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私たちもパレードが行われている通路の脇へと駆け足で向かう。
その甲斐あって、何とかベスト……ではないけどベターなスポットを確保することが出来たわ。ハァ……今日は走ってばかりの日ね。
そんな私たちの前を様々なキャラクターが通り過ぎていく。
まずはオープンカーに乗っている赤帽子の髭男と緑帽子ののっぽが通り過ぎた後は、火を噴くトゲ付き甲羅の亀。
見た目は怖そうだが、どこか愛嬌のある風貌をしている。可愛い……かしら?
その後は、たくさんの船員達が手を振っている海賊船が私たちの目の前を横切る。
どれもこれもとっても素晴らしいのだわ……!!
私たちは完全にそのパレードに魅了されていた。終わった後は、大きな拍手を送ったわ。ああ! とっても素晴らしい気分よ。

紅「とても素晴らしかったのだわ! ジュン!」
ジュン「僕はあのボンテージを着た男達の集団が良かったなぁ」
紅「まさかジュン……貴方男色なの?」
ジュン「なわけねーだろうが!」

二人でパレードの感想を話しながら、花火が打ち上げられるだろうお城へと向かう。
辺りは既に紅、蒼、黄色と様々な色でライトアップされており、幻想的な風景が広がっている。とてもロマンチックで、まるで夢かなにかのようだ。
話をしている間に、私たちはお城に到着した。周りも人で埋め尽くされていて、いい場所を確保するのに苦労したわ。
それでもなんとか最前列に体を押し込んで、メインイベントを今か今かと待つ私とジュン。時計の短針が『9』を回った頃、突然どこからか放送が聞こえてきた。
そして、無数の花火が打ち上げられた。

ジュン「おぉー!」
紅「凄い……!!」

私達は打ち上げられる花火をずっと眺めていた。
お城が沢山のレーザー光でライトアップされ、周りをドンドンと花火が照らす。
その光景はとても美しい……そして、儚い。
私達の今日一日の様に、煌びやかで、あっという間だ。
しばらくすると、花火が止まり、お祭りの終了を告げる。まるでシンデレラにかけられた魔法が解けるかのような……

 

ジュン「おい、おーい。終わったぞ」
紅「……そうね」
ジュン「なんだよ。どうせ、また変な事考えてたんだろ。楽しみはあっという間とか……」

どうやら、またもや見透かされてしまったようね。
ちょっと悔しい。私はジュンの手をぎゅっと握り締める。

ジュン「また当たりか。そんなわけ無いだろ。楽しい事はこれからも続いて行くさ。いや、続けてみせるさ。はは、少しカッコつけすぎたかな」


ジュン……。私は握り締めた手に力を込める。握り締めた手から、ジュンの体温を感じる。
嗚呼、暖かい……

紅「ふふ、言うじゃない」
ジュン「良いじゃん。たまには」

そうね。そしてもう一度手を握りなおした。
何故だかジュンと一緒の『楽しみ』は永遠に続いていくような気がする。
私は、何の根拠も無いけれど、そう思った。

 

 

 

 

 

私が部屋に戻ると、既に他の三人はベッドに座ってお土産の整理なんかをしていた。
紅「……ただいまー」
翠「お帰りですぅ」
銀「お疲れサマー、夏だけにぃ」
紅「今は秋よ」
蒼「ナイス突っ込みだね」
紅「褒めていただき光栄だわ」

水銀燈のギャグを軽快に切り返した私はベッドに腰掛ける。
沢山のお土産はベッドの脇に置いた。整理は明日にしようかしら。
さてと、シャワーでも浴びてこよう。私は着替えを抱えて、浴室に入る。
蛇口を捻ると、心地いい温度のお湯が私の全身にぶつけられた。

紅「はぁ……」

ありとあらゆる汚れが洗い流されていくこの感じが、私は好きだ。
全ての汚れを洗い流した後は、蛇口を捻ってお湯を止める。
そしてタオルで全身をくまなく拭きながら、今日、ジュンと過ごした事を反芻する。
たったそれだけで、幸福感が全身を包み込んだ。

 

 

 

 

 

私が浴室から出ると、三人ともテレビを見ながらケラケラと笑っている。
一体何を見ているのかしら?

