「黒こなさん 前編」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

黒こなさん 前編」(2008/08/03 (日) 14:19:32) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

時間の抵抗に耐え、無事に桜藤祭を終え、ループも解決した。  今日から、ようやく桜藤祭より先に進むことができる。  永森さんは元の高校に戻り、もう知り合いでもなくなってしまった。  ループ時の記憶も、いずれ色褪せてしまうだろう。  けれど、これで良かったのだ。在るべき形に戻ったのだから……。  教室に入ると、珍しくこなたさんが早く来ている。 「こなたさん、おはよ……う」  物凄い違和感に戸惑う。  こなたさんが眼鏡をかけているのだ。しかも、それだけではない。髪が黒いのだ。  イメチェンだろうか? 黒髪は凄く似合っているのだけれど、不思議といつもより気弱そうに見える。 「あ……、おはよう、伊藤君」  えーと、……別人? 「ど、どうしたのさ! こなたさん!!」 「え? ど、どうもしないけど……」  マズイ、あまりに過剰な反応だったからか、見てわかるほど怯えている。肩掴んで大声出せば、そりゃ怯えるよな。  って、こなたさんが? 怯える? いつもなら俺の反応を見て、おもしろがりそうなのに。 「ごめん、こなたさん。驚かせるつもりはなかったんだ」 「大丈夫だよ、ちょっと驚いただけだから……」  嘘つけ、どう見ても怯えてたぞ。一体こなたさんに何が起こったというのだろう? 「まこと君、おはよー」 「おはよう、まこと君」 「おはようございます、まことさん」 「あ! みんな、おはよう。なんかこなたさんが変なんだけど……」 「うん、私たちも気になって、黒井先生に聞きに行ったんだ」 「それで、黒井先生はなんて?」 「それが、こなちゃんは前から、内向的で友達がいなかったって……」 「冗談……だよね?」 「残念ですが、冗談ではありません。黒井先生以外の方も、……同じことを言っていました」 「そ、そんな……、一体何で? 昨日は普通に、いつものこなたさんだったじゃないか!」 「それがわかったら、苦労しないわよ!」 「二人とも、落ち着いて」 「そうです、何も手がかりが無いわけではありません」 「え? みゆき、それどういうこと?」 「重要なことは、いつもの泉さんを覚えているのが、私たちだけのようだということです」 「つまり、俺たちが関係してるってこと?」 「でも、私たちが関係してて、こなたにも関係があることって?」 「桜藤祭の前の日の、永森さんのことは? もうよくは覚えてないんだけど、あのときは本当に私たちだけだったよ」 「恐らくは、それです」 「ちょっと待ってよ、みゆきさん。桜藤祭当日は、いつものこなたさんだったよ」 「もしかして、あのときの永森さんとの会話に、手がかりがあるってこと?」 「その通りです、かがみさん」 「何て言ってたっけ? もう私覚えてないよ~」 「時間の悪あがきで、ループしてるときの記憶が無くなるってことくらいしか覚えてないよ」 「えーと、みゆき? まさか、時間の悪あがきで、こなたがああなったて言うんじゃないでしょうね」 「そのまさかです」 「ゆきちゃん、どういうこと?」 「私の覚えていることに、過去や起こりえるかもしれない未来に、繋がっていた空間があります」 「それがどう関係するの?」 「すでに現在がある以上、あのとき見た過去は私たちの過去ではなく、平行世界の過去ということになります」 「平行世界っていうと、違う可能性の世界だっけ?」 「お恥ずかしながら、私も詳しくはわからないのですが、その解釈で間違ってはいないはずです」 「そういえば、みんなは覚えてないだろうけど、桜藤祭での出し物が、変わってたことがあったんだ。これもその平行世 界ってやつなのかな?」 