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『退魔の戦乙女達』 ~Past 過去の後悔と現在の過ち 前編~

今日は白崎からの連絡もなく、退魔業は休みなのだろう。
折角の休みなので雛苺は巴の家に泊まりに行ってしまった。不思議と二人はあれから本当に仲が良くなっていた。
まぁ僕としては五月蝿い奴が一人居なくなって万々歳な訳なのだが一人だけ強敵が残っている。

 真紅「ジュン、紅茶を淹れて頂戴。」

優雅な金色に輝く長い髪に溜息が出るほどの青い瞳の見た目は美少女はマイカップを取り出して僕の前にそれを押し付ける。
僕は適当な返事をして紅茶を淹れる作業に取り掛かる。
最近ではこんな生活にも慣れ始めてしまっていた。しかし文句を言われるのだけは癪に障るので今日は最高のコンディションにしてやる。
水は六●のおいしい水にして温度はきちんと98度にして葉もちゃんと蒸らして(珍しく)カップまで温めて淹れる。
出来うる限りの最高のものを淹れたつもりだった。これで文句は言わせないし驚かせてやろう。

 J「淹れたぞ真紅。」
 真紅「それじゃあ頂くわ。」

何時もどおりゆっくりと優雅を気取って真紅はその小さな花弁のような唇をカップに付けて一口飲む。
熱さに少しだけ顔をしかめるがその表情はすぐに明るいものに変わった。

 真紅「貴方がこれを淹れたの?やればできるじゃない、素晴らしいわジュン!」
 J「え、ああ…うん。さ、サンキュ…」

あっさりと賛辞の言葉を貰ってしまい僕は戸惑ってしまう。よくよく考えてみればこれってただ単にアイツが喜ぶだけじゃないか…。
何だか最近の僕はどうかしてる…急に眩暈がした気がする。



しかしかなり機嫌をよくした真紅は僕を誘って買い物に行こうと言った。
どうせ荷物持ちをやらされる羽目になるのだろうがそろそろ食品の買出しをしないと食べる物がないので渋々着いて行く。
いつもは退魔のコートを羽織るのだが今回は至って普通の女の子の格好をする。
赤を基調としたエメラルド色を所々にあしらってアクセントをつけたワンピースで剥き出しにされた白い肌にその色は映えて見える。
普段では見られない彼女の意外な可愛らしさに僕は間抜けにも口を開けて魅入ってしまっていた。

 真紅「どうしたの?早く行くわよジュン。」
 J「わ、わかってるよ!行くぞ。」

買い物も一通り済んで疲れ果てた僕は色々な荷物を預かって噴水を中心とした円形状の十字路の広場のベンチで休んでいた。
真紅はまだ元気が有り余っているらしくもう少し見て来ると言っていた。こういう場での女のパワーは馬鹿にできない。
僕は一体、今何をしているのだろうと考えて悩んでいる僕を馬鹿にしているかのように青く広がる空を見ていたら自然と溜息が出る。
確かに今の生活はそれなりに充実している。けれども僕には僕の叶えたい願いがあった。アイツと契約してからはその願いのために動く暇がない。
今、僕は人生の岐路に立っていることを実感する。漠然とした不安は身体への倦怠へと変わって僕から元気を拭い去る。
そんな時、一人の男が僕の隣に座り込んできた。黒い髪に赤い目の眼鏡をかけた見た目長身の優男で座ったときに目が合う。

 「やぁ、彼女と一緒にホリデイでウキウキのデートかな?」


聞き覚えのある声だった。しかしそんなことよりもアイツのことを彼女だとか言われたことに腹が立った。

 J「違う!僕はただ単に買い物に着き合わされているだけだ。」
 「ふ~ん、でも君も彼女も満更でもない顔だったんだけどなぁ…。」
 J「な…別にそんな…それよりもお前、真紅のことを知ってるのか?」
 「ああ、だって僕が彼女に退魔業の仕事を斡旋してるんだよ?顔ぐらい知ってても可笑しくないじゃないか。」

長身の男は人を小バカにした薄ら笑いを浮かべて自分だけ全てを理解しているような心底愉快な風に言う。
こいつが白崎…確かに真紅が苦手だと意識するのも頷ける。

 J「白崎が僕に何の用だ。まさか今更退魔業の仕事が入ったんじゃないだろうな?」
 白崎「いやいや、君と話がしたくってね『魔眼の大盗賊』君。」

懐から何か錆びて刃のこぼれた古めかしいナイフを取り出して僕に見せ付けるように右手でそれを掲げる。
錆びた部分は血のようにただれて広がっており周囲に不気味さを植え付けた。



 J「何だそれは?」
 白崎「これはアーティファクトさ。古いエンチャントが施されていてね。これで『契約の絆』を断ち切ることが出来るんだ。」
 J「そ、それがそうなのか!?」

まさか探していた物がこんなに早く見つかるとは思ってもいなかった。契約したばかりの頃の僕ならば迷わず白崎から引っ手繰っていただろう。
しかし、何故か今はそのアーティファクトに手を出すことが躊躇われた。

