※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

今日も私は彼の部屋の前で一人座って、

雛「ねえ、JUM…今日はね…」

一人話している。

雛「それでね、翠星石ったらひどいのよ…」

彼からの返事はない…

雛「水銀燈と薔薇水晶がね…」



どうしてこうなっちゃったんだろう…
だってもっと小さな頃は…



『ふたりのやくそく』



「はーい!それじゃあみんな自由にお遊びしてねー!」


(はーーーい!!)


雛「ふんふ~ん♪」
J 「ねえ、雛苺?なにかいてるの?」
雛「あっ!JUM!ヒナはね、おひめさまの絵をかいてるの!」
J 「へー。かわいいね」
雛「でしょ?ピンクのおようふくきて、おっきなリボンもつけるの!」
J 「まるでほんとうのおひめさまみたいだよ!ぼくもいっしょにかいてもいい?」
雛「もちろんなの!JUMもいっしょにおえかきするの!」


雛「うわー!JUMっておえかきじょうずなのね!」
J 「へへ…そうかな?」
雛「うん!ヒナもこんなおようふくきてみたいな」
J 「ぼくが大きくなったら、こんなおようふくぐらい、いくらでもつくってあげるよ」
雛「ほんとJUM?じゃあやくそくね!ゆびきりげんまーんなの!」
J 「うん!ふたりのやくそく!」


JUMは小さい頃からお絵かきが上手だった。
JUMの描くお姫様はみんなかわいくて、しあわせそうだった。

それに、お裁縫も上手。あれは小学生の時だったかな…


雛「しんくー?見せたいものってなあに?」
J 「もったいぶらずに早く見せろよ!」
紅「ふふふ…それは……これなのだわ!」

雛「そ…それは!!」
J 「幻の1/1くんくん人形(非売品)!!」
雛「そのくんくんどうしたの!?」
紅「この間懸賞に応募して当たったのよ!どう?うらやましいでしょ?」
雛「うらやましいのー!」
J 「…これを自慢するために僕たちを呼んだってわけか」


その日は結局くんくんを見せびらかされただけだった。
少しくらい触ってもいいじゃない!真紅ったら意地悪なのね!


雛「いいなー真紅。ヒナもくんくん欲しいのー…」
J 「……」
雛「じゃあまた明日ねJUM」
J 「…あ、うん。バイバイ」


J 「……よし」


そして次の日…


雛「JUM?用って?」
J 「これだよ。ほら!」
雛「これ…くんくんだぁ!」
J 「真紅のとは少し違うけど…もらってくれるか?」
雛「もちろんなの!JUMありがと!…でもこれどうしたの?」
J 「僕が作ったんだ。気に入ってもらえてよかったよ」
雛「作ったの!?JUMがひとりで?」
J 「うん」
雛「すごいの!JUMはまるで魔法使いみたいなの!」
J 「はははっ!魔法使いは言い過ぎだって!」
雛「でもほんとにすごいの!ヒナね、このくんくんずっと大事にするわ!」
J 「うん、そうしてもらえるとうれしいよ」


この時JUMがくれたくんくんは今でも大切にしてる。
私の大切な宝物…


J 「…それでさ、またこんな絵描いて見たんだけど見てくれるか?」
雛「どぉれ?…わぁー!すっごくかわいいの!」
J 「だろ?」
雛「うんうん!やっぱりJUMはすごいの!でも、ここをもう少しこうしたほうが…」
J 「ん?そうだな…そっちの方がいいかも!」
雛「でしょでしょ?」


小学生の頃は、こうしてよく描いた絵を見せてくれたりもした。
JUMの絵はいつも魅力的で、見るたびにわくわくした。

でも、私が帰るときにはいつも…

J 「このことは誰にも言っちゃダメだぞ」
雛「どうして?」
J 「男なのに裁縫や絵を描くのが趣味だって知られたら…からかわれるからな」
雛「うー…こんなに上手なのに…」
J 「いいか?二人の約束だからな」
雛「…わかったの!」


こうして二人だけの約束は増えていった。
それは、うれしくもあったけど、少し寂しくもあった。
だってこんなに上手なんだもん。みんなに見せたっていいのに…

…けど、中学校に入ってJUMは少し変わった。
私や真紅や他の女友達と、ほんの少しだけど距離をおくようになった。
そして、彼が私に絵を見せてくれることもなくなった。


JUMにその理由を聞いても「別に…」って答えるだけ。それじゃわかんないよ。


でも、それから数ヶ月後のあの日…その理由を知らされることになった…




(ザワザワ…)



巴「今年の文化祭の劇のプリンセスはうちのクラスの桑田由奈さんに決まりました」
巴「衣装は学年ごとで作ることになったの、デザインを…」



雛「いいなー由奈。ヒナもお姫様役やりたかったの…」
巴「フフ…仕方ないわよ。彼女は男子だけじゃなくて女子にも人気があるもの」
雛「それで、ドレスは誰が作るの?」
巴「それが問題なのよ…誰かお裁縫が上手な子がいればいいんだけど……それにデザインも…」
雛「それなら…」


 ―――このことは誰にも言っちゃダメだぞ


雛「!」
巴「ん?どうかしたの雛苺?」
雛「な、なんでもないの!じゃあまた明日なの巴!」
巴「あ、うん。また明日ね雛苺」



J 「(桑田さんに似合う衣装か…)」
J 「(僕だったらこんな風に…)」
J 「って何やってるんだ…勉強しなきゃ…」


そしてあの日…

銀「ねぇ雛苺、あれ見た?」
雛「あれって?」
銀「ほら掲示板のとこよ!みんな集まってるでしょ?」
雛「?……あっ!」

それはJUMの絵だった。小さい頃からいつも見せてもらってるんだもの。間違いない。
でも、どうして…?

