「あふたー あ すとーむ ☆ かむず あ かーむ/シーン2・R【かがみサイド】」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<p>「…ゆうきくんっ」<br />
とぼとぼ歩く背中に、声をかける。<br />
振り返る彼の表情は、いつになく沈んでいて、痛々しい。<br />
「あ、かがみさんか…」<br />
「開口一番、ごあいさつね」<br />
はっぱをかけるつもりの軽口。それでも彼の表情は晴れない。<br />
「…やっぱ、つらい?」<br />
言わずもがな、日下部とのケンカの件。<br />
僅かに目を泳がせた後、ゆうきくんは力なく頷いた。<br />
「単純に嫌われてたときとは違うからね」<br />
仲良くなってから、恋人になってからの、拒絶。<br />
彼氏のいない私としては、そのダメージを計り知ることは出来ないけれど。<br /><br />
「仲直り、したいよね」<br />
「そりゃそうだよ。…でも、なんて声かけたもんかってさ」<br /><br />
*<br /><br />
峰岸に聞いた一件と、彼の説明を照らし合わせる。<br />
話聞く限りだと、ゆうきくん側に非は殆どないといっていいだろう。<br />
「…どうかな、かがみさん。なんか、いい案ない?」<br />
すがるような目で、聞いてくる。<br />
日下部と仲直りしたい、って想いが、視線から零れ落ちる。<br /><br />
……複雑。<br /><br />
なにか、もやもやする。<br />
このまま、仲直りしなくてもいいのに、なんて考えたりして。<br /><br /><br />
「……かがみさん?」<br />
「…そう、ね」<br />
一瞬浮かんだ、ヤな考えを振り払い、出来る限りの笑顔を装う。<br />
「アイツだって、もう反省してる頃だろうからさ。まずは話、してみたらどうかな」<br />
「そうかな…」<br />
「あのねぇ、あんた仮にも彼氏でしょ? それぐらい信じてやんなよ」<br />
ズキン、と胸が痛んだ気がした。<br /><br />
「…そうだよね。ごめん、かがみさん」<br />
「私に謝ってどーすんのよ。いいからとっとと仲直りしろ。あんた達がケンカしてるとこっちの調子まで狂っちゃうわ」<br />
そうするよ、と苦笑しながら言って、その顔に笑みを戻したゆうきくんは、足取り軽く走り去っていった。<br /><br />
―――まったく、世話が焼けるんだから。<br /><br />
溜息混じりに、心の中で呟く。<br /><br />
「いーの、かがみん?」<br />
背後から声をかけられる。<br />
「何がよ、こなた」<br />
渋そうな表情で、私を見るこなた。<br />
「実はちょっとだけ、後悔してるとか」<br />
「―――!」<br />
こいつ、たまに鋭い。<br />
「やっぱ図星か。まぁ、解らなくも無いけどさ」<br />
そう言って、寂しげな表情で笑う。<br />
「実は、チャンスだったかもよ?」<br />
「そーゆー発想、あんたらしいわね」<br />
動揺を悟られないように、軽口を叩く。<br />
「まぁ、実際私も一瞬そー思ったもん」<br />
「…え?」<br />
顔を伏せるこなた。<br />
「でもま、やっぱりさ」<br />
再び上げた顔には、笑みが宿っていた。<br />
「どーせなら、彼の“いちばん”を見てたいじゃない?」<br />
…ほんの少し、引きつってたけど。<br />
「……まぁ、そうね」<br />
多分、私の笑顔も引きつってる。<br /><br />
「さて…帰ろっか、こなた」<br />
「そだね。…あ、ねぇかがみ」<br />
「ゲーマーズ寄るの? いいわ、付き合ったげる」<br />
「うそっ!? どーゆー風の吹き回し? 明日は槍でも降るとか?」<br />
「どーゆー意味だコラ」<br /><br />
―――こなたの、言うとおりだ。<br /><br />
私が一番見ていたい、アイツの“いちばん”の笑顔は…<br /><br /><br /><br />
日下部の隣でしか、見られないのだから。</p>