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春も過ぎ、体も汗ばむ5月の連休明けの晴天日。
とある街の市立高校は、今日も校舎に生徒を吸い込んでいる。
ここは2年B組、時は朝のHR前の一コマ。
眼鏡の男子が、友人二人と談笑しながらクラスに入る。
ベ「いやぁ~GW中のナンパも全滅しちまったよぉ~」
苦笑い。
笹「ベジータ…君は限りある時間をもっと有意義に過ごそうとは思わないのかい?」
呆れ顔。
ジ「まったく。休みの間に数学のプリント集の宿題が出ていたけどこの様子だとやってないな?」
上に同じく呆れ顔。
ベ「ちょ!!そんなモンあったのかよ!すまん、お前らのどっちかで良いから見せてくれ!!」
困り顔。
ジ「どうしようもない奴だな」
笹「あはは…」
そんな事を話しながら自分の席に向かう桜田ジュン(16)。
やれやれといった表情で通学かばんを机の上に置いた彼の周りに、女子が集まる。
「お早う(かしら・ですぅ・ジュン君・だわ・なの・…・ですわ」
ジ「おうお前ら。お早う」
ジュンは、クラスメイトの金糸雀・翠星石・蒼星石・真紅・雛苺・薔薇水晶・雪華綺晶を見渡した。
無論、この様子を見てジュンに羨望の目を向ける男子諸君のいることは言うまでも無い。
蒼「ジュン君、休み中のピクニックは楽しかったね」
雛「楽しかったの。また行きたいの~」
雪「誠にそうですわ。皆さんで食べるランチの美味しかったこと…」
薔「きらきー食べてばっかであとは寝てたくせに…」
雪「後で体育館裏来い」
蒼「でもホント、翠星石のサンドイッチは美味しかったな」 
翠「でしょ!?それに引き換え、真紅が持ってきたお握りと言ったら…」
金「カナの取ったのには石が入ってたかしら…」
雛「ヒナの取ったお握りなんかそもそも素材がお米じゃなかったの~」
真「なっ…貴女達!レディの恥を後々になってまで晒す事はないじゃないの!!」
あっと言う間に騒がしくなる乙女達。
ジ「平和だねぇ…」
ジュンは喧騒からそっと離れ、窓の外の青空を仰ぎ見た。
確かに平和な空が、どこまでもどこまでも続いていた。
雲はいつもより高く昇り、校庭の新緑は日差しに照え、カラスは群れて飛びつつ鳴き声を上げ…
…カラス??
ジュンが違和感を感じたその時、HR開始のチャイムが響いた。
ジ「はぁ、またいつもの朝の始まりか…」

いつもの朝。
クラス担任の梅岡がキモい程の笑顔で戸を開く。
そして教卓へ颯爽と進み…
梅「やぁ、お早う!!みんな元気かい!?じゃあ、HR始めるぞ!その前に笹塚は廊下へ出てような!!
  …じゃあ、まず、今日の予定は…」
といった具合に、誰もろくに聞いていない中HRを進め、その後の授業へと続く退屈な儀式…

これが、ジュンの言う「いつもの」朝だった。
「いつもの」を強調したのは説明するまでもなく明らかであろう。
…その朝は事情が違ったのだ。
まず、チャイムが鳴って静まった教室に、梅岡が悲鳴を上げながら転がり込んできたのだ。
なぜか?そのホモ公務員は、その頭を一羽の立派なカラスによって爪で鷲掴みにされ、クチバシで頭を
キツツキの如くつつかれていたのである。
梅「やぁ…おはよぅあ痛たたたたたた痛い痛いイタ気持ちいい!!」
梅岡は教卓にたどり着く前に、あえなく教室の入り口近くで崩れ落ちた。
ジュンを始めクラスの一同は、目の前でカラスの攻撃を受けつつ地に這いつくばりながら恍惚の表情を浮かべ
身をよじらせているキモい青年を遠巻きに…そして驚きの眼差しで見つめていた。 
紅「ちょっとジュン…あれは?」
ジ「カラス…だよな?」
と、別の人影が教室に入ってきた。
?「ちょっとぉ、あんたも担任ならさっさと案内なさい?転校生の扱いがなってないわねぇ…?」
その少女、容姿端麗。
クラス一同は、その美少女の突然の登場に肝を抜かれつつも状況の把握に努めようとした。
ジ「転校生…?」
ジュンはそう言葉にしつつ、その少女の美しさに心を奪われていた。
長くて銀色の髪。赤い瞳。絶世のスタイル。そして…研ぎ澄まされた刃よりも鋭い目。
この時、梅岡の頭をつついていたカラスはその動きを止め、待ってましたとばかりにその銀髪の少女の肩に
飛び移った。
?「んふふ、ご苦労様ぁ」
そう言って、カラスの頭を撫でてやる少女。
その姿に、その場にいた全員が驚愕した。
いつまでも倒れていて欲しい男…梅岡が痛む頭を押えながら立ち上がった。
梅「みんな、転校生を紹介しよう!彼女の名前は…」
そう言って彼は黒板に向き直り、チョークを持ってこう書いた。

