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高レートオセロ第1戦目
現在、先攻の黒石はジュン、後攻の白石は真紅。

初心者のジュンにとって、オセロはどのように打てば良いのか分からなかった。
ジ(とりあえず、数が多い方が勝ちだから……たくさん取れるところを打てばいいかな?
  姉さんとやった時もそうやった記憶があるし)
どうやら昔の記憶によると、ジュンは常に1番多く取れる場所に石を打っていたらしい。
ジ(よし、なら今回もそんな風にやれば、きっと勝てる!!)
彼は昔の曖昧な記憶を頼りに石を打ち始めた。

ジュンが石を打って勝負が始り、真紅も続けて石を打つのだが……
ジ「……」
真「……」
2人とも無言のまま石を打つ。

再び、起こる静寂。音の無い世界。唯一の音といえばパチッ、パチッ、とオセロの石を打つ音のみだ。
しかし、その音もこの広い部屋ではただただ空しさをより大きくさせるものだけであった。
この部屋にいる2人はただ無言で石を打つ。空しく、そしてとても寂しい静寂な時間。
だが、別の見方をすれば、2人は互いに口がきけないほど、集中しているということだ。
それもそのはず。これはただのお遊戯ではない。大金をかけた真剣勝負なのだ。
無駄口を叩いている暇などは無かったのだが……最初にこの沈黙を破ったのは、真紅だった。

それは、始まってわずか数分後の7手目のこと。
ジュンが石を打った途端に、真紅が彼の打ち方を見て思わず口走った。
真「あらっ?今まで見てて分かったけれど…貴方、そんな打ち方するの?」
別にどんな打ち方でもいいだろ、とジュンがムッとした顔つきで言い返す。
真「別にダメとは言っていないのだわ。ただ…おもしろいだけよ?」クスクス
ジュンが石を打つたびに、真紅がクスクスと笑い出す。自分が何かするたびに、見ている人に笑われる……
これでは、なかなか集中出来ない。真紅はわざとやっているのだろうか。それとも、何か考えがあってやっているのだろうか。
どちらにしろ、ジュンにとっては不愉快極まりない。全く、集中できない。

しかし、そんな不愉快状態のジュンなどお構いなしに、真紅はニヤニヤしながら言った。
真「このオセロをやってみてどうかしら?こんな大金がかかっていたら、緊張感があるでしょ?」
ジ「うるさい、集中できないじゃないか!!」
あまりに真紅がうるさいので、ジュンが怒鳴った。
ジュンが打つ度に必ずと言っていいほど、真紅が横から口を出す。そのことが彼を苛立たせ、集中出来なくした。

しかし、それでもなお、真紅は話し続けた。
真「あらっ、気に障ったかしら?でも、私は事実を言ったまでよ。それに……貴方は今、石1枚10万円の重みを感じているかしら?」
その言葉を聞いて、思わずジュンの手がピタッと止まった。おもわず、はっ、とする。
ジ(……そうだった。これはただのお遊戯じゃない。真剣勝負なんだ!!)
これは真剣勝負……生きるか死ぬかの……そう考えると、手が少し震えた。が、すぐに収まった。
ここで、緊張していても何も始まらない。こんな真剣勝負になったのも覚悟の上だ。何も恐れることはない。
ジュンは一旦、大きく深呼吸をして緊張を和らいだ。
少しは落ち着いた……が、序々に欲望という名の魔物が、ジュンの平常心を侵食し始めてきた。
石1枚は10万円。なら、たくさんとれば、もっと多くのお金が手に入って借金も……
お金が欲しい……もっともっとお金が……
そのような考えが、さっきから頭の中を駆け巡っている。
さっき真紅が放った一言、『石の重みを感じているかしら?』

この言葉は示す効果は大きかった。その理由に、ジュンはこの言葉を聞いてから、石を多く取ることばかりを考えるようになった……

勝負が進んで、現在16手目の盤上の状態はというと…

 a b c d e f g h
1++++++++
2++++●+++
3++○●●●++
4++●○●●●+
5+●●●○●++
6++●●●○++
7+++●++++ ●16枚
8++++++++ ○ 4枚

