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「げっとざ☆ふゅーちゃー」(2008/05/25 (日) 16:49:23) の最新版変更点
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<p>「…進路?」<br /><br />
放課後。<br />
なんとはなしにダベってた俺たちのところに、小早川さんたちがやってきた。<br />
「はい。週末までに希望を提出しなさいって」<br />
手にした洋半紙には、希望進路を幾つか書くような欄が描かれている。アンケートみたいな感じだろう。<br />
あ、そういう季節か。<br />
「……でも、まだピンと来なくて…」<br />
「それデ、コナタたちにソーダンしよっテ!」<br />
なるほどね。<br /><br /><br /><br /><strong>げっとざ☆ふゅーちゃー</strong><br /><br /><br /><br /><br />
「そんなわけで、まずは参考までに先輩方の進路を聞きたいっス」<br />
俺たちの進路か…<br />
えーと、確かみゆきさんは…<br />
「私は医学部で進学を…」<br />
「で、つかささんは料理学校だっけ」<br />
「うん。お料理もっと勉強したくて」<br />
うーむ、二人ともしっくりくるなぁ。<br />
…でもみゆきさん、医者って苦手だった気が。特に歯医者とか。<br />
「私は、一応法学部で進学よ」<br />
「…マジで?」<br />
「なによ、らしくないっての?」<br />
かがみさんににらまれた。<br />
「や、そーゆーわけじゃないけど」<br />
意外としっかりした進路でびっくりしたくらいで。<br /><br />
「そーいえば、ゆーくんって進路決めてたっけ?」<br />
背後からこなたの声。<br />
正確には、俺の背中に寄りかかってぺたぺたとくっついてるんだけど。<br />
「ん、まぁね」<br />
本当はつい最近まで漠然としか決めてなかったんだけど。<br />
「文芸学部で進学希望」<br />
へー、と周囲から声。<br />
「もともとなにかしら書くのは嫌いじゃなかったんだけど、そうじろうさんと話するようになってから、結構興味持っちゃってさ。折角だから本格的に勉強してみようかなって」<br />
「先輩、小説家目指すんスか?」<br />
「どうかな。まずは知ってみたいって好奇心みたいなもんだし、どうなるかはまだわからないよ」<br />
っと、仮にも彼女たちは俺たちに相談しに来たんだ。テキトーなことは言えないな。<br /><br />
「なんてゆーか、さ」<br />
こほん、と咳払いひとつ。<br />
「まずはなにをやりたいか、それを決めるのも難しいと思うんだ」<br />
俺だって、いまのいままでかかったわけだしな。<br />
「就職するにしろ、進学するにしろ。進学するなら、どのジャンルってのもあるし」<br />
それこそ選択肢は鬼のようにある。<br />
「だから、今は…何に興味があるか、くらいでいいと思うよ」<br />
好きこそ物の…ってのもある。<br />
それを伸ばせるチャンスがあるんだ。乗っからない手はない。<br />
「大丈夫。キミらはまだ2年猶予があるんだから」<br />
でも、それにあぐらかいてちゃだめだけどね。<br />
そう言って締めくくる。<br /><br />
「おぉ~」<br />
ぱちぱちと拍手。なんか恥ずかしいな。<br /><br />
「いやー、さすがゆーくん。カッコいいことゆーねぇ♪」<br />
なでなで。<br />
「ちょ、頭なでるなって」<br /><br />
「そういえば、お姉ちゃんは進路決めたの?」<br />
小早川さんが問いかける。<br />
ふむ、俺も聞いたことないな。<br />
「うーん、正直全然なんだよねぇ~」<br />
「おいおい」<br />
呆れ顔のかがみさん。<br />
「まぁ、あてがないわけでもないというか」<br />
「なぁに?」<br />
首をかしげるつかささん。こなたはにんまりと笑って、改めて俺に抱きつく。<br /><br />
「ゆーくんとこに永久就職☆」<br /><br /><br /><br />
…………世界が凍りついた。<br /><br /><br /><br />
「ちょ、こ、こなた!?」<br />
焦る。嬉しいけど、めっちゃ焦る。<br />
「……ヤなの?」<br />
上目遣いに俺を見る。寂しげな目で。<br />
こら、そんな目で俺を見るな。<br />
「…………ヤじゃ、ないです」<br />
照れる。そりゃもうこの上なく照れる。<br /><br />
「コナタ、“エーキューシューショク”ってなんですカ?」<br />
「んー、簡単に言っちゃうと。お嫁さんってことかな?」<br />
きゃっ、言っちゃった♪ なんて。<br />
…キャラ違くない、こなた?<br /><br />
「ナルホドです! …じゃァ、ワタシの進路はこれでケッテーですヨ!」<br />
さらさらと進路希望のプリンタにペンを走らせる。<br />
なになに…<br />
第1希望の欄に書かれたのは…<br /><br /><br />
【ユーキのアイジン】<br /><br /><br />
「こーゆーコトですネ! ワカリマス!」<br />
……って待てぃ。<br />
「それは進路じゃねえ!」<br />
「そーだよ、ダメだよパティ!」<br />
助け舟を出してくれるこなた。<br />
「ゆーくんの愛人枠はもうかがみんの予約が入ってるんだからっ」<br /><br />
……はい?<br /><br />
「ちょっ、なにバカ言ってんのよこなたっ!!?」<br />
耳まで真っ赤になって、かがみさんが怒鳴る。<br />
「えー、違うの?」<br />
「ったりまえだ!」<br /><br />
……やれやれ。<br /><br />
「なんか、あれだな」<br />
「はい?」<br />
俺の呟きに、みゆきさんが首をかしげる。<br />
「どれだけ時間がたっても、万一みんなバラバラになっても…この空気…ってか、雰囲気?……変わらない気がしてきたよ」<br />
きゃいきゃいとかしましく騒ぐこなたたちを見てると、そう思う。<br />
「……ですね」<br />
くすくす笑いながら、みゆきさんが頷いた。<br /><br />
「あ、でも変わるものもあるよ?」<br />
「え?」<br />
いつの間にか俺の傍らに戻ってきていたこなたが囁く。<br /><br />
「……たとえば、私の名字とか♪」<br />
小悪魔ちっくに微笑んで、俺の腕にしがみつく。<br />
まったく、こなたってヤツは。<br /><br />
「…それも、いいかもな」<br />
ただ、そうじろうさんは大泣きしそうだけど。<br />
「婿養子って手もあるよ?」<br />
「…選択肢には入れとくよ」<br /><br />
…でも、ま。<br /><br />
「その“未来”は楽しみだけど…」<br />
「?」<br />
「“今”、こーやっているときを大事にしたいかな」<br />
何度も同じ“時”を繰り返した身としては、今のこの何気ない時間が、なにものにも変えがたいものだって、知っているから。<br /><br />
「……そだね」<br />
こなたが頷いて、そっと寄りそう。その肩を、抱き寄せる。<br /><br /><br />
放課後の喧騒が、遠くに聞こえた。</p>