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私達はカードキーを受け取り、鞄を引きずりながら部屋へと向かう。
体は疲れているが、気が張っているからかあまり重たくは感じない。
このホテルは四人部屋で私と水銀燈に蒼星石、翠星石が同じ部屋を使う事になっているわ。
金糸雀、雛苺、雪華綺晶に薔薇水晶は隣の部屋だった。
それぞれの陣地をきめて、私達四人はベッドに倒れこんだ。

翠「はぁ~……疲れたです……」
銀「夜はこれからよぉ。まだまだ寝かせてあげないわ」
翠「やーですぅ~~~」
銀「うふふふふふ」
紅「全く貴女達は……」

ワキワキと手を動かして、翠星石の寝ているベッドにダイブするのは水銀燈。

銀「うふふふふふ……翠星石っていい匂い……」
翠「クンカクンカするのはやめやがれですぅ~~」
紅「下品よ、水銀燈」
銀「いいじゃなぁい……ちょっとしたスキンシップよぉ」
蒼「……あの……最初にシャワー借りるけど、良いかな?」
紅「あら、別に構わないわよ」

着替えを胸元に抱きかかえてる蒼星石が私達に聞いてきた。
私達は簡単にOKの返事をする。
蒼星石が浴室に入ったのかドアの閉まるバタンという音がして、すぐ後に水の流れる音が聞こえてきた。

蒼「♪~♪~」

鼻歌でも歌ってるみたい。……今ならジュンに会いに行く事ができるわね。
やっぱり、改めてお礼をきちんと言わないといけないわ。
私はベッドでジタバタやっている水銀燈と翠星石に一声かけて、ジュンの部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

えーと……確か男子は三階に泊まっていたはずよ。
私はエレベーターに乗って『3』のボタンを押した。
ちなみに女子は八階に泊まっているわよ。まったく、会い辛いったらないわ。
そんな事を考えているうちにエレベーターのドアが開いた。三階に到着したようだ。
ジュンたちの部屋はどこだったかしら……ああ、ここだ。
私はコンコンと、どっしりとした木でできたドアをノックした。

仗助「へ~い……どちらさんっスか?」
紅「私よ。開けて頂戴」
仗助「ああ、この声は真紅か。分かったぜ」

ガチャリとドアを開けて出迎えてくれたのは仗助君。
シャワーを浴びた直後なのか、髪の毛が萎びたワカメの様に垂れ下がっている。

仗助「やっぱり、桜田に用か?」
紅「ええ。ジュンはいるかしら」
仗助「夜のデートですかい? お盛んだな」
紅「もう、茶化さないで頂戴。……けど、そんなところよ」
仗助「ふゥ~ん。ま、呼んでくるから待ってなよ」

そう言って仗助君は部屋の奥に消えていった。
奥のほうから他の四人の話し声が聞こえてくる。
部屋の様子を伺うに、どうやら男子は五人部屋みたいだ。
しばらくすると、青いジャージに着替えたジュンが廊下を通ってやってきた。

紅「遅いわ。もう少し早くこられなかったの?」
ジュン「悪かったな。着替えに手間取ったんだよ」
紅「ま、いいわ。ちょっと出ましょう」

 

 

 

 

 

ジュン「で、何の用事?」
紅「彼女が彼氏に会いに行くのに理由が必要かしら?」
ジュン「……無いけど」
紅「…………改めて御礼を言いに来たわ。ありがとう」

私は首を上げ、夜空を見つめる。
たくさんの星が宝石の様に散りばめられており、陳腐な表現だが、とても綺麗だ。
まるで天女の衣のようだ。

ジュン「……どういたしまして」

ジュンも私と同じ様に夜空を眺めている。
……その横顔が、とても凛々しくかっこよく見えた。今なら出来そうな気がする。

紅「ふふ、ジュン」
ジュン「何だよ」
紅「……ご褒美よ。ありがたく受け取りなさい」

この時熱に浮かされていたのかもしれない。
……私はジュンの横顔に、そっと口づけた。

ジュン「なっ、何するんだよ!」
紅「だから、ご褒美よ」
ジュン「ッッッ~~~~!!」

慌てふためくジュンにしれっと返す。
顔はとっくに真っ赤に染まっているが、そんな事は気にしない。出来ない。
私がじっとジュンを見つめていると、冷静さを取り戻したジュンが私の方を向いた。

