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「汚れなき悪戯」
お姉ちゃん。
生まれた時からいつも一緒。
人見知りな私の手を、いつも優しく握ってくれるお姉ちゃん。
ドジな私を、いつも温かい笑顔で見守ってくれるお姉ちゃん。
大好きなお姉ちゃん。
私だけのお姉ちゃん。
~~~
雪華綺晶は、高校に入って忙しくなった委員会活動を終え、すでに薄暗くなっている廊下を足早に駆け抜け、昇降口へと向かっていた。
今夜は、先に帰った薔薇水晶が、大好物のロールキャベツを作って待ってくれているはず。そう思いつつ自分の靴箱の扉を開いた彼女の目に、
小ぶりな革靴の上に置かれた封筒が止まった。雪華綺晶の胸は一気に高鳴った。待ちに待っていたあの人からの返事に違いない。彼女のはやる心は、
封を開ける手を震えさせて何度かしくじった挙句、開いた便箋の内容を、一度、二度、三度、…と読み返すごとに冷えていった。
~~~
厨房と呼ぶべき大きさの豪華なキッチンで料理の腕をふるっていた薔薇水晶は、玄関ホールのドアが重々しく閉まる音に気付き、料理を中断して姉を迎えた。
「お姉ちゃんお帰り」
学校ではなかなか見せる事のない笑顔を姉に向ける薔薇水晶。
しかし雪華綺晶はうつろにうつむかせていた顔を上げ、真っ赤な目で「ご飯は要りませんわ」と応え、病人のような足取りで部屋に向かった。
残された薔薇水晶は、姉のかつて見た事のない様子に戸惑いを隠しきれなかった。
~~~
薔「お姉ちゃん…入っていい?」
一人で夕食を済ませた薔薇水晶が、姉と共用の寝室に入ると、暗闇に浮かぶベッドの上で、
雪華綺晶がかすかに声を押し殺して泣いているのが分かった。
薔「何か…あったの?」
羽毛布団に顔をうずめている雪華綺晶は泣きやまない。
薔薇水晶はベッドにそっと身を預け、嗚咽で震えている姉の背中を優しく抱いた。
かつて自分が泣いているときに雪華綺晶がしてくれたように。
その甲斐あってか、雪華綺晶は涙の理由を簡潔に語った。
雪華綺晶の想い人で、かつて彼女が恋文を出した男子から、手紙で交際を断られた、と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時は少しさかのぼる。
ある日、体育の時間に、運動靴を忘れた薔薇水晶が、風邪で休んでいた雪華綺晶のそれを借りようと彼女の靴箱を開けると、
お目当ての運動靴の下の段にあった雪華綺晶の上靴の上に、封書が置いてあった。
不審に思った薔薇水晶は、むろんその封書を開けて読んでみた。
「2-B 雪華綺晶様
僕は君が好きです。恋人になって下さい。
          2―D 桜田ジュン」
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薔「お姉ちゃん…風邪大丈夫?」
家に帰った薔薇水晶が、寝室のベッドに横になっている雪華綺晶を見舞うと、雪華綺晶は目を開けて妹のほうを見た。
雪「ええ…まだ少し辛いですわ…」
薔「もう…アイス食べすぎるからそうなっちゃうんだよ?」
雪「うぅ…」
薔「…ところでお姉ちゃん、好きな人とかいないの?」
雪華綺晶の顔が、より赤くなったのが見てとれた。
雪「もう…分かっているでしょう?ばらしーちゃん…」 
薔「うん…ジュンだよね?一年生の時お姉ちゃんと同じクラスで…私も一緒に遊んだりしたこともある…」
雪「ええ…」
薔「お姉ちゃんったら、最近ジュンの事ばっかり私に話すよね…ぼーっとしてる事も多いし…これはもう恋の病だね」
雪「…///」
薔「告白…しないの?」
雪「それは…」
恥ずかしげにうつむく雪華綺晶。
