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テーブルの上に次々と料理が並ぶ。
大根の味噌汁。焼き鮭。納豆。奈良漬に、白米のご飯。
「さ、さっさと食べやがれです」
「いただきます」
ジュンは手を合わせ、箸で鮭をほぐして食べる。
「この鮭おいしいねえ。北海道産?」
「あほですか。それは農協で298円の安物ノルウエー産ですぅ」
「ふーん」
鼻で返事をしながら、ジュンは味噌汁をズズズと飲む。
「コラ!音を立てながら飲むなです!」
箸をジュンの顔の前に持ってきて注意する。
「ごめん」
謝りながら、箸で奈良漬の器をたぐり寄せる。
「コラ!寄せ箸は行儀が悪いですぅ!」
「いちいちうるさいなあ・・・」
「あほですか!いくら日本の食事でも最低限のマナーがあるです!ジュンが他人の家でメシ
食うようになって、恥ずかしくなくするのが、姉としての務めです!」
「ごめん。翠星石姉ちゃん」
「わかったならさっさと食うです」
翠星石は静かに味噌汁を飲んだ。
「ジュン」
「なに?」
「ほっぺに米粒がついてやがるですぅ。なんでお前は昔からこうなのでしょう」
翠星石はそういいながら、ジュンの頬と口元についた米粒を指で一つ一つ回収しながら、
自分の口元へ運ぶ。
「だらしない弟でごめんな」
「それがわかったならさっさと洗い物するですぅ!こっちはジュンの分まで弁当つくってやったんですから!」
大きいテーブルの隅には大きさは違えど、同じおかずで同じ色の弁当箱が二つ。
同じ色だが少し形が違う箸が二膳と、同じバンダナが二つずつ。
「ねえ翠星石姉ちゃん。そろそろ違う箸買わない?」
「めんどくさいから嫌です」
「そう?・・・で、なんで僕のだけ、鮭の身がまばらにご飯の上に乗ってるワケ?なんか絵でも描こうとしたの」
白いご飯の上には、いびつな○のような記号が。
「つべこべいわずさっさとかたづけるですぅ!」
翠星石はジュンの尻に蹴りを入れると、手早く弁当をバンダナで包んだ。
「翠星石は先に行くです!弟と一緒に登校すると、また水銀燈にブラコン呼ばわりされるですから!」
「あ、そう?僕は別にかまわないんだけどな。シスコンでも」
「/////」
ジュンの脚にしなりのあるローキックを放って、翠星石は家を出た。

「桜田ー!お前はまた翠星石先輩の手作り弁当かあー!」
べジータが頭を抱えて苦悩する。
「いいだろ。別に」
ジュンは弁当を広げていく。その手をべジータに止められた。
「おい桜田!なんだこれは!」
べジータが指摘したのは白米の上に散らばったさけの残骸。
「鮭のほぐし身だろ」
「お前はバカかー!これはあきらかにハートマークだった痕跡だろお!」
「でも蓋閉める前からこんなだったぜ?」
「だ か ら!」
べジータがジュンの肩をバンバンと叩く。
「翠星石先輩はなあ!ついついハートマークを作ったんだけど、やっぱ恥ずかしくなってグチャグチャにしたんだよ! なんでそれがわからないいい!?」
「・・・そうなのか?コレ?」
弁当とべジータを交互に見る。
「待て桜田!なぜお前の箸は、びんちょなんだ?」
「ああこれ?なんか翠星石姉ちゃんがなんか同じ色の箸買ってきてわかりづらいんだよな。たまに間違えるし」
「桜田~。なんでおまえはこうも羨ましい生活おくってるんだ?一人暮らしで夕飯はカップめんの俺様に
少しはおこぼれくれたっていいじゃないか・・・そうだ、こんど晩飯でもいただきに・・・」
「だめだ。わかるだろ?翠星石姉ちゃんは機嫌が悪いと包丁飛んでくるんだぜ?」
「う・・・そうだったな。あれは本当の地獄だった。服ごと壁に縫い付けられたのは」
「わかったら、パンでも食ってろよ」

考えてみた。
翠星石姉ちゃんと僕。
毒舌で腹黒だけど、美人だし、料理は上手いし、世話も焼いてくれるし、邪険に扱わない。
悪戯で風呂場や寝床に侵入してくるのは考えものだが。
皆には言ってないが、実の姉弟ではない。
従姉弟ではあるけど。
だから、望めば結婚もできるが・・・。

「あー・・・イテテ」
「なにやってるですか?」
「んー、なんか耳クソが取れなくて・・・」
「しゃーねーですぅ」
翠星石はジュンの隣で正座した。
「あ、取ってくれんの」
ジュンは翠星石に耳を向けるように座る。
「あほですか!せっかく人が膝枕して、耳をホジホジしてやろうってのに。ホレ、さっさとここへなおれです」
言われるままにジュンは翠星石の膝に頭を乗せる。横から乗せてるので、少し座りが悪く、もぞもぞと動いた。
「ちょ、くすぐったいです」
やっとジュンの頭が落ち着いた。
家の中とはいえ、翠星石は、ワイシャツにスカートという格好だった。
上下ユニクロな部屋着は許せないらしく、平日は風呂に入るまで、ブレザーを脱いだだけの格好となる。
「はやく取ってくれよ。さっきから耳の中がガサガサいっててさ」
「しゃーねー奴ですぅ」
翠星石は優しい手つきでジュンの耳を掃除する。
耳垢が次々とちり紙の上に乗せられていく。
スカートの布を挟んで、ジュンは翠星石の温もりを感じていた。
「ねえ翠星石姉ちゃん」
「なんですか?」
「翠星石姉ちゃんの脚ってさ、スベスベしてて、いいね」
「当たり前です。翠星石は超絶美人なのです」
耳掻きの後ろのポンポンで耳の穴をガサガサする。
「んで、翠星石姉ちゃんはなんで彼氏つくらないの?」
翠星石は鼻で笑った。
「翠星石は、ジュンが一人前になるまで彼氏なんかいらないですぅ」
「でもそれじゃ、ずっと処女のまんまだね。僕ヘタレだし。なんなら、僕が翠星石姉ちゃんの彼氏に・・・」
ジュンがそこまで言ったところで、翠星石は急に立ち上がった。
ジュンの頭は床に叩きつけられる。
「バーロー!なにいってやがるですか!このませがきが!」
「いててて・・・・」
ジュンは頭をさする。

(来るときが来たら、翠星石が好きって言ってやるです。それが姉として・・・。
ううん、ジュンを先に好きになったのは、翠星石ですから・・・)
『バーロー!』 ~完~

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