少し前のとある秋の日
雪「しかし恋ねぇ……もぐもぐ」
ピ「あれ、どうしたんですか、焼き芋持ちながら深刻な顔して。悩んだって食べれば焼き芋は無くなりますよ」
雪「いや、それもそれなんですけど……実は最近、ウチの妹が女誑し眼鏡野郎に恋をしてるらしくて」
ピ「こ、恋ですか……けどおかしいことではありませんよね」
雪「そうなんですけど……私には恋なんて分かりませんから、なんて反応すればいいか分からなくて」
ピ「とても素敵なものだと思いますよ! 例えば相手の事を想って冷静にいられないとか……下手に妄想しちゃう感じです」
雪「……ピチカート、顔がにやけてるよ」
ピ「あっ、すいません///」
雪「何かいい具体例とかあれば教えて欲しいんだけど…・・・無い? 」
ピ「具体例ですか? う~ん、恋を例える具体例……恋は盲目とか言いますけど」
雪「盲目といわれても私、片目は見えるからさ、その」
ピ「そうですよね……あっ! じゃあ」
ヒョイ
雪「あっ、私の焼き芋」
ピ「すいません、今返します」
雪「もう……私の命より大事な焼き芋を」
ヒョイ
雪「……ピチカート? 私から食べ物を取るとはなんて命知らずな。覚悟はいい、私は出来てr」
ピ「す、すみません!? 返します、返しますからその後ろに見えるスタン○だか何だかを消してください!! 」
雪「全く……ああ、愛しの焼き芋もぐもぐ」
ピ「あ、あの、多分恋って、今キラキショウさんが感じた気持ちみたいなものですよ。
何かをしたいのに自分の思い通りにいかない。だけど手に入れた時の幸福感は言葉に表せない、端的に言えばそんな感じです。実際にはもっと大変ですが」
雪「ああ、なるほど。要はこういう事ね」
ピ「えっ?? 」
雪「……愛は憎しみの始めなり」
ピ「……もうそれでいいです、はい.」
*愛は憎しみの始めなり 人を愛する者は、常に、憎しみと隣り合わせであり、一つ間違えば、愛は恨みにも変わってしまうという戒めの言葉*
雪「よし、1000まで行った……と」
薔「?? おねーちゃんガッツポーズしてどうしたの? 」
雪「いや、VIPで1000まで行ったのが嬉しくて」
薔「ふ~ん……私にはわからないや。だけど」
雪「だけど? 」
薔「このスレも1000まで行くといいよね」
雪「ホントだね、みんなで盛り上げて行きたいね」
薔「がんばろー」
雪「おー!」
, -‐─‐_人人人人人人人人人人人人人人人二ニ= 、)__
,. '´,. '"´ ̄> 楽しく盛り上げようね!!! <ヽ 、〈必 ヽ
く⌒ヽy′ .l.:l.l  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄|l | r外、 |
_>, イ:|.:. | .|::|:.|:| .:::|:|:::::::! .:!`Lミ> ,′|, | l
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/ / Vハい,.ィ (ヒ_] {(Ⅹミ}:.:./ |ト、{ |ト 彳 ,___, ""l / | |
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ノ / .:.:.:Vハ ヽ'" ,___, `ーくハ/ | l小! ヽ、 ヽ _ン // l l|
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雪華綺晶的な保守
明日晴れたら彼女をデートに誘おう、なんて不埒な事を思いながら、沈黙を保つテレビの前に天気予報を気にする自分。
彼女はまだそんなことも知らずに先ほどから暢気にシャワータイムだ。
薔薇水晶と同棲、いや同姓どうしならばこれは二人暮らし、なんて味気のない言葉で締めくくられるのだろう。
けどこれが私達にとっては『普通』で、それでいて『異端』で。
珈琲を一口啜る。私はブラックが好きだが、彼女はまだ砂糖を2杯入れなければ飲めない、なんてこともこの生活で知った。
皆が、他人が知らない彼女の秘密を私が知っていて、私の秘密を彼女が知っている。
私達は共同体なのだ。お互いの秘密を知り合い、お互いに首元にナイフを突き刺しているような、
そんな関係。
そんな物思いに耽っているとバスルームの方から音がした。彼女の鼻歌が静かなリビングまで聞こえてくる。
さて、と私は立ち上がり胸のボタンを外しながらバスルームへと向かう。いつも『ながら』はだらしないと言われるが効率がよければ私はそれでいいと思う。
湯加減はどうだった? と私は扉を開ける。彼女はいつも通り、とバスタオル一枚を羽織ながら私に笑いかけた。