水銀灯

雛「あれ何て読むの~?」
ジ「すいぎんとう、じゃないか?」
そう言ってジュンは少女を見やった。
…その時の少女の表情を何と表せば良いだろう。
まるで、この世の全ての恥部を目の当たりにしたような軽蔑と憎悪が…転校生の顔に一瞬ありありと浮かんだ。
ジュンだけではない、クラス全員が、転校生の少女のその表情に背筋を凍らせた。
さて、これに一人気づかない梅岡はチョークを置き、手をはたきつつ笑顔で転校生に向き直った。
梅「じゃあ水銀灯、これからの君の楽しい学校生活を共に過ごす仲間達に一言挨拶を…」
転校生の、ハワイのマウナロア火山をも凍りつかせそうな顔を見た梅岡が最後まで言葉が出せるわけもなかった。
やがて、少女は唇を真一文字に結び、顔をうつむかせた。 
少女は拳を握り締め、カラスを載せたその肩は小刻みに震えだした。
梅「あ…あの、水銀灯?」
ベ「あっ!!梅岡が転校生な~かした!い~けないんだ、いけないんだ!言っちゃろ、言っちゃろ、せ~んせいに
  言っちゃろ!!」
クラスがざわめいた。
あの糞教師、いつか僕達の力で免職させてやる…とジュンが密かに思ったその時。
転校生の少女が顔を上げた。
そして、その両手を一杯に広げ、叫んだ!!
?「メイメイ!!他の皆!!やっておしまい!!」
刹那、少女の肩にいたカラスは再び翼を広げ、当惑していた梅岡の顔面に飛び込んだ。
それだけではない。開かれていた教室の窓という窓から、おびただしい数のカラスが黒い弾丸と化して
なだれ込んできたのである!
梅岡は再び倒れこんだ。彼は加勢に加わった別のカラスらの殺到をも受けた。
梅「ああ!痛い!痛いが快感だ!もっと、もっと僕に痛みを!!」
梅岡のイタい叫びは…他の悲鳴に掻き消された。
カラスの大群は、クラス内にいた他の生徒達にも否応なく襲い掛かったのである。
ジ「あ!!僕のメガネ持ってくな!」
真「きゃあ!来ないで!」
翠「髪を引っ張るなですぅ!!」
薔「が、眼帯つつかないで!これは食べ物じゃないの!!」
金「いつぞやのデジャヴかしら!!」
雛「や~ん、怖いの!」
ベ「おっおい!俺の尻をつつくな!」
蒼「やめて!近寄らないで!」
生徒達は、乱舞するカラスの大群の下、片手で顔を守り、片手でカラスを振り払おうと、狭い教室内を
右往左往しはじめた。
?「きゃははははははははは!!もっとよ!あなたたち、もっと痛めつけてやりなさぁい!」
転校生の少女の、この上なくサディスティックな笑みをうかがう余裕のあるものは誰もいなかった。 
ジ「へぁああっっ!!目がああああああああああ!」
翠「きいいいい!!髪がからまったですぅ!」
金「ああん!オデコつつくなかしら~!!これは滅茶苦茶痛いかしら~!」
真「嫌ぁ!羽毛が降ってくるわ!」
雛「あ~ん!!」
蒼「おじいさん!助けてぇ!」
ベ「あっ、ズボンに穴が…尻がっ尻だけはやめてアッーーーーーーーーーーーーーー!!!」
梅「ああ!何もかもが新しい世界だ!いいっ最高だ!!」
2年B組の教室内は、さながら新しい死体が埋められたばかりの夜の墓場のような壮絶な情景であった。
悲鳴。絶叫。(そして嬌声。)
そして…その全てを蔑む声が、カオスと成り果てた教室に響き渡った。
?「覚えておきなさぁい!私は水銀燈!!最高のショーだわぁ!もっと…全てをジャンクになさぁい!!!!」
世界をわが意のままにした者だけが得る至福の笑顔を、水銀燈はその時、確かにしていたのであった。

つ☆づ☆く

…おまけ。
クラスの生徒達がカラスの無差別攻撃に逃げ惑っていたのは先に述べた。
…がしかし、例外がいた。
その貴重な例外はこの時どうしていたのか。
雪「ああん、お待ちになって!なんて美味しそうに引き締まった小鳥さんなんでしょう!さあ、私の手に
  お止まりくださいな!!」
…横暴極まりないカラスの群れも、流石にこのアブナイ人間をターゲットには出来ない様子であった。

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