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+++桜田ジュン(6/23AM11:52? 薔薇学園3-B教室前?)+++
ふと気がつくと僕は自分の教室の前に立っていた。
なんで僕はここに?たしか、僕は自分の席でノートをとっていたはずなのに……
僕は、自分がなんでここにいるのかさっぱりわからなかった。
どうやって外に出たのか全然覚えていない。
思い出そうとしても全く思い出せなかった。


携帯を取りだして時間を確認してみた。
だけど携帯の画面は消えていた。電源ボタンを押し続けても反応が無い。電池の残量はまだたっぷり残っていたはずなのにどうして……
僕は周りを見回した。校舎の中は不気味なほどにしんと静まり返っている。


そのときふと、なにか鉄のような生臭いにおいが僕の鼻をついた。
その臭いは教室の中から漂ってきた。一体中でなにが……。


僕は、中でなにが起こっているのか確かめるために戸に手をかけて、思いきり引き開けた。


そこにはいつものように机が並び、いつものようにクラスメイトが座っていた。


違うのは、座っているのが皆僕に関係のある少女たちであること。


そして……教室の床を一面血が覆っていることだった。
壁や天井にも、まるで赤いペンキをぶちまけたかのように血が飛び散っている。なんなんだこれは……


僕は、一瞬立ち尽くした後、慌てて一番近くの、真紅の席に目をやった。


そこにはいつものように真紅が座っていた。


でも、彼女には右腕が付いていなかった。
右腕があった所からは血が止めど無く流れ、床に滴り落ちている。


僕はすぐ後ろの机に突っ伏している翠星石の体を起こした。


翠星石の喉はざっくりと真一文字に裂けていて、そこから白い骨が見えていた。
そこから流れ出た血で、首から下は真っ赤に染まっていた。


僕はひっと叫んで後ずさった。それから頭の中が混乱したまま教室にいる彼女達を見回した。



蒼星石は首が半分ちぎれかけ、今にも床に落ちそうになっていた。



雛苺は頭をかち割られ、そこから脳みそが外にはみ出していた



金糸雀の頭が半分無くなっていた



柏葉の体がメッタ刺しにされ、穴だらけになっていた



雪華綺晶は右目が抉られて赤い空洞と化し、そこから血がドロドロと流れ出していた



要するに―――みんな死んでいた



僕は猛烈な吐き気に襲われ、その場で胃の中の物を全て戻した。
床に広がる血と僕の吐瀉物が交じり合い、においがさらに酷くなる。


一通り吐いた後、僕は薔薇水晶の、僕の恋人の席に目をやった。
一番初めに目が行ってもよかったのだが、なぜか今まで目が行かなかった。


彼女は自分の席に座っていた。見たところ外傷はなさそうだった。



―――ああよかった!薔薇水晶は無事だったんだ!―――



僕は彼女の側に駆けより、その体を抱き起こした。


そのとき見てしまった。彼女の胸の真ん中。ちょうど心臓のある部分に大きな穴があき、そこから血が垂れ流されているのを。



―――薔薇水晶!!薔薇水晶!!―――



僕は、何度も体を揺すり、頬を叩き、必死に彼女の名前を連呼した。
だけど彼女は答えてくれなかった。口を楕円形に開き、そこから舌をだらんと垂れ下げている。その目にはもうなにも写ってはいなかった。
薔薇水晶も、皆と同じように遠くに旅立っていた。


僕は冷たくなった彼女の体を抱きしめ、大声で泣き叫んだ。気が狂いそうだった。
自分の体の一番奥から声が絞り上げられるような感じがした。


そのときふと気が付いた。


真紅 翠星石 蒼星石 雛苺 金糸雀 雪華綺晶 柏葉巴 そして薔薇水晶。


ここにいるのは全員僕に縁のある少女達だ。


だったらおかしい、一人たりない。あいつがいない。


僕はもう一度教室を見回した。だけど何度見てもその姿は無かった。



ピチャリ……ピチャリ……



そのとき、なにかが血の海をこっちに向かって歩いてきた。そして、それは僕のすぐ後ろで止まった。


「ジュン……」


なにかが僕に声をかけた。この声は……まさか……恐る恐る振りかえるとそこには……



全身に返り血を浴び



手に持ったナイフから血を滴らせ



僕に向かって両手を広げ



顔に満面の笑みを浮かべた



僕の、もう一人の大切な人、水銀燈の姿が……



「これであなたは私だけのものよぉ♪」



僕の絶叫が真昼の校舎に響き渡った


――――――――――――


?「……ン……ュン……ジュン!!」
J「――――っ」


体に揺さぶりを感じて、僕はゆっくりと目を開いた。
誰かがそっと僕の肩に手を置いて、体を揺すっている。
僕は、まだ少し荒い自分の息に気付きながらも、その手を目で追って横を見た。


薔「大丈夫?すごくうなされてたけど、怖い夢でもみたの?」


薔薇水晶……薔薇水晶だ……間違いない薔薇水晶だ!!薔薇水晶が生きてる!!


