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†††††††††~Pretty Maiden~†††††††††
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第2巴「何故、雛苺は巨乳設定なんですか?発案者、出て来てください。」


 無事、何事もなく薔薇乙女家に辿り着いた巴さん。雛苺さんを背負いながら歩く最中、彼女の
幼い容姿には不釣合いである豊満な胸の感触を背中でふにふに味わいながら、自分のまっ平な
部分を板いほど痛感し、とてつもなく切ない気持ちに襲われていた。

――雛苺、Cカップくらいかしら……。
 雛苺さんの下着を巴さんが装着すれば、上半身は特大サイズの苺大福二つ分くらい緩み、下半身は
間違いなく食い込む事だろう。しかも、ひよこさんマークのオマケ付きである。
――私にはきっと、ヌリカベの血が流れているんだわ……。
 切ない気持ちに取り憑かれたまま、巴さんは、薔薇乙女家の屋敷の門を開く。その際、よく知っている
筈のその豪勢な住まいに、改めて圧倒されてしまった。

 目の前の広大な庭は、マツコ・デラックスを余裕で5000体は土の中に埋められる広さで、芝の
美しい青に染められ、麗しき花園や遊泳用の巨大プールが当たり前のように完備されており、手入れ
などの管理がとても大変そうだ。
――絶世の美人姉妹は、住むところも、やっぱり違うのね……。
 そんな事を考えながら、雛苺さんを背に、ぽよんぽよん歩く巴さん。体力的には余裕なのだが、
精神的にはかなりキている様子。巴さんの家もかなり立派であるのに、何もかも薔薇乙女家と
比べてしまい、のしかかる欝に苛まれ、振り回されてしまっているのがとても切ない。
 門から玄関までの道のりは大して遠くないのだが、今日の彼女には酷く長く感じられた。

「ただいまなのー!」
「おかえりなさぁい……あらぁ?巴じゃなぁい。雛苺なんて背負っちゃってどうしたのよぉ?」
 大きなドアの向こうから、少し驚いた表情で迎えてくれたのは、何故かこの屋敷の家政婦さん
ではなく、この家の長女である水銀燈さんだった。
「あれー?水銀燈、珍しく帰りが早いのー。」
「夜遊びをやめたのよぉ。今日からは真紅みたいに良い子ちゃんを気取らせて貰うわぁ。」
 雛苺さんの抱いた疑問に、軽いノリで答える水銀燈さん。隠し味に真紅さんへの皮肉を使うのは
相変わらずらしい。

 そして、それに対して、――ああ、また嘘ですね、と、見破りながら的確に脳内ツッコミを入れる
巴さん。別に、彼女じゃなくても水銀燈さんを普通に知る人なら誰でもわかる、いつものジョーク
なのだが――。

「昨日雇った家政婦さんはどこなの?どうして出て来てくれないなのー?」
「今日の内にやめちゃったわぁ。最近の若い子はだめねぇ。続かない奴ばっかりだものぉ。」
 続けて、雛苺さんが二番目に浮べた素朴な疑問に、虚空の誰かを嘲笑うかのような表情で、答える
水銀燈さん。彼女が自分の絵図通りに事が運んだ時に必ず放つ、黒い満悦のオーラを漂わせている。
「うゆ……これでもう、五人目なのよ……。ここって、そんなにキツイお仕事があるなの?」
「ウフフ、別にそんな事ない筈なんだけどねぇ。」
 疑る事を知らない為、水銀燈さんのあくどい微笑みに気付かない雛苺さんは、真剣に悩んでしまったようだ。

「雛苺、足に怪我をしているのね。巴、わざわざありがとぉ。ほらぁ、お茶出すからあがってぇ。」
 水銀燈さんは、話題を切り換えるように、雛苺さんの足に巻いてある包帯に気付き、礼を述べつつ
巴さんを屋敷の中へ誘った。巴さんは何気に好都合なので、やんわりとお断りするフリをしながら、
そのお誘いに乗る事にした。
 そして、そびえるおおきなドアの向こう、広大なホールに温かく迎えられ、シャンデリアや美しい
オブジェ達が導く華やかな廊下を辿り、有名そうな絵画や高級そうなグランドピアノなど仰々しい
インテリアで飾られた客室の間へと案内される。恐らく、水銀燈さんは丁度、お茶を飲み始める所
だったのか、そこには既に、紅茶の入ったティーポットと一人分のカップが用意されていた。

