※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。


時は第二次世界大戦前夜、彼の悪名高い日独伊三国同盟締結前。
当時、日本海軍は其の誕生が英国海軍を手本にした事もあり、親英的な派閥が大多数を占めていた。
この状況を鑑み、英国と敵対関係に会ったドイツは、敵戦力の分断の為、
ある極秘作戦を発動する事を決定する。
これが、半世紀の時を経て、今尚其の忌み名を轟かす、
『日本海軍メイドさん事件』の幕開けであった!!!
作戦の発動とともに、ドイツ滞在中の若い日本海軍将校たちには、それぞれ小奇麗な屋敷与えられ、
それぞれの屋敷には、現地妻とも言うべき可憐なメイド少女達が割り当てられていった。
若い海軍将校達はその手練手管に身も心も骨抜きにされ、次々と親ドイツ派へとニャンゴロしていく!
ところが其の中でただ一人、度重なる誘惑攻撃にも惑わされず、黙々と我が道を行く若き海軍将校がいた。
彼こそが、我等が期待のエース櫻田淳(秋山淳ではない)海軍中尉である!!
それが彼生来の鈍ちゃんに因るものか、はたまた其の鋭利な頭脳に起因するものか、
それともただのインポだったのかは分からない。
だが、事態を重く見たドイツ当局は、彼に対抗する為、特別の部隊を持って応じる事を決定した。
我々の目からすれば『えー、そんなん一人くらいいいじゃん』と思うかも知れないが、
侮る勿れ。蟻の穴から堤防だって決壊するのである。
油断大敵毛がボウボウ、彼等は変な所で完璧主義者なのだ。
たちまちナチの大物ローゼンベルクの号令一下、全ドイツから見目麗しく
また、彼の性癖がどのようなモノであっても対抗できるように、様々な性格の乙女たちが
あつめられ、一ヶ月の訓練を経た後、其の中から最も適任と思われる七名が選び出された!
彼女達が、『特別選抜日本海軍将校篭絡特殊部隊:薔薇部隊』通称、『ローゼンメイデン』であった!!!
(本来は八名だったのだが、ローゼンベルクの「デコはいらんのだよ、デコは。」の一言で一人弾かれた。
 『かしらーーーーーーー!』
 ローゼン閣下はデコがお嫌いであらせられるのだ!)



政治的な思惑に翻弄されながらも、それぞれの思いを胸に任務に就く薔薇乙女達。
一方、彼の故国では、幼い頃交わした約束を信じ、健気に帰りを待つ幼馴染みの姿があった。
揺れる櫻田中尉の胸中。
運命の糸が絡み合う中で、彼等はそこに、何を見るのか。
美しくも悲しい乙女達の戦いが、今、始まる。






それから暫く、月日は流れて……

其の日、私は朝からうかれていた。
御飯を食べていてもソワソワしてしまっておちつかないし、
両親もそんな私に苦笑ぎみだ。
(はしたないぞ。)と自分に言い聞かせてもみるが、正直仕方ないとおもう。
だって、今日はひさしぶりに兄が帰ってくるのだから。

『ダイジ ナ ハナシ アリ  アス カエル』

兄からそんな電報が来たのは昨日のことだった。
兄はこの櫻田家の長男である。櫻田家は900年の歴史をもち、この辺りでは一番の旧家だ。
維新で多少おとろえたとは言え、まだそれなりの格式を保ち、当然躾もきびしい。
私もずいぶんきびしく育てられたものだ。
その次期当主たる兄は、陸軍士官学校を首席で卒業、24歳の若さにして中尉となり、
帝国の派遣部隊の一員として欧州列強の中で一、二の実力を争う独逸に派遣されている。
今まではいそがしかったのだが、なぜか急に上官の許可が下りて帰ってこられる事になったらしい。
「ただいま。」
なつかしい声が耳を打った。
うれしさの余り飛び上がり、誰よりも先に駆けつける。
幾分日焼けした兄がそこに立っていた。



「お!雪華綺晶じゃないか。」

(兄さま!!)

破顔する兄に飛びつこうとした私は、そこではたと足を止めた。
兄の後ろに誰か立っている。
「あ、あの……。初めまして。」
おずおずと進み出た人影はそう言ってペコンと頭を下げた。
透き通るように白い肌と艶やかな銀髪、そして紅い瞳。
黒い衣を纏い、絵の名から抜け出して来たように幻想的な雰囲気を携えた少女が、そこに立っていた。
――――――――――――――――――――――――――――――

『……!』
『……から……。』
ふすまを隔てた隣りの部屋で兄と父、そして先ほどの来客が何やら話している。
よく聞こえないので、すぐそばまで行って聞き耳を立ててみるとしよう。
「ですから父上、彼女の事は……」
「嫁入り前の娘を引きつれて歩きまわるなど言語道断!そんな事で次期当主が務まると思うか!」
「ならば雪華綺晶に婿をむかえて後を継がせればよいでしょう?」
「バカ者!ふざけるな!そんな事ができるか!」
父が怒鳴っている。



そう、『そんな事はできない』。私は養女で、この家の血を引いていないのだ。
この家にひろわれる前の事はよく覚えていない。
この家の子供は兄だけで、私が養女として育てられたのは……
つまり、まあ、そういうコトなのだ。

「本人にも聞いてみたらどうでしょう?……なあ、雪華綺晶?」
突然ふすまが開き、顔をのぞかせた兄が、こちらを見てニヤリと笑った。

……うぅ…。私の行動パターンはお見通しですか、兄上。

盗み聞きがバレたきまり悪さをごまかすために、プイと立ち上がり兄の膝の上にすわる。
そしてあらためて隣りに座っている不埓なる闖入者を見上げた。
兄はこのヒトのどこがよいのだろう?
兄は優秀な人間ではあるが、まるきりの鈍ちゃんである。
私の魅力にも気づかない位だ。
同じフトンにもぐりこんでも反応ゼロだし、甘えて寄りかかってもウンともスンとも言わない。
それなのに。
この女、どうやって兄をたぶらかしたのか知ら?
もしかしたら、何かあやしげな薬でも使ったのかもしれない。

――おのれ、私をさしおいて小娘め、絶っっっ体に許さんぞ!!!
歯ぎしりしながらにらみつけると、
私の頭をなでようとした敵はあわてて手を引っこめた。




――――――――――――――――――――――――――――――
「はあ……。親父殿もあんなに怒らんでもいいじゃないか……。」
数時間後。
こってりしぼれれた青年中尉は縁側で涼みながらグチっていた。
そして膝の上に丸くなったネコに話しかける。
「なあ、雪華綺晶。」
「ニャ~~~。」
そう、彼女の名前は『雪華綺晶』。
彼女はネコである。

|