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お盆休み、僕は、水銀燈を連れて故郷に帰ってきた。
ジ「や~っと着いた。長かった。」
銀「へぇ、もっと緑溢れるって感じを想像してたんだけど、
  そうでもないわねぇ。」
ジ「都市ってわけでもないけど、田舎ってわけでもない。
  まぁ、微妙なところだな……。
  とりあえず、約束の場所に行こう」
銀「はぁい。あなた。」
そういいながら、彼女は腕を組んでくる。
さすがに、これだけは何時まで経ってもなれない。
ジ「なぁ、腕組むのやめてくれないか?
銀「あらぁ、いいじゃない。恋人同士なんだし。」
ジ「けれど、恥ずかしい……」
銀「もう、いい加減慣れなさいよぉ。」
そういいながら、彼女は放そうとしない。
道の途中で、知り合いとあった。
「よう、お帰り。
 ってか、美人な奥さん連れやがって、
 うらやましいぞ、この野郎」
水銀燈とは結婚まではいってない。
けれども、水銀燈は嬉しそうに、
銀「妻の水銀燈です」
なんて挨拶する始末。
ジ「頼むから、止めてくれ。」
銀「あらぁ、いいじゃない、いずれそうなるんだしぃ。」
ジ「いや、そうだけど、これとそれとは話が違う。」
銀「つまんなぁい」
と言って、唇を尖らせた。
「くそ、なんか、俺が惨めになってきたぜ」
そういいながら、知り合いは立ち去った。
 
やっと、約束の場所、真紅の家についた。
そもそも、元をたどれば、
水銀燈が真紅に会いたいといったことがきっかけだ。
水銀燈曰く、「ジュンにとって大切な人なら、私も知っておきたい。」
真紅に電話をかけると、彼女もOKした。
僕も、真紅と水銀燈は、二人ともくんくん好きだし、
どことなく、似てる部分もある。
だから、多分仲良くなってくれるだろうってことでつれてきた。
チャイムを鳴らすと
金髪を結び、赤のワンピースを着た懐かしい顔が出てきた
半年程度なのに、ずいぶんと昔のような気がする。
紅「いらっしゃい。……ジュン、久しぶり。」
ジ「久しぶり。真紅」
紅「あなたが、水銀燈ね。よろしく」
銀「よろしくぅ、真紅」
紅「ジュン、さっそくだけど、紅茶を入れなさい。
  台所の場所は忘れてないわね」
ジ「はいはい。」
紅「はい、は一回」
ジ「はいはいはいはい」
懐かしいやり取りをしつつ、僕は台所へ向かう。
後ろから不意にすっごい声が聞こえた。
銀「きゃぁ~!!すごいわぁ!
  このくんくんなりきりセット。
  視聴者プレゼントの貴重な一品だわぁ。」
紅「あら、あなた、なかなか分かっているようね。」
銀「こっちは、映画版、くんくん探偵
  眠りの森の秘密、初回限定版!!
  すごいわぁ!ほんとにすごいわぁ!!」
水銀燈はとてもうれしそうに声をあげる。
普段なら、「私は別にこんなの……」とかいうはずなんだが。
それだけ、真紅のコレクションがすごいってことか?
とりあえず、仲良くやってくれそうだな。
僕は、茶器を取り出す。
久しぶりに見た、ティーポット。
そういえば、僕はこのティーポットで始めて、紅茶淹れたんだっけ?
紅茶と呼べるような代物ではなかったにせよ懐かしいな。
 
銀「あらぁ、しっぽの先に色がついていないわぁ。
  ……手作りのくんくん?」
紅「ええ、ジュンが作ってくれたものよ。」
銀「へぇ、ジュンが。」
紅「……少し、聞いてくれるかしら。私の昔話。」
銀「えぇ、興味があるわぁ。」
紅「私は小学校のころ、両親を亡くして、親戚に引き取られて
  ココに引っ越してきたの。
  親を亡くしたショックで、ほとんど誰とも口を聞かず、ずっと、一人でいたわ。
  そんな時に、ジュンがこの人形をくれたのよ。
  くんくん、おもしろいよ?一緒に見ないか?ってね。
  始めは、余計なお世話と思ったけれど、何度も、何度も誘ってくれてわ。
  それで、見てみたらすごいおもしろくてね。
  ジュンと少しは話すようになってわ。
  でも、私は素直じゃないから、ジュンを困らせるようなことばっかりいってね。
  紅茶を入れなさいって言ったこともあったわね。
  茶葉とお湯を混ぜれば、できあがり、とか、無茶な命令して、
  それで、ジュンが作った紅茶をとても飲めた物じゃないと言ったり。
  まぁ、それは、ひどいわがままぶりだったわ。
  でも、ジュンは、そんな私に付き合ってくれて、
  どこから勉強したのかは、知らないけど、
  いつの間にか、すごくおいしい紅茶が淹れれるようになったわ。」
銀「へぇ、そんなことが」
紅「ともあれ、私はジュンに感謝してるわ。
  彼がいなければ、今の私はいない。
  彼に幸せになってほしいと願ってる。
  ……あなたは、ジュンを幸せにしてくれるかしら?」
銀「まかせなさい。ジュンをちゃんと幸せにするわ。」
紅「そう、それを聞いて安心したわ。ジュンのこと、よろしく頼むわ。」

