「さんらいず おん ☆ にゅーいやーず でぃ【かがみ】」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
<p>1月1日、元旦。<br />
毎年のように神社は初詣客でごった返し、ニュースではやれどこどこの神宮で昨年を超える人出だとかどうとかとわめいている。<br /><br />
鷹宮神社も例外ではないようで、日付が変わったばかりの敷地内は、防寒着や晴れ着に身を包んだ参拝客でにぎわっていた。<br /><br />
「あ、ゆうきくん」<br />
「や、かがみ」<br />
お守りや破魔矢を販売している社務所で恋人の姿を見つける。<br />
「あけましておめでとう」<br />
「うん。おめでとう」<br />
お互いに挨拶を交わしていると、かがみの傍らにいた巫女さんに声をかけられた。<br />
「かがみ、そろそろ休憩してらっしゃいな」<br />
「あ、うん。……ありがと、お母さん」<br />
持ち場を離れたかがみが、ついてきて、と口パクで俺を促した。<br /><br /><br /><br /><strong>さんらいず おん ☆ にゅーいやーず でぃ</strong><br /><br /><br /><br />
「もぉ、来るなら連絡くらいしてくれればいいのに」<br />
「はは。驚かそうと思いまして」<br />
底冷えする外から、暖房の効いたリビングに通されて人心地つく。<br />
「忙しそうだね。ってか、こんなときに来ないほうが良かったかな?」<br />
「気にしないでよ。今年はアルバイトさんもいるし。それに私は……こんな時にあんたが来てくれて、嬉しいと思ってるんだから」<br />
頬を染めて、ぷいっと目を逸らす。<br />
気恥ずかしそうな感じが、背中から伝わってきて、思わず抱きしめたくなってしまう。<br /><br />
「…へぇ、あのコがかがみのねぇ…」<br />
「なんか、可愛い感じのコよねぇ…」<br /><br />
…ん? どこからともなく声が…?<br /><br />
「ちょっと、お姉ちゃんたち!? 二人してサボってなにやってるのよ!」<br />
「えー、だって気になるでしょ? 可愛い妹のカレシ…」<br />
「気にしなくていいからっ。とっとと戻って戻って!!」<br /><br />
かがみさんがどたばたと廊下を走り回る。<br />
今の声お姉さんだったのか。そういえば4人姉妹だって聞いたような。<br /><br />
「ごめんゆうきくん、ちょっと仕事に戻ってるから。ゆっくりしてて!」<br />
返事をする間も無く、足音が遠ざかっていった。<br /><br />
*<br /><br />
「―――きくん、ゆうきくんっ」<br />
……ん?<br />
いつの間にか眠っていたらしい。よどむ意識をどうにかハッキリさせると、かがみさんの顔が近くにあった。<br />
「コタツで寝ると風邪ひいちゃうわよ」<br />
しょうがないなぁ、といった感じで笑う。<br />
よく見ると、かがみの衣装が巫女のそれからがらりと変わっていた。<br />
「かがみ―――それ」<br />
「ふふ、お母さんのお古なんだけどね。着せてもらっちゃった」<br />
晴れ着姿のかがみが、照れたように微笑む。<br />
どうかな? という問いに、<br />
「ん、すっごく綺麗。…最高」<br />
と答えると、耳まで真っ赤になって、さらに微笑んだ。<br />
「ね、外出ようよ」<br />
うきうきとはしゃぐかがみの勢いに押され…というか引っ張られ…俺たちは再び寒空の下に躍り出た。<br /><br />
*<br /><br />
参拝客は相変わらず多かったが、それでもさっきよりは減ってるように思えた。<br />
ふと空を見ると、来た時に比べてずいぶんと白んでいる。<br />
気になって時計を見ると、7時ちょっと前。<br />
「うわ、俺人んちのリビングでどんだけ寝てたんだよ」<br />
「なかなか可愛い寝顔だったわよ」<br />
「なっ!?」<br />
慌てる俺をよそに、かがみはさくさくと歩を進めていく。<br />
「ところで、何処まで行くの?」<br />
てっきりお参りしていくのかと思いきや、境内からは随分離れていってしまっている。<br />
「それは着いてからってことにしといて」<br />
楽しそうなかがみに水を差すのもなんなので、俺は黙って従うことにした。<br /><br />
やがて、視界が開ける。<br />
「…へぇ」<br />
眼下には町並みが広がる。いつのまにかちょっと高い場所に来ていたようだ。<br />
うっすらと明るくなった視界に、もやがかかった建物たちが映り、ちょっとした異世界のようにも見える。<br />
「…もうすぐ、ね」<br />
何が、と問いかける前に、かがみが東の空を指差した。<br /><br />
―――世界が、生まれ変わった。<br /><br />
「……」<br />
言葉を忘れ、昇る朝日…初日の出…に見入る。<br />
ちらっとかがみを見遣ると、彼女もただ、ご来光を見つめていた。<br />
その横顔が、陽の光に照らされ…初日の出に負けないくらい、輝いている。<br /><br />
「初めて見たのは、中1の時だったかな」<br />
ぽつり、とかがみが呟く。<br />
「すっごく綺麗で、なんか素敵で。…それからココは私のお気に入りの場所」<br />
つかさにだって教えてないんだから。そう言って笑う。<br />
「……うん、確かに…すごいや」<br />
それ以外の言葉が思いつかない。語彙の乏しい自分が恨めしくなる。<br />
「今年…あんたと一緒に見れて、良かったよ」<br />
きゅ、と握った手に力が入る。<br />
「なんかイイこと、ありそう」<br />
俺も、そう思った。<br /><br />
「さ、それじゃお参り行こうか」<br />
折角晴れ着も着たんだし、さ。<br />
再び俺の手を引いて、境内へと戻る。<br />
「ずっと巫女ばっかりやってたからさ、実は結構憧れてたりもしたんだよね。こーゆーの」<br />
「それは、お参りが?」<br />
「……バカ、察しろよ」<br />
ぷぅ、と頬を膨らませる。あわててゴメン、と謝って、ほどけかけた手を握り返す。<br />
「じゃ、行こう」<br />
「…うんっ」<br /><br /><br />
今年も、かがみといっしょに…<br />
楽しい一年になればいいな…<br /><br /><br />
「…違うよ、ゆうきくん」<br />
「?」<br />
「楽しい一年には、私たちがするの」<br />
「…そうだな」<br />
二人して、笑って。<br />
せーので、合図する。<br /><br /><br />
「「今年も、よろしく!」」</p>