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地下組織の者と言われているので、もっと危ない人物なのかと考えていたジュン。
しかし、実際はどうだろう?目の前にいるのは真っ赤な服に青い瞳。
おまけに金髪のツインテールをした女性だ。危ない人物どこか、
これではまるでどこかの国のお嬢様ではないか。
おそらく、街中を歩いていれば十人中九人が振り返るだろう。

ジ「君は、ローゼンメイデンの人…なのか?」
あまりに自分の想像とかけ離れていたので、思わず聞いてしまうジュン。

真「そうよ、私は誇り高きローゼンメイデンの一人真紅なのだわ。
    貴方が今夜の相手なのね」
名前は?と聞かれた。そうか、この女性は真紅というのか…
ジ「あっ、はい。僕の名前は桜田ジュンです」
自分のタイプの女性だ。
ジュンは目の前にいる女性…真紅を見て少々ぎこちない様子だった。

真「そう、ジュンというね。では、ジュン!さっそく今日の勝負を始めるのだわ」
今日の勝負はこれよ、と真紅はテーブルの方を指差した。
テーブルの上には64マスのボードと両面が白と黒の石がおいてあった。
一目でそれが何のゲームで、どういうルールなのかが分かった。
いやむしろ、このゲームのルールが分からない人はいないだろう。

ジ「これは……オセロ?」
本当に自分の思っているゲームなのか?
もしかしたら変わったルールで行うのではないか?
という考えが、思わずジュンの口を開かせた。
真「そうよ。でも、これはただのオセロではないのだわ。
    このオセロを使って今からギャンブルをするのよ」
では、早速ルールを説明するのだわ、と真紅は慣れた口調で説明を始めた。

今回のオセロのルール
・基本的に普通のオセロと同じ
・勝者は、敗者との合計石数の差によって受け取る現金の額が変わる

Aは白、Bは黒にして、勝負をする。
結果は 白40 - 黒24 となった。
この時、石数の差は36個となる。
レートを石1個につき、100円とすると…
AはBから36×100円=3600円を得る
(ちなみに今回のレートは石1個につき10万円)
・勝負は5回勝負。
・賞金は5回戦終了後、まとめて清算する。
・ゲスト側は屋敷を出るには真紅に勝たなければならない。
(最低、3勝はしなければならない)


真「…というのが、今回のオセロのルールよ」
ジ(石1個につき…10万円!?高すぎる!!)
通常では考えられない額だ。こんな額だと、簡単に金額が1000万円に達してしまう。
あまりの高レートに戸惑うジュン。


もし負ければ、とんでもない借金をさらに上乗せすることになるが、
もし勝てば、今の借金もチャラにすることも……


通常ならとてもじゃないが、こんな勝負に付き合いきれない。
あまりに無謀……あまりに愚かな行為だ。
しかし、今の彼には『もしも』というわずかな希望を描いていた。
もしも勝てたら…、もしも借金をチャラに出来たら…

人は賭け事になると、このようにわずかな希望を持ってしまう。
こういう限りなく0に近い希望を持って、人は、ギャンブルに進んでしまう。
そして、ギャンブルに進んで、その先にあるのは……破滅。破滅への第一歩である。
この限りなく0に近い希望を持って、人は後先考えないで行動する。
これはギャンブルにおいて、一番危険な思考だ。
今は負けても、次に勝つかもしれない…完全な悪循環だ。
こうして人はずるずると、ギャンブルという名の泥沼に引きずり込まれてしまうのだ。

今の彼は、まさに泥沼へ入ろうとしている状態だ。非常に危険な状態。
しかし、彼も後先考えていない、というわけでもない。
後のことも考えているはが、やはり持ってしまう…わずかな希望を。


ジ「分かった…その勝負、受けようじゃないか!!」
真「ジュンは良い子ね…」クスクス
まるで馬鹿ね、とでも言いたげに真紅が笑う。
ジュンは真紅の笑いに気になった…が、今の彼にとってそんなことは、どうでも良かった。
今の彼には気になったことが2つあった。
ジ「勝負の前に2つ質問していいか?」
何かしら?と答える真紅。
ジ「まず1つ目に、ゲスト側はこの屋敷を出るには
  最低3勝しなければならないと書いてあるが…負けたらどうなるんだ?」

ジュンの質問に真紅は黙り込んだ。
そして、しばらく沈黙が続いた……20秒ほど経って、
真紅がため息をつきながら口を開いた。

真「貴方、勝負をする前から負けることなんて考えていたの?」
ジ「!!」
あまりに意外な答えに戸惑うジュン。
ジ「べ、別にそんなつもりは…」
真「そんなことを聞いてどうするつもりなの?聞けばそれで満足なの?
  はぁ、要するに貴方は戦う前からこの勝負を恐れているのだわ。
  先が見えないこの勝負を」
…的を得ている。ジュンの不安、恐怖を理解している。
ジュンはあまりに的確な指摘に返す言葉も無かった。

真紅はそんな彼を見て、再びため息をつきながら言った。
真「まぁ良いわ。負けたことなんて負けてから考えればいいのだわ」
続けざまに、2つ目の質問は何なの?と尋ねる真紅。
ジ「…2つ目に、ギャンブルとしてオセロを選ぶのはおかしくないか?」
真「あら、どうして?」
まるで頭の上に『?』が付いているかのような顔つき。
とぼけているのか、本当に分かっていないのか…
真紅の表情から読み取るのは不可能であった。

