◆愛の伝道師ばらしー◆
J「…………」
薔「…………」
J「……あの、お名前は?」
薔「……薔薇水晶、だよ」
J「……薔薇水晶さん」
薔「……ばらしー、でいいよ。みんなそう呼ぶから」
J「……ばらしー」
薔「……なに?」
J「……なんで朝目覚めたら、君が僕の部屋の、それもベッドの中で隣にいるんだ?」
薔「…………」
J「…………」
薔「……私は、愛の伝道師だから」
J「ごめんちょっと意味がわからない」
◆ナルっ子きらきー◆
雪「本当に申し訳ありません、JUM様」
J「いえいえ」
雪「ほら、ばらしーも謝って」
薔「……JUM……ごめんね、今度は夜忍び込むから……」
J「できれば夜もやめてほしい」
薔「……じゃあ」
J「昼もやめて」
薔「……ちくしょおおおおおお」ジタバタ
雪「すいません、こんな子なんです」
J「彼女がきらきーの妹なんて信じがたいな」
雪「ええっ、そんな……いくら私が美しすぎるとはいえ……確かにばらしーの容姿が私に劣っているからといっても、
そんな言い方はありませんわ」
J「いや、そういう意味でなく」
雪「ああ、なんで天は私にこのような罪を与えたのでしょう? そう、美しさ、それは大いなる罪……」
J「聞いちゃいねえ」
◆お前が言うな◆
J「……ってなことがあったわけだが」
め「ああ、それはいつものことよ」
銀「私たちが初めて来た時も朝起きたら侵入してたわねぇ」
J「なんと」
ガチャリ
真「私の時もよ」
J「え、新規もか?」
真「私の名前は新規でなく真紅だけど……引っ越してきた翌朝、隣を見たら彼女がいて驚いたわ」
め「侵入癖っていうのかしらね、新居者の部屋に必ず忍び込むのよ、ばらしー。ふふ、変わった子よね」
J「確かにそうだが、お前が言うな」
銀「ほんと、めぐといい勝負張ってるわ、変人具合は」
J&め「お前が言うな」
真「まったく……あなた達といい、ばらしーときらきーといい、このアパートにはまともな人はいないのかしら?」
J&め&銀「お前が言うな」
◆人形師のお仕事◆
銀「……でもまあ、あの子のおかげでこのアパート、人が全然入らないのよね」
J「僕を入れても三部屋しか借りられてないのか……あの二人は生計立てれてるのか?」
め「ああ、それなら大丈夫よ。彼女たちのお父さん、有名な人形師さんならしいから」
J「人形師? って普段何してるんだ?」
め「さあ? 人形を作ってるんじゃない?」
真「人形って言っても、本格的なものでしょう? そんなにホイホイ売れるものなのかしら」
銀「もうかりそうな職業には見えないわよねぇ……」
「「「「………………」」」」
真「……ま、まあ大丈夫なんじゃない? 二人とも生きてるんだし」
め「『さおだけ屋はなぜつぶれないのか』みたいな何らかの原理が働いているのね、きっと」
◆生きていくために◆
真「そういえば、JUMはバイトとかはしていないの?」
J「うん。めんどいし」
め「そんなんじゃあ社会の荒波に揉まれて生きていけないわよ」
J「まさかニートに説教されるとは。でも、本屋のバイトの面接を一つ受けたんだ」
銀「へぇ、意外にアクティブね」
J「……だけど、店長がちょっと気味の悪い人で」
め「どんな感じに?」
J「長髪で、見るからにチャラチャラしてますよーって雰囲気」
真「それだけなら大したことないんじゃなくて?」
J「いや。やたらと僕の体に触ってきた。肩とか太股とか」
銀「うわぁ、ないわぁ」
J「しかも帰り際に耳元で、『ありえないんだよね、お前以上のケツなんて』って囁いてきた。僕の尻撫でまわしながら」
め「おえええええええ」ゲロゲロゲロ
真「くそみそな匂いがぷんぷんするわね……」
◆JUMのこだわり◆
め「話題変えよっか……ねえねえ、桜田くんって兄弟いたりする?」
J「ああ、姉ちゃんが一人いるよ」
銀「想像つかないわねぇ」
