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短編「図書館」シリーズ番外「双子、そして夜」

この話は、図書館シリーズ9話のおまけに当たる作品です。
百合が苦手な方はくれぐれもご注意を。NGワード「yuriyuri」

-あらすじ-
最近、蒼星石が水銀燈とやたらと仲が良い。翠星石は、自分の知らないところで何かあったのか、と
水銀燈係の真紅に話を聞く。たまたまそれを知っていた真紅が言う所に寄れば、
一冊の漫画の話題で二人が話しているのではないか、ということがわかった。
蒼星石のプライベートだから、と嗜められながらも真紅に頼み込んでその本を教えてもらった翠星石。
早速家に買って帰ったのだが…


家に帰って食事も済ませ、蒼星石とそれぞれの部屋に分かれると、翠星石は早速本を開く。

「う…わぁ…」

描かれていたのは翠星石と同じくらいかそれより少し年上の少女達同士の恋愛。
それは、もちろん濡れ場もあるディープなもので…むしろそっちがメインであろうか?

「すっげぇですぅ…」

普通とは言いがたい女の子同士のソレではあるが、しかし不思議と嫌悪感は無く。
むしろ、それ以上に気になったのは、描かれている少女達の心情の方だった。
…もちろん、漫画とはいえ見慣れない「そういう」シーンなんて見てしまったわけで、
下腹部の方がちょっと気になったりもするのだけれど。
ともかく、物語やそういうシーンに引き込まれながら翠星石は最後まで読みきったのである。

「続きが気になるですぅ。この調子だと告白は失敗しちゃったみたいですけど…」

そんな事を言いながら、ついついもう一度見返してしまう。
心情面で、特に気になったのが、実姉妹で恋をしたお話。実際に仲の良い妹がいるからだろうか。
妹によそよそしくされたら生きていけない、という気持ちには頷けるものがあった。
しかしどうだろう。もし自分がこの物語の姉のように、妹に…蒼星石に言われたとしたら。

(翠星石…大好き)
「な、何言ってるですか!私も好きに決まってるですよ!何を今更です!あたりまえです!!」

微笑む蒼星石とともに想像して、なぜかカーッと顔が熱くなる。しかも返答まで慌ててしまって
馬鹿みたいだ。そんな自分の反応にぶんぶんと首を振ってから、次の台詞。


(翠星石…君しか見えない)
「!!!!な、なにをこっぱずかしい事をいってるですかあ!
 っていうかなんでそんな台詞が臆面も無く似合いやがるのですか!!!」

何故だか2つめがクリティカルヒット。思わず、椅子から立ち上がって畳の床にゴロゴロと転がる。
自分で何やってんだとか思わなくも無いけれど…止まらないものは止まらないのである。
そんな事をやっていたとき…部屋の扉ががらりと開く。

「ちょっと翠星石。さっきから部屋で何やって……」

床に転がったまま動きを止める翠星石と、ソレを呆れながら見下ろす蒼星石。

「…また恋愛小説見て転がってたの?」
「こ、今回はちがうですぅ…」
「じゃあ何なのさ…漫画?」

部屋に入ってきた蒼星石は、いまだ畳に寝転がったままの翠星石の横を抜けて机へ近づいていく。
そして、カバーのかかったその漫画を開いて…動きが止まる。動かない数秒間が過ぎて

「…蒼星石?」

翠星石の声が響いたとたんにどたどたどた、と凄い勢いで部屋に戻っていく。
そしてすぐに、隣の部屋で何かをゴソゴソと引っ張り出すような音がする。
何をやっているのかと、起き上がって見に行けば…本棚の引き出し奥に手を突っ込む蒼星石の姿が。
そして、そこから取り出したのは一冊の漫画。…多分、先ほど翠星石が読んでいたのと同じ本だ。

「…あれ?ある…じゃあ…」

振り返った蒼星石と目が合った。翠星石は、獲物を見つけたような笑みを浮かべてにじり寄る。

「…ほほーう。そこが蒼星石の怪しい本の隠し場所ですかぁ」
「え!?あ、ちょ…今のなし!見なかったことに!!」
「見せるです!他にどんな本を隠してるですか!?」
「無い!無いよ!これが初めて買った本なんだってばっ!!」

ふざけてその引き出しを漁りにかかる翠星石と、それを止めんとする蒼星石。
どたんばたんともみ合った挙句、結局二人とも疲れきって畳の上に寝転がる。
二人そろってぜぇぜぇ荒い息をついていたところで、蒼星石が話しかける。

「ねえ…面白かった?あの漫画」
「…面白かったですよ?」

互いに木目の見える天井を見上げながら視線を合わせず言葉を交わす。

「そっか。ああいうの…いやじゃない?」
「そうですねぇ…相手に寄るですよ」

素直な返答を返した翠星石に対し、蒼星石は意表をつかたれたと動揺しながら返答する。

「うぁ!えっと、別にそういうアレで言ったんじゃないんだけど…」
「そ、そーだったです!?」
「…いや、いいや。うん。そっちの方が…いや、まあ。うん…じゃあ、単刀直入に」
「何なのです?」

