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今日は休日。
僕は、水銀燈が来る前に、部屋の掃除をしている最中だ。
特に約束したわけでもないけれど、休日にはよく訪ねてくるからな。
銀「ジュン?いるぅ?」
水銀燈が来たみたいだ。
ジ「よう。水銀燈。今紅茶入れるからちょっと待ってて。」
銀「はぁい。」
ヤカンを火にかけ、茶葉を選ぶ。
……アッサムにしようかな。
蓋を開けると、葉がほとんどない。
買いに行かなきゃな。
とりあえず、残った葉で紅茶を淹れる。
ジ「はい。お待たせ。」
銀「ありがとぉ。」
彼女は、カップに口をつける。
ジ「あのさ、いい茶葉が売ってる店しらないか?
  そろそろ、茶葉が切れそうなんだ。」
少し考えた後、彼女が答える。
銀「近くを通っただけで、入ったことはないんだけどねぇ
  知り合いから聞いた限りではいい店らしいんだけど。
  ……その店でもかまわない?」
ジ「別に他にあてがあるわけでもないし。
  その場所教えてくれないか?」
銀「えっとねぇ、
  ここから三駅くらいなんだけれど、
  けっこう入り組んだ所にあるのよねぇ。
  口じゃぁ説明しにくいわぁ。」
複雑な場所か。僕は方向音痴なので一人で行ける自信がない。
ジ「よかったら連れて行ってくれないか?」
銀「私、近くに寄りたいところあるのよぉ。
  そこで荷物持ちしてくれるならいいわ。」
ジ「ああ。今から一時間後でかまわないか?」
銀「いいわよぉ。ちゃんとマシな服えらんでおきなさぁい。」
水銀燈が出て行った後、僕は財布にお金追加する。
普段は節約しているけど、紅茶だけは別だ。
そして、マシそうな服に着替える。
普段からも、それなりに気をつけているつもりだけれども、
彼女の目は厳しいからな。

服選びで意外と時間を取ったのか着替え終わると、彼女の声が聞こえた。
銀「おまたせぇ」
甘い感じの服装の彼女が現れた。
普段着はシンプルで黒と基調とした服装が多いんだけど、
これはこれでかわいい。
ほんと、何着ても似合うよなぁ。
銀「どう?似合ってる?」
ジ「あぁ、かわいいよ。」
銀「うふふっ、じゃ、行きましょ?」
そういうと、腕を組んできた。
嬉しいんだけれども、……やっぱり恥ずかしい。
僕の顔が赤くなったのを見て、水銀燈が笑う。

目的駅から降り、彼女の案内で、歩いていると紅茶専門店が見えた。
よくこんな複雑な道のりを覚えれるものだ。
僕が、方向音痴すぎるだけなのか?
銀「ここよぉ。」
外から見る限り、人はいない。
場所のせいもあるんだろうけど、大丈夫かな。
彼女は、店の扉を開く。
雪「ようこそ、Teegesellschaftへ」
僕は驚いた。こんなところで会うとは思ってなかった。
ジ「雪華綺晶さん!?」
雪「桜田さん!お久しぶりです。」
銀「あらぁ、知り合いなの?」
水銀燈が、興味深そうに聞いてきた。
ジ「あぁ、僕の故郷でよく通ってた店の雪華綺晶さん。
  ……でも、なんでこんなところに?」
雪「支店を出すことにしたんですよ。
  ここは、Teegesellschaft2号店です。」
誇らしそうに雪華綺晶さんは答える。
ジ「2号店か。経営順調なんですね。
  あれ、薔薇水晶さんは?」
雪「薔薇水晶には、1号店のほうをお願いしています。」
ジ「……薔薇水晶さんに接客できるのかな?」
彼女は、あまり愛想というものがない。
紅茶を淹れる腕はたしかだけど。
雪「アルバイトさんに入ってもらっているから大丈夫ですよ。
  真紅さんって人が特に頑張ってくれていて、助かってると言ってました。」
ジ「真紅が?……あの真紅があるバイトを……
  あいつがねぇ……」
雪「真紅さんとお知り合いなんですか?」
ジ「ええ、よく紅茶を淹れてやったんですよ。
  ……正直、意外です。
  あいつは紅茶好きなんですが、飲む方専門と思ってました。」
雪「そうなんですか?
  知識も豊富で、すぐ紅茶もうまく淹れられるようになりましたし、
  うちの店にとっては、ありがたい存在ですよ。」
真紅も色々頑張ってるんだな。
真紅のこと色々不安だったけど、少し安心した。
雪「さて、はじめてのお客様には、
  まず、私達の店を知っていただきたいということで、
  紅茶をお出ししています。
  コチラが勝手に出すものなので、御代は結構です。
  お出ししてもかまいませんか?」
ジ「あ、そのシステム続けるんですね?」
雪「はい。誠心誠意、紅茶をお出しするのが、
  私達の店のポリシーですから。」
銀「あらぁ……なかなかすごいお店ねぇ。」
水銀燈は、感心しているようだ。
雪「折角ですし、桜田さんにもお出ししますよ。」
ジ「え、僕にも、淹れてもらえるんですか。……じゃ、お言葉に甘えて。」
銀「私も、いただくわぁ。」
雪「では、少々お待ちくださいませ。」
雪華綺晶さんは、お湯を沸かし始めた。
僕と、水銀燈はカウンターに座る。
銀「ねぇ、ジュン。その真紅って子と仲いいの?」
ジ「ん?まぁね。小学校からの、腐れ縁かな?」
銀「ふぅ~ん。羨ましいわね。」
ジ「そっか。」
水銀燈は、髪の色のせいで、孤立しがちだったんだろう。
なんとなく、真紅と水銀燈は馬が合うような気がする。
二人ともくんくん好きだし。こんど会わせてみようかな?
そんなことを考えてると、
雪華綺晶さんが、ティーポットとカップを目の前に置いた。
雪「お待たせいたしました。
  砂時計が落ちたら、カップに注いでください。」
雪華綺晶さんは、あのころと変わらない笑顔でこっちを見てる。
銀「へぇ。ティーポットで出すお店って珍しいわねぇ。」
雪「そうですね。ティーポットでないと、出せない味がありますから。」
銀「この砂時計っていうのも始めてみたわぁ。」
ジ「茶葉の成分が出る時間を待つためのものです。」
銀「へぇ~。凝ってるわねぇ」
僕は店を見渡してみる。
テーブルや、カウンター。
茶葉販売の棚まで、1号店と似ている。
時間が来たので、カップに注ぐ。
口に含むと懐かしい香りと味がした。
ジ「うん。おいしい。」
銀「ジュンの淹れた紅茶と同じくらいおいしいわぁ。」
僕はうれしいんだけど、店に失礼な褒め方だ。
雪「ありがとうございます。」
雪華綺晶さんは、嬉しそうにそう答えた。
さすが、大人な対応だ。嫌そうな顔一つせず、笑顔がまぶしい。
紅茶を楽しんだ後、僕は茶葉を買い店を後にした。
茶葉代は水銀燈が半分出してくれた。
彼女曰く、「私も半分くらい消費するからね」だそうだ。
お茶菓子とか持ってきてくれるだけで十分なんだけど、
お金がないので、ありがたく出してもらった。
その後、彼女の行きたい店により、
荷物持ちの大役を果たし、アパートへと戻った。
まぁ、あまり荷物はなかったけどな。