僕は薔薇水晶の姿を見た途端、彼女にがばっと抱きつき、その胸に顔をうずめた。よかった。彼女は無事だったんだ。
そのときの僕は自分のことに精一杯だったから、薔薇水晶の微妙な変化に気付くことができなかった


薔「やだ……ジュン、離れて……」
J「えー、でもさあ……」


僕はもう少しこの温もりを、薔薇水晶が生きている証を感じていたかったから、その言葉に渋る様子を見せる。
いつもだったらこういうとき彼女は『仕方ないなぁ』って言いながら僕を抱きしめ返してくれる。だから今回もそうなると思っていた。
だけど、そうはならなかった。


薔「ちょっと!ジュンやめて!今はだめぇ!!」


薔薇水晶は顔を真っ赤にして僕を押し返そうとする。あれ……本気で嫌がってる?
疑問が頭を埋め尽くす。どうして? どうして薔薇水晶はこんなに嫌がってるんだろう?
いつもだったら嫌がるよりむしろ喜んでくれるんだけど……。


?「桜田ぁ~」


誰かが僕を呼んでいる。なんだよ今いいとこなのに。そう思いながらもその声がした方向に目を向けると……


梅「桜田ぁ~授業中にずいぶんと楽しそうなことをしてるんだなぁ」


あら?なんで梅岡が?なんでだっけ?……えーっと……あ、思い出した。たしか僕は四限目の授業を受けてたんだ。
そしたらなんだか急に眠くなってそのまま……教室を見回すと、壁にも天井にも血の跡はついてない。死んだはずの少女たちも全員無事。
あれは、夢だったのか。と、いうことは……


………あ!!


僕はいそいで薔薇水晶から離れた。でもすでに遅し。いまや教室中が僕たちをニヤニヤと見つめている。ああ……周囲の視線がいたいな……


男「うわ~授業中に大胆だなぁ」
蒼「いくら仲が良いからって、時と場所はわきまえてくれないかな」
雛「バカップル万歳なの~」
金「ふん……」
雪「うふふ……今くらい良いじゃないですか金糸雀さん」
金「それもそうかしら。ふふふ……」


冷やかしの声もそこら中から聞こえてくる。


薔「だからダメって言ったのに……」
J「いや、ゴメン。ちょっと寝ぼけてて……」
薔「それでもいきなり抱きつくなんて。恥ずかしいよぅ……」


必死に弁明するも効果が無い。良く見たら少し涙目になっている。う~ん、どうしよう、困ったなぁ。


J「どうしたら機嫌治してくれるんだよ」
薔「じゃあ頭なでなでして?」
J「ん?そんなんでいいのか?」
薔「うん♪それで許してあげる♪」
J「じゃあこっちこい」
薔「はーい♪」


近寄ってきた薔薇水晶の頭を撫でる。撫でているときの彼女はいつも気持ち良さそうな顔をしている。
薔薇水晶は髪を愛撫されるのが好きらしく、行為の際にはいつもせがんでくる。
しばらくの間撫でていると、満足したのか彼女は自分から離れた。


J「もういいのか?」
薔「うん♪ジュン、ありがとね♪」


薔薇水晶は幸せそうな顔で答えた。僕は恥ずかしさからその笑顔を直視することが出来ず、ぷいっと横を向いてしまった。


J「こ、こんなんでよければ何時でもやってやるよ」


こみ上げる恥ずかしさを堪えてそう呟いた。きっと今の僕の顔は赤く染まっているんだろう。


薔「ジュン……やっぱり大好きぃ♪」


薔薇水晶は僕に勢い良く抱きついた。僕は席から落ちそうになるも、なんとか堪えて彼女を受けとめた。


J「今抱きしめられるのはいやじゃなかったのか」
薔「嫌じゃないよ。自分からならいいの」
J「なんなんだよそれ。困った奴だなあ、薔薇水晶は。いつからそんなに我侭になったんだ?」
薔「ん?……それは……ジュンの所為……」
J「おいおい僕のせいかよ」


でもなぜか嫌な感じはしない。これも惚れた弱みってやつなのかな?


薔「そうだよ、私がこんなになったのもジュンのせいなの。だから……最後まで責任とってね♪」
J「最後まで?」
薔「うん、最後まで、ね?」


頬を染めて、小さな声で僕にささやく薔薇水晶。


薔薇水晶は皆に僕達の関係をばらしたあの日から僕に笑顔を見せることが増え、性格も明るくなったような気がする。
そして真紅達とも前よりも少しだけ仲良くなった。薔薇水晶をそうした責任をとれって言うのなら、僕はいくらでもとってやる。


J「……わかったよ」


もう一度、薔薇水晶をぎゅっと抱きしめる。抱きしめた体から、薔薇水晶の鼓動が早くなっていくのが伝わってくる。


そして、僕はその証として彼女の唇に……


真「いいかげんにするのだわああああああああああああ!!!!」


こん ばきぃ!!