その姿はまるで理性を溶かす媚薬のような、そんな刺激を脳髄に与えてくれる。抱きしめたい、なんて安易な愛の表現をしてみたくなるのだ。
だけど私はそう、といつも通りに笑みを浮かべながら眼帯を外す。 鏡越しに彼女と目が合うと、雪華綺晶、と彼女が私の名を呼んだ。
『明日、晴れたら……』 彼女の話す言葉の一つ一つを理解しながら、私は静かにそれに頷くのだ。
私達は共同体。そんな単純で、出鱈目な関係。
「今夜は寒いね」
愛妹、薔薇水晶が震えた声で私に話し掛けた。既に暦は十二月、空には透き通った空に星が爛々と輝いていて、その空の下、私達二人は家路を急いでいた。
「本当に。もう冬なんですね」
私はそう答えると、崩れかけたマフラーを巻きなおした。時計は八時を指しており、寒さは相当だ。
「今夜は雪が降るってニュースでやっていたよ」
薔薇水晶が空を見上げる。
「あまり当てのならない天気予報ですわ」
「……本当」
薔薇水晶はそう微笑んだか、その表情はこの空とは反して曇り気味だ。私達は路地を静かに歩く。
「雪は降ってもいい寒さなんだけど」
と、彼女は凍えた手の平に息を吹きかけた。スーパーの袋を持つその手は赤く悴んでおり、この寒い日には痛々しささえ感じる。
「あら、そういえば今日はいつもの手袋はしてこなかったのですか」
「それがね、ウチでうにゅーが私の手袋を気に入ってみたいで、手袋に頭を突っ込んで寝てるの」
うにゅーとは雛苺の好物ではなく、我が家の子猫だ。しかし子猫が手袋に頭を突っ込んで寝ているとはそれはまた滑稽な光景だと思う。
「まったく困ったものですわ」
と、私は片方の手袋を脱ぎ、薔薇水晶の凍えた手を握った。私の体温が彼女の手をゆっくりと温める。
「……温かい」
彼女はそう呟く。私は黙ったままその手をコートのポケットに入れる。まるでどこか浮ついた恋人同士みたいだ。
「さぁ、早く帰って温かいものを食べましょう」
「そうだね。今日は鍋がいいね」
私達は歩く。片方の手はスーパーの袋を。そして片方には温かな手をしっかりと握って。
「暖かいね」
彼女が言う。
「本当に。暖かい」
私達は家へと歩く。手には温かさを。そしてこんな夜に暖かさを感じながら。
『染み渡る夜気に』
~金糸雀達がスーパー銭湯に来たようです~
金「ふはぁ……たまには狭いアパートのお風呂じゃなくて大きな銭湯もいいかしら~」
ピ「そうですねぇ。無料チケットを私達にくれるなんてミッチャンには感謝しなくては」
翠「翠星石達まで無料でなんだか得した気分ですぅ。はぁ、極楽♪極ら…むむっ!?」
蒼「なんだか心が休まる感じがするよね。そういえば金糸雀、最近仕事のほうはどうだい? 」
金「バイオリンの講師かしら?
それなら順調かしら~。だけど最近はあきっぽい子供が増えて少し心配の種しら。蒼星石達もガーデニングのお勉強しているって聞いたけど」
蒼「そうなんだよね。一から庭師の勉強をしようって翠星石と……ん、翠星石さっきから何を見ているんだい? 」
翠「……やっぱりジュンもコレくらいはあった方が喜ぶいやけどもしかしたら……」
蒼「ん? ……ああ、成程」
ピ「……なにやら視線が私の方へとあるのですが」
金「ピチカート、気にしなくてもいいかしら。どうせ翠星石はピチカートの胸の大きさに嫉妬しているだけかしらー」
翠「ギクッ!? そ、そんなことないですぅ! だ、だけどやっぱり男の人は大きいほうが好きだって、水銀燈が」
蒼「確かにジュン君のベットの下には『巨乳女子高生淫らな授業』みたいな本があったけど……翠星石、それを気にしているのかい? 」
翠「そ、そんなんじゃないですぅ。け、けどもしも、そうだったとしたら翠星石もこれからの努力を考えてやってもいいですぅ、くらいにしか」
金「バイオリン演奏に邪魔だしカナはいらないかしら」
蒼「僕もほどほどにあればいいかなぁ」
翠「何、双子の姉より大きい蒼星石が何をいうですか! こんなに育ちやがってですぅ~!!」
蒼「あっ、ちょっと!止めてって、何でそんな真剣に揉んでるの翠星石~!!」
ピ「……邪魔なだけですけどね」
金「人間ないものねだりかしら。真紅が聞いたら血の涙を流して悔しがるかしら」
ピ「確かに。浴衣が似合うスレンダーな体系に私も憧れますからそれと一緒なんですね」
蒼「あふっ、も、もう止めてってみんながいるのに」
翠「ほれほれほれですぅ!! もっとよがりやがれですぅ!」
ピ「……今日も平和ですね」
金「明日も明後日も多分平和かしら」
蒼「もう、翠星石ぃぃぃ~!!」
……あっ、ここ宜しいかしら……ありがとう。
えっ、こんな夜遅くにチンケなバーで、か弱い女の子が何をしているかって、ですって? いや、実は人を待っていまして。
恋人? いえそんな関係ではありませんわ。友人かって?
