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白、私の嫌いな色。綺麗過ぎて自分の醜さが浮き彫りになってしまうから。

絆?そんなものは要らない。世界には私さえ存在していればそれでいい。

深夜、とある廃屋となった教会で金色の髪を煌かせながら戦う赤い影と桃色の影が戦いを舞っていた。

月夜に照らされた割れたステンドグラスが黒の世界に不気味な色彩を放つ。祭壇近くにある十字架は倒壊し、あたかも神の加護もあったものではない。

巨大な牛の頭に羊の足、不恰好なぐらいの剛腕、そして黒い蝙蝠の翼をしたいわゆる悪魔が今回の相手だった。

赤い影、真紅が闇夜をあやどるように魔力を乗せた花弁の吹雪を散らす。花弁はその形が歪んだかと思えばそれぞれが真紅の姿に映った。

撹乱された低俗な悪魔は我武者羅に攻撃を仕掛ける、次第に大振りな攻撃になり隙が生じたところを桃色の影、雛苺の茨にその体を絡め取られた。

鋭い棘がその筋骨隆々な体に刺さり、黒い血のような液体が垂れる。

身動きを封じられた悪魔はのたうち回りながら倒れた。すかさず真紅は跳躍し異形の悪魔へ魔力を帯びたステッキを突き刺す。

悪魔は最期の咆哮を上げて完全に沈黙した。屍は異臭を放つと共に忽ち腐食して黒い液体へと昇華する。

跡に残ったのは骨格を現す骨のみ…。


 
J「お疲れさん、何だか雛苺が増えたおかげで僕の出る幕が無くなったな。」


退魔士の中でも至高と呼ばれる『薔薇の退魔士』が二人も揃っているのだ。並大抵の魔物なら難なく討滅できるだろう。


 真紅「そうだけれども、だからと言って油断するわけには行かないのだわ。

    魔物の中には私達ですら手に負えない連中だっているのだから。」

 雛苺「うゅー…流石に神クラスになるとヒナでも駄目なの…」

 「神クラスね…ならば僕なんてどうかな?」


突然、少年の声が聞こえる。声がしたほうを見ると倒壊した十字架の上に漆黒のフード付きのコートを羽織った小柄な少年の姿があった。


 「やぁ、初めまして赤薔薇に桃薔薇、そして魔眼の大盗賊さん。」

 真紅「貴方…一体何者?」

 「僕?僕に名前なんてないよ、ああ、でも人間が付けた名前で言うなら…ベルゼブルだったかな?」

 真紅「べ、ベルゼブル!?」


よろしくと言って少年は微笑んだ。とてもこんな少年がベルゼブルとは思えない。

ベルゼブル、それは悪魔の中でもルシファーに次ぐかそれ以上の力を持った実力者だ。

それがどうしてこんな所に…?