銀「すごいわねぇあんな絵が描けるなんて。いったい誰かしら?…どうかしたのぉ?」
雛「う、ううん。それより早くしないと集会に遅れちゃうの!」
銀「?そうねぇ、それじゃ行きましょ」


(ザワザワ…)


体育館に着くと、そこはすでにあの絵の話で持ちきりだった。
いったい誰が書いたのか?男だろうか女だろうか?そんな話があちこちから聞こえてきた。
それと同時に、JUMの方をニヤニヤして見ている数人の男子の姿があった。

JUMはというと、俯いてぼんやりしていた。

そして、そのまま学年集会が始まった。
そこで梅岡先生があの絵はJUMが描いたって言った。素晴らしい才能だって。
私もそう思った。そしてみんなもそう思うと思った。



 ―――でも、それは違った。



周りから聞こえて来るのは嘲笑の声。
周りから浴びせられるのは奇異の眼差し。


中には本当に凄いって思った子もいるんだろうけど…そんな考えはこの空間を包む一つの意識にかき消されていた。


その時ようやくわかった。


どうしてJUMが私たちと距離を置くようになったか。
そして、どうしてJUMが私に絵を見せてくれなくなったか。


JUMの方を見た。顔が真っ青で血の気がない。視点も定まってない。
隣にいるベジータが何か話しかけてるけど聞こえてないみたい。



J 「う……ぐ……」

雛「…JUM!」



JUMはそのまま倒れて気を失った…
それから私と真紅でJUMを保健室に連れて行ったり、ベジータがJUMのことを笑った子達に殴りかかったりと大変だった。
集会は騒然となって、そのまま終わりになった。
JUMは目を覚ました後、そのまま早退した。




    …そして、次の日からJUMは学校に来なくなった




それから…JUMがいない毎日が始まった。
JUMがいなくても、周りの多くの子達はいつもと変わらない日常を送っている。

…でも、私は心にぽっかり穴が開いたみたい。他の…JUMと仲のよかったみんなもきっとそう。
あるべき場所にいるはずの人がいない。それがこんなに寂しいことだったなんて。


紅「今日でもう一週間ね…」
雛「JUM…」
巴「雛苺…ほら泣かないで?ね?」
銀「流石に心配ねぇ…」
薔「みんなで…会いに行ったら…?」
翠「でも中に入れてくれるですかね?」
蒼「うーん…少し難しいかもしれないけど…」
雪「行動しないことには何も始まりませんわ」
金「でも、この人数で押しかけるのはどうかしら…?」


みんなで話し合った結果、JUMのとこには一番付き合いの長い、巴と真紅、そして私の3人で行くことになった。
翠星石も行きたがってたけど、よけいにJUMを傷つけるかもしれない、って蒼星石が言ったらしぶしぶ納得してたの。

そして、その日の放課後…

(ガチャ…)

巴「おじゃまします」

の「はーい…あら!みんな…来てくれたの!」

紅「挨拶はいいわ、のり。それより、JUMの様子はどうなの?」

の「それがね…」

のりの話によると、
JUMはあれからずっと部屋にこもりっきりだってこと。
そして、ベジータや笹塚が心配して来たけど、一切話もせずに帰ってもらったってことだった。
重くて苦しい空気が流れる…

巴「そうですか…」
紅「かなり重症のようね…」
雛「JUM…」

の「みんな、せっかく来てくれたのにゴメンね…お姉ちゃんじゃ何にも出来なくて…」

紅「…いいのよのり。それじゃあ、今日のところは帰るとしましょうか…」
巴「そうね…仕方ないけど…帰ろっか雛苺」

雛「……や」
巴「雛苺?」
雛「…やなの!」
巴「雛苺!?ちょっと!」


雛「JUM!」

気がつくと私はJUMの部屋の前にいた。JUMに会いたい。会ってお話がしたい。ただそう思って。

雛「……あ」

でも、何を言えばいいんだろう。うまく言葉が出ない。

雛「JUM…元気?風邪とか引いてない?ヒナは元気なの」
J 「……」
雛「みんなも元気なの!早くJUMに会いたいって…」

…扉の向こうから返事はない。

紅「雛苺…」
雛「あ…真紅…」

気がつくと真紅が後ろにいた。首を横に振ってる。きっと今はそっとしておけって事なんだろう。

雛「う…でも…」
紅「今はまだ…JUMに私たちの声は届かないわ…だから……」
雛「……わかったの」

雛「JUM!ヒナまた来るからね!今度は一緒にお話しようね!」

最後にそう言って、真紅たちと帰ることにした。……その日結局JUMの声は聞けなかった。



…それから私は毎日JUMの家に行っている。
そして、JUMの部屋の前で今日一日あったことなんかを話している。
いつか…きっとまたJUMと笑って話せるようになる。そう信じて。

雛「あのね、JUM。今日は…」
|