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今ではない昔、ここではない何処かに、
春の神様がいました。
その神様は雛苺といって、絵を描くのがとても好きでした。
雛苺が地面に花の絵を描くと、そこから沢山の花が咲き、
樹に葉っぱの絵を描くと、その樹は沢山の葉をつけ、
空に蝶々や蜜蜂の絵を描けば、お花畑を楽しそうに飛び回りました。

ある日、雛苺はお花畑でお昼寝をしているときに、ふと考えました。

(前の春にわたしが描いたお花や虫達は、どうしていなくなっちゃったんだろう?)

雛苺は生まれたばかりの神様で、春が終わるとすぐに深く眠ってしまいます。
だから、春の次にくる夏、秋、冬の神様の名前も知りませんでしたし、
それらの季節がどんなものかも知りませんでした。

(別の神様がけしちゃったのかな…
 お花畑も、森の樹も、こんなに綺麗なのに、消しちゃうなんてかわいそうなの)

きっと他の季節の神様達はいじわるで怖い人たちなんだろうと、
雛苺はそう思いました。



雛苺は、風車の上に止まっている、物知り風見鶏の所へ、
他の季節の神様の事を聞きに行きました。

「風見鶏さん、こんにちはなのー」

風見鶏は雛苺に気付くと、羽を広げて挨拶をしました。

「こんにちはかしら、雛苺。
 今日は少し、風が強いかしらー」

風見鶏は嬉しそうに、くるくる回っています。

「あのね、風見鶏さんに聞きたいことがあるの。
 私の他にいる季節の神様って何をしてるの?」

風見鶏は、少し驚いて雛苺に尋ねました。

「雛苺は、他の季節の神様にあったことがないのかしら?」

「うゆー、わたしは春が終わったら眠っちゃうから、
 他の神様にあえないのよー」

「そう、雛苺はまだ幼いから、他の季節に起きていられないのかしら。
 でもどうして、そんなこと聞くかしら?」



雛苺は風見鶏に話しました。
今年の春、起きてみると、去年の春にいたお花や虫がいなくなっていること。
それは多分他の季節の神様がいじわるをして消しているんじゃないかということ。
そしてできれば風見鶏から他の季節の神様にそれをやめるように言って欲しいということ。
雛苺の話を聞き終わると、風見鶏はゆらゆら揺れながら言いました。

「残念だけど、雛苺のお願いは聞けないかしら」

「うゆっ、どうしてなの?」

「雛苺は朝になると目を覚まして、夜になればベッドで眠るでしょう?
 生き物たちだって、いつまでも起きている事はできないかしら。
 生き物たちは、春に目が覚めて、夏に元気いっぱいに遊んで、
 秋になればみんなお家に帰って、冬になると眠ってしまうのかしら。」

風見鶏は、ゆらゆら揺れながら、雛苺に教えました。

雛苺は、風見鶏の言うことが少し分かった気がしました。
雛苺が、絵を描いて、生き物の目覚めを手伝っていたように。
他の季節の神様も、それぞれ生き物のお手伝いをしているのです。
雛苺が、生き物たちが大好きでいるように、
他の季節の神様も、生き物たちが大好きなのです。



「風見鶏さん、わたし、風見鶏さんの言っていることが分かったの。
 だれもいじわるなんかしてなかったなのね。
 わたしが眠ってしまったあとで、他の季節の神様に会ったら、
 わたしが謝っていたって伝えて欲しいの。」

「それぐらいこの物知り風見鶏にお任s…かしらー!」

そういいかけて風見鶏は、風で何処かへ飛ばされていってしまいました。
雛苺は風見鶏の飛んでいった方に向かって、もう一度お願いをしました。

やがて春が終わりに近づいて、夏の足音が聞こえます。
雛苺の役目もそろそろ終わりのようです。
雛苺はお花畑の真ん中に座って、空に向かって言いました。

「夏の神様、みんながケガしないように、みててあげてください。
 秋の神様、みんなが迷子にならないように、道を教えてあげてください。
 冬の神様、みんながよく眠れるように、素敵な歌を歌ってあげてください。
 わたしのお仕事はもうおしまいみたいなの。
 いつか、一緒に遊べたらいいな。
 それじゃあ、おやすみなさいなの。」

そういって雛苺は寝転がって、すやすやと寝息を立てました。
そして風に乗ってどこへともなく、流れていきました。



春の朝日に撫でられて、
夏の日差に駆け回り、
秋の夕日に影を伸ばし、
冬の優しさに眠る。
そうやって生き物たちは、順番に季節の神様に愛されています。
あなたも、私も、誰でも…

今ではない昔、ここではない何処か、子供の神様の物語


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