薔「いつまでも風邪ひいてると…私がジュン取っちゃうよ…?」
雪「!!」ガバッ
薔「あっお姉ちゃん、氷嚢が飛んでっちゃった」
雪「そそそそんな事許しませんわ!わわ私がジュン様に告白するんですから…」
薔「あれ?やっとその気になった?」
雪「そうですわ!だから早くこんな風邪なんて治して…」
薔「今からジュンをウチに呼んであげようか?」
雪「そっ…それは…///」
薔「どうするの…?」
雪「お手紙を…出しますわ!」
薔「ラブレター?ひゅ~ひゅ~」
雪「もう!からかわないで頂戴///」
薔「何なら私が渡してあげてもいいよ?」
雪「!!助かりますわばらしーちゃん、さすがに直接言うのも手紙を渡すのも恥ずかしくて…」
薔「うん、任せて」
雪「こうしてはいられませんわ、今から書きますから早速明日にでも渡してね」
薔「ふふ、わかったよお姉ちゃん」
翌朝、熱の下がらない姉を残して一人通学路を歩く薔薇水晶は、雪華綺晶から預かった封筒をしげしげと眺めていた。
可愛らしい封筒に、ハートマークのシールの封。
思わず顔に微笑みを浮かべた薔薇水晶は、その封筒を、両手で細かく引き裂いた。
昨日、姉の靴箱に入っていた紙切れを引き裂いた感触を、彼女は思い出していた。 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
声を押し殺して泣く最愛の姉を抱きしめる薔薇水晶。
彼女は心の中でつぶやいた。
ごめんね、今日の手紙、あれは私が書いて入れておいたんだよ。
大事な人を…失いたくないから。
~~~
それから、雪華綺晶は学校に来なくなった。
薔薇水晶はさすがに心配したが、もう少し経てばまた元気を取り戻してくれるだろうと思っていた。
雪華綺晶が学校に姿を見せなくなって四日目、登校した薔薇水晶が教室に入ろうとすると、教室の前に一人の男子生徒がいた。
その男子生徒は薔薇水晶の姿を見るや否や、彼女のところに走り寄って来た。…桜田ジュンだった。心拍数が一気に上がる。
ジ「おはよう…」
薔「…おはよう」
ジ「あの…雪華…お姉さん、学校に来てないけど、何か…その…あったのかなって思って…」
薔「…少し体調を崩しているだけ…そんなに気になる?」
ジ「あ…うん」
薔「お姉ちゃんが言ってた。貴方のことウザいって」
ジ「!!」
薔「だから…もうお姉ちゃんのことには構わないでもらえません?」
ジ「…」
桜田ジュンはひどくがっくりして自分の教室に戻っていった。
2-Aの教室に入った薔薇水晶は、胸の動悸が今だにおさまらない事に気付いた。
これで…いいんだ。
そう思い込めばいい。
~~~
2-Dの教室
ジ「…」
べ「ようどうしたジュンよ、今日はえらく元気がないじゃないか」
笹「全くだね。君がそんなだとこっちまで滅入っちゃうよ」
べ「何かあったのか?青少年の悩みを俺にぶつけてみろよ」
ジ「…僕、振られちゃったんだ」 
笹「ぇえ?ジュンが誰かに告白してたなんて知らなかったよ」
ジ「うん…こないだラブレターを靴箱に入れといたんだけど…」
べ「この野郎、俺に相談もせずに…で、相手は誰なんだ?」
ジ「2-Bの…雪華綺晶」
べ「ああ…あの眼帯つけたお嬢様か、ジュンと一年で同じクラスだった」
笹「双子の妹がいたよね。薔薇水晶って名前だったかな?」
べ「で?振られたってのは今日の話か?」
ジ「うん…ラブレターの返事が中々もらえないから、直接返事を聞こうにも、雪華綺晶は最近休んでて…今朝薔薇水晶に様子を聞きに行ったんだけど…」
笹「行ったけど?」
ジ「…彼女が言うには、雪華綺晶が僕の事ウザいって言ってるって…」
べ「うわぁ…そりゃキツイな」
笹「でも…それはあくまで妹さんが言ってたことだろ?」