そうですね……あまりそんなことを意識したときはありませんが、あえて何かの名称で呼ぶのであれば、仲間、といったところでしょうか。
ええ、パートナーと捉えてくれてとしても十分ですわ、あっマスター私にもスコッチを。
で、貴方はこんなチンケなバーで一体何を? 余計なお世話だ? そうでしょうね、あながち約束していた女性にすっぽかされた、そんな感じでしょう?
フフ、その顔は図星ですね。
まぁ、とりあえず乾杯しませんか。静かな夜とこの寂れたバーの発展に。
乾杯。
……私の名、ですか?
雪華綺晶、と私は呼ばれていますが、君にピッタリだ? 私を口説くにはもう少し捻りを聞かせなくてはいけませんよ。そんなのだから約束した女性にすっぽかされるのです。
もちろん、貴方に魅力がない、といっているわけではないのですが。あっ、もう一杯頂けますか。
お酒に強い、ですか。よく言われますよ。別に私も好んで飲むわけではないのですが……ここでの一杯はまた格別でして。雰囲気が違う。こんなに落ち着いて飲めるお店はここ以外ありませんから。
これからどうするか、ですか。お誘いのところ悪いのですが今夜は、少しパートナーと夜の街を探索に。私の趣味に彼女をつき合わせているだけなのですが。この街は昼と夜ではまるで雰囲気が違っている。
私はその温度差、といいましょうか、裏の顔と表の顔がはっきりとしている。
堕落者が生き延びるには最高の街では無いが、善人が支配するには奥行きがありすぎる、そんな街が好きなのです。
そしてそんな街でちまちまとスコッチのグラスを傾ける。そんな人生も悪くありませんよ。
……ええ、そうですね。よく妄言を語ると笑われますよ。
だけど貴方もそんな『ここ』が好きだからいつもこの寂れたバーにいるのでしょ?
……沈黙もまた答えですよ。……あら、どうやら待ち人が来たようです。ええ、素敵な時間をありがとう。またお逢いしましょう。次はあなたの女性と一緒にでも。
ではいい夢を…………ええ、少し待ちましたわ、ピチカート。謝らなくても別に大丈夫よ。夜はまだ始まったばかりですもの。
「ご注文はお決まりでしょうか」
「オレンジジュース二つに」
「私はエスプレッソで」
かしこまりました、とウェイトレスがメニューを下げながらお辞儀をする。
とある喫茶店で私と金糸雀、ピチカートは午後のティータイム、とでも言うのだろうか、一時を楽しんでいた。
「結局、お眼鏡に適う服は見つかったの?」
「それがですね、キラキショウさん……可愛いお洋服はあるにはあったんですが」
テーブルを挟んで向かいに座るピチカートが俯く。
「サイズが合わなかったのかしら」
「……それは御愁傷様で」私は苦笑いを浮かべながら彼女を見た。確かに金糸雀に適する服はあるとは思うが大柄、と言おうかモデル体系のピチカートにはなかなか『可愛い』といった服は無いのだろう。
彼女はユニクロが似合う女性だから。
もちろん悪い意味ではなく、美しい体格だからだ。
シンプルこそ美しい、と前に水銀燈のお姉様が言っていたような気がする。
「……お洒落は難しき、かな」
私はそう呟くと、確かに、とピチカートが寂しそうに頷き、私達は少しの間、笑い合う。
そんな春の一時。
雪華綺晶的な思考保守
「寒いね~、ピチカート」
凍える空の下、傍らの彼女が呟く。ロングコートを纏い直しながらそうですね、と白い息を吐きながら答えた。
気が付けばもう10月も終わる。冬が近いことを冷たい風が伝え始めているのが分かる。
「葉っぱさんも寒い寒いって顔、赤くしてるね」
彼女、いやベリーベルの視線の先には見事に紅葉した木々がある。寒さに葉が凍えているのか、そういう発想を出来る彼女が羨ましく、とても愛おしい。