 
J「何でお前みたいなのがこんな現世にいるんだよ…」

 ベル「う~ん、そうだね…探し物をしてるんだ。」


微笑を崩さずにベルゼブルは言った。それと同時に先ほどの悪魔とは比べ物にならない程の魔力が放たれる。

放たれた魔力は現世の空気と拮抗しあい教会の中で反響しながら空気を振るわせる。

桁が違う、今まで戦ってきた魔物達とは比べ物にすらならない。

魔力に当てられているだけで真紅達は辛かった、肌はヤスリで削られているかの如く痛く、鼓膜が破れそうなぐらいの耳鳴りがする、冷や汗が止めどなく溢れ出る。


 ベル「君達の仲間にさ、白薔薇の退魔士っているじゃない?その人って今何処にいるか知らないかな?」

 真紅「白…薔薇の退魔…士?どうして、貴方が…そんなことを…っ」


ベルゼブルの姿が十字架から消えた、かと思うと大盗賊であるジュンの目を以ってしても捉えることの出来ない速度で真紅に近づき彼女の首を絞める。

間近でベルゼブルの魔力に当てられているだけでも呼吸が辛いのに首を絞められているので真紅はまともに息ができなかった。


 ベル「質問してるのは僕だよ?脆い人間の首なんてこのまま握って引き千切るなんて雑作ないんだよ?」

 真紅「あ…くっ………」

 J「真紅!…クソ、真紅を離せぇ!!」


ジュンがその魔眼にありったけの魔力を注ぎ込み始めるとベルゼブルは掴み上げていた真紅を彼に向けて投げ捨てた。

弾丸のように素早く吹っ飛んできた真紅を避けるか受け止めるかの判断で迷っているうちに衝突し魔眼の発動に失敗する。

 ベル「危ない、危ない、確か君の魔眼は時を操るんだっけ?けれども生半可な抵抗はして欲しくないなぁ…。こっちとしても萎えるんだよね。」


ベルゼブルの背後から茨の大蛇が襲い掛かる、隙を伺っていた雛苺が遂に攻勢に出たのだ。

しかし大蛇はベルゼブルに喰らいつこうとした瞬間に彼が纏っていた魔力で強制的に分解されて掻き消されてしまう。

そして今度は、彼は雛苺に接近する、雛苺の表情には恐怖の色が表れていた。ベルゼブルは微笑んだまま彼女の腹部に膝蹴りを入れる。

凄まじい力だったので雛苺は口から血反吐を吐いて地面にぐったりと倒れてそのまま動かなくなった。


 ベル「弱いなぁ…所詮は人間か。ああ、一人だけ元人間だったね。」


圧倒的な力を見せ付けられ僕はもはや戦意を喪失していた。このままじゃ殺される。

嫌だ、僕にはまだ叶えたい願いがあるんだ。そのためにも…


 
J「こんな所で死ぬ訳にはいかないんだぁ!!」

脚部に魔力を注ぎ込む、足の骨が魔力を喰らい爆発的な脚力を生み出す。ベルゼブルに負けないぐらいの速度で僕は彼に殴りかかった。

顔面に向けて右の拳を突き出す、ベルゼブルは左腕でそれをいなし右腕から鋭く長い爪を伸ばし突きを繰り出す。

ジュンは突き出された右腕の手首の間接を曲げ力の入らなくなった右腕をベルゼブルの背中に持って行き、自らの足に絡めて拘束する。

そして背後から衝突したときに真紅からくすねていたステッキを後ろから奴の胸に突き刺す。


 ベル「調子に乗るなよ小童ぁぁぁぁああああああッ!!」


不意にベルゼブルの背中から爆発的な魔力が放たれそれは漆黒の蝙蝠の翼のようになる。ジュンは溜まらず吹き飛ばされてしまう。

教会の柱に叩きつけられたジュンが背をもたれている間にベルゼブルは飛翔し上空から一気にエリアルレイドをいれる。

ジュンの体はコンクリートの床にめり込み肋骨から不自然な音が鳴る。


 
J「ガハッ…」

 ベル「フー…フー…甘く見過ぎてたかもね。惜しいな、もう後数百年したら楽しい遊び相手になってかもしれないのに…。」


ベルゼブルは再び鋭い爪を伸ばしジュンの喉下に突き付ける。

もう少しでその首が刎ねられようとしたその時だった、割れたステンドグラスから何かが教会に舞い降りた。

漆黒の丈の長いコートに銀色の長髪、血の様に赤い瞳、中でも特に目を引いたのはその背中にあるものだった。


 ベル「漆黒の翼…ようやく見つけたよ。白薔薇…」

 「ふん、奇遇ねぇ。私も貴方を探してたのよぉ。」


女性だった、とても美しい、彼女はベルゼブルの魔力に当てられながらも全くたじろがない。

寧ろ背筋を伸ばして凛とした姿勢を取り堂々と奴と向き合っていた。

ベルゼブルの姿が消える、今までよりも速くその白薔薇と呼ばれた女性の背後に周り背中から鋭い爪を刺し貫く。

だがそれは質量を持った残像で既に其処に彼女はおらず上空から黒薔薇の刻印のされた西洋剣を振り下ろしていた。

両手の爪を交差させて斬撃を受け止め、弾き、振り向きざまに彼女に向かって斬りかかる。

