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序章。

12月24日。
今日は一体何の日だ?と言われると俺はたぶんこう答えるに違いないだろう。
「普通の、冬のクソ寒い日以外の何物でもない。」
とね。

所謂、負け組というやつで毎年この時期になると髪の毛が殺気だって言われM字がさらに強調されるそうだ。
元からだ、黙ってろ馬鹿野郎ども。

去年まではそうだったが、今年はちと事情が違うようだ。
M字がやんわりとなり、髪の毛は少しばかりソフトになったそうだ。
だからうるせーんだよ、お前らは。

閑話休題。
何で今年は違うかって?
横で寝息を立てているこのわけのわからん暴走女のおかげでとんでもない数日間を過ごすことになり、今に至るわけだ。

あぁ・・・そうだ。
結果的にこうなることを心のどこか奥の方で期待していたんだよ、俺は。
彼女も・・・薔薇水晶もそうだと信じてやまない。

Joy to the World, the happiness has come.

Merry Christmas, Mr.Vegita-After Yellow, Comes Purple-

Phase1.
12月初旬。

「諸人こぞりて飯の列か。」
「諸人こぞりてむかえまつれだろM字禿げ。」
「そのメガネをかち割ってやりてぇな、今すぐに。」

2限目終了後から5分もたっていないのだが、学内の食堂はこの時間人でごった返す。
かの有名な大佐のお言葉を借りるなら「まるでゴミのようだ。」
クリスチャン系の大学に在学するおかげで、さっき言ったようなくだらない皮肉がポンと出てくる。
困ったもんだ。

「ジュン、今日は何を食べるんだ?」
「そうだなぁ、僕は素うどんにでもしておくよ。」
「しけた野郎だな、150円ってよ。」
「何だと?3大欲求と筋肉と運動神経の塊のような馬鹿に言われたくないね。」
「ああそうかい。」
全く、噛み付くのも面倒になってきた。

「最近お前、なんかおかしくないか?」
「あ?なんでだよ?」

素うどんの乗ったトレーをもったメガネの冴えない親友は俺にこんなことを聞いてきた。
お前さんはいいだろうよ?いつまでも幸せそうにしやがって。たまには喧嘩の一つでもしたらどうなんだ?

「最近、ライス(小)に漬物しか食ってないじゃないか。味噌汁ぐらいつけろ。」
「そういう問題じゃねーだろうが。それに俺は、エコロジーでエコノミーな活動をしているまでだ。」
「・・・聞いた僕がバカだった。」
「ああ、そうかもな」
「・・・お前やっぱり変だ。」

「?」
「どうして噛み付いてこないんだ?ほら・・・いつもならもっと噛み付いて罵倒の嵐になるじゃないか。」
「大した意味はない。」
「本当にそうなのか?」
「・・・ああ。」
本当に、"そう"なんだ。"そういうこと"にしておきたいんだ。
金糸雀・・・元気なんだろうか。

耳に入ってくるBGMは彼女の18番。それを察したんだろうか?いや、間違いなくさっしやがった。
俺の目の前で素うどんをすすってるメガネは時たまかなりKYなことをしてくれる。
カカクヤスクなんて俺のポリシーに沿ったもんじゃない、"空気読め(ま)ない"だ。

「あの卵ジャンキーのことか?」
「卵焼きにゆで卵、締めの卵かけごはん。コレステロール漬けの日々だった・・・ってうるせぇぞ。」
「何だまだ引きずってんのかよ、お前。」
嘲笑うかのようなそのスマイルは何だ。キョンにでもなった気分だぜ。
「・・・」
だが、返す言葉もない。そうだ、そうだよ。未だに忘れられんのだ。
クレモーナだかグレムリンだかクレイモアだか何だか知らんがバイオリン作りの修に行ってくるかしらー!って言い残して俺を振りやがった。
しかも・・2年前の12月24日にな。

「・・・まぁその、クリームチーズ?グレーゾーン?えーっと・・・。」
「クレモーナだ馬鹿野郎。」
「あ、そうそうそれ。行ったらどうなんだ?」
「いまさら会えるかってんだ。俺はもう忘るって決めたんだぜ?」
「その割にはよく覚えてるよな、クレーンゲーム。」
「わざとやってるだろ?お前。薔薇水晶みたいなことしやがって。そういや元気なのか?あの姉妹は?」
「水銀燈も薔薇水晶も元気すぎて困るぐらいだよ。こないだも年末セールかなんかに付き合わされてとんでもない目にあったばっかだよ。」
「そうかい・・・まさかお前、夜な夜なあんなことやこんなこ」
「お前の思考と一緒にするなこの変態M字禿げが。」

「それはすまんかったな。この際変態は認めてやろう。だがM字禿げだけは断固として認めん。」
「お前へのクリスマスプレゼント、育毛剤でいいかなって水銀燈と話してたとこなんだけどな。」
「頼むからやめてくれ、流石の俺でも凹む。」

そんなこんなでその後はくだらない話をどれくらい続けていたのだろう。少なくともうどんが冷めて伸びるぐらいの時間は十二分にあったように思う。

くだらない話の中の大事な話があった。金糸雀のことだ。
認めたくはないが、実際未だに引くずってる部分はあった。彼女も別れたくはなかった-と、思いたい-のだろうが、彼女の為にも-本当は自分の為-別れることになった。
彼女がそんなにマメかといえばそんなことはない。海を越えてしまったら、もう完全にアウトだ。
今頃片言の日本語でメディアに引っ張りだこになってる"カッコいい"おっさんの様な優男を捕まえたか捕まえられたか・・・どっちでもいい。
イタリア人と自分を比較するのもアホらしくなってしまった。わかりきっていたことではあるが。
そんな感じで、俺は自宅への帰り道に寄り道をすることになった。この際どんな感じかは、いちいち気にすることをやめよう。

毎年のことだが気が早い。
緑の看板をひっさげてその中になんかの妖精だかなんかを描いてるとあるカフェはもうメニューが赤く染まっていた。
んでもって毎年この時期限定で出てくるメニュー。

なんだ、今年は去年とほとんど変わり映えしないじゃないか。
本国でハンバーガー屋にケツを噛まれた割には斬新さがない、保守的なメニュー構成をしてきやがった。

「クリスマスブレンド、トールで。」

どっかの綺麗なシルバーブロンドのお姉ちゃんとそのおまけのメガネのせいでコーヒー中毒にされちまったぜ。
かわいそうな俺だ・・・サイヤ人たるものコーヒーなどに現をぬかしている場合ではない!
なんてなことを考える暇も与えないのが、ドリップの魅力だろう。まぁ、出てくるのが早いのなんのって。おう熱い熱い。

「お熱いので、お気をつけて。」
よーく知ってらぁこん畜生。ギャリック砲でもぶち込んでやろうか? 

席に着くと、談笑の声とクリスマスソングが流れる店内をぶち壊したくなるような衝動に駆られた。
ドリップを一口飲んでも収まらない。ラテにでもしておけばよかった。牛乳の力は偉大だ。
そう言えば、2年前の詳細を俺は誰にも話してない-気のせいかもしれんが-。
まぁ誇り高きサイヤ人の俺が誰かに話すことで楽になろうなんて・・・なんて・・・。
・・・なんだこの虚しさは。

「・・私は知ってたよ。」
「何をだ?」
「・・・寂しかったんだね。素直になればいいのに。意地はると・・・私みたいになるよ?」
「・・・まずはどう突っ込んでほしいか俺に教えてくれ。話はそれからにしようか?」
「・・・座っていい?」
「嫌だと言ったらどうするんだ?」
「・・・お邪魔します。」
「人の話を聞け。」

薔薇水晶。変な女だ。ジュンも水銀燈と付き合う前、相当手を焼いたようだ。
気のせいかもしれんが、卵ジャンキーが去った後なぜかよく一緒にいるようになった。
別に何の理由もないのに、取ってる授業もそこまでかぶってるわけでもないのに。
だが、2人きりって言うのはこれが初めてかもしれない。

「・・・私いい人、さみしい人のそばにいる。」
「誰も頼んでNEEEE。」
「・・・だってベジータ、寂しそうだった。わかるよ、その気持ち。」
「どうわかるってんだよ?」
「私もジュンが好きだった。」

な、んだと?
俺は耳鼻科の世話にならんといかんようになってきたのか?いや、そんなはずはない。こないだの健康診断もどこにも異常は見当たらなかった。
ジュンもそのことは知っていたのだろうか?いや待て、なんでジュンが知っていたかどうかが頭の中に真っ先に出てくるんだ?
他にも出てくるもんがあるだろうに。

「・・知らなかったの?」
「知ってたらなんだ?どうにかなったのか?」
「・・・どうにも。」
「なんじゃそりゃ。」
「・・冷めると渋くなるよ?今日は当たりの日だから暖かいうちに飲んだ方がいい。」
言われんでも飲んどるがな。今日は当たりかどうかは別にして。俺は味にこだわりを持つとか、そんな凝ったことはめんどくさいんだ。
そんなことを心の中で呟いた次の瞬間、俺は全力で後悔することになった。

「・・・言われんでも飲んどるがな。今日は当たりかどうかは別にして。俺は味にこだわりを持つとか、そんな凝ったことはめんどくさいんだ。」
「・・・はい?」
「あなたが今心の中で呟いたこと。」
「なんでわかるんだよ?」
「私にはわかるの。こうやって、2人で話してるような場面なら人の心が読めるみたい。」
"みたい"なんてもんじゃない。一言一句間違ってない上に、抑揚まで付けてきやがった。普段からもうちょっと感情を表に出せ。
本気であっけにとられてしまった。情けない。思わず俺は無駄に広い額に手を当て、考え込むようなポーズをとってしまった。
「・・・大丈夫?」
「誰の所為だ、誰の。」
「・・・え?何?私なの?」
「お前以外に誰がいるんだ?答えてみろよ?」
「・・・店員さん。」
「天然ボケも大概にしてくれ。」
「・・・ぶいっ」
なんでVサインなのか、小一時間問い詰めたかったが無駄な事だろうと悟った。勿論、向こうにもばれてるんだろうがそんなことに構ってはいられない。

「・・・ねぇ、2年前何があったの?」
「なんでお前に話す必要がある?」
「・・私が聞きたいから。」
ジュンが手を焼いていた理由もわかる。スネークでさえもコイツと個人面談したら、たじたじだっただろうな。俺はこの時、なぜか話す気になっていた。
負けた気は正直した。けれども、屈したような負け方ではない。なんと言えばいいものか。もどかしさと心地よさが、そこにはあった。
Phase1, Fin

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