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14ぺーじめ
待ちに待った朝が来ました。
洗顔と着替えを済ませた真紅と雛苺が連れ立って階下に降りると、厨房にいた白崎執事が二人に気付きました。
白「おはようございます。もうお体の方はよろしいので?」
真「おはよう。もう大丈夫よ。色々心配とお世話を掛けてしまってごめんなさい」
苺「ありがとうなの~」
白「それはようございました…」
真「あら、何だか顔色が悪いわよ」
白「いえ…その…夢でウサギが…何でもございません。すぐに朝食を用意いたします。ところで今日は何かご予定がございますか?」
真「今日は遊びに出かけるわ…お友達とね」
雛「楽しみなの~」
白「…お友達と申されましたか?」
真「ええ。この間おぼれた時に助けてくれた女の子達よ。…この近くの児童養護施設のね」
悪夢を見てただでさえ明るいとはいえない白崎執事の表情が、また少し曇りました。
白「左様で…ございますか」
雛「今日はなにするの~?」
真「まだ分からないわよ…お楽しみね。白崎さん、薔薇十字児童養護施設の事は知ってる?」
白「…名前だけは」
真「そう。…雛苺、どこに行くの?」
雛「ウサギさん見に行くの~」
真「あら…私も行くわ」
白「…」
真紅達が玄関ホールから出て行くのを見計らい、白崎執事は慌てて動き出しました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その頃。
銀「ところで翠星石、貴女が寝る前に言ってた、今日の計画とやらを言いなさいよぉ」
雪「そうですわ。何か面白そうな事でもありまして?」
少女たちは期待に目を輝かせ、意味ありげに笑う翠星石を見ました…約一名を除いて。
翠「神社の裏側に洞窟があるのを知ってますか?ぬふふ」
銀「洞窟?」
雪「初耳ですわ」
薔「何で知ってるの…」
翠「それは、k」
蒼「…こないだ僕たち二人で山鳩狩りに行ったときに…偶然見つけたんだ…」
蒼星石が、なぜか元気のない声で答えました。
銀「そうだったのぉ」
薔「そこを探検するの…?」
雪「でも雛苺ちゃんは大丈夫でしょうか?」
蒼「僕もそれを気にしてたんだ…」
翠「だぁいじょうぶですぅ!この大人数でいけば助け合えるですぅ」
そんなこんなで、少女達は朝ごはんを済ませ、真紅達と合流しました。今日は少し雲が出ていますが、蒸し暑さは衰えません。
真「おはよう皆さん。遅れてごめんなさい」
雛「おはようなの~」
銀「おはよぉ真紅。昨夜はごめんなさいねぇ」
翠「この馬鹿がご迷惑をおかけしたですぅ」
蒼「ちょw」
銀「馬鹿って何よぉ」
雪「ところで真紅さんは大きなランチボックスをお持ちですわね」
真「真紅でいいわよ。…執事が持っていけと言うから持参したわ」
薔「…すげえ」
銀「んじゃ行きましょうか」
真「どこへ行くの?」
翠「着いてからのお楽しみですぅ~」
目的地へはすぐでした。施設の横の古い神社を抜け、林に入り少し斜面を歩くと、ほどなく、人が少しかがんで入れるほどの大きさの洞窟が口を開けていました。
翠「ここですぅ!」 
真「へぇ…洞窟探検ね」
雛「ほら穴大きいの~」
雪「結構奥が深そうですわ」
翠「ジャーン!懐中電灯ですぅ!」
銀「…用意がいいわねぇ。じゃ、先陣を切るのはもちろん翠星石、貴女よねぇ…」
翠「ほぇっ!?」
薔「言いだしっぺ…」
蒼「うんうん」
翠「ししし仕方ねぇですぅ!ほっほら行くですよ蒼星石」
蒼「えっちょっちょっと引張らないでよ」
一同は、意を決して洞窟に足を踏み入れました。
洞窟の中はひんやりしつつもじっとりした空気で一杯です。
壁面はところどころコケのようなもので覆われ、しっとりと湿っています。
わずかな傾斜に従い、一行は懐中電灯の光を頼りにゆっくりと洞窟を進んでいきます。
雛「ここ暗いの~」
雪「雛ちゃん、怖くありません?」
雛「怖くないの~、何だかワクワクするの~」
蒼「元気だねぇ」
翠「お姉さんの方はそうでもなさそうですけどねぇ…」
真「…」ビクビク
真紅は、水銀燈の手を両手で握り締め、顔を強張らせて恐る恐る歩みを進めていました。
銀「ちょっと真紅ぅ、手がぁ」