ジ「ほら、淹れたぞ。」
紅「いただくわ。」
真紅は、前と変わらず、優雅に紅茶を飲む。
紅「……腕をあげたようね。おいしいわ」
その後、真紅と水銀燈はくんくん談義に花を咲かせた。
というより、見渡す限りに花が咲き乱れるくらいの勢いだったな。
僕もくんくんは見ていたが、正直なところ話に混ざれる気がしない。
いつもは、「紅茶は静かに楽しむものだわ。」なんて、言ってるとは思えない。
そんな勢いなので、喉も渇いたのだろう。
イッパイ入れた紅茶はすぐなくなった。
紅「あら、紅茶がなくなってしまったわ」
ジ「淹れなおしてくるよ」
紅「いいえ、私が淹れてくるわ」
ジ「そっか、じゃあよろしく頼む。」
真紅は台所に、向かった。
銀「ねぇ、ジュン。真紅から昔話聞いたわよ。
  真紅にやさしかったのね?」
ジ「まぁな。
  中学入ったくらいから、ほとんど家に戻ってこなくなったんだけど、
  そのころ僕の家は、大体どっちかの親がいない程度でさ。
  真紅はずっと会えないって考えると、放っておけなくて……。」
銀「真紅は、あなたに感謝してたわよ」
ジ「僕も感謝してるさ。
  僕が辛い時に守ってくれたのも、彼女だしね。」
銀「彼女といて幸せだった?」
ジ「居心地のいい関係だったけど……幸せとは違うかな。
  僕が幸せと感じるのは、水銀燈といるときだから。」
銀「もう……」
彼女は赤くなって黙り込んだ。
 
紅「できたわよ。味わって飲みなさい。」
澄んだ綺麗な紅。
漂う豊かな香り。
濃厚で複雑な味。
ジ「うん。おいしいよ。」
紅「当然よ。私にだってできるわ。」
その後、僕と真紅の昔話で盛り上がった。
ひどく恥ずかしい話を暴露してくれた真紅に対して、
僕もお返しを、と思ったけど本気で殴られたので諦めざるえなかった。
東京に戻ったら、水銀燈にバラしてやろう。
帰り際、水銀燈は名残惜しそうに、真紅と連絡先を交換した。
紅「また来なさい。いつでも歓迎するわよ。」
あの水銀燈の勢いなら、休みのたびに行きそうなんだが……。
 
真紅の家を後にし、僕の家についた。
久しぶりだな。何にも変わっちゃいない。
……たった半年で変わるほうが恐いんだけどな。
ジ「ただいま、姉ちゃん」
の「きゃぁ~、ジュン君おかえり
  元気にしてた?ご飯ちゃんと食べてる?
  お姉ちゃん心配してたのよぅ~?」
ジ「おおげさだな。姉ちゃんは。
  毎日のように電話で話してるだろ?」
の「あなたが水銀燈ちゃんね。
  ジュン君から話は聞いてるわよぅ~。
  ホント、かわいいわねぇ~」
銀「ありがとう。お義姉さん。」
の「さあ、入った入った。
  お姉ちゃんが腕によりをかけてご飯作ったから、
  いっぱい食べちゃってねぇ~」
久しぶりの姉ちゃんの料理。
おいしいことは、おいしいんだけど
テーブルに載らないほど作るのは……。
量くらい考えて作ってくれ。
 
あっという間に、お盆は終わりを迎えようとしているわ。
ジュンたちはそろそろ帰りの電車かしら。
ジュンは、ほんとに嬉しそうだった。
水銀燈も、ジュンを幸せにしてくれるっていったわ。
よかったわね。ジュン。
ちゃんと幸せになりなさい。
見送りに行きたかったけれど、私は、アルバイトなのだわ。
紅「おはようございます。薔薇水晶さん」
薔「……おはよう……顔色悪いよ?……
  無理しちゃだめ……」
私、そんな顔してるのかしら。
紅「大丈夫ですよ。たしかに、少し痛みはするけれども、
  ……この傷は、もう古傷ですから。」
あなたを呼ぶたびにひどく痛んだこの傷も、
少しは古くなり、痛みは引いてきた。
紅「今日もよろしくお願いします。」
私は、精一杯の明るい声で挨拶したのだわ。
 
楽しい盆休みはあっという間に過ぎ、僕たちは、東京に戻る電車にいる。
銀「また、年末にこっちに来たいわぁ」
ジ「そだな。」
銀「できれば、休みのたびにこっちに来たいけど、
  さすがにねぇ………」
あ、さすがに、休みのたびには、疲れるか。
銀「ジュンと二人っきりの時間も欲しいしねぇ。
  ……ジュン、顔真っ赤よぉ。
  照れちゃって……かわいい。」
彼女は、幸せそうに笑った。
僕も、幸せな気持ちになる。
銀「ねぇ、ジュン。」
ジ「ん?」
銀「ジュンは、私を、幸せにしてくれるかしら?」
ジ「もちろん」
銀「なら、誓いなさい……この薔薇の指輪に」
左手を僕のほうに差し出す。
僕は彼女の指輪に口付けをする。
水銀燈は、僕の手を取った。
銀「私も――」
そういいながら、水銀燈は僕の指輪にキスをする。
銀「ふふ、一緒に幸せになりましょうねぇ」
顔を赤らめた水銀燈が言う。
ジ「うん。一緒に幸せになろう。水銀燈」
 
みんなの間の距離は変わった。
 
それに応じて、届く声も違うものになった。
 
けれど、それはいつも同じとは限らない。
 
声を出すことが辛いこともあるかもしれない。
 
雨音で声がかき消されることもあるかもしれない。
 
耳を塞ぎたくなることもあるかもしれない。
 
けれども、だからこそ、精一杯の思いをこめて、
 
 
        あなたを呼ぶ
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