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『笑ってはいけないアリスゲーム(2)』

あらすじ
 ゲームで完敗した僕、蒼星石と翠星石、水銀燈、真紅の4人はその1週間後
に彼女の身内がやっている温泉旅館に招待される。
 でも、それは薔薇水晶が丹精こめて仕掛けた僕らへの罰ゲームだった。
 ルールは駅に着いてから彼女の待つ旅館の部屋まで何があっても絶対に
笑ってはいけないというもの。
 笑ってしまったら、きついハリセンの一撃が待っている。
 笑ってたまるかと思うのだけど……本家『ガキの使い』並に強烈な仕掛けや
笑いの刺客が容赦なく僕らに襲い掛かる。
 果たして、これ以上笑わずに、旅館へたどり着けるのか――

 なお、実在の地名、人名、番組名がもろに出てくるが、当然このネタとは
現実には何の関連が無いことをご承知を。


「で、迎えのハイヤーはどこなの?」
 駅前のバス乗り場らしき広場を見渡す真紅。
 そこにはバスが一台とタクシーが数台と他の車が数台……
 もちろん、罰ゲーム執行部隊のワゴンも停まっていて、常時僕らの監視を行っているわけだが――
「あれじゃなぁい?」
 水銀燈がふとある車の一台を指差した。
 黒のリンカーン。
「まさか。あんな超高級車でお出迎えですか?」
 翠星石が訝しげな目でそのリンカーンを眺めていると、助手席のドアが開いて誰かが降りてくる。

「諸君、待っていたぞ。薔薇嬢の旅館に案内するから乗りたまえ」
 降りてきたのはベジータだった。
 さわやかな笑顔でこちらに来るように手を上げて合図しているのだが……。

 M字禿の額には大きく「肉」と書かれた文字が。

「な、なんですか!ぷっ」
「ぷぷっ!ひ、額……」
 彼を目にした途端思い切り吹き出す翠星石と真紅。さらに、水銀燈も笑いをこらえきれず腹を抱えていた。
 僕も笑いたくて仕方がないのだが、この場は何とか抑えようとする。
 が……表情には思い切り出ていたらしかった。

『水銀燈、真紅、翠星石、蒼星石、アウト……』

 スパーン! スパーン! スパーン! スパーン!

 お仕置の宣告が流れるとともに、例のごとく男達に取り押さえられハリセンが全員の頭に振り下ろされる。
 手加減とかいうものは一切無い。とにかく力いっぱいにやってくれているので本当に痛い。
「もう、ダメ……。とんでもなさすぎるわ」
「ベジータ、おでこに変なものが書かれているですぅ」
「というかぁ、何考えてるの」
 だが、当の本人は彼女らの抗議なぞ気にしない……というか、聞こえていない様子だった。もちろん額の文字の事なんかも気にしている様子が無い。
「はっはっはっ、早くそんなところでぐずぐずせず乗りたまえ。出発するぞ」
 とにかく僕らを急かそうとするベジータ。

 それと同時にバス乗り場の方に白のワンボックスカーが物凄い勢いで進入してきたかと思うと、
ハイヤーに横付けする形で停まる。危うく車のそばに立っていたベジータをはねそうになる。
「貴様、どこ見て運転しているのだ!」
 逆上したベジータがそのワンボックスカーの助手席に詰め寄る。
 すると、その車の後部の引き戸が勢いよく開けられて――

「ものすごい変態ですっ!」
 見事にハモった声ともに車から出てきたのは、ブリーフ一枚の屈強そうな男が3人。
 たくましい筋肉質でさながらボディービルダーのように見えたが――

 そのブリーフには象とゴリラとライオンの絵がプリントされていたりする。

「何なのよぉ、一体」
「勘弁して欲しいのだわ」
 笑いのあまり顔をこわばらせている真紅と水銀燈。

『水銀燈、真紅、アウト……』
 お約束のごとくハリセンが二人の頭に振り下ろされる。

「何ですか?おぞましすぎてたまんねえです」
「本当だね」
 僕と翠星石は目の前の不気味な男達から思わず目をそらそうとする。

「な、何者だ、貴様ら!」
 男達にうろたえの色を隠しきれていないベジータ。
「僕達は練馬変態クラブの者です。あなたがベジータさんですね?君も入会しませんか?」
「確かに俺はベジータだ。だが、断る。貴様らのような下賎で下劣な集まりに誰が入会するか!」
 練馬変態クラブと称する男達の勧誘に、必死になって断りを入れるベジータ。
「だが、会長があなた様をお待ちなのです!」
「おっ!会長のお出ましです!」
「さあさあ是非!」
 急に男達は中腰になると、ワンボックスカーの方へ手を伸ばし、お出迎えをするポーズをとる。
 そして車からゆっくりと出てきたのは。

