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BLACK ROSE  第一話

死臭が漂い、辺り一面が血の海になっている。人型の蜥蜴の死体が辺りに転がっている。
その死体の中に光る銀色がいた。――人間だ。服は返り血で赤く染まり、顔にも
血が付いていて、顔はよく分からないが、恐らく女性で、それも美人な部類に入るだろう。

「ふぅ…こんなに出るなんて聞いてないわよぉ」

そう吐き出すように言うと、彼女は蜥蜴の死体達をあさり始めた。
彼女の様な職業の人間なら、誰もがやることだ。
殺した蜥蜴人の所有物をあさり、売れそうな物があれば、それをいただく。
まるで追い剥ぎの様だが、そうする事が、ここでは至極当然のことなのだ。

「まぁ、こんなものかしらねぇ」

彼女はその場をあとにした。

ここは薔薇王国。無法国家の国。恐喝、強盗、殺人、強姦。何でも有りの国である。
盗まれても盗まれた方が悪い。それがこの国の常識である。
だが、この国は活気に溢れている。金が欲しければ、薔薇王国に行け。
この言葉をよく耳にする。別にこの国で犯罪を犯せという事では無い。
この国の下には別世界がある。広大な地下迷宮だ。
迷宮には上の世界に無い物が手に入る。それを商人に売りつければ、高値で買い取ってもらえるというものだ。
だが、そういった宝を手に入れるには、ありとあらゆる罠を越えなければならないし、
宝には番人が付き物。これは必然である。怪物が迷宮内にうじゃうじゃいるのだ。
死の危険と隣り合わせに迷宮に潜らなければならない。
それでも、金欲しさに迷宮に潜る者は大勢いる。
先程、迷宮から出て来た銀髪が美しい女性もその一人だ。
「一週間ぐらいは過ごせるかしら…」

少し疲れ気味のようだ。彼女を見ていた男にはそう感じられた。

「はぁ…もう一度ぐらい潜っておこうかしら」
「今日は如何なされたのですか?」

ふと、声を掛けられた方を見てみると、見慣れた姿があった。
上下黒で揃えられた服装は所謂、タキシード姿だ。

「あらぁ?白崎じゃないの」
「元気が有りませんね。どこか具合でも?」
「別に具合は悪くないわぁ。悪いとしたら、景気の方よ」
「稼ぎが悪いという事ですか」

この男は白崎。酒場を経営している。別に彼女の行き付けの店では無い。
一度しか行ったことがない。それなのに、この男は何故か、顔を覚えていた。
それからは、街で会う度に声を掛けられる。
こっちが話しかけてくれとも言っていないのに、会う度に声を掛けられるのは、実に鬱陶しいものだ。
それに、この男は好きになれそうにない。
他愛も無い話をして、直ぐに分かれることにする。

「まったく…あいつ、暇なんじゃないのぉ?」


再び、歩き始めて、暫くした時だった。
迷宮から戻り、疲れ果てていた所為かもしれないが、彼女は油断していた。
気付けば、後ろに五、六人程の男が付いて来ている。

 (数が多い…逃げた方がいいわね)

足を早めて、角を曲がったら、そこから全力で走る――!
その時、男達が急に走り出した――!!

「――っ!」

それを感じ取った瞬間、彼女は走っていた。
しかし、そう簡単に逃げれる相手ではなかった。
曲がり角から、仲間と思える男が二人出てきた。
それに気付くか否や、彼女は背中に背負っている大振りの剣を抜き、
絶妙なパワーとスピードで、片方の男を斬り付ける――!

「ぎゃあっ!」

完璧な一撃だった。男は負傷し、もう戦えないだろう。
一対一の戦いなら、これで終わりだが、相手は多勢。
すぐにもう片方の男が突進してきた。

「――チッ」

だが、男が突進してくる事は無かった。ふと、男の後ろを見ると、派手な赤い服を着た、女性が立っていた。
しかし、貴婦人を想像させるような上品な雰囲気を持つ彼女はその派手さを打ち消し、とても似合っている。
よく手を見てみると、血に塗れた剣が握られている。

「貴女、怪我はない?」
「え、えぇ。――って、それよりも!後ろに来てるわよ!」

しかし、彼女の心配していた様にはならなかった。
自分の目の前を栗色の髪の青年が走り過ぎて行った。

「はぁあっ!」
「ぐぇっ!」

栗色の青年は瞬く間に二、三人ほどの男を斬り付けた。

「な、なんだこいつ…逃げろぉ!」

力量の差を理解したのか、一人が叫ぶ。
それにしても、あの数相手に怯む事無く、突っ込み、そして相手を追っ払うとは、凄い剣士だ。
そんな事を考えていたら、赤服の女性がこっちを向いた。

「私は真紅。冒険者をやっているわ。貴女、名前は?」
「…私は水銀燈よぉ。私も冒険者よぉ。助けてくれてありがと。」

気付けば、栗色の青年もこっちに駆け寄って来た。

「危ない所だったね。一人でここを歩くのは危険過ぎるよ」
「貴女もありがとねぇ。お陰で助かったわぁ」
「気にすることないよ。あの手の者は同業者として放っとけないからね」

よく見れば、栗色の青年は男の子にすれば、小さい。
それに綺麗な顔をした、女の子だ。

「貴女、水銀燈と言ったわね」
「えぇ、そうよぉ」
「――貴女、私達の仲間にならない?」

この日から、私の世界は変わった。
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