※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。


「なあ、桜田。お前ってさ…」

     ……うるさい

「うわっ!マジかよ…」

     …黙れ

「桜田君って…」

     黙れ!!!!

「JUM~!」


J 「!!!!」


J「はぁはぁはぁ…夢か」

今日も同じ夢。ここ最近ずっとだ。
今日も目覚めは最悪。
今日もいつもと同じ一日が始まる。

…起き上がって時計を見る。時刻は午前10時。姉ののりはとっくに学校に行ってるだろう。

J 「ったくのりの奴…出かける前に起こして行けよ」

…まあ学校行ってないんだから何時に起きたって構わないけど。

とりあえず朝ごはんに何か食べよう。そう思ってベッドから出た。


階段を降り、台所に行く。テーブルの上を見ると、メモが置いてあった。

J 「なになに?『お昼ごはんは冷蔵庫にあるからレンジでチンして食べてね…』」

J 「…ふん!」

メモ紙をビリビリに破って捨てる。
そんなことわざわざ書かなくたって分かってるさ。
だって、いつもそうしてるじゃないか。

J 「いつも…」

ふと頭によぎったその言葉に違和感を感じた。
…一体いつからこの生活が『いつも』になったんだろう。


ふと、小学生の頃を思い出す。

そう、何の気兼ねも無く、自分のやりたいことを、夢を描けていたあの頃を…


雛「あのね、JUM…」
J 「どうした雛苺?困った顔して」
雛「あのね…実は…ヒナのお人形さんの腕が…」
J 「うわっ!千切れちゃったのか…」
雛「真紅と引っ張り合いになって、それで…どうかな?直るかな?」
J 「これくらいまかしとけって!簡単だよ!」

J 「…ほらできた!」
雛「うわー!JUMありがとなの!やっぱりJUMはすごいの!」
J 「へへへ…」

…あの頃は裁縫だとか、絵を描いたりだとか、好きでやっていた。
女の子っぽい趣味だなんて自分で思うこともあったけど、それでもいいと思ってた。
誰かに迷惑をかけてるわけじゃないし、何より楽しかったから。
僕の絵や裁縫を見て笑ってくれる奴もいたし。


流石に、誰かに知られるのはちょっと恥ずかしかったから、秘密にはしていたけど。


雛「JUMはすごいのね~。だって、こんなに絵も上手だし、この絵と同じようにお洋服作っちゃうんだもん!」
J 「人形の洋服作るのぐらい簡単だよ」
雛「じゃあねじゃあね!今度はお人形さんにじゃなくて…ヒナにお洋服作って!」
J 「…さすがに人の着る服は作れないよ。……まだね」
雛「じゃあ大きくなったら!JUMは大きくなったらお洋服を作る人になるの!」
J 「『なるの!』って僕の意思は無視かよ!」
雛「それでね、いーっぱいかわいいお洋服作ってヒナに着せてくれるの!」
J 「おーい…聞いてるかー?」
雛「いやなの?」
J 「いや、嫌とかそんなんじゃなくて…」
雛「じゃあ決まり!約束よ!」
J 「お、おい!」
雛「絶対なのよ!絶対破っちゃダメなんだから!」
J 「…はぁ。はいはい約束約束」


…この時、僕は溜息を吐きながらも笑っていたと思う。
裁縫は好きだったし、いつか本当にデザイナーとかになれたならなぁ…なんて幼いながらに思ったこともあったから。
それに…あいつが、笑っていてくれるなら、それもいいかなって思ったから。

でも、中学に入って、そんな考えが…今までの自分の生き方が甘かったことを痛感する。


男生徒「なあ桜田?お前って裁縫が趣味なんだって?」
J 「は…?」
男生徒「っぽいよなwwお前女友達多いみたいだしw」
J 「べ、別にあいつらは…ただ僕に付きまとってるだけで…」
男生徒「意外と着る方が趣味だったりしてww」
J 「そんなこと…あるわけないだろ!」
男生徒「ふーんw」


入学してすぐの頃のそんなやり取り。
そんな会話で、小学校の頃との違いを感じた。


――僕の趣味は奴らにとって格好の的になる。


そう思った。


よく個性が大事だなんて偉そうに言う奴がいるけど、そんなの嘘だ。

社会で生きていく以上周りに合わせないといけない。

他の奴とずれるってことは、それだけで攻撃される理由になる。

人は自分とは違う者を否定することで優越感を得る生物だから。

中学に入ってそのことがよく分かった。


それから、僕は絵を描いたり、裁縫したりするのをやめた。
そして、『あいつら』とも距離を置くようにした。

…何より周りから外れることが恐ろしかったから。

そして自然と、『あいつら』も僕と距離を開けるようになった。


――――あいつ一人を除いて


雛「ねぇJUM?」
J 「…なんだよ」
雛「最近どうかしたの?なんだかおかしいの」
J 「…別に」
雛「何か悩みでもあるの?ヒナだったらいつでも相談に乗るのよ?」
J 「なんでもないって言ってるだろ!向こう行けよ!」


あいつだけは今までと変わらないように僕に接してきた。
周りの奴らがニヤニヤして僕たちのほうを見ている。


…正直迷惑なだけだ。もう小学生の時とは違うんだよ!
もう、夢を見ながら遊んでいられる時間は終わったんだ!
頼むからそんなに近寄るな!!!


僕は…僕は……!


J 「…くそっ」

やめだやめ!昔のことを考えたって仕方ないじゃないか!

別に学校なんか行かなくって生きていける。もう気にしちゃ駄目だ!

結局僕は輪から外れてしまったんだ。もうあそこには戻れないんだ!


そこで僕は思考を止め、朝食を食べ始めた。考え出すと碌な事が無い…


J 「ごちそうさま」

誰に言うわけでもなく一人でつぶやく。
そして、食器を流しに置き、部屋へと戻った。


J 「…朝っぱらから不愉快だな…気晴らしにネット通販でもやるか」


そう言いながら、パソコンの前に座る。
最近はずっとネットで通販をしては、届いた商品をクーリングオフして、楽しんでいる。
…パソコンの前に座っている時だけは嫌なことを考えずにすむ…


J 「…さてと、これくらいにするか」

いつも巡回しているサイトを一通り見終わって、時計の方に目をやる。もう4時だ。

J 「もうこんな時間か…そろそろだな」

そろそろいつもの時間。そろそろあいつが来る頃だ。

僕が学校に行かなくなって一週間ぐらいしてから毎日うちに来ているあいつが。

雛「JUM~!今日も来たの!」

ほら来た。思ったとおりだ。

雛「今日は金糸雀がね…」

よくもまあ毎日飽きもせずに…

雛「巴と喧嘩しちゃったの…」

何が楽しいんだ?一人で喋ってるだけで。

雛「でもね、真紅がね…」

まあ、いいや。ほうっておけばそのうち帰るさ。

雛「それでね、巴と仲直りできたの!」

あいつだって、どうせ他の奴らと同じ。自分のことしか考えていない。

雛「…じゃあ、また来るからね!」

僕の事なんか何も分かっちゃいないんだから…

|