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 参った。ほんま、参った。まさか、本当に言われるなんて考えてもみんかった。  多分、あれやろなぁ。桜藤祭の…えっと、いつやったか。  とにかく、卒業したらオッケーなんて冗談半分にゆうたけど、本気にされとるとは思いもせんかった。  それじゃ、ウチと同じってことやないか。ウチかて、あれから妙に意識してまってしょうもなかったんや。  卒業したら解決や思とったんに、あいつ見事にかわしてきよった。  どないしたらええんやろ。本気にしても、ええんかな。だって、十も年下なんやで。  いまは良くても、時間がたったら伊藤も絶対に後悔するんちゃうか。  あいつ、電話しろゆうとったな。したら、きっちり告白されるんやろか。  そしたら、ウチ断れんのかな。…正直、自信ないわ。ああいう若いっちゅうか、熱くてまっすぐなのには、その…。  …ぶっちゃけ、弱いねん。  …でも、電話はせなあかんのやろなぁ。せんかったら、あいつ学校まで押しかけて来そうや。  んなことになったら、マジにコロリといってまうで。…あー、あかん。顔が火照ってきた。  あれや!若気の至りっちゅうヤツや。せやから、マジにしたらあかんのや。  電話しよ。そんで、断んねん。それが、伊藤のためなんやて。 「…あー、もしもし。伊藤か?」 「はい。俺です」 「えっとな。今日は、お疲れさん。でな。さっきの話考えたんやけど」 「待ってください。俺、ちゃんと最後まで言ってませんよ」 「ええねん。大体わかったから。んで、ウチの気持ちとしては」 「よくないです。ふられるにしても、せめて言うことは言わせてください」  せやから、それがあかんのや。正面切って言われたら、頷いてまうやないか。 「…伊藤な。よう考えてみい。ウチら、いくつ離れてると思とるんや」 「歳の話ですか?そんなの、イヤってほど考えました。俺が30歳になったら、先生は… ななこさんは40歳です。それがどうしたっていうんですか」 「こんだけ年上と付き合って、青春の無駄使いとちゃうんか?」 「意味、わかんないです。なにもかもひっくるめて、あなたじゃないとだめなんだ」  …そーゆーのはナシやろ。反則や。 くぅ、ドキドキしてきよった… …あかん。あかんで。なにときめいとんのや。深呼吸せぇ、深呼吸。 「ウチ、お前よりデカイで?」 「背の高い人が好みなんです」 「大雑把やし」 「それもです」 「…エセ関西弁しゃべっとる、変な女やねん」 「そんなの、前から知ってます」 「それに、趣味かて」 「先生」 「…」 「じゃない、ななこさん。いい加減、言ってもいいですか?」 「…あ、えっと」  押され気味や。このままじゃヤバイで。  …でも、なんで断らなあかんのやろ。歳がどうの、なんて理由も、どーでもよくなってきたわ。  うんうん。そや。最後は、自分に正直にしかなれんのや。お前はよう我慢したで、ななこ。  ……なんつって、実は最初っから受け入れ態勢万全やねんな。どうしようもない女や、ウチは。 「言ってもいいですか?」 「…ええで」 「…俺は、ななこさんが好きです。桜藤祭のときからずっと、あなたに憧れていました。 だから、俺と付き合ってください。俺の、恋人になってください」 「…ええけど、あかん」 「どういう意味ですか?」 「…あのな。柄にもないことぬかすけど、笑うなよ?」 「はい」 「電話やのうて、面と向かってゆうてほしいねん。そしたら、その、ちゃんと返事できると思う」 「…そうですか」 「どや。あかんか?」 「わかりました。じゃあ、今度会ってください。3回目の告白をします」 「3回?」 「卒業式で1回。いまが1回。次に会うとき、1回ですから」 「…そか。悪いな、めんどくさい女で」 「いいですよ。でも、この次は絶対、気持ちに応えてくださいね」 「…そったら、いつ会う?」 「俺は明日にでも会いたいです」 「じゃあ、明日や」 「…本当に?」 「本当や。…あのな。お前は気付いとらんかもしれんけど」 「はい」 「……ウチかて、待てんのや」 「な」 「…ああ、もう!恥ずい!限界やっ。明日、午後2時に糟日部の駅でええか?そんじゃ切るでっ。おやすみ!」 「あのっ…」  …ふう。  なんや、この展開。断るつもりが、なんちゅう体たらくや。  …まあ、ええか。それにしても、『あなたじゃないとダメだ』やて。こっ恥ずかしいこと、よう言うわ。  ああ、ニヤニヤしてまう。傍から見たら間抜けなんやろな。  こんなにそわそわすんのも、久しぶりや。でも、めっちゃ気分ええな。  またドキドキしてきよった。みっともないわ。好きやねんから、しゃーないな。

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