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「無題(かがみ)3」(2008/05/01 (木) 18:00:24) の最新版変更点
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<p>陵桜を卒業して、俺は彼女と結婚した。相手の名前は、柊かがみ。<br />
俺の愛した、ただ一人の女性。これから彼女と、幸せな生活が送れると思っていた。<br />
いつまでも笑いあって、いつしか子供も出来て・・・そんな生活を想像していた。<br />
あの日までは・・・<br /><br />
「・・・どうだった、かがみ?」<br />
「ううん、またダメだった・・・」<br />
不思議と二人の間には、子供に恵まれなかった。医者が言うには、原因はかがみの体にあるらしい。<br />
「・・・ごめんね」<br />
「いや、かがみが悪いんじゃないんだからさ」<br /><br />
昔から言われているが、俺は人が良すぎるらしい。優しい過ぎることもあるらしい。<br />
昔の話になるが、かがみが風邪を引いたとき、俺はかがみの体調が良くなるまで会社を休んだことがある。<br /><br />
「そのくせ自分の体調が悪い時は、無理してるのよねぇ・・・」<br />
「まぁ、そこに惚れたんでしょ・・・かがみんや」<br />
「う・・・うん///」</p>
<div class="mes">
<p>ある日、今までにないくらいの体調の悪さに病院へ行った。<br />
診察すると医者と看護士がザワザワしだし、その後は大学病院で精密検査。<br /><br />
診断結果は・・・急性心膜炎。<br />
すぐに手術が必要との事だ。<br /><br />
家に帰ると俺は、かがみに長期の出張に出かけると伝えた。もちろん、出張なんかではない。<br />
次の日、俺はかがみにいってきます!と言って、家を出る。行き先は・・・病院。<br />
再び精密検査を受ける。数日が経ち、明日がいよいよ手術の日。<br />
「本当に・・・いいんですか?言いにくいですが、成功する確率は低いです」<br />
「はい」<br />
「奥さんに・・・告げなくてもよかったんですか?」<br />
「えぇ・・・」<br /><br />
次の日。全身麻酔が効いてきたらしい。頭がボーっとする・・・。<br />
闇に落ちる瞬間、かがみの顔が脳裏を過ぎる・・・。</p>
<div class="mes">
<p>気が付くと、病室のベッドの上だった。<br />
外を見てみると、雨。しかもどしゃ降りだ。気が滅入る。<br />
「どうですか、体調は?」<br />
俺の執刀医の先生と内科の先生が、手術の報告をしてくる。結果は・・・失敗。<br />
「もって・・・・・半年です」<br /><br />
「先生、電話・・・してもいいですか?」<br />
そう言って俺は、かがみに電話で病院に来るように言う。30分後、かがみが病院に着く。そして、病室に入ってくる。<br />
かがみはただ、呆然としていた。そして病室は、俺とかがみだけになった・・・。<br /><br />
「俺のこと忘れていい男みつけろよ」<br />
この言葉を言った瞬間、左のほほに痛みが走る。<br />
瞳に涙を浮かべながら、俺にビンタをするかがみ。</p>
<div class="mes">
<p>「なんでいつもそうなのよ!あたしの事を第一にして、自分の事は二の次にして!あげく俺の事わすれろ?<br />
忘れられるわけ無いじゃない!あんなに楽しい思い出たくさん作っておいて・・・こっちも気持ちは無視?<br />
あんたは・・・あんたって奴は!」<br />
その瞬間、かがみの左手が振りかぶった。が、ビンタは来なかった。<br />
我慢できなくなったかがみが、泣きながら俺に抱きつく。<br /><br />
「あんたみたいなお人好しで優しい人に、また出会えるわけないでしょ?・・・嫌だよ・・・<br />
あたしは・・・あんたじゃなきゃ嫌なの!あんた以上に、好きになる男なんて居ないんだから!」<br /><br />
まるで子供のように泣くかがみを抱きしめながら、俺は一言しか言葉をかけれなかった・・・。<br />
「・・・・・・ごめん」<br /><br /><br />
「・・・・・ってわけよ」<br />
「そうですか・・・あのゆうきさんが・・・」<br />
「じゃあかがみん、あの事は?」<br />
「言える訳ないじゃない」<br />
「お姉ちゃん・・・どうするの?」<br />
「こんなときに、子供が出来たなんて・・・言えないわよ」</p>
<div class="mes">
<p>翌日、かがみは俺に子供が出来た!と伝えた。<br />
「まじかよ・・・やったーーーーー!元気な子だといいな!」<br />
嬉しさのあまり、俺はいつもより強く抱きしめた。<br />
不意にかがみが言う。<br /><br />
「なんで・・・この子が生まれる頃には、あんた居ないかもしれないのよ?」<br />
「んな事、わかんねぇだろ?半年より永く生きてみせるさ。子供の顔、見ないで死ねるか!」<br /><br />
俺は病院で自慢しまくった。さらに姓名判断の本で、名前も考えた。<br />
かがみがお見舞いにくる時は、なるべく早く帰すようにしている。もう一人の体じゃないと言って帰している。<br /><br />
4ヵ月過ぎても、体には何の変化もなかった。いつもの夜。明日はどんな朝を迎えるかな?<br />
でも、それは突然きた・・・。<br />
・・・胸が・・・・・苦しい・・・熱い・・・意識が・・・か・・が・み・・・<br />
・・・・・・・・・・・・・・・</p>
<div class="mes">
<p>気が付くと、病室のベッドの上。かすかに聞こえる、医者の声。<br />
「残念ですが・・・もう永くはありません」<br />
そうか俺、もうすぐ死ぬんだ・・・子供の顔、見たかったなぁ・・。<br />
「ゆうき!!」<br /><br />
かがみの声。もう返事が出来ない俺は、返事の代わりに手を握る。<br />
よく見るとこなたさん、つかささん、みゆきさん、日下部さん、峰岸さんもいる。<br />
ただ、みんな泣いている。俺が・・・死ぬから?みんな・・・優しいなぁ。<br /><br />
「か・・が・・み・・・」<br />
振り絞って出した声は、弱弱しくて、自分でもおかしかった。<br />
何と言って、俺の手を強く握る。<br /><br />
「俺・・みたいな奴と・・・一緒になって・・くれて・・・ありがとな」<br />
意識が遠のく。かがみの手、暖かいな。ありがとう、かがみ。俺、幸せだった・・・。<br />
ピ――――――――――――<br /><br />
「ご臨終です・・・」</p>
<div class="mes">しばらくの沈黙が続くが、かがみが沈黙を破る・・・。<br /><br />
「・・・みんな見てよ。死に顔まで笑ってる・・・。・・・起きてよ。いつもみたいに起きて、笑ってよ!<br />
生まれてくる子供を抱いてよ!顔見るまで死なないんでしょ?起きてよ!子供に微笑みかけてよ!まだ一緒に居たいよ!<br />
もっと、三人で楽しい思い出つくりたいよ!ねぇ・・・起きてよ―――――!!!」<br /><br /><br />
5ヶ月後・・・<br />
「ゆうき、子供生まれたよ。元気な男の子。どっちかというと、ゆうき似ね。目なんか特に。<br />
ねぇゆうき、天国から、見守ってるよね・・・」<br /><br />
季節の移り変わりを感じさせる風が、吹いていた・・・。</div>
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