私たちは『大枕投げ大会』のため、大広間に集合していた。
二年生全員が集まった大広間はワイワイガヤガヤ、物凄い喧騒なのだわ。
ああ五月蝿い……しかもせっかくお風呂に入ったのに、また汗をかいてしまいそう。
翠「フフフフフ……腕がなるですよ~!」
金「カナの策で、楽してずるして優勝カップいただきかしら!」
蒼「はは……。だといいね」
ブンブンとドンキーコングの様に腕を振り回しているのは翠星石と金糸雀。
蒼星石はやっぱり苦笑している。
銀「ああ、かったるいわねぇ」
雪「お夜食が食べたいですわ。お茶漬け系が特に……」
苺「ヒナ、うにゅーが食べたいのー! うにゅー♪うにゅー♪」
枕投げ大会なんてどこ吹く風の三人。はぁ……もう少しやる気出しても良いのに。
薔「ねえねえ、真紅」
薔薇水晶が私に話しかけてきた。
紅「何?」
薔「……枕を投げると、真っ暗」
紅「……急に涼しくなったわね」
薔「がーん」
『枕』と『真っ暗』をかけたのね。
それにしても、口で『がーん』っていう人、始めてみたわ。
笹塚「静かにしてください」
実行委員長の笹塚君が言った。
大広間が水を打ったかのようにシーンと静まり返る。
笹塚「まずは、この大広間と枕などを貸してくださる斉藤さんに感謝しましょう」
笹塚君の隣に立っている斉藤さんに向かって拍手をする。
ありがとうございます! などの歓声も混じってるわね。
笹塚「この枕投げ大会のルール説明をします。制限時間は10分。各クラスに枕が40個ずつ、敷布団が三枚支給されています。枕に当たった人はその場に座ってください
当たった人は他の人の枕で五回叩かれたら復活する事が出来ます。なお、キャッチする事はできません」
……意外と本格的だ。
枕投げって、案外メジャーなの?
笹塚「ここまでで質問のある人は手を挙げてください」
生徒A「味方の枕に当たったらどうなるんですか?」
笹塚「それはアウトにはなりません。そのまま頑張ってください」
生徒A「分かりました」
これ以上の質問は出なかった。
笹塚「では、これで説明を終わります。一試合目はすぐ始めますので、二組と五組はそのままフィールドに残っていてください」
皆の拍手に送られて、笹塚君が壇上から降りる。
私は二組だから……いきなり一試合目だ。
二組と五組以外の人は後ろに下がって観戦するようだ。
私たちは枕を持ってスタンバイしている。
実行委員会の人が、戦場の真ん中に立つ。首からホイッスルを下げている。
そして、ホイッスルが、鋭く鳴らされた。
わーっと歓声をあげて枕のぶつけ合いが始まった。
やっぱりと言うか何と言うか、開始直後に翠星石が枕を抱えて敵陣に突っ込んだ。
当然敵は集中砲火を浴びせ、たちまち翠星石はやられてしまった。
ああ……なんて事……!!
翠「うきゅ~~~」
蒼「翠星石! 今助けに行くよ!」
ウルージ「蒼の人、一人では心細かろう。私も行かせてもらおうか」
蒼星石とウルージ君がが目を回している翠星石を助けにいくも、二人もあっさり倒されてしまった。
これはかなりの痛手よ……。
こっちの主力を倒して、勢いづいた五組はバンバン枕をこっちに投げつけてくる。
金「カナの策を披露してあげるかしら! 枕のよrかしらああああああああああ!!」
苺「ヒナも頑張るのよ! ……きゃあっ!ぶつけられたのよ」
薔「……くっ!」
皆が必死に食い止めようとするも、その勢いに飲まれてしまう。
ジュン「うおおおおお!!」
ベジータ「ギャリック砲! ギャリック砲!」
ジュンやベジータが必死に相手に枕をぶつけている。敵がバタバタと倒れていく。
僅かに向こうの勢いが弱まった。これは大チャンスね。
紅「喰らいなさい! えい!」
私は敵に向かって枕を投げつけた。が、枕は敵に当たらずに……前線で戦っていた水銀燈の後頭部に……直撃した。
水銀燈は背後からの奇襲に怯み、敵に枕をぶつけられてしまった。その場に座り込む水銀燈。……ごめんなさい。
銀「真紅……貴方、なんのつもりぃ?」
水銀燈がまぶたをピクピクさせながら憤怒の表情で私の方に鋭い眼差しを向けてくる。
確実に怒っているわね。ああ怖い怖い。
紅「あらごめんなさい。すぐ助けるわ」
銀「そう……それなら許してあげるわぁ」
紅「ええ、今行くわよ」
私が水銀燈に駆け寄ろうとしたその時……
紅「え!?」
銀「は!?」
え?あれ? ……枕をぶつけられてしまったようね。
そして私と水銀燈を助けに来ようとした雪華綺晶と笹塚君も集中砲火を浴び、やられてしまった。
結局二組は仗助君一人を残し、残りは全滅したわ。
当然ボロ負けよ……。
その後も順調に試合が消化され、結局優勝は一組だったのだわ。
私たちには全く関係ないけどね。