「それは、恐らく時間が既に決まっている未来に干渉し、現実を書き換えたということではないでしょうか」 「うう、頭痛くなってきた」 「つまり、そのことと同じ原理で、こなたの人格が書き換えられたってこと?」 「仮説でしかありませんが、私はそう思います」 「ええと……、まったくわからないよぅ」 「つかささん、あの泉さんは、違う可能性の世界では存在している泉さんなんです。泉さんご本人なんですよ」 「つまり、こなちゃんはこなちゃんてこと?」 「それでいいと思うわよ」 「でも、なんでこなたさんなんだろう?」 「ご都合主義ってやつでしょ、説明もわかりにくいし」 「かがみさん、突っ込んじゃだめだって、作者の力量じゃこれが限界なんだよ」 「それで、結局どうすれば、いつものこなたに戻るのかしらね」 「一番大切なことがわからず終いですね、すみません……」 「こなちゃんはこなちゃんなんだから、私たちが仲良くすればいいと思うんだけど、いつもみたいに」 「つかさ、それは接し方。今私たちが話してるのは解決法よ」 「かがみさん、俺はつかささんに賛成だよ」  さすがに考えてもわからないことだし、何よりも、戻そうと必死になるということは、今のこなたさんを否定すること だと思う。  俺も、いつものこなたさんに戻るのなら、それがいいとは思うけれど、今のこなたさんは、なんか放っておけない。 「ちょ、まこと君まで! こなたが元に戻らなくていいの?」 「そうは思ってないよ。けどさ、それじゃまるで、今のこなたさんはいらないみたいだろ?」 「それは……」 「もしかしたら、みんなと接してく内に、いつものこなたさんを思い出すかもよ? こなたさんはこなたさんなんだから」 「うっ……、微妙に説得力があるような……」 「フフッ、どうやら決まったようですね」 「はぁ、まさか、まこと君に言いくるめられるとは」 「失礼な」 「そろそろ席に戻ろうよ、ホームルーム始まっちゃうよ」  席に戻る途中、こなたさんと目が合ったけれど、慌てて視線を外されてしまった。  もしかして、俺避けられてる?  ホームルームが終わった後、俺はこなたさんに話しかけることにした。俺は避けられていないと信じたい。 「やあ、こなたさん」  話のかけ方が、すでにぎこちない俺。いつもなら、もっと自然に話しかけられるのに……。 「え……、えっと、何?」  距離を感じるのはなぜだろう。俺は一瞬にして苦手な人……か?  いや、ここであきらめたらだめだ。こなたさんなら、きっと見てるはずだ! 「え~と、昨日のアニメの話なんだけどさ」 「え? 私はアニメ見てないよ……」  な、なんだってー! こなたさんがアニメを見ていないなんて、そんなバカな!! それじゃまるで、こなたさんとは真逆じゃないか!  ……いや、待てよ。真逆? 「えっとさ、それじゃあラノベとか読んだりしてる?」 「うん、基本は小説だけど、ラノベも読むよ」  ま、真逆だ……。いつものこなたさんとは、色々なことが逆になっているのだろうか?  とりあえず、今のこなたさんは読書家ということを教えたら、かがみさんがすっごく喜びそうだ。 「その……、伊藤君もラノベとか読むの?」 「俺も読むけど、こなたさんやかがみさんには、遠く及ばないと思うよ」 「そ、そんなことないよ。私なんて……」 「いやいや、こなたさんなら、かがみさんよりも多くの作品読んでるかもよ?」  こなたさんの熱意が、読書に回ったらと考えると、ありえるかもしれない。 「ちょっと、何か聞き捨てならないことを聞いた気がするんだけど」  かがみさんが自分のクラスからやってきた。これはいいタイミングだ。 「実はね、こなたさんが結構な数の小説を読んでるらしくて」 「ええ!? こなたが!?」  気持ちはわかるけれど、驚きすぎだよかがみさん。ほら、こなたさんがびっくりてるじゃないか。 「えーと、それじゃ好きな作家とか作品とか教えてくれない?」 「う、うん……。一番好きなのは――」  どんどん深い内容になっていってるようだ。俺にはまったくついていけない。  けれど、俺はこなたさんに嫌われたわけじゃなさそうだし、何より、こなたさんもかがみさんも楽しそうに話しているのだから、それでいいか。  