バックステップでそれを回避した彼女は剣を両手で持って横薙ぎに振る、ベルゼブルもバックステップで避け再び間合いに近づき足払いをする。

黒い彼女は足払いを地面に向けて突き刺した剣で防御し自らの剣を足で蹴ってそのままの勢いで一回転し斜めに斬り払う。

予想外の流れるようなスピーディな彼女の攻撃に対応しきれなかったのかベルゼブルの胸から漆黒の血飛沫が闇夜の空気に混じって飛び散る。

とてつもなく早い攻撃の押収だった。目で追うのがやっとで次元の違いを思い知らされる。


 ベル「さ、流石だよ…『薔薇の退魔士』の中で第一席を名乗るだけのことはあるね…。」

 「遺言はそれだけ?」


無慈悲にも彼女は剣を振り下ろすが刃はコンクリートの床にぶつかり空しい金属音が響く。

いや、音はそれだけではない、何か人を不愉快にさせる嫌な音が鳴っていた。

上空を見てみる、其処にはなんととても巨大な蝿の姿があった。


 ベル「まさか人界で本当の姿を晒すことになるだなんて…この姿を見られた以上、君等には死んで貰う!!」

 「死ぬのは貴方だけよっ!!」


漆黒の翼を広げる、月の光が所々に射す教会の中に黒い羽根が舞う。それは幻想的な光景のように見えた。

一気に上空まで飛翔した彼女は猛然と蝿の王に立ち向かう。ベルゼブルは高速で羽ばたくその翼で広範囲の、彼の邪悪な魔力を乗せた衝撃波を周囲に放つ。

周囲の建物は崩れ、間近で直撃を食らった教会など跡形もなく崩れ始める。


 
J「ま、不味い…し…んく、雛…い、ちご……」


僕は悲鳴を上げる四肢を動かして気を失っている二人を抱えて崩れる教会を脱出した。

上空では黒の彼女が巨大なベルゼブルに取り付きその虫特有の丸く大きな目を剣を突き刺し視力を潰していた。

金切り声を上げて苦痛を訴えるベルゼブル。しかし容赦なく今度は羽を斬り奴を地面へ堕とす。

もはやベルゼブルは虫の息だった。あれ程の実力者が此処まで打ちのめされるなんて…。しかし流石に黒の彼女ももはや消耗しきっていた。


 「ハァ…ハァ…答えなさい、私の『呪』を解く方法を…」

 ベル「ブフー…ブフー…し、知らん…我がかけた『呪』では…ない…」

 「そう…貴方じゃないのね…なら…もういいわ。」


彼女は何の躊躇いもなく抵抗する力もないベルゼブルの体を滅多斬りにした。地獄で
No.2を誇った悪魔は無残にも人界で朽ち果てた。

ベルゼブルの屍からドス黒い怨念にも似た『神殺しの呪』が溢れ出た。やがてそれは一直線に彼女に向かう。

しかし、彼女に触れた瞬間、『呪』は水泡の如く消え去ってしまった。


 
J「き、君は一体…」


しかし彼女は答えようとはしない。


 真紅「…生きてたのね…貴方…っ」


何時の間にか目が覚めていた真紅が話しかける。真紅の声を聞いて彼女の表情は険しいものに変わった。


 「あらぁ、真紅じゃないのぉ…相変わらず弱いのねぇ。」

 真紅「貴女こそ…周りのことを考えずに戦う癖は相変わらずなのね、水銀燈。」


水銀燈と呼ばれた彼女は剣を鞘にしまい、背中の漆黒の翼も何時の間にか消えていた。

どうやら二人とも古くからの知り合いのようだ…余り仲は良さそうではないが。


 銀「馬鹿馬鹿しいわぁ、討滅してあげるんだからこれぐらいの被害は当然でしょぉ。」

 真紅「そのための空間発生装置じゃないの。貴女はいつもあれを故意に使わない…。」


何時しか二人の会話は口論に繋がっていた。しかし暫くして流石に深手を負った真紅はもう反論する気力も尽きてきていた。


 銀「まぁ精々養生なさぁい。貴女は弱いんだから体調を万全にしないとすぐにやれるわよぉ?」

 真紅「五月蝿いのだわ…貴女こそ、無茶なことはしないことね。」


やがて水銀燈は空間術を使ってその場から霞の如く消えた。残された僕と真紅には敗北感だけが残された。

もっと…強くならないと、焦りにも似た願望は行き場もわからなく空回りし続ける。


全身が引き裂かれるような痛みに襲われ私は地面に蹲っている。

これが私にかけられた『呪』、私の命をゆっくりと喰らいながらどんどん大きくなって行く。

それと引き換えに私には他の退魔士達よりも強大な力が与えられているが…。


 銀「冗談、じゃないわ…私は…こんな力いらなかった。私はただ…」


生きたい。普通の女の子として、制服とかを着て学校に通って友と笑い合って語り合いたい。

しかしそんな願いを嘲笑うかのように病魔の痛みはますます強くなる。

必ず『呪』を解いて生きてやる…。憎悪の双眸で夜空を睨みながら何度も、何度も心の中で呟いた。

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