J「んがっ!?」

薔「にゃ!!」

いきなり後ろから頭を殴られた。薔薇水晶も殴られたようだ。


薔「……頭痛が痛いよぉ……」


僕の方は手加減してくれたのか、軽く小突かれた程度だけど、薔薇水晶の方は本気で容赦なく殴られたらしい。
まだ頭を抱えて痛がっている。


真「どうやら貴方達はTPOという言葉を知らないようね」


薔薇水晶の頭をさすりながら後ろを振り返ると、そこには腕を組み、仁王立ちして僕達を睨みつける真紅の姿があった。


真「教室は貴方達の盛り場じゃないの。だからもう少し自重しなさい」
J「す、すみません」
薔「あいむそーりー」


僕達は真紅に一礼した。今の真紅からはなにかとてつもないオーラが漂っている。ここは逆らわない方がいいだろう。


真「そう思うんだったら少しは慎みなさい……正直不愉快なのだわ」


そう吐き捨てると真紅は自分の席に戻った。
でもなんではあんなに怒ってたんだろう?真紅は真面目だから、きっと僕達が授業の邪魔をしたのが嫌だったんだろう。うん、そうにちがいない。


周りからの視線もなにか良くないものになっていた。なにか、からかいの中に殺気のようなものも混じってきている。薔薇水晶も以外と人気があるんだな。


金「こ……てやるかしら」
雪「まあまあ、ここは我慢ですよ」
金「でもあれは久々にきちゃったのかしら」
雪「~ここじゃ物が壊れる~はやめてくださいよ。全部台無しになっちゃいますから」
金「でも雪華綺晶も手が震えているのかしら」
雪「……やっぱりわかっちゃいますか」


なんてことも聞こえてきた。うむ、真紅の言う通りだな。これからは少し慎むとしよう。少なくとも、皆の前では。


梅「えーと、授業を再会していいか?それじゃあこの騒動の責任をとって、笹塚、廊下に立ってろ」
笹「なんで!!」


諦めろ笹塚。それがお約束ってやつさ。


廊下へ向かう笹塚を一瞥して、僕は授業に戻った。周りの視線も次第に僕達から離れ黒板に戻っていった。
でも昼休みになったら冷やかされるんだろうな……そう考えると今から気が重くなる。
無事に昼飯、食えるのかなぁ……。


そのときの僕はこれからのことで頭がいっぱいで、あの夢のことは完全に忘れ去っていた。
だから僕は気付かなかった。あれがただの夢ではなかったということに……


―――――――――――――――


銀「はぁーっはぁーっはぁーっ」


目の前がぼやける。足がもつれる。頭の中がガンガンする。息も未だに整わない。体中にへばりついた汗が気持ち悪い。


今日はまるで真夏のように暑かった。灼熱の太陽が私の体を照りつける。
そんな中を私は家からここまで決して近くない距離を全力で走ってきた。
それに加えてここ最近の不摂生による体力の低下も重なり、今の私にはもう走るだけの力は残っていなかった。
今は壁に手をついて歩くのがやっとの状態だ。正直いつ倒れてもおかしくない。それでも私は歩く。全てを取り戻すために。


しばらく歩いていると、いつも通る交差点についた。ここまで来れば学校まで後少しだ。
だけど信号は赤、私は信号の近くで立ち止まった。


銀「うぷっ!!」


そのとき猛烈な吐き気に襲われた。しまった、油断した。信号に手をつき、口に手を当ててその場に膝をついた。
喉奥から何やらすっぱい物がこみ上げて来た。ヤバイ、口まで来てる。なんとかギリギリのところで我慢して、戻ってきた物をもう一度胃の中に戻した。
きっと今の私は日射病か熱中症でも引き起こしてるんだろう。でもここまで来て帰るわけにはいかない。
ふと見上げると信号が青に変わっていた。私は立ち上がってもう一度歩き出す。
少し歩くと学校が見えてきた。よし、後少しだ。私は朦朧とする意識の中で、重たい足を引き摺りながらも学校へと向かう。一歩づつ、でも確実に。
今、私を支えているのはあの女への憎しみ、そしてジュンへの思い。


『ジュンをもう一度この手に』


その思いが私を突き動かしていた。この思いがある限り、私は何度でも立ちあがる。
私から奪い取った場所で光を浴びているあの子から、その場所を取り戻す。
私はあるべき場所へと帰るんだ。そのためならこんなのは苦ではない。


キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン……


学校からチャイムの音が聞こえてくる。そういえば今何時なんだろう。
いや、そんなのはどうでもいいか。今一番大切なことは一秒でも早く薔薇水晶の元へと辿りつくことだ。
私はジュンと取り戻してみせる。絶対に。
決意を新たにし、私は再び歩き出した。


銀「薔薇……水晶……待っ……て……な……さい」


その呟きは誰の耳にも届くことなく、真昼の喧騒にかき消されていった。

続く

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