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ゴポ・・・・・・・・・ゴポgポッ・・・・
息が、出来ない。

ゴポポゴ・・・・ゴポゴポポp・・・・・
もがく。

そんなことより、今は空気を・・・・・!!!

「う・・・・っっぱぁああぁっ!!!・・・・はぁ、はぁ・・・・・」

此処は・・・何処?
う・・・・酷い臭いなのだわ・・・・・

真っ暗で、何も見えない。
何? 何だっていうの・・・?

ビッ・・・ビビッ・・・ビビビッ!!
「うっ・・・・!!?」
照明が次々と点いていく。

ビビビビ・・・・・・ビィーーーーー・・・・・
眩しい・・・・。
ここは・・・・・・・・・
バス・・・・ルーム?

一面が白いタイル張りの広いバスルームのような部屋。
自分はどうやらこの浴槽に浸かっていたらしい。
そして、

「う、嘘・・・・ どうして?」

足首が、足枷から伸びたチェーンで大きなパイプに固定されていた。
それもかなりの太さだ。
「い、いったい・・・・何がどうなって・・・」
再度、辺りを見回す。
一番に目に入るのは、さっき部屋を見回したとき見えたもの。
人が倒れてる・・・?
いや、あの赤い液体は───

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
直感と同時に、理性が絶叫を上げさせる。
むせ返る様な酷い臭いの正体がそれだった。
死、死体・・・・
死体が・・・・!! 死体が・・・・!!!!

バスルームのようなだだっ広い部屋。
その中心には、血まみれの死体があった。

「うぐっ・・・・うううぅうう・・・・・」
胃の中のものを戻しそうになるのを必死でこらえる。
一体・・・なんだっていうの・・・?
どうしてこんなことになっているの・・・?
ワケもわからないまま、固定されたチェーンを外そうとする。
外そうとするが、
「ううう・・・!!! うぅうぅうう・・・!! なんで!? なんでなのよ!? ううぅうう・・・・!!!」
外れない。
「うううぅう・・・・・うぐっ・・・・ぐすっ・・・うぅ・・・・」
目の前には死体。
立ち込める異臭。
そして、今此処にチェーンで拘束されている現実。

真紅は、まったく今の状況が理解できていなかった。

気づく。
長方形の部屋の対角線上、そこには、
見知らぬ、おそらくは自分と似通った年齢であろう少女が自分と同じように拘束されていた。

「ねぇ!! そこのあなた!! 起きなさい!! あなた!!!」
知らない少女に叫び続ける。
こんなに一生懸命、人に呼びかけたことはなかったろう。
だが、こんな状況下で恥も外聞も無かった。
「はぁ・・はぁ・・・起きなさい!! 起きて!!!」

「ん・・・・・・・・ぅん・・・・・・・・・・?」







「ん・・・・・・・・ぅん・・・・・・・・・・?」
何か騒がしい。 一体なんだって言うのだろう。
「ん・・・んつっ・・・・・」
軽く頭痛がした。
此処、何処だ・・・?

「あなた!! ねぇ あなた!! どうしてこんなことに!? 一体これはどういうことなの!?」
何だ、あの女の子・・・・・
「うるせぇです!! うだうだ言われなくても・・・ 起きれるです!!」

ガシン!!

「え・・・・・・・・・・・?」
足首に違和感。
いや、違和感はそれだけではない。 この部屋、この状況こそがまさに違和感の塊だった。
一面、白いタイルのバスルームじみただだっ広い部屋。
理解・・・・・できない。
「なんで・・・・なんでこんなのが足にくっついてるですか!!! うぅ!! 離れろです!!!」
「一体なんなの?!! ココは何処?! あなたは誰なの!?」
さっきの女の子が対角線上、部屋の向こう側でまくし立てる。
聞きたいのはこっちの方だ。
「ど、どどどどうなってやがるですか!!! 説明するです!!!」
「そんなのこっちが知りたいわ!! あなたこそなにか知っているんではなくて!?」
「何も知ってることなんてあるはずがねーのです!! 起きたらいきなりこんな・・・・・ヒッ!!!!??」

中央の赤い物体に気づく。
物体・・・いや、あれは人間。
あんなに赤い人間を私は知らない。
じゃあアレは・・・・・・死体。
死体、死体、死体死体死体死体!!!!

「う、うぅううううう・・・・・」
それに気づくと同時に強烈な腐乱臭にも気づく。
く、くさい・・・・。
もう、確実だ。
中央のアレは死体で。
今、私は監禁されてるんだ・・・・!!!