真「確かに。どんな人なの?」
J「どんなって……ちっこくて、眼鏡かけてるよ。それでボケてる」
め「つまり桜田くんは、ロリコンでメガネ属性を持ちつつ、実は天然な子がタイプなのね?」
J「なぜそうなる」
トテトテ……コテン
薔「……あん、また転んじゃった……ばらしーったら天然な子ね……テヘ……」
J「馬鹿者、それはドジっ子だ」
銀「いや、突っ込みどころが違うでしょ」
真「いつからいたのよ、ばらしー」
◆生きていくために その2◆
銀「あら、もうこんな時間。めぐ、早く行かなきゃ売り切れちゃう」
め「なんと。急ぐわよ、水銀燈」
J「何を買いにいくんだ?」
め「スーパーのタイムサービスがそろそろ始まるのよ。早くしないとおばさん軍団に買い占められるわ」
銀「食費は少しでも浮かせないとねぇ」
薔「……世知辛い……世の中だね……」
め「そういうわけで、いってきまーす」トコトコ
真「いってらっしゃい。……私も部屋に帰ろうかしらね。原稿書かなきゃ」
J「新規はタイムサービス行かなくていいのか? 一番金に困ってそうなのに」
真「私の名前は新規でなく真紅だけど、歯に衣着せない言い方ね。あいにくと自分一人分くらいの食費は稼いでいるわ」
J「ふーん……そういや、水銀燈ってめぐに寄生されてるよな」
真「……本人はわかってないからいいのよ」
薔「知らない方がいいことも……世の中にはたくさんあるんだね……」
J「いや、気づいてない方がおかしい気がするんだが」
◆真紅マジック◆
真「……さて、部屋に帰ってきたはいいけど」
真「……全くもって我が筆は進まない……」
真「………………」
真「……ミス真紅の、マジックショー!」
真「いえーい、待ってました!」パチパチパチ
真「……ここにある一本のペン。どこにでもある普通のペンです。そうね……ではそこの貴方、確かめてくださる?」
真「ふむ、確かに普通のペンですね、ミス真紅」
真「……ありがとう、そうでしょう? ……ですが、このように端を持って上下に振ると……」フリフリ
真「ペ、ペンが、ぐにょんぐにょんに曲がっているッー!!??」
真「ふふふ……いかがでしたか? 観客のみなさん」
真「ブラボォ!! さすがミス真紅!! 見事なマジック!!」パチパチパチ
真「………………」
真「………………」
真「…………今日はもう寝よう」
◆JUMとばらしー◆
薔「……ねえ、見て見てJUM」
J「それに見えるは黒のマフラー」
薔「いぐざくとりぃ……きらきーに買ってもらったの」
J「そいつぁよかったな」
薔「……もう、JUM……こういう時は『似合ってるよ、ばらしー』とか『素敵だ、君にぴったりだね』とか
『君には僕というマフラーがいるじゃないか』とか言うべきなんだよ……」
J「そんなもん?」
薔「そんなもんです」
J「そうか、なら……似合ってるよ、ばらしー」
薔「ふふ、ありがとう……おれいに、とっておきの一発芸を見せてあげる」
J「ほほう」
薔「いきますよ……『ひとつうえの男になる』……」
J「やめなさい」
◆JUMとばらしー2◆
薔「……ねえ、見て見てJUM」
J「それに見えるはタートルネックのセーター」
薔「いぐざくとりぃ……きらきーに買ってもらったの」
J「そいつぁよかったな。見たところ、ユニクロで買ったのか?」
薔「……あん、もうユニバレしちゃった」
J「ユニバレ?」
薔「そう……ユニクロの服を着ているのがバレてしまったときに使う言葉」
J「なるほど。また一つ賢くなったよ」
薔「……知識の源泉に一歩近づいたね……ねえ、JUM。どう……?」
J「ああ、よく似合ってるよ、ばらしー」
薔「ふふ、ありがとう……おれいに、とっておきの一発芸を見せてあげる」
J「……いや、遠慮しとく」
薔「いきますよ……『ひとつうえの男になる』……」
J「やるのかよ」