まだ、違和感は消えないけれど、少しずつ親しくなっていけば、いつか消えるだろう。  昼になった、俺たちはいつものように、みんなで昼食をとる。ただ、今のこなたさんは慣れていないのか、ひどく不安そうにチョココロネをかじっている。 「フフッ、やはりチョココロネなんですね」 「う、うん……」 「料理は一応できるんだし、たまには弁当にしてみるとか考えないの?」 「え? 私は、その……料理全然だめだよ」 「あれ? そうだっけ? 料理できたような気がするんだけど」  桜藤祭では、弁当を作ってもらったことがあったような。というか、もしかしてこれも逆になってる? 「お、お弁当なんて、私には無理だよ……」 「こなちゃんなら、きっとできるよ」 「そ、そんなこと言われても……」 「じゃあ、今度一緒にお料理しようよ」 「え? ……でも、私は料理が下手……」 「私は楽しくお料理ができれば、それが一番だと思うよ。こなちゃんとなら、楽しくお料理できると思うし」 「そうだよ、こなたさん。まず、何事もやってみなきゃ」 「そういうまこと君は、料理できるの?」 「俺? 俺はカップ麺にお湯を注ぐことが得意……ってかがみさん、俺をオチにしないでくれよ」 「私はただ、まこと君が料理できるか聞いただけよ」 「うっ……、それもそうか」 「大学で一人暮らしになるかもしれませんし、料理はできて損はないかと思いますよ」 「それじゃあ、まこと君も一緒にお料理しようよ」 「お、俺も!?」 「この際だから、少しくらいできるようにした方がいいんじゃない?」  確かに、一人暮らしになったとき、料理ができれば何かと便利だろう。  それに、受験勉強ばかりでは疲れてしまうから、息抜きが必要だ。 「そうだね、俺も一緒に勉強させてもらおうかな」 「それでは、私もご一緒させていただいてよろしいですか? 今のままだと、心許ないので……」 「うん、みんなでお料理しよう!」  なんだか、結局いつもと変わらない雰囲気になりそうだ。  けれど、それが一番楽しいということに変わりはない。こなたさんも楽しそうだし、これでいいのだ。
時間の抵抗に耐え、無事に桜藤祭を終え、ループも解決した。  今日から、ようやく桜藤祭より先に進むことができる。  永森さんは元の高校に戻り、もう知り合いでもなくなってしまった。  ループ時の記憶も、いずれ色褪せてしまうだろう。  けれど、これで良かったのだ。在るべき形に戻ったのだから……。  教室に入ると、珍しくこなたさんが早く来ている。 「こなたさん、おはよ……う」  物凄い違和感に戸惑う。  こなたさんが眼鏡をかけているのだ。しかも、それだけではない。髪が黒いのだ。  イメチェンだろうか? 黒髪は凄く似合っているのだけれど、不思議といつもより気弱そうに見える。 「あ……、おはよう、伊藤君」  えーと、……別人? 「ど、どうしたのさ! こなたさん!!」 「え? ど、どうもしないけど……」  マズイ、あまりに過剰な反応だったからか、見てわかるほど怯えている。肩掴んで大声出せば、そりゃ怯えるよな。  って、こなたさんが? 怯える? いつもなら俺の反応を見て、おもしろがりそうなのに。 「ごめん、こなたさん。驚かせるつもりはなかったんだ」 「大丈夫だよ、ちょっと驚いただけだから……」  嘘つけ、どう見ても怯えてたぞ。一体こなたさんに何が起こったというのだろう? 「まこと君、おはよー」 「おはよう、まこと君」 「おはようございます、まことさん」 「あ! みんな、おはよう。なんかこなたさんが変なんだけど……」 「うん、私たちも気になって、黒井先生に聞きに行ったんだ」 「それで、黒井先生はなんて?」 「それが、こなちゃんは前から、内向的で友達がいなかったって……」 「冗談……だよね?」 「残念ですが、冗談ではありません。黒井先生以外の方も、……同じことを言っていました」 「そ、そんな……、一体何で? 昨日は普通に、いつものこなたさんだったじゃないか!」 「それがわかったら、苦労しないわよ!」 