「一体、ど、どどどどうなってやがるですかぁぁああああ!!!」
「だからこっちが知りたいっていってるでしょおおおお!!!???」

ブツン。

私たちの喧騒を遮るノイズ。
それは、天井に無理やりくっつけたかのような小さなスピーカーから発せられた。







『ザ・・・・・・・ザザ・・・・・ザザザ・・・・・・ザ───』

雑音。
あの少女が何か知っているハズ、という期待を裏切られた真紅の激情の矛先は翠星石から
スピーカーのノイズへと転化した。

「ちょっと!! どういうこと!? そこに誰か居るの?! 答えなさい!!!」

『・・・・・・・・・・ザ・・・・ザザ・・・・・・・・・・・』

「・・・・・・・・・・・一体なんだっていうですか・・・・」
涙目になりながらも、翠星石もスピーカーを睨み付ける。

『・・・・・おはよう。真紅。そして翠星石。 ボクのコト、わかるかな~?』

ノイズの後に聞こえてきたのは、二人にとって聞きなれたあの声だった。

「・・・・・・・・くんくん!? くんくんなの!?」
「・・・・・・・くんくん?」
怪訝な顔をして真紅を見る翠星石。
「くんくんってあの月曜日の夜7時からやってるあの探偵アニメの・・・?」
「そうよ!! それ以外にどんなくんくんがあるっていうの!?」

『デレデーレーデデデーレーデデン♪ デレデレデーデレ・・・・』
テーマソングが流れる。
やけに明るい曲調なだけに、今の現実との格差が空しく感じられた。

『身体は犬! 頭脳も犬! 名探偵、くんくん!!!』
くんくんとやらの自己紹介が終わる。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
真紅と翠星石は怪訝な顔でスピーカーを見つめている。
すると、
『こんにちわ。 真紅、翠星石。
確かにボクはくんくんなんけど、いまこの時だけはこう呼んで欲しいんだ。』
スピーカーは、そう喋りだした。

「ど、どういうことよ?」

そして聞こえてくるのは、今、巷を騒がしている連続殺人鬼。 その名前だった。


『─────ジグソウ。』







連続殺人鬼、通称ジグソウ。
彼の起こす事件に注目が集まる理由は、その殺害方法、殺害理念にあった。

ゲームである。

ターゲットである人間を、残虐なゲームへと放り込む。
しかし自らは決して手を出さない。それがジクソウのルールだった。

最初の事件の被害者は、自傷癖の女だった。
ゲームの内容は、よくある密室からの脱出劇。

だがその密室にはカミソリワイヤーが張り巡らされていた。
死因は大量出血。
死体は出口からほんの5メートル程度離れた場所にあった。
切り刻まれた死体は、滑稽なほど赤黒く変色していた。

第2の被害者は、放火魔の男。
今回の密室には、引火性ジェルとガラスの破片が敷き詰められた部屋。
ルールはこうである。 

無数にあるガラスの破片の中の何処かに、脱出するための部屋の鍵が置いてある。
制限時間は3時間。 時間内に部屋を脱出できなければ発火装置が作動する。
部屋は見る間に灼熱地獄と化し、被害者の身体をこんがりと焼き上げてくれる。

男は鍵を見つけ出せずに死んだ。焼死だった。

前回の事件ではろくに手がかりの一つも見つけることが出来なかったが、
今回の事件、ジグソウは多くの痕跡を残していた。

捜査官は壁に空けられた小さな覗き穴を発見する。
彼は言う。
「どうやら奴は、ゲームを 『最前列』 で見ているのが好きなようです。」

そして奇妙なことに、死体からは皮膚がジグソウパズル1ピース分、切り取られていた。
天井にあったのは、スプレーで書きなぐられたメッセージ。
そこには、

『不完全ほど恐ろしいものはない。 欠落ほど醜いものはない。』

とだけ、書き殴られていた。

『最前列』にてゲームを一人楽しむ殺人者。
そして惨劇が終わった後、犠牲者からジグソウパズル1ピース分の皮膚を切り取る。
故に、『ジグソウ』。

最後に、捜査官はもうひとつ重要な手がかりを見つける。
のぞき穴の薄暗い小部屋に落ちていた、ペンライト。
その高級感溢れるデザインは、とても特徴的だった。
これは、ローゼン女学院の学院指定のペンライト。

ペンライトには名前が記されていた。
『三年五組 真紅』







「ジ、ジグソウですって・・・・・・!?」

驚愕する真紅。
彼女がいやでも関わらされたあの連続殺人事件、その犯人が今、自分達を監禁している───?

「あなたがあのジグソウだっていうの!?」
動揺を隠せない。 
彼女は知っているのだ。 ジグソウに捕らえられた人間がどうなるかを。
だって、もしそれが本当だとしたなら私達は・・・!!