 白崎「ふむ、盗賊だから無理矢理奪い取ろうとするかと思ったんだけどねぇ。欲しかったんでしょ?コレ…だったら君にあげるよ。」
 J「ぼ、僕は…」
 白崎「使うか使わないかは君の自由さ。それと後一つだけ用があるんだよね。」
 J「よ、用?」
 白崎「そう、大事な、とても大事な用さ。」

一瞬の出来事だった。ベンチから立ち上がった白崎は座っている僕の肩を足で蹴りベンチに仰向けに寝かせる体制にする。
さらに腰のホルダーに入っていた拳銃を取り出しハンマーを寝かせて発射体制にして銃口を僕の額に押し当てた。

 白崎「君の過去を少しだけ見せて貰うよ…君は元人間だって言うじゃないか…どういう経緯で魔物になったのか気になるんでね。」

冷徹な表情のままそう言い放ち容赦なく引き金を引く。発砲の轟音が回りに響き人の悲鳴が起こる。それが過去への旅立ちを告げる福音となった。



今よりも大昔、時は魔物が蔓延り人の平穏を脅かす脅威の最盛期の頃だった。魔物の侵略により人心は荒み治安は乱れその日の生活も約束されぬ日々。
そんな中、僕と姉であるのりは世知辛い世の中を渡り歩いてきた。生活は全て僕の盗みで保っていた。
姉は盗みが下手なので見張り役を頼んで僕がくすねると言った風だ。
勿論、捕まって大人にこっ酷く殴られる日々も多かった。けれどもささやかながら僕等は確かにこの世界を生きて来た。
そんなある日だった。人が住んでいる気配のない一つのボロ小屋を見つけ僕達は其処で一夜を過ごすことを決めた。

 のり「久し振りだね、こうして屋根の下で眠れるのって。」
 J「ああ、最近はいつも道端で野宿だったもんな。」
 のり「ゴメンねジュン君…いつもジュン君にばっかり盗ませたりして…」
 J「気にするなよ、僕には姉ちゃんが居てくれればいいんだからさ。」

そうだ、姉ちゃんと僕を置いて行った両親なんていらない。要領はそれほどよくないのに此処まで一生懸命育ててくれた姉だけが僕の大切なものだった。



眠ってからまだ時間も経たない頃、死は突然足音を立ててやって来た。

 「ち、畜生…おい、サツは撒けたんだろうな!?」
 「ああ、どうにか…逃げ延びれたみたいだな…」

中年の男が二人、このボロ屋の中に踏み込んできた。どうやら警察に狙われているこそ泥のようだ。
片方は撃たれたのかズボンから血が滲み出ていた。僕と姉は隠れようとしたが足元にあった窓ガラスを踏んでしまい、音を立ててしまう。
その音に気付いたこそ泥二人は僕等に気付き僕と姉の髪の毛を掴んで捕まえた。

 「なんだ、ガキか…何か金目のものはねぇのか?」
 J「さ、触るな!薄汚いこそ泥め!」
 「テメェこそ薄汚いドブネズミじゃねぇか!!」

逆上した男は裏拳で僕を殴る、僕はそのまま吹き飛ばされ背中から固い石造りの床に落ちた。



 のり「ジュン君!!」
 「オラ、さっさと金目の物を寄越しやがれ!!」

姉は最後まで抵抗していた。しかし女の力では男をどうにかすることは到底不可能だった。次第に姉の手から力が抜けて行く。
男は姉の体をまさぐるようにして持ち物を確かめたのだが元々僕等は何も持っていない。そうわかった男は更に逆上する。

 「チッ…時化てんな。後でサツにチクられても困るし此処でバラすか。」

男は懐からナイフを取り出していた。そしてその兇刃が姉に向けられようとした時、僕の体は勝手に動いていた。
ナイフを持って今にも姉を刺そうとする男に向かって僕は体当たりする。バランスを崩してよろけた男と共に僕は倒れる。

 「こんのクソ餓鬼め!!テメェからバラしてやるわ!!」

男の上に重なるように倒れていた僕の顔面を蹴飛ばして男は再びナイフをその頭上に構えて僕に向かって振り下ろす。
生温かい、咽るような鉄の匂いのする血液が僕の体中に降りかかった。ああ、刺されたのか…それにしては全く痛みを感じない。
恐る恐る目を開くと其処には信じられない光景が浮かんでいた。僕とナイフの男の間に姉が割って入り僕を庇う形になってその胸に兇刃が深く突き刺さっていた。

薔薇「覚えていてくれた方、ありがとうございます。忘れてしまった方、帰って来ちまいました。
   『退魔の戦乙女達』です。前編投下終わりました。」
雛苺「うゅー、ヒナの出番がないのー。」
翠「チビ苺は巴の家に行ってるからです。翠星石なんて影が薄すぎて泣けてくるですよ!」
金「それを言ったらカナだって影が薄いかしら!もっとカナとみっちゃんを(ry」
薔薇「影のウッスィ~~キャラの嘆きでした。ジュンの過去に隠された秘密とは?
   次回、後編をお楽しみに…」

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