 

紅「あら、どうしたのジュン?」
ジュン「……お返しだ」

え? ……おでこに柔らかい感触を感じる。
この感触はまさか……キスされた?
ジュンも頬を今までに無いくらい真っ赤に染め、私の方を見つめている。
やられたわね……

紅「キスはするのもされるのも恥ずかしいわね」
ジュン「言うな。僕もそうなんだぞ」
紅「けれど……いい気分よ」
ジュン「ああ」

二人でもう一度上を向いた。
紅くなった頬が涼しい風で冷やされる。
そのまま私達は無言でぼーっとしていた。
一時間も経った頃だろうか、私は言った。

紅「……もう夜も遅いわ。カラダも冷えてしまうし、帰りましょう」
ジュン「ジュース買って帰ろうか。僕、おごるぞ」
紅「ふふ、それはありがたいのだわ」

私達はエレベーターに乗り、それぞれの泊まる階で分かれた。

紅「ジュン、おやすみなさい」
ジュン「ああ、おやすみ」

 

 

 

 

 

私が自室の部屋のドアを開ける。

雪「お帰りなさいませ」
翠「お帰りですぅー」

ドア側にいた二人がお帰りと声をかけてくれる。
隣室のメンバーも集まっており、かなり賑やかな状態になっていた。
『アメトーク』を見ているようだ。テレビから人気芸人の声が聞こえてくる。
私がベッドに腰掛けると、皆がニヤニヤ顔で私の顔を見てきた。

紅「な……何? 私の顔に何かついてる?」
銀「今からそれを確かめるのよ」

水銀燈が私の髪をかきあげ、額をむき出しにする。

銀「……やったわねぇ、真紅」
紅「え?」
銀「さっき中庭でジュンと……キスしてきたでしょう?」
紅「な、何でそれを……!!」

私の顔がボンと赤くなる。
水銀燈は私の額をつんつんと突きながら続けた。

銀「額にキスマークがついてるわぁ」
翠「や、やりやがったですね~~~!!」
苺「ちゅーしたのー! おめでとうなの~~!!」
蒼「あはははは、これで第一関門突破だね。真紅」
雪「殿方の唇を額に……羨ましい限りですね」
金「オデコはカナの専売特許かしらー!」

 

皆に散々茶化される。
けれど私は照れ隠しの言葉を吐かなかった。今はこの気持ちを照れ隠しなんかで汚したくはないわ。
あと金糸雀、あなただけ突っ込みどころが違うわよ……。
あれ? ……そういえば薔薇水晶が居ないわね。

紅「ねぇ、薔薇水晶はどこにいるの?」
蒼「薔薇水晶は……さっき仗助君とどこかに行ったみたいだよ」
翠「最近雰囲気もいいですし、ニューカップル誕生ですぅ!」
雪「そんなニュータイプみたいに言わなくても……」
薔「……ただいま」

その時、ガチャリとドアを開けて薔薇水晶が入ってきた。
頬はばら色に染まり、全身から嬉しさを滲ませている。

銀「その感じ……成功したみたいねぇ」
薔「……うん」

水銀燈が艶っぽい笑みを浮かべながら言った。
薔薇水晶がコクリと頷く。
部屋の中がどっと歓声で沸きかえった。
……おめでとう、薔薇水晶。

銀「それにしても真紅ぅ……」
紅「何? 水銀燈」
銀「次は唇と唇ねぇ」
紅「…………」
銀「あら、ごめんなさぁい。……そうだ、早いとこシャワー浴びていらっしゃい。汗臭いと嫌われちゃうわよぉ」
紅「……ご忠告どうも」

 

私は着替えを抱えてユニットバスに入る。
髪をといて温かいお湯をカラダにぶつける。
カラダのベトベトが洗い流されていく心地よい感覚がした。
そしてベッドで深夜番組を見ながらみんなで雑談。
やはりこの夜のグダグダした時間が一番『修学旅行』と言う感じがする。
しばらくすると、みんな疲れが溜まっているのか、めいめい布団に入りこんだ。
目を閉じるとすぐに瞼が重たくなってきた……

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