ほんと、今日は懐かしい人にあったな。
真紅、元気かな?
僕は僕で勉強頑張ってるし、
あっちは、あっちで頑張ってるみたいだし、
前みたいに電話をかけても、帰りたくなることはないだろう。
僕は、真紅に電話をかけることにした。
電話のコール音が7つ鳴った。
あれ、出れないのか?
そう思った時、真紅が電話にでた。
紅「あら、ジュン。久しぶり。」
あのころと変わらない声。懐かしい。
ジ「よう、真紅。久しぶり。」
紅「で、どういった用件かしら。」
ジ「や、別に用はないんだけど。
  雪華綺晶さんと会って、お前の話聞いたから、
  どうしてるかなって思ってさ。」
紅「あら、主人の身を案じるなんて、
  やっと、下僕としての心得が身についたようね?」
ジ「はいはい。で、どうだ、そっちの大学は?」
紅「講義はなかなか興味深いわ。
  図書館もいい本が沢山あるわ。
  ただ、学食はいただけないわね。
  紅茶ひとつまともに淹れられないのだから。」
高校のときもいってたな、そのセリフ。
彼女の所属する文芸部の部室に、茶器を持ち込んで、
紅茶を淹れさせられたっけ?
僕としては、メニューに紅茶があるだけ、マシだと思うんだけど。
僕のところは、コーヒーだけだ。まぁ、コーヒーも嫌いではないけれど。
ジ「紅茶といえば、Teegesellschaftでバイト始めたんだってな?
  どうだ、少しはうまく淹れれるようになったか?」
紅「なかなか難しいものね。
  ……ジュン、主人として命令するわ。
  紅茶の入れ方のコツを教えなさい。」
一つ前のセリフの「紅茶ひとつまともに淹れられないのだから」は、どうなったんだ。
と、思ったけれど、怖いのでツッコミは入れない。
ジ「急にそんなこと言われてもなぁ……
  薔薇水晶さんから習ってるだろ?」
正直、あの無口な薔薇水晶さんが、
教えているところを想像できなかったりするけど。
紅「習っているけれど、私は早くおいしい紅茶を入れれるようになりたいのだわ」
ジ「う~ん。ある程度までいったら、後は経験が重要だからなぁ。
  何回も淹れるしかないんじゃないかな?
  葉の蒸らし時間、お湯の温度、お湯と葉の比率は
  目安はあるけどそれが絶対ではないんだ。
  普通には推奨されない、85度程度の温度で、
  じっくり蒸らしてもおいしい葉もある。」
紅「その経験を教えなさいといってるのだわ。」
ジ「そんな、無茶言われてもなぁ。」
紅「お願い。ジュン」
珍しいな、こんな風にお願いなんかされるの。
そこまで頑張ってるのか。
ジ「……わかったよ。次、電話かける時までに考えておくから。」
紅「まぁ、それで、許してあげようかしら。
  で、あなたの生活はどうなのかしら?
  ちゃんと、食事は摂ってるの?」
くそ、一気に立ち直って、上の目線からだ。
……まぁ、いいけど。
ジ「ほう、心配してくれてるのか?」
紅「下僕に気を使うのも主人の役目だわ。
  もっとも、下僕が、料理を作れれば、
  こんな心配はいらないのだけれども。」
ジ「ま、なんとかやってるよ。それなりに腕も上達した。」
姉ちゃんの味には程遠いけどれも、そんなに複雑な料理じゃなかったら、
おいしく食べることができるレベルだ。
紅「講義のほうはどうかしら?
  ちゃんと単位は取れそう?」
と、こんな具合に、僕と真紅の会話は続いた。
久々に聞いた、懐かしい声とセリフ。
時間で言えばそんなに経っていないのだけれども、
ずいぶん、久しぶりのような気がする。
真紅も元気そうだったし、よかった。
ただ、電話をかける前と思いと違って、帰りたいと思ってしまった。
お盆休みには、バイトも休みになるし、帰ろうかな?
姉ちゃんも心配してるし。
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