一番石が多く取れるところばかりを狙っていった初心者のジュン。
自分の石の数が多いことで、もう少しで勝てるぞ、と希望が湧いてきた。

一見、ジュンが優勢に見える。だが、これは大きな間違いだ。実は、この状態で劣勢なのはジュンである。
オセロにおいて、盤上の石の数が多いからといって、優勢とは言えないのだ。
オセロというのは、あくまで最終的に石の数が多い方が勝ちというゲームであって、いくら途中で石の数が多くなっても、
それを優勢とは言えないのだ。むしろ、序盤・中盤では、自分の石の数は少ない方が優勢となる場合が多い。
序盤・中盤では、目先の石の数ではなく、自分の打てる場所の数を多く確保することが最重要なのだ。
しかし、初心者のジュンは当然ながら、そのようなことを知らなかった。

一方、真紅はというと、この様子をクスクス笑いながら見ていた。
真(ふふふっ、この男は単純ね。ちょっと一言いっただけで熱くなって、目先のことしか考えなくなる……愚かな子ね)
そう、さっきの一言も真紅の作戦の一つだったのだ。

彼女の作戦とは、まず彼女が先ほどのように、自分が行っているゲームの重み、重要性をプレイヤーに知らせる。
そうすると、大抵のプレイヤーは熱くなって、先のことしか考えなくなってしまう。
そして、初心者のプレイヤーは、1枚でも多くの石を序盤から取ろうと走ってしまう。
実は、これが真紅の本当の狙いなのだ。

序盤から石を多くとると、後半になればなるほど、自分の打てる場所が少なくなり苦戦する。
要するに、自分の首をただ絞めているだけなのだだが、大抵のプレイヤーは気づかない。
そして最後に、完全に自分の首を絞めきったプレイヤーを真紅はおいしくいただくのである。
まるで、蜘蛛が自分の巣にかかった虫をじわりじわりと食べるかのように……
この作戦で、一体何人のプレイヤーが餌食になったか……数知れない。

が、そんなことを全く知らないジュンは、一番石が多く取れるところばかりを狙っていた。
かわいそうなことに、彼は見事に、真紅の作戦にかかっていた。今の彼は、蜘蛛の巣にかかった状態。非常に危険だ。

一方、真紅はというと1個、2個と、少しだけ石を取っていった。自分の打てる場所の数を多く確保するように。
そんな状態がずっと続くので、さすがのジュンも真紅を見て不思議に感じていた。
ジ(さっきから真紅は全然石を取らないが……)
真紅の打ち方に気になるジュン。しかしジュンはこの時、自分が完全に蜘蛛の巣にかかってしまったことに気づいていなかったのだ。
自分の異変に気づいたのは、39手目のことだ。

黒石が34枚で、白石が9枚にもかかわらず……
ジ「あれっ?打てるところが…ない?」
そう、今まで打てる場所を確保していなかったジュン。
この序盤、中盤の行動が後々、このように自分を苦しめてしまうのだ。
真「パスね?」クスクス
そんな彼を見て、真紅は、愚かね、と言いたげに笑った。
ジ(なぜ…?あんなに石をとってきたのに…なぜだ?)
何が起きてしまったのか?自分は序盤、中盤であんなに石をたくさん取ってきたのに……なぜ?どうして?

もはや、どうしてこうなってしまったのか全然理解できていないジュン。
この39手目以降、ジュンは最悪と言っていいほどの状態だった。そして、ジュンの顔色も段々と悪くなっていった。
無理もない。ジュンは、39手目以降、角を取られたり、パスをしてばかりと非常に悪い状態だったのだ。

このままでは負けてしまう。いやでもまだ分からない。もしかしたら…

この場においても、ジュンはまだわずかな希望を持っていた。もはや、誰が見ても負けが確定的な状況なのに……
そんな希望を持っては見たものの、やはり現実は残酷なものだった。
最終結果では

 a b c d e f g h
1○○○○○○○○
2○○○○○○○○
3○○●○○○○○
4○○●○○○○○
5○○○○○○○○
6○○○○○○○○
7○○○○●●○○ ● 4個
8○○○○○○○○ ○60個

