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「ねぇ、真紅は何処の学校に通っているのぉ?」
ある病人は言った。
「・・・・・私は、ローゼン女学院の2年生よ。」
「すごぉい!! じゃあ『アリス』なのね!!」
「・・・・・? 『アリス』?」
聞きなれない言葉。
だけど何故か、その言葉を聞くのは嫌だった。
「そうよぉ、ローゼン女学院生はこう呼ばれているの。 知らなかったのぉ?」
「・・・・・・・・『アリス』・・・・。」
完璧な少女。
御伽の国へと旅たつ主人公となった少女。
「私の友達に『アリス』がいるなんてビックリよぉ、私みんなに自慢しちゃうんだから。」
「・・・・・・・好きになさい。」
病人ははしゃいでいた。
何がそんなにうれしいのだろう。
「あぁ、いいなぁ。 ローゼン女学院。 きっととても素敵なところなんでしょうね。」
「そうね。」
曖昧な返事。
この病人にウチの学院は関係がない。
「その・・・ね、真紅。 私も行ってみたいわ。」
「え?」
「ローゼン女学院に。」

事件は起きる。
この一瞬まで、彼女達は曖昧な幸せに身を浸していられたのだ。







「な、なんです!? おまえは一体だれです!?」
電話の向こうの誰か。
どうやらその誰かは、

「目が覚めたら、ああ・・・・くそ、薄暗い部屋だったんだ!!  監禁されてる!!
助けてくれぇえぇ!!!」

私達と同じ状況にいるらしかった。
「そんな、まさか、あぁ・・・・・あああぁああぁあああ・・・!!!!」
さっきまであんなに毅然とした態度をとっていた真紅の顔がみるみる歪んでいく。
真紅の家族・・・・? いや、恋人・・・・なのだろうか。

「翠星石っ!! その電話を、こっちに寄こしなさい!! 早く、早く!!!!」
「は、はいっ!!」
真紅の剣幕に押されて、携帯電話を放り投げる。
真紅はそれをひったくるように受けとった。

「あああぁぁああ・・・ジュン・・・・。 あなた、どうして・・・・?」
「真紅? 真紅なのか?! 助けてくれ、真紅!!! 『ジグソウ』だ!! 『ジグソウ』なんだ!!
あいつのターゲットにさせられてしまった・・・!!」
「あぁぁ・・・でも、ジュン・・・・私・・・・」
「あぁ、あぁ・・・ そうだな。 そうだ、まず警察に連絡してくれ。  さっきからこの電話で試しているんだけど、
どうも繋がらないんだ・・・たぶんコレはその電話にしか繋がらない・・・・くそっ、そっちの電話から警察に連絡してくれ!!
時間が無いんだ!! 今だって此処に『ジグソウ』の野郎がいないからこうして話せてる・・!!!」
此処まで聞こえる会話。
どうやら彼は何もわかっていない・・・・
「あぁぁ、でもジュン。 だめ・・・・だめなのよ・・・・。」
真紅は涙をためながらうな垂れる。
「この電話は、着信専用なの・・・。 つまりね、つまり此処から助けなんて呼べないのよ・・・!!!」
悲痛な告白。
電話の向こうの彼も、困惑しているのだろうか。
「助け・・・・・? まさか、お前も・・・監禁されて・・・?」

ゴトン!!!

電話の向こうから、鈍い音が聞こえた。
そう、さながら鈍器で人の頭を砕いたかのような・・・・

「ジュン!! ジュン!! どうしたの!? ジュン、聞こえているの!? ねぇ、ジュン!!」
『彼には眠ってもらった。』

暗い、しわがれた、とても人間とは思えないような声。
『真紅。 お前のゲームに対する積極性が高まるように催したのだ。』
『ジグソウ』が淡々と続ける。
『わかるだろう? 真紅。 君はゲームから生き残らねばならない。
12時まで、あと1時間。 秒針が0分を刺す瞬間までは、彼の命は保障しよう。
真紅、もう1度だけ言う。

生きるために、血を流せ。』

それで、携帯電話は何も喋らなくなる。
真紅は、携帯電話を手にブラさげて、呆然としていた。
「真紅・・・・・?」
明らかに雰囲気が変わった。
「ちょっと、真紅。 聞いているですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
真紅は、何かぶつぶつ呟いている。
「真紅!?」
「足よ。」
「え?」

「あははははははは、どうしてこんな簡単なことに気づけなかったのかしら・・・!!!
本当に可笑しいのだわ。 あはははははははははははは。」
乾いた笑いが部屋を覆う。
「真紅・・・・・? あんた・・・・・一体?」

「わからないの? 翠星石。 このノコギリはね、チェーンを切るためのものじゃないの。」
「・・・・・・・・・え?」
「足よ。 足。
足を切るためのものなのよ。 あはははは、あはははははははははははは!!!!」

