・・怪訝そうな顔で私を見つめている。<br /><br />
ゆたか「みなみちゃん、どうしたの?気分でも悪いの?」<br />
みなみ「・・・ううん、ちょっと、ボーっとしてただけ。大丈夫。」<br />
ゆたか「そう?」<br />
「岩崎さん、ごめんな。ほったらかしにしてたから怒っちゃった?」<br />
みなみ「い、いえ、そんなことないです。二人の話聴いてるの、楽しいですから。」<br /><br />
少なくともそれは真実だ。<br />
先輩と出会ってから、大抵は、私は二人の話を聴くだけの立場の人間だった。<br /><br /><br /><br />
本当は、先輩も、ゆたかと話している時の方が楽しいに違いない。<br />
私には、楽しい話題なんて、何もないから。<br /><br /><br />
・・・そしてきっと、ゆたかも。</p>
<p>みなみ「・・・本当に大丈夫ですよ。行きましょう。」<br />
そう言って先に立って歩き出す。<br />
先輩たちも、急いで隣に駆け寄ってくる。<br /><br /><br />
こんな訳のわからない行動をしても、ただ苦笑するだけで済ましてくれる二人に、安心する。<br />
ちょっと前なら、「すましてて、コワい奴」なんて言われて、皆離れて行ったから。<br /><br />
こんな自分が嫌で、変わったはずだったのに。<br /><br />
「週末、残念だなぁ。岩崎さんも来れれば良かったのに」<br />
みなみ「すみません・・・」<br />
ゆたか「残念ー。<br />
・・・でも先輩、ホントは、みなみちゃんと二人きりがいいんじゃないですか?」<br />
「はははっ、まーね」<br />
みなみ「・・・っ!!」<br /><br /><br />
ちくり、と胸が痛む。<br />
今度は、先輩のセリフが恥ずかしいからじゃない。<br /><br />
見てしまったから。<br />
知っているから。ゆたかの、想いを。</p>
<div class="mes">
<p>ゆたか「ぷう、やけちゃいますね。いーなー。」<br />
「小早川さんだって、作ろうと思えば彼氏の1人や2人すぐさ。<br />
クラスでモテたりしないの?」<br />
ゆたか「そ、そんな、そんなの全然ないですよ///私こんなちびだしっ」<br />
「そんなことないよ。スゴく優しいし、かわいいし。狙ってる奴多いと思うよー」<br />
ゆたか「エ、エヘヘ///そうかな///」<br />
「ねえ岩崎さんもそう思うよね?」<br /><br />
みなみ「・・・ハイ」<br /><br /><br />
実際、どうなのかはわからない。<br />
男子とはあまり話さないし、クラスの男子の話題に出るのはモデルや女優の、大人の女性だ。<br />
泉先輩は「需要」と言うけれど、それもなんのことなのかはよくわからない。<br /><br />
ただ、女の私から見ても、ゆたかは可愛い、とは思う。<br />
気も効くし、笑顔も多い。<br /><br />
私のようなつまらない女よりは、ずっと男性に受けは良いはずだ。<br /><br /><br /><br /><br /><br /><br /><br />
・・・でも、先輩は――――</p>
<div class="mes">
<p>みなみ「―――――!!」<br /><br />
ビクン、とカラダが跳ね、硬直する。<br />
「い、岩崎さん!?どうしたの?」<br />
ゆたか「み、みなみちゃん?」<br /><br /><br /><br />
今、何を思った?<br /><br /><br /><br />
今、何を考えた?<br /><br /><br /><br />
みなみ「あ・・・あ・・・」<br />
「岩崎さん?」<br />
ゆたか「みなみちゃん?」<br /><br />
動悸が激しい。<br />
自分のカラダが、岩になったように言うことを聞かない。<br />
みなみ「・・・あ・・・か・・・ふ・・・!」<br />
「岩崎さん、岩崎さん!」<br />
ゆたか「みなみちゃん!?みなみちゃん!」<br /><br />
視界がぼやける中、二人の声だけが、やけにクリアに聴こえる。</p>
<p>みなみ「だ・・・だい・・・じょうぶ・・・」<br />
「大丈夫なもんか!ほら、そこのベンチで休もう。<br />
小早川さん、ジュースか何か買ってきて!」<br />
ゆたか「は、ハイ!」<br /><br /><br /><br />
先輩に引きずられるように、ベンチに腰掛ける。<br />
「岩崎さん、大丈夫?呼吸はできてる?過呼吸とかじゃない?」<br />
みなみ「・・・・・・」<br />
答える余裕はないが、辛うじて首を縦に振る。<br /><br />
「今、小早川さんが何か冷たいモノを持ってくるから。今はゆっくり深呼吸して。」<br /><br />
そう言って、先輩は私の手を握りしめていてくれる。<br />
それだけで、少し楽になれている自分が、今は逆にツラい。</p>
<div class="mes">
<p>あの時考えたことは、決して考えてはいけないこと。<br /><br /><br />
考えたく、ないこと。<br /><br /><br />
考える自分が、イヤになること。<br /><br /><br />
醜い、自分。<br /><br /><br /><br /><br />
――――でも、先輩は・・・<br /><br />
先輩は、私を選んでくれた。<br /><br /><br /><br />
『ゆたかなんかじゃなくて』、私を。</p>
<p> </p>
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