ジ「そ、そんな……そんなバカな!?」
信じられない。なんと黒石はたった4個しかなく、真紅との差は56個。
このゲームのレートで現金換算すると……560万円!?
なんということだろう。ジュンは1戦目から560万円もの損失を出してしまった。

真「あら?1戦目でこんな結果?貴方、これでは本当に……死ぬわよ?」
ジ(どうして……こんなにボロボロに?同じぐらいの強さなら、こんなことはあり得ない……はっ!?)
突然、ジュンが何かをひらめいて、真紅に叫んだ。
ジ「真紅!!お前、実はオセロが相当得意なんだろ?だから、自分が強いのをいいことにこんな勝負を!!」
どうなんだ!そうなんだろ!?、と真紅を指して叫んだ。
しかし、真紅はというと、落ち着いた様子で静かにつぶやいた。
真「…今頃気が付いたの?愚かね。まぁ、確かに私は、オセロはちょっと得意なだけなのだわ」
大会ベスト10に入ったこともあるけれどね、と自慢げに話す真紅。

ということは、真紅はオセロのプロである。プロと初心者の対決……こんなものは勝負をする前から勝敗が決まっている。
勝負が決まっている……だからこその、このギャンブル。もちろん、彼女はそのことを最初から知っていたのだ。
実は彼女は多重負債者を槐から紹介してもらって、この勝負をする。
当然、多重負債者はわずかな希望を持って勝負を挑む。しかし、結果は当然ながら惨敗。
挑んだ者、全てが何百万、何千万もの借金を上乗せされ、どこかへ連れて行かれる。
それが、真紅の狙いである。多重負債者にさらなる負債を背負わせ、自分は大儲けをする。
……まさに、鬼である。美しい女性の皮を被った鬼だ

そんな真紅を見て、やり場のない怒りがジュンをつつむ。徐々に拳に力が入る。
ジ「ひ、卑怯だぞ!?こんな勝負で、僕みたいな初心者が勝てるとでも思っているのかよ!!」
ふざけるなよ、とジュンは歯を食いしばりながら、拳に力を入れて叫んだ。

しかし、真紅はそんな姿を落ち着いた様子でただ眺めているだけだった。
そして一回椅子を座り直してから、やれやれ、といった感じで答えた。
真「貴方、何を言っているの?まだ1戦目が終わっただけなのだわ。次に勝てばいい話なのだわ。
  それを、1戦負けたぐらいで、ギャーギャーと騒ぎ立てて……恥ずかしくないの?」
ジ「そんなんじゃない!!僕が言いたいのは……」
お前がプロ級の腕だ、と言いたかったのだが、全てを言い切る前に真紅の拳がジュンの頬に軽くめり込んだ。
ぐはっ、と椅子から落ちるジュン。そこまで威力は大きくなかったのだが、
いきなりの出来事なので、思わずバランスを崩してしまった。

ジュンは一瞬の出来事に唖然としていたが、すぐに意識を取り戻して、何をするんだ、と殴られた自分の頬をさすりながら叫んだ。
真「五月蝿いわね。貴方、元サラリーマンでしょ?
  会社で一回ミスをして、それをギャーギャーと子どもみたいに騒ぎ立てる人がどこにいるのよ?
  貴方はただ、私に1回負けただけ。ただそれだけの話なのよ?」
分かったら、早く2戦目をやるのだわ、と言いながら真紅は再び椅子を座りなおした。
またしても、怒りが込み上げてくるジュン。しかし、その怒りはすぐに消し飛んだ。
ここで怒ってもしょうがない。所詮、自分は"ただチャンスを与えられた"ゲスト。どんな条件でも飲んでも従うしかないのだ。

ジ(くっ…絶対に許さないぞ……この女だけは絶対に倒す!!)
今のジュンには、現金以上に勝利したい理由が芽生えた。


To Be Continued...

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