真紅は狂ったように笑う。
もう、彼女はダメだ。
恋人の誘拐。
そのことが、真紅をより極限にまで追い詰めていた。

真紅はカメラに向かって叫ぶ。
「見ているのね!!! 『ジグソウ』!!!! 
ジュンを殺してみなさい、必ず生き延びてあなたを殺してやるわ!!!
そうよ、殺してやる・・・・!!!
私をこんな目に、私のこんな目にあわせるなんて・・・・・!!!!
殺してやる!!! 殺してやる!!!!
絶対に殺してやるゥゥうううううああ嗚呼嗚呼嗚呼あああああ!!!!!!!!!!」







何処とも知れない何処か。
モニターがあった。
「あははははははは、怒ってる。怒ってるよ真紅。 あはははは、あはははははは。」
モニターに映し出されているのは、広いバスルーム。
そこで、二人の少女が監禁されていた。


「ゲームはあと、1時間弱か。 楽しませてくれよ、二人とも。」
誰とも知れない誰か。
その誰かは高らかに笑い出す。

彼もまた、狂っているのだ。







12時。
制限時間が来た。
真紅はブツブツ言いながら、部屋の隅で固まっていた。

「私はジ×××なんかじゃないわ、私は×ャ××なんかじゃないわ、私はジャ×クなんかじゃないわ、
私はジャン×なんかじゃ─────」

私は、1時間経っても、自分の足とにらめっこを続けていた。
真紅の言葉が思い出される。

『このノコギリは、チェーンを切るためのものじゃない。 足を切るための─────・・・』

頭を振る。
ダメだ・・・!!! 私にはそんなことできない!!!
でも、もう制限時間は過ぎてしまった。
きっと、『ジグソウ』が此処に来る。

そして、私達を殺すに違いない。

真紅の恋人も、どうなったのか判らない。
死んだのだろうか。

衣擦れの音。
ふと、真紅を見る。
真紅は、足をまくっていた。
「ちょっと・・・・真紅?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
真紅は自分の服の裾を破り、足にきつく巻きつけている。
そうしてあぐらをかくような体勢になって・・・・
まさか・・・・・・・!!!
「や、やめ・・・・・!!!」

ガシュン!!!

ノコギリを、自分の足に直角に叩きつけた。
「!!!!・・・・・・・・真紅!?」
「あああああああああああああああああああああ!!!!!!」

ガシュン!!!
ガシュン!!!!

何度も、何度も叩きつける。
血飛沫が舞う。
肉が飛ぶ。
そうして、ノコギリが半分ほど真紅の足に埋まった。
「んあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
真紅はノコギリを前後にひき始める。

グリッ・・・!! ゴリッ・・・・!!!

嫌な音がする。

グリッ・・・!! ゴリッ・・・・!!!

嫌な音がする。

グリッ・・・!! ゴリッ・・・・!!!

嫌な音がする・・・・・・!!!!

「うぅ・・・・・・・・・う・・・・・」
私はそんなもの見ていられない。
もうたくさんだ、もうたくさんだ・・・・・!!!!!
「うぐっ・・・・あ・・・・ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

真紅の絶叫と、骨が削れる音がこのバスルームを満たす。
私は部屋の隅で、目を閉じて、耳をふさいで、それでも聞こえてくる悲鳴と音に耐えているだけだ。

「ううううぅううううぅうううううううううう・・・・・・・・・・・・・・・」
私は泣いていた。
恐怖と悪寒。
絶望と嫌悪。
不安と憎悪。
この部屋にはあるのは、それらが全て。
およそ人間が持ちうる「負」の感情全てがこの部屋にはあった。

白いタイルで覆われたバスルーム。
ここは正に、

真っ白な地獄。


そうして、
真紅は足を失った。

切断面からは大量の血。
一応止血はしているようだが、噴出した血液のせいで
体中を血にぬらしていたから、血が止まっているのかどうかも判らない。
真紅は体中を正に「真紅」に染めていた。

足枷から解かれた真紅は這う。
目指すは中央の死体。
いや、死体が持つピストル。

真紅は、その死体の手からピストルを手に取る。
「安全装置・・・確か、こうやって・・・・外す・・・・のよね。」
ガチン。
リボルバーを開いて、弾の残量を確認する。 そして、
真紅はその銃口を、
私に、向けた。

「う、嘘です!! や、やめるですよ!!! 真紅!!!」
「・・・・・・・・・・」
真紅は蒼褪めた顔のまま無表情。
表情が無いのは怖い。
こっちの意思が向こうにまるで伝わっていないかのように錯覚する。
いや、錯覚ではない。
彼女は狂ってしまったのだ。
「翠星石。 私は、生き延びたいの。」

「しょ、正気に戻れです・・・・・・や、やめて・・・・・・・・お願い・・・!!! お願いですから・・・・・!!!」
真紅は何も言わない。
「やめて・・・・!!! お願いやめてぇぇぇええええぇええええええ!!!!!!」

ドン。
響く銃声。

撃たれた。
わかったのは、それだけだった。





Rozen Maiden ~saw~
後編へ続く



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