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6ページめ
束の間のまどろみから覚めた真紅は、妙な胸騒ぎと不安を感じました。
理由はすぐに分かりました。雛苺の姿が見えない、泣き叫ぶ声が聞こえる。
とっさにその声のする方を見ると、浮き輪を両手で外側から辛うじてつかんでいる雛苺が、
30メートルほど離れた川下を今まさに流されているところでした。
「真紅―う、助けて…」
「雛苺!!!」
そう叫ぶなり真紅は雛苺の方へと駆け出しました。そばにあったスイカを蹴とばしたような
気がしましたが、そんな事にはかまっていられません。清流の流れは速く、流されている
雛苺とそれを追って川辺を走っている真紅との距離は中々縮まりません。
都会のコンクリート護岸であれば走って追いつけるでしょうが、リンゴほどの大きさの石が
ひしめき合っているこの川原ではそうはいきません。泳いで助ける、というのはもちろん論外。
真紅は、運動はからきしだめなのです。ことに、水泳は…。妹の名を叫びつつ、裸足の裏が
痛むのも忘れ、必死に走っていた真紅は、あるものを見て、思わず絶望に襲われました。
川が急にカーブしていたのです。蛇行する川の流れは直線のそれよりも早く、雛苺が巻き込まれれば、
追いすがることはもう不可能かもしれない…真紅の体中を、今までになく冷たい電流が
駆け抜けたその時、泣き叫んでいた雛苺の浮き輪をつかむ手が離れ、ついに怒涛の流れが渦巻く
水面下にその小さな体が飲み込まれていくのを、真紅はなすすべもなく見つめていました。
…真紅と雛苺のお母様は、それぞれ違う外国人女性でした。いわゆる異母姉妹です。
それでも二人は仲の良い姉妹でした。寂しがり屋の真紅は、何度雛苺の無垢な明るさに救われたか
分かりません。雛苺が真紅を姉として頼っていたように、真紅は…
「雛苺―――――――――――っ!!!!」
何故、あの手を離してしまったのだろう。

気がつかないうちに、真紅は流れに飛び込んでいました。
つづく

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