「やあ、ベジータ。君も早く来たまえよ」

 アナコンダのプリント付きのブリーフ一枚だけの梅岡。

 強烈過ぎる!もうダメ!
 僕は思い切り笑ってしまう。
 ていうか、会長が梅岡って時点でやばいよ。

『蒼星石、アウト……』
 案の定、後頭部にハリセンのきつい一撃が響く。
 痛みをこらえながらも横を見ると完全にひいてしまっている翠星石。
「もう、メチャクチャ過ぎるです。お馬鹿水晶」
「……というか、こんなのよく仕掛けるものだね、彼女も」
「あの子の考えていることが本当に分からないわ」
「だから、怖いのよ。かなり気合を入れて私たちを笑かそうとしているわねぇ」
 ため息をつきながらも僕らはただ目の前の光景から目をそらそうとするしかなかった。
 これ以上笑うのも嫌だし、何といっても周囲の人に彼らと関わりがあるなんて思われるなんて
もっと嫌だったのだ。


 そんな僕らをよそに、目の前ではベジータと梅岡率いる練馬変態クラブとの攻防が繰り広げられていた。
「ベジータ、君にはこの虎のブリーフを進呈しよう」
「い、嫌だ!誰がそんなもの穿くか!」
「そして、僕との体での語らいを……」
「断じて断る!」
 真っ青な顔で必死に梅岡に抵抗するベジータ。
「おお、あなたは虎!」
「五人合わせて花のアニマルズができるではない」
「か!」
 その横で三人の男達は揃って手を叩き、ベジータに手を伸ばすポーズを取っている。
「君には副会長になってもらおう。そうすれば我がクラブも安泰だ。とにかく来たまえ」
「絶対嫌だ!」
 ついに涙目になってしまうベジータ。ここまでくると哀れにさえ思えてくる。
「嫌よ嫌よも好きのうち!」
 ついに梅岡と変態クラブの男達にがっちりと体を捕まれて、無理矢理車に押し込まれるバジータ。
 助けてくれと言わんばかりに僕らの方に右手を懸命に伸ばしているが、当然無視する。
「これからが本当の地獄だ……」
 そんな彼のうめき声とともに、ワンボックスカーのドアは乱暴に閉められ、即座に猛スピードで駅前を後にしていった。


「やれやれ……」
「可哀相に」
「どうなることやら。まあ、こっちの知ったことじゃないけどねぇ」
「まったくです。で、あいつがいない今、誰が旅館まで案内してくれるですか?」
 ふと、ハイヤーの方に目をやる。
 すると、左側の運転席の窓が開いて、そこにはごく普通の人のよさそうな中年の男性がこち
らを見ている。
「嬢ちゃんら。とにかく××旅館の特別招待者だね」
「ええ、そうですけど」
「今から案内するから乗りなよ」
 運転手はそう言って、車から降りると中央と後部座席のドアを開けてくれた。


「わざわざすみません。で、もう一人はなんか連れて行かれたようですけど」
 僕はふと思いついた疑問を口にする。
「気にしなくてええよ。さあさあ乗って、乗って」
 運転手はなんら気に掛ける様子も無く、僕らに車に乗るように促す。
 車は6人乗りで、僕らは真ん中の座席と後部座席に二人に分かれて乗る。
「とにかく早く旅館にたどり着きたいわぁ」
「まったくだわ。これ以上はつきあいきれないわ」
 後部座席に座った水銀燈と真紅が愚痴をこぼしていた。
 即座に車はゆっくりと旅館に向けて走り出す。監視のワンボックスカーもその後に張り付く
ようにして付いてきた。
「しかし……この力の入れようはこれだけでは到底終わりそうにないわねぇ」
 窓の外の駅前のラプラスの看板を目にしながら、水銀燈がぼそりと呟いた。
                              
                                ―to be continued―

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