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平穏な日常 第一話 前

僕はどこにでもいる、いわゆる冴えない一人の高校生。今までの人生で割りと平穏で退屈な日常を過ごしてきた男。
そんな僕の前にポツンと、しかし圧倒的な存在感を持ってそこに在る、4つの食品(内二つ飲料)。
そしてその後ろに控える、というかもはや構えている4人の少女たち。…なんだか「ドドドドド」という効果音が見え隠れ。
この4人にこの中(すなわち、カステラ、卵焼き、ヤクルト、緑茶)のどれが一番美味しいと思うか迫られている・・・・


どうも、桜田ジュンです。
一体どうしてこうなってしまったのか、記憶はおよそ三十分ほど前に遡る_____

僕は少し前に今日の時間割を終えて荷物をまとめ、つかつかと行くべき場所に歩みを進めた。
別に行く義務があるわけではないのだが、あいつらに何をされるかわかったもんじゃない。つまりは渋々だ。
前に一回無断でサボってみたが、手酷くやられてしまった。…何をされたかは思い出したくない…。
自称部長の性悪はともかくとして、あの三人までに怒られるとは思わなかった。
そんなわけで渋々ながら部室―そう呼んで良いのかはわからないが、ともかく部室だ―のドアを開けたわけである。
まず第一に僕の目に飛び込んできたのは部長席とやらに座った、美味しそうにカステラを頬張る少女の姿だった。
「なに食べてるんだ、翠星石?」
僕は彼女にそう声をかけた。すると彼女、翠星石はようやく僕が入ってきたことに気づいたのか、顔をあげた。
「あ、ジュン!遅いですよ!見ての通りカステラを食べているですぅ!」
近寄ってみてみると、なるほど、翠星石お気に入りの鈴カステラなる逸品を食べているようだ。
「あー…なるほどな。…そっちの三人は?」そう言って他の三人に目を向ける。

「ボクは緑茶を飲んでいるんだ。味に深みがあって美味しいよ」
「ヤクルトよぉ。はぁ~、この味と喉ごし、たまらないわぁ」
「カナは手作り卵焼きかしら!絶品かしら!」 

思い思いの返答が返ってきた。首をかしげつつ、何故こんな軽食パーティーみたいになっているのか一番近い彼女、蒼星石に聞いてみた。
曰く、三人で部室に来ると(三人というのは蒼星石と他の二人、水銀燈と金糸雀である)、真っ先に部室に走っていった翠星石が美味しそうにカステラを食べていた。
それを見て羨ましくなった三人が各々じぶんの家に帰り、好物を持ち寄った…と、言うことである。
それを聞いて僕は一人ため息をついた。確かにここにいる五人は僕を含めて学校と家がかなり近い。
だからと言ってわざわざとって帰ってくる必要があるだろうか。いや、ない(反語)。
というか僕は帰りのホームルームが終わってまっすぐにここに来たのに、なぜ一回家に帰ったにも関わらず僕より早くここにいられるのだろう。蒼星石に至ってはマイ湯飲みまで持参している。
そんなに緑茶が好きなのだろうかこの娘は。女子高生だというのに、なかなか嗜好が地味である。
湯飲みをわざわざ両手でちょこんと持つところが可愛らしいが、それを口に出すことはしない。
この蒼星石、一見すると男の子のようにも見えるが、れっきとした女の子である。
先に紹介した翠星石とは双子なのであり、こちらが妹だ。・・・なんというか、にてない双子だ。
主に性格とか、性格とか。あぁ、ほかにも性格とかだな。うん、性格が似てないよこの二人。
そんな蒼星石のとなりでは金糸雀が夢中で卵焼きを頬張っている。手作りと言っていたがこの卵焼き、はんぱなく甘い。やたらと甘い。あんまりうまそうに食べるんで一口もらったことがあるのだが、胸焼けしそうになった。
しかもそれを飽きることなく毎日食べている。貴女一体どういう胃袋をしていらっしゃるので?
金糸雀の向かいではヤクルト大好き女、水銀燈がヤクルトを大量に飲んでいた。…なんでもう1パック片付けてるんだ…。しかも2つめに突入するなよ…。

…少々話がずれた。と、まあこんな感じになっていたのだ。ここから何故あんな修羅場になってしまったのか。原因は実を言うと僕だった。
あんまりみんな美味しそうに食べるんで、つい口に出してしまったのだ。
「しかしどれも美味しそうだなぁ。どれが一番美味しいんだろ?」______この一言がいけなかった。
これを聞いた4人から一気に殺気が発せられたのにきづいた時にはもう遅かった。

そして舞台はふりだしに戻る。

かくして現在僕は4人の少女に迫られているわけである。…誰か助けてくれ。
「ここまで来てしまったからには決着をつけるしかないわよねぇ?」水銀燈が楽しげに言うと、金糸雀もそれに同調する。
「同感かしらー!こうなったら食べ比べるしかないかしらー!」
「そういえば、ここにちょうどいい第三者がいるですねぇ…」
翠星石さん?それは一体誰のことでしょうか?もしや貴女の前で威圧されている憐れな男ではありますまい?
くそ、頼みの綱はヤツだけだ!僕は最後に残った一人に目を向ける。この子なら、この子ならなんとかしてくれる…!
そこにいたのは…
「ジュンくん?判定、よろしくお願いするよ」
微笑む小悪魔の姿だった。嗚呼グッバイ。僕の人生。

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