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Level-0 『正義の剣士と死にたがりの魔女』


とある小さな村にとある夫婦とその娘からなる家族がいた。
その娘、姓を柏葉、名を巴。凄腕の剣士を父に、博愛の巫女を母に持つ一人娘である。
既に現役を引退し、戦列から退き剣の師範という立場に身を置く父としては、この娘は兎に角愛おしい存在であった。しかし悲しいかな、こうした父親の共通点として、大概その愛情は正しく娘には伝わらないものである。
そしてこの父もその例に漏れず、いつも稽古が終わるといかに娘にヒラヒラでふわふわでプリテイな服を着せられるものかと思案したものだった。そして計画を立案、実行、失敗、妻の叱責と続くのだ。
さてこの娘、柏葉巴はなかなかに(父親からすれば極めて)可愛らしい容姿を持つので、例えその艶やかなボブカットの髪に似合わずとも、年相応のプリテイな服を着ればお人形のようになっただろう。
しかし、現実とは得てして無残なものである。
柏葉巴はそういった観賞用の服を嫌い、常日頃から母が繕った戦巫女の服を纏った。いや、これはこれで悪くないのだろうが、色々な姿を見たいのが親心なのだ。父の魂の叫びなのである。
柏葉巴は幼き頃より父より剣を、母より志を学んだ。その甲斐あって、巴は九を数える頃には剣士の目と正義の鉄の意志を会得した。父は娘の成長に草村の隅でちょっと泣くも、母はとかく満足げであった。

そんなある日、父が巴を連れ道を歩いていると、村の子供達が一羽の鶏を棒や石を使って虐めているのに出会った。父はその村の指導者として注意をしようとしたが、その前に疾風のごとく飛び出した巴が背中の木刀を振り抜き、あっという間に年上の男の子数人をのしてしまった。
『巴はどうしてあの鶏を助けたのだ?』
父が聞くと巴は事も無げに答えた。
『生き物を無碍に殺生するのは悪です。まして娯楽として弄ぶなど、許されません』
父は頷き、しかし彼等が痛みを知り正しき心を得た時の為に手加減はするようにと諭した。巴も頷いた。
また、その痛んだ鶏は巴の家で介抱することになった。巴が珍しくその事を強く希望したので、『お前は鶏が好きなのか?』と尋ねると、巴はこれまた珍しく僅かな微笑みをたたえ、『嫌いではありません』と言った。父は悶えた。
ついでに鶏の羽を使った服なら着てくれるかとも考えたが、どこかの少数民族の衣装のようだと重い溜め息をつく一児の父。
だがその数日後、庭に居たはずの鶏が消えてしまった。
少々の血痕と羽の跡から、恐らく犬か狐にでも襲われたのだろう。父は別に鶏に愛着があったわけではないが、やはり娘が気にかかり慰めの言葉と共に説明を試みた。すると、
『では、あの子を襲った獣は、食べる為に襲ったのですね?』
父がそうだと言うと、巴は無表情にこう返したのである。
『ならば道理です。問題ありません』

父はこの時になって、娘の特殊さに気付かされることとなった。毎日せっせと餌をやり、あれだけ可愛がっていただろうに。その鶏を殺されても、自分の正義に則すのならばすんなり肯定してしまうのか。
父は危惧する事となる。
今はまだいい。だが、娘はやはり幼き子。これから成長するに連れ、彼女の正義も成長することだろう。あまり考えられないが、それが曲がる事があれば大変な事である。
また、自分の正義を貫く意志が強すぎるとも感じる。正義と感情は反すれども似るものでもある。感情を塗り潰すほどの強さは柔軟性を欠き、色々と風当たりも厳しいもの。
そこで父は以前、妻に浮気をしていると誤解され必死の説得も虚しく全治2ヶ月の怪我を負った事を思い出した。娘の将来の花婿に僅かな同情の念を抱くも、すぐにかき消した。娘にはまだ早い話と必死に頭を降る父の姿は、なるほどある意味微笑ましいのかもしれない。
父は再び考える。そして思う。では、彼女の正義が正しく育ったとしても、それを世界が受け入れなければどうなるのだろう。
父は食事中も考えてお茶をこぼし、かわやの中でも考えあわや落ちかけ、布団に入っても考えていた。気付いたら朝だった。
(とにかく)父はとりあえず結論をだした。(あの子に色々な話をしてやろう。その話の中で渡世の理や時代の流れ、人の未熟さを教え、あの子がそれを自分なりに理解してくれるのを待とう。子の成長には親は道を示すが、後は見守るだけだ)
そう言いつつ再びお茶をひっくり返し妻に叱られるところを見ると、やはりまだ心配らしい。まあ、それが親心というもなのだろう。致し方ない事である。
だが、その父の考えは、ついぞ実行されることはなかった。
巴が隣町にお使いに行った数日間、その村は盗賊団に襲われ、地図からその名を消した。
巴は、その村唯一の生き残りとなった。


柏原巴は考える。と言うよりは悩んでいた。
『こんにちは、巴ちゃん。私は草笛みつ。よろしくね』
巴は礼儀正しく頷いた。そしてまた悩む。
『あのね、あなたのお父さんとお母さんの持ち物だと思うモノが見つかったのだけれど…見に行きたい?』
悩むのを中断した巴は、少し考えた後に頷いた。
村を襲った盗賊達は村の殆どを焼き尽くしたが、偶然隣町に居合わせていた都心の武装討伐隊に見つかり、あっという間に全滅した。
今はその事後処理を行っている最中である。その村跡地に巴は戻ってきた。
『これよ。この剣はお父さんのでこの霊筆はお母さんのだと思うのだけど』
巴はそれを受けとった。確かに、どちらも親が大層大事にしていたものだ。
巴は悩む。
(父上、母上、何故死んでしまわれたのですか?)
それは嘆きでも恨みでも悲しみでもなく、純粋な疑問としてのものだった。
巴には解らなかった。二人は立派な正義の使者だった。間違いない。だが悪漢に殺されたと言う。何故?
巴の中では悪とは打ち倒されるべきものであり、また打ち倒されるものであった。だが、二人は負けてしまった。何故?
『どうかな、巴ちゃん』
『はい、間違いありません。ありがとうございます』
『そう…』
そして、この人達は悪漢に勝った。なるほど、やはり正義は勝つ。だが、両親は勝てなかった。何故?
気休めにしかならないと思うけど、とみつは話始めた。二人の遺体と傷の状況から父は真っ先に盗賊達に立ち向かい、母は村人の盾となったと。二人とも立派な人だとみつは言った。
巴は特に答えなかった。そんな事は知っている。二人は、私の両親なのだから。あの二人は、正義の使者なのだから。それよりも―
周りは巴が出されたお茶をひっくり返したり、彼女が入ったかわやから大きな音がしたり、朝になっても布団から出てこないのを『しかなたい』と勝手に思っていた。当の本人は悩んではみたが、答えはどうにも出せそうに無いと結論を下した。
よって、こうなるのである。
『みつさん』
『何?巴ちゃん』
『私をあなた達の仲間にしてください』
『…どうして?敵討ちでもしたいの?それなら止めなさい。悪いことは言わないから』
『いいえ、違います』
『じゃあ、どうして?』
『答えが出ないんです』
『………は?』
こんな理由から若干九歳で民間の討伐隊に志願した巴も巴だが、許可して自分の手元に置いたみつもみつである。