べ「そうそう、そういやそうだよな。こういう大事なことは、普通本人が直接伝えるだろ?」
ジ「でも…妹だし…」
べ「とにかくだ。これはどこまでもウザがられても本人に気持ちを聞いてみるべきだと思うぜ」
笹「こればっかりは…べジータの言う通りだと思うな。今からでも行ってみなよ」
ジ「だから…最近雪華綺晶学校に来てないんだよ。だから妹の薔薇水晶のところに行ったんだ…そしたら体調が悪いから休んでるって言われて…」
べ「じゃあ彼女の自宅へ突撃しろ。俺達も家の前まではついて行ってやる」
笹「彼女の家は団地の横の大きな家だったよね」
ジ「でも…」
べ「だぁ!うじうじうじうじ見てて狂いそうになるぜ!ジュン、お前の『人を好き』という想いは所詮その程度のもんか?」
ジ「…」
笹「まあまあべジータ…。ジュン、放課後雪華綺晶さんの家に行ってみよう?」
ジ「…うん」
~~~
その日、薔薇水晶が家に帰り、あれから寝室の外にほとんど出ない雪華綺晶の様子を見に行くと、寝室のベッドの上に彼女の姿はなかった。
不審に思い、姉の名前を呼びつつ家じゅうを回った薔薇水晶は、浴室から水の流れる音が聞こえる事に気付いた。
シャワーでも浴びてるのかな?と薔薇水晶は浴室のドアを開けた。
雪華綺晶は確かにシャワーを浴びていた。目を閉じ、座り込んだ背中をバスタブに預け、右手に剃刀を持ち、左手首から血を流した状態で。
「きゃあああああああ!!!」
~~~
笹「見えてきたよ、あの辺りが雪華綺晶さんの家だ」
べ「すげえ高級住宅街だな」
ジ「なぁ…やっぱり迷惑じゃ」
べ「まだ言ってやがる…もうすぐそこだ、諦めろ」
ジ「え?何て言った?」
べ「だから…」
救急車が三人の横を駆け抜けていく。
べ「あれ…人が集まってら…」
笹「雪華綺晶さんちの前…だね」
ジ「…えっ?」
笹「すみません、何かあったんですか?」
?「ここの娘さんが手首を切ったとかで運ばれていったらしいわよ」
「!!!」 
~~~
有栖川病院
医「ご両親は?」
薔「その…二人とも海外で…」
医「そうですか…」
薔「先生…お姉ちゃんはどうなんですか!?」
医「命に別条はありませんでした…今は眠っています」
薔「そうですか…良かった…」
医「お姉さんのところに行きますか」
薔「はい!」
左手首に包帯を巻かれ、点滴で輸血を受けてベッドに寝ている雪華綺晶。
「どうしてこうなっちゃったんだろう…」
私がお姉ちゃんの想いを握りつぶしたから?
ううん、それはお姉ちゃんのためを思ってやった事…お姉ちゃんのため?
…本当に?
…いや、これは桜田ジュンのせいだ。彼がお姉ちゃんにあんな手紙を送ったから…
…本当に?

ガラ
ジ「あの…桜田です…」
薔「…!!」
桜田ジュン…彼が来るなんて…
ジ「ごめん…雪華綺晶は?」
薔「無事…眠ってる…」
ジ「そっか…無事でよかった…」
その言葉に私はカチンときた。
薔「無事で…よかった?」
ジ「?」
薔「無責任な言い方ね!どうしてこうなったと思う!?貴方のせいよ!」
胸にたまっているもやもやをぶつけてやる。
ジ「僕の…せい?」
薔「そうよ!貴方があんな手紙を出さなかったらこんな事にはならなかったのに!」
ジ「…?」
薔「だってそうでしょ!?どうせ私があのまま貴方の手紙を放っておいて、お姉ちゃんがあれを見たらどうなるかぐらい分かるでしょう!?」
あれ?私何を言っているの?この事は黙ってなくちゃいけないのに…
ジ「ということは…君は僕のラブレターを…?」
薔「そうしなければお姉ちゃんと貴方は間違いなくくっついちゃうから!そうなったら私はお姉ちゃんを失っちゃうから!」
やだ…止まんない…
ジ「…」
薔「そして私が貴方を、ジュンを失っちゃうからぁ!!!」
…え?私、今何て言った?