「二人とも、落ち着いて」 「そうです、何も手がかりが無いわけではありません」 「え? みゆき、それどういうこと?」 「重要なことは、いつもの泉さんを覚えているのが、私たちだけのようだということです」 「つまり、俺たちが関係してるってこと?」 「でも、私たちが関係してて、こなたにも関係があることって?」 「桜藤祭の前の日の、永森さんのことは? もうよくは覚えてないんだけど、あのときは本当に私たちだけだったよ」 「恐らくは、それです」 「ちょっと待ってよ、みゆきさん。桜藤祭当日は、いつものこなたさんだったよ」 「もしかして、あのときの永森さんとの会話に、手がかりがあるってこと?」 「その通りです、かがみさん」 「何て言ってたっけ? もう私覚えてないよ~」 「時間の悪あがきで、ループしてるときの記憶が無くなるってことくらいしか覚えてないよ」 「えーと、みゆき? まさか、時間の悪あがきで、こなたがああなったて言うんじゃないでしょうね」 「そのまさかです」 「ゆきちゃん、どういうこと?」 「私の覚えていることに、過去や起こりえるかもしれない未来に、繋がっていた空間があります」 「それがどう関係するの?」 「すでに現在がある以上、あのとき見た過去は私たちの過去ではなく、平行世界の過去ということになります」 「平行世界っていうと、違う可能性の世界だっけ?」 「お恥ずかしながら、私も詳しくはわからないのですが、その解釈で間違ってはいないはずです」 「そういえば、みんなは覚えてないだろうけど、桜藤祭での出し物が、変わってたことがあったんだ。これもその平行世 界ってやつなのかな?」 「それは、恐らく時間が既に決まっている未来に干渉し、現実を書き換えたということではないでしょうか」 「うう、頭痛くなってきた」 「つまり、そのことと同じ原理で、こなたの人格が書き換えられたってこと?」 「仮説でしかありませんが、私はそう思います」 「ええと……、まったくわからないよぅ」 「つかささん、あの泉さんは、違う可能性の世界では存在している泉さんなんです。泉さんご本人なんですよ」 「つまり、こなちゃんはこなちゃんてこと?」 「それでいいと思うわよ」 「でも、なんでこなたさんなんだろう?」 「ご都合主義ってやつでしょ、説明もわかりにくいし」 「かがみさん、突っ込んじゃだめだって、作者の力量じゃこれが限界なんだよ」 「それで、結局どうすれば、いつものこなたに戻るのかしらね」 「一番大切なことがわからず終いですね、すみません……」 「こなちゃんはこなちゃんなんだから、私たちが仲良くすればいいと思うんだけど、いつもみたいに」 「つかさ、それは接し方。今私たちが話してるのは解決法よ」 「かがみさん、俺はつかささんに賛成だよ」  さすがに考えてもわからないことだし、何よりも、戻そうと必死になるということは、今のこなたさんを否定すること だと思う。  俺も、いつものこなたさんに戻るのなら、それがいいとは思うけれど、今のこなたさんは、なんか放っておけない。 「ちょ、まこと君まで! こなたが元に戻らなくていいの?」 「そうは思ってないよ。けどさ、それじゃまるで、今のこなたさんはいらないみたいだろ?」 「それは……」 「もしかしたら、みんなと接してく内に、いつものこなたさんを思い出すかもよ? こなたさんはこなたさんなんだから」 「うっ……、微妙に説得力があるような……」 「フフッ、どうやら決まったようですね」 「はぁ、まさか、まこと君に言いくるめられるとは」 「失礼な」 「そろそろ席に戻ろうよ、ホームルーム始まっちゃうよ」  席に戻る途中、こなたさんと目が合ったけれど、慌てて視線を外されてしまった。  もしかして、俺避けられてる?  ホームルームが終わった後、俺はこなたさんに話しかけることにした。俺は避けられていないと信じたい。 「やあ、こなたさん」  話のかけ方が、すでにぎこちない俺。いつもなら、もっと自然に話しかけられるのに……。 「え……、えっと、何?」  距離を感じるのはなぜだろう。