紅「貴女達、いったい何を見てるの?」
銀「ああ、真紅もこれを見て見なさいよぉ」

水銀燈がテレビを指差す。どれどれ……?
画面の中では、色物芸人がローションを身体中に塗りたくって床を転げまわっていた。
なるほど……これは確かにシュールね。あっまた転んだ。

紅「ぷっ!」
蒼「あはははは! もっとやってよ!」
翠「おなかが……!!」

蒼星石も翠星石も笑い転げている。
特に翠星石、声が出ないほどって貴女、重症よ。
そのまま、私達はしばらくその番組を見続ける。普段はチラリと見てすぐにチャンネルを変えるような番組でも、友達と見るだけで楽しさが二倍も三倍も膨れ上がる。

紅「ふー……やっと終わったわね」
銀「ああ、久しぶりにお腹が痛くなるほど笑ったわぁ」

皆で笑い転げているうちに、そのバラエティー番組は終わった。

蒼「もうテレビはこのへんで終わりにしとこうよ。時間がもったいないからさ」

蒼星石がリモコンでなく主電源でテレビを切る。確かに、修学旅行の夜がテレビだけと言うのは、少々味気ないものがある。
そして私達はめいめいのベッドに潜り込む(もちろん歯はみがいたわよ。当然じゃない)
でも、すぐには眠らない。最後の夜くらいは、やっぱり一晩中起きるものよね。
部屋の電気を消してしばらくすると、翠星石が小声で言った。

 

翠「……おめーら、寝ちまったですか?」
紅「もう……寝てないわよ」
蒼「僕もまだまだ」
銀「なぁにぃ? イタズラでもするつもり?」
翠「そ、そんなわけねーですよ!」

隣のベッドで必死で否定する翠星石。でも、貴女の右手に水性マジックが握られてたのが、チラリと見えたわよ。
危ない危ない……大惨事になってたわ。
……あら? 突如私達の携帯の着信音が真っ暗な部屋の中で響きだした。

翠「ん? メールですか?」
紅「あ、私の所にも来たのだわ」
蒼「あれ、僕にも来てるよ」
銀「送り主は、大体予想はつくわねぇ……多分薔薇水晶ね」

私は枕元の携帯に手を伸ばす。水銀燈の予想通り、送り主は薔薇水晶だった。
内容は……金糸雀、雪華綺晶、雛苺の寝顔がそれぞれ写されている三枚の画像に、薔薇水晶の自分撮り写真。
なんなのよこれは……

翠「もうちびちびたちは寝ちまってるんですか……やっぱりお子様ですぅ」
銀「雪華綺晶ったら、よだれが垂れてるわぁ……」
蒼「とっても幸せそうだなぁ」
紅「薔薇水晶……なんで自分撮りなんてやってるのよ」

それぞれ感想を口にする。
私が画面を見続けていると、ピロリ~ン♪ と、携帯に内蔵されているカメラの音がした。
……水銀燈か。

銀「真紅のちょこっと真剣な表情、ゲット~。これを薔薇水晶に送ろうかしらぁ」

 

ちょっと、不意打ちで撮られる写真ほど恥ずかしいものは無いものよ!
私も携帯をカメラモードに切り替えて、水銀燈の顔を撮ろうとする。今よ!

 

銀「残念ねぇ。私がそう簡単に隙を見せると思って?」

掛け布団で顔をガードされた。くうぅぅ~~、悔しいわね!
こうなったら武力行使よ! 私は立ち上がって水銀燈のベッドに飛び込んだ。

銀「し、真紅ぅ!それは反則よぉ!」
紅「嫌なら素直に私のカメラに写されなさい」
銀「それもお断りよぉ」
紅「だったら無理矢理……」

ピロリ~ン♪
……え? 私と水銀燈が音のした方に首を向けると、翠星石が私と水銀燈に向かってケータイ電話を向けていた。
そして問題なのは、私はいつの間にか水銀燈を組み敷いているような体勢になっており、赤の他人から見ると『嫌がる水銀燈を無理矢理組み敷く真紅の図』になってしまっていたことだ。

翠「これを薔薇水晶に送ってやるですぅ~」
銀「いやああああ!!」
紅「翠星石!それだけはやめて頂戴!」
翠「やーですよ。こんな面白いもの、翠星石が消すはずないですぅ!」

 

びしっ、と携帯を印籠の様に掲げて断言する翠星石。
そう……貴女のやりたいことは、よく分かったのだわ。
私は水銀燈とアイコンタクトを交わす。彼女も私の考えが伝わったのか、コクリと頷いた。

銀「翠星石……こうなったらアンタも同じ目に遭ってもらうわよぉ」
紅「うふふふふ……」

二人で手をワキワキと動かしながら翠星石の方へ近づいていく。

銀「さぁ……覚悟しなさぁい」
紅「私達よりも酷い画像を撮ってやるのだわ……
翠「写真は消すですから……。や、やめるですぅ……いやああああああああああああああああ!!」

ドタバタやっていたら、いつの間にかちゅんちゅんと小鳥が鳴いていた。
嘘……本当に一睡も出来なかった……

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