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ジュンが、東京にいって、大分たったわ。
講義をこなしたり、友達を遊ぶこともできるけれど、
私は相変わらず、ジュンのいない生活に、慣れないわ。
私一人では、紅茶もうまく淹れられない。
電話をかけようと思ったけれど、駄目なの。
電話だけでは、私は、満足できない。
それに泣いてしまって、ジュンに迷惑をかけてしまうから。
でも、私は、ジュンに会いたい。
私の名を呼んでもらいたい。
ジュンも同じ気持ちなのかしら?
今、ゴールデンウィークにジュンに会いに行くか迷っているわ。
ジュンの迷惑になりたくないという気持ち。
それでも、私はジュンに会いたいという気持ち。
どちらも、今の私の気持ち。
………ほんとに、どうすればいいのかしら?


水銀燈は、ちょくちょく紅茶を飲みにくるようになった。
水銀燈の話によると、小さいころからコッチに住んでいて、
今、彼女は小さな会社の事務職をしてるらしい。
もっと、外に出る仕事かなと思ってたので意外だった。
あとは、ヤクルトをよくもって来てくれる。
僕の冷蔵庫の中には、彼女からもらったヤクルトが入ってる。
……実は、ヤクルトレディとかないよな。
まぁ、あんな美人が来たら、喜んで買う奴が多いだろうけど。
僕は僕で、ようやくこの生活にも、真紅のいない生活にもなれてきたようだ。
真紅が、電話をかけてくれないのがありがたい。
まだ、声を聞くと、帰りたくなるだろうし。
姉ちゃんの心配性は相変わらずで、
毎日のように電話をかけてくる。
水銀燈には、「あらぁ、それはいいお姉さんねぇ」って、
笑われそうなので、いってないけど。

銀「ジュン、いるぅ?」
水銀燈の声とノックの音が聞こえた。
ジ「はいはい。」
銀「紅茶、いれてちょうだぁい」
ジ「うん」
僕はいつもどおり紅茶を淹れる。
ジ「はい。どうぞ。」
銀「ふふっ、ありがとぉ」
なんだか、いつもより水銀燈が機嫌がよさそうに見える。
ジ「なにか、いいことあったのか?」
銀「あ、わかっちゃったぁ?
  5月中旬にねぇ、お父様と会えるのよぉ」
ジ「水銀燈のオヤジさんって、
  世界中飛び回る仕事でもしてるのか?」
銀「まぁねぇ。服飾デザイナーをやってるわぁ。
  小さいころは、そこまで忙しくもなかったんだけどねぇ」
ジ「へぇ、名前は?」
銀「ローゼンっていうのよぉ」
ジ「…あのローゼンさんかぁ………そりゃ忙しいわけだ。」
服飾を学んでるやつなら知らない人はいないだろうって有名人だ。
僕にとって、雲の上の人だな。

ジ「僕の両親も、世界中飛び回ってるよ。
  まぁ、うちのは、しがない貿易商だけど」
銀「そうなんだ……。
  私といっしょなんだ。
  ねぇ、やっぱり親がいないと寂しいわよね?」
水銀燈が、じっとこっちを見つめてくる。
ジ「……まぁな。けど、慣れた。
  水銀燈が再来週会えるように、
  二度と会えないというわけでもないしな」
日常生活では、そんなに寂しさは感じない。
ふとした時に感じる寂しさはあるけれど。
銀「……ねぇ、ジュン?
  もしかして、小さいころ、ご両親がよく紅茶を淹れてくれたの?」
ジ「…うん。その通りだけど。
  ………なんでわかったの?」
銀「なぁんとなくよぉ………。
  私達、似たもの同士だからわかるのよねぇ」
彼女は、自嘲するような笑みを浮かべた。
ジ「……僕が今まで口に入れたもので一番おいしいって思うのは、
  小さいこと飲んだ紅茶でさ。
  またアレを飲みたいって色々試してるんだけど、
  なかなかうまくはいかないよ」
銀「そう………また、その紅茶が飲めるといいわね。」
ジ「ああ。」
銀「紅茶おいしかったわぁ。ありがとう、ジュン。
  また飲ませてねぇ?」
ジ「うん」
僕は、カップに残った紅茶を飲み干した。
少しうらやましいかな、僕はそう思った。

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