俺は一瞬にして苦手な人……か?  いや、ここであきらめたらだめだ。こなたさんなら、きっと見てるはずだ! 「え~と、昨日のアニメの話なんだけどさ」 「え? 私はアニメ見てないよ……」  な、なんだってー! こなたさんがアニメを見ていないなんて、そんなバカな!! それじゃまるで、こなたさんとは真逆じゃないか!  ……いや、待てよ。真逆? 「えっとさ、それじゃあラノベとか読んだりしてる?」 「うん、基本は小説だけど、ラノベも読むよ」  ま、真逆だ……。いつものこなたさんとは、色々なことが逆になっているのだろうか?  とりあえず、今のこなたさんは読書家ということを教えたら、かがみさんがすっごく喜びそうだ。 「その……、伊藤君もラノベとか読むの?」 「俺も読むけど、こなたさんやかがみさんには、遠く及ばないと思うよ」 「そ、そんなことないよ。私なんて……」 「いやいや、こなたさんなら、かがみさんよりも多くの作品読んでるかもよ?」  こなたさんの熱意が、読書に回ったらと考えると、ありえるかもしれない。 「ちょっと、何か聞き捨てならないことを聞いた気がするんだけど」  かがみさんが自分のクラスからやってきた。これはいいタイミングだ。 「実はね、こなたさんが結構な数の小説を読んでるらしくて」 「ええ!? こなたが!?」  気持ちはわかるけれど、驚きすぎだよかがみさん。ほら、こなたさんがびっくりてるじゃないか。 「えーと、それじゃ好きな作家とか作品とか教えてくれない?」 「う、うん……。一番好きなのは――」  どんどん深い内容になっていってるようだ。俺にはまったくついていけない。  けれど、俺はこなたさんに嫌われたわけじゃなさそうだし、何より、こなたさんもかがみさんも楽しそうに話しているのだから、それでいいか。  まだ、違和感は消えないけれど、少しずつ親しくなっていけば、いつか消えるだろう。  昼になった、俺たちはいつものように、みんなで昼食をとる。ただ、今のこなたさんは慣れていないのか、ひどく不安そうにチョココロネをかじっている。 「フフッ、やはりチョココロネなんですね」 「う、うん……」 「料理は一応できるんだし、たまには弁当にしてみるとか考えないの?」 「え? 私は、その……料理全然だめだよ」 「あれ? そうだっけ? 料理できたような気がするんだけど」  桜藤祭では、弁当を作ってもらったことがあったような。というか、もしかしてこれも逆になってる? 「お、お弁当なんて、私には無理だよ……」 「こなちゃんなら、きっとできるよ」 「そ、そんなこと言われても……」 「じゃあ、今度一緒にお料理しようよ」 「え? ……でも、私は料理が下手……」 「私は楽しくお料理ができれば、それが一番だと思うよ。こなちゃんとなら、楽しくお料理できると思うし」 「そうだよ、こなたさん。まず、何事もやってみなきゃ」 「そういうまこと君は、料理できるの?」 「俺? 俺はカップ麺にお湯を注ぐことが得意……ってかがみさん、俺をオチにしないでくれよ」 「私はただ、まこと君が料理できるか聞いただけよ」 「うっ……、それもそうか」 「大学で一人暮らしになるかもしれませんし、料理はできて損はないかと思いますよ」 「それじゃあ、まこと君も一緒にお料理しようよ」 「お、俺も!?」 「この際だから、少しくらいできるようにした方がいいんじゃない?」  確かに、一人暮らしになったとき、料理ができれば何かと便利だろう。  それに、受験勉強ばかりでは疲れてしまうから、息抜きが必要だ。 「そうだね、俺も一緒に勉強させてもらおうかな」 「それでは、私もご一緒させていただいてよろしいですか? 今のままだと、心許ないので……」 「うん、みんなでお料理しよう!」  なんだか、結局いつもと変わらない雰囲気になりそうだ。  けれど、それが一番楽しいということに変わりはない。こなたさんも楽しそうだし、これでいいのだ。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: