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BLACK ROSE 第五話

真紅と街で再会し、自分の胸の内を打ち明け、
真紅にもう一度事務所まで連れて行ってもらった。
しかし、うまく言葉を切り出せないでいた。

「えーと…調子はどうかしらぁ?」
「完全に回復したよ。これで冒険者を続けられるよ」

蒼星石は幸運だった。
大体の人間は死んでしまうものである。何故ならここには冒険者が多い。
負傷した人間を助けるのには、救出に手間が掛かり、治療代も決して安くはない。
それに救出しようとして自分まで死んでしまうことの方が多いのだ。
そんな危険を冒してまで救う価値は無い。それが例え家族であっても。
だったら新しい人材を取り入れようと考える人間の方が圧倒的に多いだろう。

「仲間思いのチームでよかったよ」
「翠星石もですが、皆も蒼星石にどんな事があろうと助けてやるつもりだったですよ」
「あ、あと蒼星石…あの時はごめ」
「ストップ。僕は君に謝らせたくて君と会ったわけじゃないよ」

蒼星石の言葉に真紅達も頷いている。
そこで私は気が付いた。この子達が本当にどうしようもない位のお馬鹿さんだという事に。

「ふふ…分かったわぁ。言葉の代わりに目一杯働かせてもらうわぁ」
「うん…よろしくね。水銀燈」
「じゃあ早速、歓迎会でもしましょうか」

真紅の言葉に皆が声を上げる。
私の居場所はここなのだ。

そんな彼女達も静まり返った夜、とある場所では―

「梅岡団長。お疲れ様です」
「うん。お疲れ。…っともうこんな時間か。君、大臣殿を家まで送ってくれないか?」
「分かりました。それでは団長、失礼します」


「おお、いつもすまんな。今夜も頼むぞ」

この小太りの男が大臣である。毎晩、兵士が一人護衛に付いて家まで送るのだ。
まだ経験の浅い私には大臣殿を自宅に送るのは些か大任の気がするが
団長殿のことだ。何か考えがあるのだろう。

「それにしても、物騒な世の中になりました。夜がこんなに危険になるなんて」
「うむ。この国は治安が悪い。原因は王の政治だろうな…」
「ええ。それで犯罪が増えると同時に犯罪者も増えましたね」

最近、犯罪は増加の一途を辿る。こうして家に帰るのに、わざわざ護衛を付けなければならない程に。
だが犯罪の所為だけではない。最近、街の見回りの兵士が襲われる事件が多発している。
しかも、何か事件に巻き込まれたなどではなく、直接襲われているのだ。

「そうだな。この国で本当に恐ろしいのはあんな連中じゃあない」
「――!」

気付けば自分の目の前に立っている者がいた。顔は暗くてよく分からない。
今まで気配すら感じなかった。危険だ、と直感が騒ぐ。
急いで大臣殿を逃がさなければ――!

「お逃げください!」
「あ、ああ」

大臣殿は襲撃者に完全に怯えている。
自分がしっかりしなければ。せめて大臣殿が逃げる時間ぐらいは稼いでみせる――!

「――な」

一瞬だった。襲撃者は自分の後ろに回りこみ、音も無く大臣殿の息の音を止めた。
次は自分だと分かっている。だが足が震えてどうにもならない。

「ひ、あ」

大臣殿を殺した奴だ。許してはならない。
だが、足は震え、歯もガチガチと鳴っている。
口だけでも何か言ってやろうと思ったが、声が出ない。

「……」

襲撃者がこちらに近づいてくる。一歩近づくに連れて、自分の死がやってくる。
そんな中、この襲撃者は自分に対して何を思っているのか考える。
謀殺を行うのに邪魔な存在か。それとも護るべき人物もろくに護れない度胸無しだろうか。
自分で勝手に考えたことだが、そうすると怒りの感情が芽生えてきた。
憎い。今、目の前にいる奴が憎い。

「あぁあああぁぁ!」

勢いよく襲撃者に対して走り出す。今の自分は冷静ではないだろう。
たが、勢い空しく急所を一突きされた。

「あ…う」

ものすごい激痛が走る。だがそれは次第に薄れてきた。
自分の意識が朦朧としている。だが、せめて自分を殺した奴の顔ぐらい見てやろうと
意識が途切れそうになりながら、気力を振り絞りそいつの顔を見た。

「な…ぜ…」

そこで自分の意識は途切れた。

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