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短編「図書館」シリーズ八話「翠星石」

突然だが、私、真紅は図書委員だ。
元々本が好きで、中一のときに初めて図書委員になり…
気が付けば図書室、そして図書委員の常連となり早3年。
その間に図書室仲間ともいうべく、同じく本の好きな友達連も出来て、
図書館をよく利用する人の顔もかなり覚えた。
これは、そんな私の図書室でのある日のお話。

「真紅ぅー、聞くですー!」

図書室のカウンターに座る私に話しかけてくる少女。長く、癖のある髪を持つ彼女は翠星石。
蒼星石の双子の姉である。

「最近、蒼星石が水銀燈とばっかり仲良くしてるですよ!」
「…そう」
「他の人ならまだしも、あの不真面目な水銀燈ですよ!?
 翠星石は、蒼星石が変な道に引っ張られてしまうんじゃないかと気が気じゃないですぅ!」

身振り手振りで大げさに話す彼女の視線の先には、水銀燈先輩と蒼星石。
彼女達はまた図書室の前のスペースで何事か楽しげに話している。
まったく、いつも一緒の双子の妹が他の人に取られるのが嫌なのはわかったけれど…
私は眉間のしわをぐりぐりと揉みほぐす。

「ここは図書室よ。大声でおしゃべりをするための場所ではないわ」
「そんなのわかってるですよ!でも、水銀燈は真紅の管轄なのですぅ。だから話しているですよ!」
「…いつから先輩が私の管理下になったのよ。それに、水銀燈『先輩』。
 先輩にはきちんと敬意を払うものなのだわ」
「真紅はいちいち細かいですぅ…」

ぶーたれる翠星石。けれども図書室でカウンターが煩くしては、他の生徒に示しがつかないのだ。
仕方が無い。まだしゃべりたそうな彼女を抑えて私は言った。

「じゃあ…後で、帰り道にでも聞いてあげるから。図書の当番が終わるのをまっていてくれない?」
「!わかったです!真紅はやっぱりいい奴です~」

現金なものである。彼女はにっこり微笑むと、図書室の外へと歩いていった。多分、双子の妹を呼ぶために。

…そして帰り道。図書室の貸し出し終了時間間際に、奥から翠星石がやってくる。

「これを借りるです~」
「…また恋愛物?あなたもいい加減飽きないわねえ…」
「うるさいですぅ。恋愛は人生を豊かにしてくれるですよ!」
「たとえ本を読んでもあなたが恋愛をするわけじゃあないでしょうに。
 その台詞は恋愛をしている人間が言うものよ」
「もう!真紅は理屈っぽすぎです!」

少し言い過ぎてしまったらしい。ぷんぷんと怒る彼女からカードを受け取って台帳に記入していく。

「はい、返却期限は二週間後。返却遅れはその倍の日数借りられないからきをつけるのだわ」
「わかってますよ。もう何回借りたと思ってるです」
「それもそうね」

くすりと笑って私は席から立ち上がる。大体の仕事はこれで終了。
あとはみっちゃん先生にお願いできる範囲だろう。
片づけを済ませて、先生に声をかけてから待っていた翠星石と歩き出した。

次回「翠星石Ⅱ」

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