確かにジュンの言うとおり、オセロをこんな高レートのギャンブルとして用いるのは
不条理である。ギャンブルの最大の要素は運。
そう、ギャンブルには運が一番必要となるのである。
その次に、必要なのが技術や経験、勘だ。
しかし、オセロではどうだろうか?おそらく、運の要素はほぼ無い。
そのかわりに、技術と経験があれば勝ててしまう。
ギャンブルの最大要素が欠けているではないか。
これでは、ギャンブルとして不成立である。
ジ「こんな高レートなのに、オセロには運の要素がない。これではギャンブルとして…」
不成立だ、と言いかけた時、真紅がジュンの言葉をさえぎるように言った。

真「だから?」
…えっ?
また真紅の意外な回答に、キョトンとするジュン。
真「だから何なの?そもそもこの私が運の要素を含んむような、
  おいしいギャンブルでも持ちかけると思ったのかしら?」クスクス
愚かね、とまたジュンを笑う真紅。
真「貴方は、表の世界では何があったにしろ、
  多重債務者となってしまったわ。通常なら暴力団の方たちが始末して下さるわ。
  でも、貴方は始末されることなく"チャンス"を掴んだのだわ。
  今回は特別なのよ?だから、これくらいの扱いは当然なのだわ」
確かにそうだ。真紅の言っていることは正しい。
ジュンは"大金を持って来た"ゲストではなく、"ただチャンスを与えられた"ゲストなのだ。
相手の条件がどんなに不平等でも、その条件を飲まざるを得ない。
飲まなければ、このチャンスを見逃してしまう。

真「貴方は今、借金という名の川で溺れているのだわ。そんな人が誰かの投げ出した、
  ロープという名のチャンスを掴まなくてどうするの?」
真紅の力説が続いた。彼女の言い分はどれもこれも正しい。
反論の余地がない。思わず、ジュンは彼女の力説を聞き入れていた。
真「貴方はただ、この勝負に勝てば良いわ。それもギャンブルの重要な要素、
  運を必要としない。ということは貴方は、実力さえあれば、
  この勝負は絶対に勝って、借金も返済できるのだわ!!」

運が必要とせず、実力のみでこのギャンブルは勝てる……
確かに、この言葉は響きが良い。実力さえあれば簡単に勝ててしまう。
しかし、逆を言えば、実力が無ければこの勝負は絶対に勝てない。言わば、"運"無き勝負。
信じられるのは、自分の実力、経験…そして勘だ。
果たして、こんな勝負はギャンブルといえるだろうか?
いや、こんな勝負で大金をかけれるだろうか?


悩んだ挙句、ジュンはやはり、与えられた条件を飲むしかなかった。
よし、なら早速勝負開始だ、とジュンが意気込み、席につこうとした時、
真紅が女王様のような口ぶりで言った。
真「ジュン、紅茶を入れて頂戴」
ジ「……はっ?」
こんな状況に何を言い出すのか、この女は。
いやいや、おかしいだろ、と手を振るジュンだが、
真「私は紅茶を飲んで落ち着きたいのだわ。それに"ただチャンスを与えられた"
  ゲストならそれくらいのことはして当然じゃない?
  それとも、ここで紅茶を入れず、そのままこの屋敷を後にするつもり?」
断ると、せっかくの掴んだチャンスを失いそうなので、
ジュンは渋々、隣のテーブルで紅茶を入れた。

隣のテーブルには、カップやティーポット、紅茶の葉など、
紅茶を入れるのに必要な道具が全て揃っていた。
どれもこれも、純銀製のもので、その辺の雑貨店で買えそうにない代物ばかりだ。
ジュンは、高級そうな純銀製のティーセットに見とれながらも、
紅茶を入れて真紅に渡した。
そして、ジュンが、ほらよ、と紅茶を机に置くと、
下僕にしてはやるわね、と言いながら真紅はそれを手にとって飲み始めた。
ジ(いつからお前の下僕になったんだ…)
思わず、心の声が口に出そうだったが、ジュンはとっさに口をふさいだ。
しかし……真紅の紅茶を飲んでいる姿は、とても優雅だ。思わず、見とれてしまうジュン。
これが、さっきまで自分を力説していた女性と同一人物とは、にわかに信じがたいものだ。


数分後、真紅は紅茶を飲み終え、さっそく勝負を始めるのだわ、と言って席に着いた。
こうして、やっと石1個、10万円の高レートオセロの勝負が始まった!!

まずは白黒の決定だが、真紅はあっさり白を選んだ。
なんでも、ジュンは(ただチャンスを与えられた)ゲストなので、
先にやらせるのが礼儀、とのことである。
ちなみにオセロの基本ルールでは、黒が先手、白が下手となっている。
ジ(オセロは…小さい時に、姉さんとやったぐらいだからな…)
そう、ジュンはオセロを今までに数回程度しかやったことのない初心者であった。

そんな男が実力のみの、このギャンブルで勝てるのだろうか?
時間は午後7時半。外は満月でまばゆいばかりの月光が当たり一面を照らしていた。
今、勝負の夜が始まった。

To Be Continued...
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