蒼星石の深呼吸と少し真剣な声。翠星石は視線をそちらに向ける。


「その相手…僕じゃ、だめかな」
「蒼星石!?」
「翠星石のことが、好きなんだ」

その真剣な声音に思わず起き上がった。顔を覗き込むと、頬を染めて少し不安げな表情の蒼星石。
冗談を言うような顔でない事は、翠星石には良くわかった。
脳裏には、漫画で見たあれやこれやな展開が頭をよぎる。そんな事を、実の妹である蒼星石と…

「いい、ですよ」

しばらくの間を空けて、口を思わずついて出たのはそんな言葉。
想像しても嫌などではなかった。…というより、ちょっと嬉しい、なんて思ってしまったのだ。
そんなわけで、妹に負けず劣らず顔を赤く染めて、あらためて翠星石は頷いたのである。

「え……ほんとに、いいの?」
「いいですぅ」
「ほんとのほんとに?」
「なんどもいわすなです!」

頬を染めて睨む翠星石を見て、蒼星石の顔が喜びに輝く。
そして、気がつけば、下から伸びてきた腕に強く抱きしめられていたのである。
蒼星石は、ただ何も言わずにぎゅうっと抱きしめてくる。

「く、苦しいですよ蒼星石…」
「ごめん…でも、嬉しいから…」
「やっぱり、気持ち悪がられたらどうしよう、とか考えてたですか?」
「そりゃあ、ね…やっぱりこんなこと言って受け入れてもらえなかったら…
 翠星石に拒絶されたらどうしようって思ってたし。」


抱きしめられながらもなんとか右腕を外して、蒼星石の頭に手を伸ばす。

「…おばかです。翠星石がそんなことするわけねぇです」

優しく微笑んでそっとなでた。蒼星石は、目を細めてそれを受ける。

「そうだね…でも、ありがとう」

言いながらそっと顔を上げて、翠星石に顔を近づけていく。
翠星石は、瞳を閉じて静かに蒼星石を受け入れた。

「ぷはっ…うー…やっぱりちょっと恥ずかしいですよ」
「あはは、うん、ちょっとね。…でも幸せだよ」

しばらくして、顔を離してから二人で苦笑する。
今更ながら、部屋の扉を開けっ放しにしていた事に気づいて、手を伸ばして扉を閉めた。

「あ、そろそろ布団敷かないと」

蒼星石が立ち上がる。
邪魔にならないように、部屋の隅に寄った翠星石は少し気になったことを聞いてみる。

「…結局水銀燈とは何を話していたんですか?」

蒼星石は、それに苦笑しながら答えた。たたみに下ろした布団から、小さく風が起こる。

「うん。お勧めの漫画とか小説とかを教えてもらってたんだ…あの漫画みたいなのをね?」
「…なんでそういうのが欲しかったです?」


「うーん…何って言うのかな…こういうことで悩んでるのが僕だけじゃないって事を
 知りたかったんだ。少なくとも、物語になるくらいにはありえる感情なんだって」
「ですか…」
「あとは…後学のため、かな?」

冗談っぽくあはは、と笑いながら布団を広げ、掛け布団と枕を並べる。

「それじゃあ、今日は一緒に寝ようか」
「…は?」

そのままの勢いで、さらりと爆弾発言。一瞬言葉の意味を理解出来なかった翠星石の顔が、
理解するにしたがって徐々に赤くなっていく。

「そ、それは…」
「もちろんそういう意味で、ね」

何と答えていいのかとパクパクと口を動かす翠星石に、にっこり笑った蒼星石の表情が曇る。

「えっと…やっぱマズい…かな?」
「そ、そんなことはねぇです!きっちり準備してくるから首洗って待ってるですよ!!」

不安げな子犬のような表情に、翠星石は慌てて答えて立ち上がった。
そして部屋から飛び出すと…そのまま下の階へと駆け下りていったのである。
蒼星石はそんな姉の姿を微笑みながら見送ると、
自分も風呂に入る準備をしてゆっくりと下の階へ降りていった。
翠星石が風呂に乱入されて大変なことになるのはこの数分後の事である。


翌日。朝いつも通りの時間に目覚めてすぐに、二人は傍に互いの顔を発見することになる。
照れるやら恥ずかしいやら嬉しいやらで、結局その日遅刻寸前まで家を出るのが遅くなったとか。
家を出て、走りながら双子は話し合う。

「やっぱり…お世話になった水銀燈先輩にはちゃんとお礼を言っておかないと」
「蒼星石はいちいち律儀ですね…それなら、真紅にも言わんといかんです」
「うん…水銀燈先輩は何となくわかってくれそうだけど、真紅にはいきなりお礼言って大丈夫かな」
「でも、言わなくて気になるのは蒼星石です。お礼の理由なんて適当にごまかせばいいです」
「うーん…大丈夫かな?そんないい加減な感じで。問い詰められたらなんて答えたら…」
「大丈夫ですよ。そんな時は翠星石がうやむやにしてしまうです」
「なんかそれも心配だけど…じゃあ、いざという時にはお願い」
「わかったです!」

学校へ続く道のりを、昨日までとは少し違う関係になった双子の姉妹が走っていく。
その日の昼休みに、二人は一人の図書委員を困惑させることになるのであるが、
それはまた別のお話…

「図書館」シリーズ番外編「双子、そして夜」-終-

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