『そうだよ。真紅。 この名前は警察とマスコミが勝手につけた物なんだけどね。
君たちがすぐに状況を理解できるだろうと思って、初めて自分から使ってみたよ。
もっともくんくんからは声を借りているだけさ。 君がリラックスできるようにね。
冷静になって行動してくれよ、真紅、翠星石。 でないと、ゲームに勝つことなどできないのだから。』

「ゲーム・・・・!!!」
翠星石も思い出す。
連続殺人鬼、その殺人方法。
「じゃあアタシ達が・・・・・・・その・・・・・!!!」

『そう。今回のターゲットは君達だ。』

翠星石は愕然とする。
どんなに凄惨で奇妙な事件が起こったとしても、
それはテレビの中だけ、遠いブラウン管の向こうの出来事。
だから、まだ笑っていられた。
友達と話すときも「怖い~」だのなんだの話をあわせているだけだ。
そのうち話題も変わる。
この『ジグソウ』の事件は彼女にとってただそれだけのはずだった。

こんなのは想定していない。
自分がターゲットだって?!
馬鹿げてる!! 馬鹿げてる!! 馬鹿げてる馬鹿げてる!!
「どうして、あたしなんですか!? あの女はどうだか知りませんが あたしがこんなことをされるいわれなんか・・!!!」
『ゲームの内容を説明するよ。』
くんくん・・・・・もといジグソウは翠星石の叫びを無視して話を続ける。
『此処は閉ざされた密室だ。 鍵はあるにはあるがそれを探すことはオススメしないよ。
 制限時間があるからね。 ・・・・・・・・・4時間だ。』

二人は一斉に壁にかけられた時計へと目をやった。
今は・・・・8時前。
急に秒針がうるさく感じられる。

鍵がある? この部屋の中に?

二人は扉を見る。
翠星石からは遠く、真紅に近いところにその扉はある。
だが、届かない。
届いたとしても、鍵が掛かっているだろう。
つまりは、チェーンを外し、鍵を見つける。
この二つの難題をクリアしないと、この部屋を脱出できないのだ。

『時間内に条件を満たさなければ、ゲームは失敗したとみなされるよ。
そうなったら、君達には死んでもらうことになります。』
「・・・・・・・・な!?」
「・・・・・・・・・!!」
あっさり言われる。 
ずっと漂っている腐乱臭がその言葉に真実味を持たせてしまう。
まさか・・・・・・・本当に・・・・・・・?

「じょ、条件って、なに・・・・」

『目の前の相手を殺すんだ。』

翠星石の細々とした言葉を、遮るように言われた。

『相手を殺すか。二人とも死ぬかが、このゲームのゴールだよ。』

「な・・・・・・・・・なんですって・・・・・?!」
「そ・・・・・・・そんな・・・・・・・・・」
互いの顔を見合わせる。
この少女を、殺す───?

『ノコギリなら2本、其処に転がっているはずだ。 どう使うかはもちろん判っているだろう?』
二人同時に周囲を見渡す。1本、翠星石の近くにあった。

「こ、これ・・・・ですか・・・・・・。」
翠星石はノコギリを拾い上げる。 鉄のこだ。
この鉄のこで闘えとでもいうのか? それとも、この足首のチェーンを・・・?
でも、果たしてこの太いチェーンが切れるのだろうか。

「も、もう1本は・・・・!?」
真紅があたりを手探りで探す。
チェーンが、鎖で繋がれた犬のように彼女の行動範囲を制限する。
「くっ・・・うぐぐっ・・・!!」

「あ!! そこです!! し、死体の近く。 そこにあるです!!」
真紅が其処に目をやると、赤黒い血溜まりの中、たしかにノコギリがあった。
手を伸ばす・・・・・が、届かない。

『おっと、言い忘れていたよ。 そこに転がっているのは前回のターゲットさ。
彼女も君達と同じ年頃でね。 試験的に彼女でゲームを試したんだけど・・・・
結果は見ての通り。 持っているピストルで頭をバーン!!
それであっさり、おっ死んでしまったんだ。』

「な・・・・・・・・・・・!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
部屋の中心に横たわる彼女が、かつて私たちと同じ状況に置かれていた───?
それは二人に自分達の未来を暗示させるかのようだった。
翠星石は顔を真っ青にし、
真紅はかぶりを振って、そんな考えを頭から消し去ろうとしていた。

死体はよく見ると、赤く染まって、グチャグチャになってしまった頭以外は損傷はなく、少女のような体つきをしている。
髪は血に染まって赤黒く、片手にピストルを握っている。
うつぶせに倒れているので、顔がはっきりと確認できない。
死に顔を見れずにすんだのは、僥倖だったかもしれない。
真紅は、そう思った。

スピーカーが喋りだす。
『それでは、ゲームを始めるとするよ。 繰り返しだけど、制限時間は4時間。 時間内に相手を殺せばそれでゲームは終了。
 二人が死んでもゲームは終了。 以上さ。』

────ゲームが始まる。

『もうすぐ8時になるよ。 8時きっかりを以ってゲームは開始とする。』

────秒針が12の数字に向かって進み続ける。

『さあ、真紅。 そして翠星石。

ゲームを始めよう。』

ブツン。

それで、スピーカーから音が聞こえることはもうなかった。

8時0分。

ゲーム、開始。





Rozen Maiden ~saw~
前編2へ続く
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