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 「ようこそお越しくださいました。ささ、こちらです」

ばっちりセ●ムしてます的な電動扉の向こうに入り込んだアリスこと雪華綺晶を迎えたのは、
上品そうな初老の女性だった。

 「本日はお嬢様の為にわざわざご足労を頂き、誠にありがとうございます。お礼を申し上げます」
雪「は、はい…」

先を歩く老婆と共に、敷地の向こうに見える邸宅を目指す雪華綺晶。
なんだか、方便を使ってこの優しそうなお婆さんを騙したのが心苦しくなってしまった彼女である。

 「私めは当家の家事手伝いをさせて頂いております、コリンヌ・フォッセーと申します」
雪「あ、私は雪華綺晶ですわ」
コ「雪華綺晶さま。差し支えなければお聞きしたいのですが、お嬢様とはどうしたきっかけでお友達になられたのでしょうか」
雪「お昼をご一緒したんですの」
コ「そうでございましたか…」

そうこう話しているうちに、二人は庭園へ入り、綺麗に手入れされた芝の上を進み始めた。

コ「実のところ、お嬢様を初めてご覧になったときのご印象はどういったものでございましたか?」

突然にコリンヌから聞かれた雪華綺晶は、一瞬当惑してしまう。

雪「え、えっと…」
コ「ふふふ、流石にカラスを連れた異形の少女、それも中々打ち解けない性格のお嬢様には驚かれたのではありませんか?」
雪「は、はい…実はそうでしたわ」
コ「何も恐縮されることはございません。他の方々には、それが自然な反応でしょう」
雪「…」
コ「恐らくご推察されているとは思いますが、お嬢様は今まで孤独な時を過ごされてきました。
  生まれつきのアルピノ、そしてカラスと会話が出来るという奇異な能力…。
  周囲の方々には理解されがたいお嬢様には、親しいお友達など出来ようはずもございませんでした」

カラスと話せる、という事に驚く以上に、雪華綺晶は水銀燈の孤独な過去を思って胸が痛んだ。

雪「…」
コ「加えて私の主ご夫婦…お嬢様のご両親は、手がけていらっしゃる仕事が忙しく、お嬢様の小さい頃からあちら
  こちらを走り回っていらっしゃいます。とてもお嬢様に深い愛情をお与えになる時間など取れようもありませんでした。
  そんな内向的なお嬢様の…唯一の友と言えるものが、ご存知でしょう。カラスなのです」
雪「カラスが…友達…」
コ「まだお嬢様が小学生の頃です。学校からお戻りになったお嬢様が、怪我をしたカラスを腕に抱いておられました。
  私は元の場所にお戻しになるよう言ったのですが、お嬢様はしばらく部屋に閉じこもられ、一心不乱にカラスの
  看病をなされておられました。慣れない手つきでカラスの羽に赤チンをお塗りになられるお嬢様のお顔といったら…
  親しい私にも見せる事が無いような、必死、それでいて慈愛に溢れる表情でございました…」
雪「…」
コ「それからでございます。お嬢様がカラスと会話が出来るようになったのは…。
  そのカラスにメイメイとお名付けになったお嬢様は、メイメイの仲間のカラス達とも仲良くなっていきました。
  しかしそれで、ますますお嬢様の周囲からは人が離れて行ってしまいましたが…」
雪「そうだったんですの…」

銀「ばあや。余計な口を叩いてんじゃないわよ」
雪「!!」

コリンヌの話に聞き入りつつ歩いていた雪華綺晶は、突然耳に飛び込んできた水銀燈の声に驚いた。
見ると、邸宅から庭園に張り出した大きなテラス。そこにある椅子に腰かけた水銀燈…そして、
彼女を取り巻く十数羽の黒い翼たちが、夕陽に映えていた。

雪「ごきげんよう。水銀燈」
銀「…何の用?」

水銀燈は、手に持っていた上品なティーカップをテーブルの上に戻しつつ問うた。

雪「貴女ともっとお話がしたかったから、こうしてお尋ねしましたわ」
銀「…よくここへ来れたわね」
雪「貴女が差し向けたカラスさん達は、みんな私を避けてジュン様の元に行ってしまわれましたもの」
銀「でしょうね。この子達から聞いたわ。貴女、この子達から物凄く恐れられてるみたいね」
雪「あら、心外ですわ。私もカラスさん達と仲良くしたいのに」