真「…あら、ごめんなさい」
真紅に握りしめられた水銀燈の手は血の気を失っていました。
雛「あ!コウモリがいるの!」
真「ななな何ですってぇ!?」
銀「あ痛たたたたたた」
雪「あれは…寝てるから大丈夫ですわ」 
翠「何て言うコウモリですかねぇ」
薔「多分…ヒキコモリ…」
蒼「ちょw」
翠「…あれ?」
見ると、洞窟は右側に折れています。振り返ると、少し離れたところに、この穴の入口の形に切り取られた小さな空が見えました。
銀「…このまま行くぅ?」
翠「前進あるのみですぅ!!」
蒼「やれやれ」
折れた所からは完全に懐中電灯の光だけが頼みの綱です。それでもその光は、皆がかがんで進むのがやっとの大きさの洞窟の壁を
意外に明るく照らし出していました。そして…
蒼「…あれ?広い所に出たね」
翠「ここで行き止まりですねぇ」
真「あら?何か落ちてる…」
翠「これは…お茶碗ですぅ」
銀「これ…何かしらぁ…」
薔「…布団?」
確かに、洞窟の突き当たりの広い空間のあちこちに、割れた茶碗や朽ちた机のような木材、
ぼろぼろの布切れのかたまり、そしてローソク立てが散乱していました。
ずいぶんと生活感のある洞窟です。
銀「ねぇ…ここってもしかして…」
真「…防空壕じゃないかしら?」
雪「ボウクウゴウ?」
薔「戦時中に、空襲を避けるために作られた避難所…」
一同「…」
翠「って事は、空襲で死んだ人の霊が」
真「キャーーーーーーーーーーーーッ!!!」
翠「ひょえっ!!!」
真紅が金切り声を上げたのと、翠星石がそれに驚いて懐中電灯を取り落としたのにそれほど時間的な差はありませんでした。
とりあえず、どう言う事になったかと申しますと…落下した衝撃で、懐中電灯は己の役割を放棄し、風雲急を告げる昭和十九年につくられた
防空壕の中は闇に支配され…30秒もしないうちに、動転した少女たちは転げるように穴の外へと飛び出した…という事です。
外の空気と光に安堵した少女たちは、そのまま地面にへたり込んでしまいました。
真「はっはっ…ああ胸が苦しいわ」
銀「まったくぅ…翠星石ったら人を脅かしたうえに懐中電灯まで落としちゃってぇ…」
翠「いやそれは…すまんかったですぅ」
雪「はぁ…それにしても雛ちゃんは落ち着いてますわね」
雛「うん!雛とっても面白かったの~」
薔「大物の予感…」
蒼「…でもさぁみんな…」
一同「?」
蒼「外ならともかく、垂直に降ってくる爆弾が物理的に横穴の内部に被害を与えられる可能性なんてないから、
この防空壕の中で死んだ人なんていないと思うんだけど…」
一同「…」
しばらく押し黙っていた少女達でしたが…
翠「確かにそうですねぇ」
真「まったくそうだわ。私はそもそもお化けなんて信じてないのだわ」
銀「あらぁ、あの時ものすごい叫び声をあげたのはだぁれ?」
真「むぅ…」
少女達は、堰を切ったように笑い出しました。
雪「そう考えると私達は何に怯えてたんだか…今思うと何だか馬鹿らしいですわね…ふふふふっ」
雛「ヒナはそもそも恐いとすら思わなかったの~。スリル大歓迎なの~」
薔「恐るべし…」
雪「あら、私はあの時のばらしーちゃんの驚愕した顔のほうがよほど恐かったですわ」
薔「むぅ…おかずを盗み食いされたお姉ちゃんの顔のほうが一番恐いもん…」
雪「(#^ω^)」
みんな、笑っていました。特に、薔薇十字院の孤児たちは、自分たちが久しぶりに
心の底から笑っている事に気付いていました。いつも怯えている心の闇が、この時ばかりは吹き飛んでいました。
この後、神社でお昼ご飯を食べた一同は鬼ごっこなどに興じて時を過ごし、次に会う日は魚釣りをしようということになり、
夕方、真紅と雛苺は孤児の少女達と別れました。みんな晴れ晴れとしていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その様子を、遠くから黒い車がうかがっていたのには誰も気づきませんでした。
・・・・・・・・・・
「接触した模様です」
「少し早かったようだな。だがこちらの予定まで早める必要はないだろう。計画通りにやる」
「了解」
つづく

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