「すまないわねぇ。部活を休ませてまで雛苺を送って貰っちゃって。」
 さほど気に留めてなさそうな表情で、再度、巴さんに感謝の言葉を贈りながら恩人の為に紅茶を
淹れる水銀燈さん。ポットの中身を注ぎながら注ぎ口をカップから30㎝程の高さまで引き上げて
コンパクトな滝を瞬間的に作り上げた後ポットの注ぎ口をまた一気にカップの淵の部分まで下げて
注ぎ終える、という、杉下右京風の入れ方を披露したのだが、その際、熱いお湯が飛び散って巴さん
に熱い思いをさせてしまう。しかし、それでも巴さんはクールな表情を崩す事は無かったが――。 

「家政婦さんがちゃんといてくれたら、巴も部活を休まないで済んだのよー。」
 続いて巴さんの為に愚痴を零す雛苺さん。虎の毛皮で覆われたソファの上に寝転がりながら、痛め
ている筈の足を普通にぶらぶらさせているのは気のせいだろうか。

 そして、そんな二人を眺めながら、きっと二人なりに感謝してくれている、と頑なに信じたい
巴さん。彼女たちに答えるように「いえ、大したことじゃないですから。」とクール且つ謙遜的な
発言をしたのだが――。
「ヒナもカップを取ってくるのー!」
 雛苺さんが突如発した元気いっぱいの声にかき消されてしまい、ちょっぴりショックを受けて
しまう。そんな彼女を尻目に雛苺さんは自分専用のティーカップを持ってくる為部屋を出て行った
のだが、その時にパタパタと可愛らしく走って見えたのはやはり気のせいだろう。

「はい、どうぞぉ。この紅茶、とても良いものみたいだから、遠慮なく召し上がってぇ。」
 やがて水銀燈さんは、淹れ終えた紅茶を、天使のような悪魔?の笑顔と真心がこもっているかも
しれない艶やかなヴォイスを添えて、巴さんに差し出した。洗練された極上の香りが巴さんの鼻孔
をくすぐるように包み込む。もしかしなくても、お高い紅茶のようである。

「先輩、ありがとうございます。」

クールに答えながらホットな紅茶を受け取り間を置かずにそれを飲む巴さん。
――不思議なくらい、とても落ち着くわ。
 一口だけ啜った彼女の感想はその言葉に尽きた。程よく開いた高級茶葉の優雅な香りと味は、巴さん
の疲れと悩みを少しは癒してくれるようだ。

「ねぇ、三十分くらいに前に電話がなったんだけど、もしかして巴だった?」
 巴さんの「とても良い茶葉ですね。淹れ方もお上手で、身と心にとても沁みます。」というクール且つ
優雅な感想が発せられる直前、水銀燈さんは、急に何かに気付いて焦ったように少し大きめな声で、質問を投げかけた。
 そして、少し死にたくなりながらも「そうかもしれませんね。」と頷く巴さんだった。
「ほんとぉ?それなら、ちゃんと出ていればよかったわぁ。」
 自分のミスをいつもの声の大きさで確認した後、「しっぱぁい。」と付け加えながらソファに据わって足を
大胆に組み、ふんぞり返る水銀燈さん。失敗した、と痛感する人のしぐさにはとてもみえない。

「あの女を追い出すのは、もう少し後でも良かったわねぇ。」

 続けて、水銀燈さんは、巴さんには聞こえないように小さな声で、悪代官っぽいセリフ
を呟いた。其方も悪よのう、と言ってあげたくなるような微笑みを浮かべながら――。



†Pretty Maiden in dressing room†
巴「私って、ここまで根暗キャラだっけ……?しかも、ネガティブ過ぎるし。」

紅「確かに、主役としては扱いが酷いわね。」

蒼「まぁ、最初の内は仕方ないんじゃない?これ、シンデレラストーリーらしいから。」

紅「蒼星石。やっぱり、これって某有名映画をパクる気満々のSSなのね。」

蒼「……取り敢えず、次回では、巴さんは美少女コンテストに出場する事になるらしいよ。」

巴「ということは、私が優勝するってオチですね。」

蒼「さぁ?そうとは限らないよ?」

巴「……私、どこまで弄られるんですか……。」

紅「巴、ファイトなのだわ。」
†TO BE CONTINUED†

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最終更新:2010年02月12日 18:22