そう言って近くのカラスに手を伸ばしかけた雪華綺晶。カラスが後ずさったのは言うまでも無い。

銀「…ったく。ばあやもばあやよ。何故この娘を通したの」
コ「それは勿論、お嬢様のお友達でいらっしゃるからでございますから」
銀「今度余計な事したら、いくらばあやでも容赦はしないわよ」
コ「と、このように厳しい事を仰ることも多いお嬢様ですが、その心根は非常に暖かくてお優しいことを、
  ばあやは良く存じております」

苦々しい表情を向ける水銀燈をよそに、コリンヌは悪戯っぽい笑いを雪華綺晶に投げかける。
コリンヌに椅子を勧められて腰を下ろした雪華綺晶は、決まり悪そうな水銀燈に向かい合った。

雪「率直にお聞きいたしますわ。今日、ジュン様の口付けを受けたとき、貴女はどう感じました?」

これを聞いた水銀燈は憤怒というよりはむしろ恥ずかしさに顔を赤らめ、コリンヌは実の娘が初潮を
迎えたのを知った母親のように頬を緩ませた。

銀「ちょっ…雪華綺晶、貴女!」
コ「あらあらまあまあお嬢様、私めの知らぬうちに大人への道をお進みになっていたのでございますね!
  ばあやは誠に嬉しゅうございます」
銀「だまらっしゃい!ややこしいからばあやは口を挟まないで頂戴!それに雪華綺晶!貴女、ここで言わなくても…!!」

雪「嬉しかった。 そ う で し ょ う ? 」

銀「…」
雪「でなければ、その後お昼をご一緒できようはずもありませんでしたものね」ツーン
銀「雪華綺晶…貴女怒ってるの?」
雪「私が怒っていたら、貴女に何か不都合がございますこと?」ツーン
銀「べっ…別に!」
雪「…ふふ。怒ってなんかいませんわよ。ただちょっと羨ましかっただけ」
銀「羨ましい?」
雪「そう、 私 も ジュン様の事が好きなんですから」
銀「…え?」
雪「『一人はもう嫌』。閉じこもっていた貴女。その心を開いたジュン様。貴女が好きにならないはずがないわ」
銀「…」
雪「私の髪をご覧下さいまし。貴女ほどではありませんが、私も多少アルピノが入ってるんですのよ。
  だから小さい頃の私はこれを恥じ、他人の恐怖に怯えていましたわ。そんな私と仲良くして、私の心を解き放って
  下さったのがジュン様だったのです」
銀「アルピノ…貴女も」
コ「雪華綺晶さまにもそのような過去がおありだったのでございますか…」
雪「ジュン様は教えてくださいました。他人は恐怖じゃない。自分を嫌っている私自身がいることを、他人が
  教えてくれているだけの事…。本来、何も辛い思いをする事は無かったのです。私も、そして貴女も。
  昔の私を映し出している貴女を、私はどうしても放ってはおけませんの」

銀「…」
雪「水銀燈。私は貴女に対し、宣戦布告をいたしますわ」
銀「宣戦…布告?」
雪「そうですわ。私と貴女、どちらがジュン様の愛を得るのか勝負するんですの」
銀「…くっだらなぁい。勝手にやってなさぁい」
雪「言っておきますが、ジュン様に想いを寄せているのは私達だけはありませんわ。私のお友達で、あと6人ほど
  敵が居る事を忘れないようにしてくださいまし」
銀「(あの娘たちね…)」
雪「一日の長はジュン様のキスを受けた貴女にありますが…私だって、負けませんわよ?」

銀「…ふん」
コ「♪」



その頃。

「ママー。僕、仲良しグループから女の子を一人追い出しちゃったんだ~」
「あらあらゆきおちゃん、仲間はずれはダメよ?」
「でもママ、あいつったら弱いくせに僕の言う事に一々反抗して来るんだよ~?グループの結束力を守るためには仕方ないよ」
「偉いわねゆきおちゃん。それならついでにしずかちゃんも追い出しちゃいなさい」

つづく。
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