ジ「!!」
薔「私の大好きな二人がくっついちゃったら、二人とも私から離れていっちゃうからぁ!!うわぁああああああん!!!」
そっか…私、ジュンの事好きだったんだ…お姉ちゃんと同じくらいに。
ジ「…」
雪「薔薇水晶」
薔「…お姉ちゃん!起きたの!?」
パシン
薔「…痛っ」
ジ「雪華綺晶…」
雪「…ほとんど聞いていましたわ。つまり薔薇水晶、貴女は、ジュン様が私に恋文を差し出して下さった事を私に隠し、
私にジュン様に対する恋文を書くようそそのかし、その返事を偽造して私の靴箱に入れた…ということですわね?」
薔「…」
雪「何かおっしゃい!!」
薔「!!」ビクッ
ジ「…」
薔「ひっく…うぅ…ごぇんなさい…私…」
雪「何がごめんなさいなの!?」
薔「おねえひゃんのこと…だましてて…えぐっ」
雪「それだけですの!?ジュン様に対しては申し訳ないとは思わないの!?」
薔「うっ…ジュン…ごめんなさい…ラブレター勝手に捨てたり…嘘ついたりして…」
ジ「あ…いや…」
雪「薔薇水晶、こちらに来なさい」
薔「ひぐっ…」
雪「来なさい!!」
ジ「あ…もうそれくらいで…」
薔「許して…お姉ちゃん…」
雪「…」ギュウ
薔「…お姉ちゃん?」
薔薇水晶を抱きしめる雪華綺晶。
雪「もう…いいですわ。ジュン様もああおっしゃってますし…。貴女も…心細かったんでしょう、ね?…」 
薔「うう…お姉ちゃぁぁぁん」
雪「…ジュン様」
ジ「あ…はい」
雪「この度は妹が大変な無礼を働いてしまいました…お許しください」
ジ「いっいやそんな」
雪「そして…本当にお騒がせいたしました。私ったら、思いつめて…早まって手首を切ってしまって…。
でも、…こんな事になってしまった後ですけれど…私も、貴方の事が好きです」
ジ「…はい!」
雪「お付き合い…願えますか?」
ジ「もっもちろん!」
雪華綺晶の微笑み。
雪「嬉しい…。そしてもう一つ…ここにも、貴方の事を想っている娘がおります。やはり私達、双子ですわね…。
私同様愚かな妹ですが、この娘ともお付き合いしてもらえないでしょうか…?」
ジ「!?」
薔「…お姉ちゃん?」
雪「ジュン様…」
薔「…」
ジ「薔薇…水晶?」
薔「はい…」
ジ「薔薇水晶も…その…僕と」
薔「よろしくお願いします…」
ジ「こちらこそ…」
雪「よかったですわね、ばらしーちゃん」
薔「うん…嬉しい…ぐすっ…」
ジ「でも…二人とも…それでいいの?その…何て言うか」
雪「『姉妹どんぶり』ですわね」
薔「私は…それでも良い」
雪「私もですわ。だって…私達、二人で一つですものね?」
薔「お姉ちゃん…」 
ジ「…」
雪「ジュン様?」
薔「…ジュン?」
ジ「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!」
雪「あらあら」
~~~
雪華綺晶は、その後無事退院し、元気になって学校に戻ってきた。
今日は初デート。
ジ「じゃあ、映画観に行こうか」
薔「うん!」
雪「ねえ、手をつなぎませんこと?」
薔「ジュンが真ん中?」
ジ「じゃあ二人とも、眼帯付けた目の方の手をつなげいいな」
雪「それは名案ですわ」
薔「ジュン…優しい…」
ジ「///…薔薇水晶が僕の右手、雪華綺晶が左手だな」
雪「ジュン様どうですか?こんな美少女二人を両手に街を歩けるなんて…」
薔「栄華の極みだよ?」
ジ「だなぁ…。本当に嬉しいよ」
雪「ええ…」
薔「うん…」
ジ「じゃ、行こうか!」
雪「はい!」
薔「れっつごー」
お姉ちゃんと…ジュン…二人の大切な人と一緒。
嬉しい…
~~~
笹「おい見なよべジータ、ジュンがデートしてるよ」
べ「なな!全く…街中でこうも見せつけやがって…」
笹「素直じゃないな。ジュンの恋愛が成就したと聞いた時にはあまりの喜びようにギャリック砲とやらを乱射してたくせに」
べ「…まあ、めでたしめでたしだな。雪華綺晶さんも大した事なくて…」
笹「あれ?梅岡先生がこっちに突進してくる…」
梅「べジ~タ~探したよ!」
べ「アッ――――――――――――――――――!!」
梅「べジータ、地の果てまで追いかけるぞ!」
笹「何と気持ちの悪い連中だろう…」
双子の美少女と少年のデート風景が街の小さな名物となるのに、それほど時間はかからなかった。
薔「ちゃんちゃん♪」
おわり

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