「コートが曲がっていますよ、ベル」
「ん」
彼女の曲がった黒いショートコートを直す。ありがとう、というベルの笑顔にくらり、と意識を持っていかれながら私はにこり、と笑い返した。
「風邪を引いては大変ですからね」
「ピチカートの方が寒がりのくせに」
と、私の手を握ってくれる。
温かい。冷え性の私の身体に彼女の温かさが染み入れていくような、そんな感じ。
「……よく分かりましたね、私が冷え性だって」
多分、金糸雀さんだって知らないのに。
「だってピチカートの顔、あの葉っぱさんみたいに真っ赤だもん」
「それは……寒いからです、はい」
私は彼女の手を握り返す。また温かさが染み入る。
「だけど」
ベリーベルが私の顔を覗き込んだ。
「ピチカートの顔、もっと赤くなっちゃった」
「ベルこそ」
そりゃそうですよ、ベリーベル。
私はベルと顔を見合わせながら、笑い合った。
冷たい風、凍える空。
その下に笑い合う私達。
それはある秋の一時。
眠りの姫を起こすには愛するもののキスが必要。
この前キラキショウさんに聞かされたことをこの状況で思い出すとは自分の方向性になにやら迷いが生じているのだろうか。
対面に気持ちよさそうな寝顔を見せるは小さな眠り姫で、
それを見守る私は王子様というわけだろうか。
「ベル、風邪を引きますよ」
コタツの魔力に負けた彼女を揺さぶるが、
「ん~……」
と、かわいらしい返答しか得られない。ああ、可愛らしい可愛らしい可愛らしい可愛らしい可愛らしい可愛らしい可愛らしい可愛らしい可愛らしい可愛らしい可愛らしい。
…コホン。
さて、どうしたものか。このままでは彼女が風邪を引いてしまう。
不可抗力だ、誰がなんと言おうとも。
私の視線は自然に彼女の柔らかそうな唇へと向かっていて、
ついでに私の顔も彼女へと近づいていき……
「あら、ピチカート。こんなところで破廉恥な」
「!!!!!!!!!!」
振り向けばそこにはニヤニヤと厭らしい笑いを浮かべたキラキショウさんが立っていて。
「いや、これはその」
「眠りの姫は王子様の熱いキスで目が醒めるなんて、さてこのベルに糸車の針を刺したのは誰なんだか」
私はベリーベルの頭を軽く撫でる。
「さぁ、もしかしたら彼女が愛しくて愛しくてたまらない魔女ではないでしょうか」
それはまた、と笑うキラキショウさんを傍目に私はベルを見つめる。
そんなある眠りの季節の一時。
「そういえばピチカートは八方美人に見える」
なんですか、それ? と私は暖かなリビングでキラキショウさんとココアを飲みながら尋ね返した。
「あら、ピチカート知らないの、八方美人って」
「ええ。私もまだまだ知らない日本語は多いのです。只でさえ日本語は奥が深くて……三種の言語を扱う言葉なんてなんて複雑怪奇でしょうか」
「とりあえずその日本語非難は置いておいて」
キラキショウさんはココアをテーブルに置き、足を組み返す。
「八方美人っていうのはどこから見ても美しい人って事よ。貴方にピッタリ」
「じゃあキラキショウさんは十方美人ですか」
「あとの二方向はどこから見られているのよ」
にやけた笑顔からやや引きつった苦笑に変わった彼女の表情を見ながらココアを口へ運ぶ。
「で、本当の意味というのは」
「だれに対しても如才なく振る舞うこと。また、その人。非難の気持ちを込めて用いることが多い」
成程。誰にでも優しい人ということか。
「それならば現代の社会人は殆ど八方美人じゃないですか」
「まぁ、それはそうなんだけど。今の社会八方美人っていう『ペルソナ』が無きゃ生きていけないから」
それはそれで今は良いのかもしれないが。
「それいけ八方美人」
「本当の自分を手に入れるために」
「「なーんて」」