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平穏な日常 第一話 中

すごすごと大人しく席につく男が一人。
食べ比べか…適当にやったらしばかれるだろうなぁ。こいつら無駄に勘がいいからなぁ。…ほんと無駄だ。もっと別のところで生かせよ。
僕の目の前にある四品目をあくまで真剣に評価しなければならない…というわけだ。
どうも、桜田ジュンです。ここはいったい地獄か何かなのでしょうか。

心の自己紹介も終え、僕はフォークを取ってまずはカステラを食べることにした。
…なんだろう、カステラに手を伸ばした瞬間翠星石方面の殺気はいくらか収まったものの、他三方向からのそれが増大したような…
気にするな僕。クールになるんだ。お前はただ食べてればいいんだよ。そうにちがいないさ。
取り敢えず一口。なるほど、翠星石御用達だけあって中々にウマイ一品だ。彼女がハマるのもうなずける。調子に乗ってもう一口食べようとすると、翠星石の殺気が回復してしまったので慌てて引っ込める。…食べられたくないんだったらそう言えば良いのに…。

次に水銀燈のヤクルトに手を伸ばした。爪でカリカリと引っかいて穴を開ける。世の中には蓋に爪で穴を開ける人と蓋をめくって開ける人の二通りの人間がいるようだが、僕は前者だ。
ヤクルトの容器を口につけてそっと傾ける。…うん、懐かしい味だ。子供の頃はよく飲んでいたが、最近はすっかりご無沙汰していた。久々に飲んでみるとやはりうまいもんだ。
ちなみにさっきから誰も一言も発していない。無言。終始無言である。なんだよみんな、殺伐としすぎだよ!これ第一話何だよ!?
もっと喋ろうよみんな!殺伐としているべきなのは吉野家だけで充分だろう
?ここは「よーしパパ大盛り頼んじゃうぞ―」とかいってもいい空間だよね本来は!?
…心の中で喋っていても誰も反応してくれないので次にいこう。ええと、残ってるのは緑茶と卵焼きか…。

…卵焼きは前に苦い経験を(甘い経験?)しているので後回しにさせてもらおう。緑茶を蒼星石にならって両手で持つ。ちなみに僕は猫舌なのでふーふー冷ましながら飲むことにした。
…?心なしか、4人の殺気が和らいだ気がするな。どうしたんだろう?でもつっこんだら何を言われるかわからないので大人しく味わう。まだ少し熱かったが、飲めないほどではない。
やけどするのはいやなのでゆっくりすすることにした。なるほど、蒼星石がプッシュするのもわかるきがする。自分はお茶などはあまりわからないが、そう思わせるだけの実力は確かに持っているようだ。
要約すると、意外とうまい。これはこれでアリだ。 さて、最後は金糸雀の卵焼きだが…ここまで来てしまうともはや食べないわけにもいかないだろう。
チラッと本人を見るともはや期待のこもった目をしていた。コイツ、素で「トリは必ず評価されるものかしらー!」って思ってそうだ。
しょうがないので勇気と少々の覚悟を持ってパクリと一口。
…あれ?意外とうまいぞ?甘みが意外と抑えられている。なんだろう、少しは勉強したのか?
おかしいな、前食べたときはこんなにいい感じではなかったのだけど…。
ま、いいや。けっこううまいってことにしとこう。

あれ?

ちょっとまてよ、全部美味しいじゃないかこいつら!どうしよう!この中から一つ選べとか無理だよ!
つーか一つだけ選んだらほかの奴らからの攻撃が恐ろしいことになりそうなんですけど!?
「ふむ…」
思慮深いふりをして悩んでいる僕のつぶやきを引金に待ってましたとばかりに四人が動き始めた。
「さぁ!考えはまとまったですかぁ!」
「金の卵焼きが一番に決まってるかしらー!」
翠星石と金糸雀が騒ぎ立てる。えーと薔薇乙女の皆さんは一緒に喋らないといけない決まりでもあるのでしょうか。
さっきからずっと一緒に喋ってる感じしかしないのですけど。
水銀燈と蒼星石は静かに微笑んでいた。ただし、二人とも普通の微笑みとは言えないと思う。
水銀燈は目が笑っていない。ブラックな笑みだ。誰かー。ミルクと砂糖持ってきてー。(棒読み)
蒼星石からはプレッシャーが放たれていた。怖い。怖いよこの子。重すぎるプレッシャーだ。

どうしよう。この中からどれが一つだけを選ぶとほかの人たちから総攻撃になりそうだ。
ここはあの手を使うしかないのだろうか。うまくいけば穏便に済ませられるけど、下手をするエラいことになる諸刃の剣。素人にはオススメできない。
「えぇと…」
僕が声を発するとプレッシャーがさらに増した感じになった。やるか僕。やるしかないのか。
えぇい、ままよ!
「四つとも全部美味しかったから…全部一位ということにはならないのかな…?」
これぐらいしか僕の貧相な脳では思い浮かばなかった。うつむいて目を閉じる。
さぁ、この発言が吉と出るか凶と出るか…!
…あれ?何の音沙汰もないな。どうしたんだろうか。少し目を開けてみる。

すちゃ。

…すちゃ?聞き慣れない音に慌てて顔をあげると、うわーぉ。薔薇乙女の四人がそれぞれの表情でそれぞれの獲物を携えておりました。
やっぱり凶と出ちゃったんだなぁ…。あぁ、みんな良い笑顔だ…。これ、あたるといたそうだn
僕の意識は遥か彼方へ飛んでいった。

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