そして、五年の月日が流れた。
とある街から出る道に、一台のオープンカーが走っていた。城壁に囲まれた街とは違い、その道は広く開け、草や木がまばらに見える舗装もろくにしていないような道である。そんな道を黄色のオープンカーが進んでゆく。
だが、オープンカーと言っても高級な車を想像してはいけない。このオープンカーは文字通りに屋根が無いが、それは車に屋根が無い事を現しており、要するにこの車には屋根が無いのである。
現にボスンボスンとヤバげな音を立ててヘロヘロと走っている。これでは馬の方が早そうだが、運転手は意に介さず澄まし顔で乗っていた。
まあこの運転手と言うのが件の娘、柏原巴なのだが、この時もまた戦巫女の衣装を纏っているために端からみるとこの動く物体は大層不思議な雰囲気を醸し出していた。赤白の服と汚れた黄色のポンコツカーは奇異としか言いようがない。
そんな車が大して出ていなかったスピードを緩め、路肩に停車した。遂に寿命を迎えたのなら供養の一つもしてやりたいところだが、巴は車から降りると近くの公衆電話に向かった。
『プルルル、プルルル、ガチャ…はーいこちら麗しき戦隊長草笛みつの私的電話でーす。久しぶりの休みを満喫中の私にこの電話で仕事の話だったらシバくぞゴラァ』
「…すみません。かけ直します」
『あ、なーんだ巴ちゃんかー。巴ちゃんはいいのよーごめんねー?で、何かなー?』
「…あの、プスクルで依頼された仕事が無事に片付いたので報告を」
『あ、はーい。お疲れ様ー』
現在巴は草笛みつ率いる民間武装討伐隊『ビスク』に所属し、こうして依頼された仕事を受け持っている。
入隊直後はみつの養子として育てられたが、その力量を買われ一年後には隊員として正式に入隊、その後二年間みつとともに本隊での仕事に従事していたが、今は本人の意向もあって一人で各地を周りその土地で仕事をしている。
主な仕事は討伐。
盗賊や強盗、時には悪魔祓いまで。
かつての自分を助けてもらった時のみつ達のような。
巴の父の考えはついぞ果たされはしなかったが、捨てる神あれば拾う神あり。その意味するところを継いでくれた人がいたのである。言わずもがな、草笛みつである。
彼女の破天荒な振る舞いは正義マニアだった巴には大いに困惑するところであったが、しかし同時に物事が解決し流れていく様を見ているうちに『それもいい』と思えるようになった。
巴は彼女から沢山の事を学び、随分と人間らしくなったと言える。まだまだ正義マニアなのは相変わらずだが、またそれこそが柏原巴。今の姿こそ、父が思い描いた理想的な娘の姿なのかもしれない。
現実とは残酷であるが、時にお節介な程の情を見せる時もあるのだ。
『…うん、はいはーい。今こっちからの仕事もないし、しばらくゆっくりしてていいよ。観光ついでに街を巡ってみてもいいしさ』
「はい、そうします。ところで…」
『うん?何?』
「前に送った戦闘被害の資金申請やその前の労災申請が一向におりないんですが」
『……えー、巴ちゃーん?あれー急に電波が……巴ちゃーん。聞こえますかー?』
「…はい。何でもないです」
巴は諦めの溜め息をついた。因みに、公衆電話で電波は関係ない。

巴は再び車に戻り、道を進む。
ハンドルを握る必要が無い程ののんびり開けた道。青い空。そよ風。仕事が終わった事もあり、そんな退屈と平和のまじった景色の中で、巴は昔を思い返していた。
巴がビスクに入るきっかけだった疑問については、もう答えは出した。討伐隊に身を置き技術を高めた今の自分なら答えはいくらでも出せる。
きっと、奇襲を受けたんだろう。時間は夜だったかもしれないし、四方から攻め立てたかもしれないし、忍び込んだのかも知れない。
父もきっと、私が今腰にさげる霊刀“秋雨”を持たずに向かったかもしれないし、母は私の鞄に入っている霊筆で御札を書く余裕も与えられなかったのかもしれない。
戦いは、正義と悪を区別してくれない。より上手く戦った方が勝つ。より戦力が充実している方が勝つ。それだけの話し。
でも願わくば、その勝者が正義であって欲しい。違うなら、助けたい。どちらも正義なら、戦うのを止めて欲しい。無理なら、悲しい。それだけの事だ。
ふと、父と母が生きていて今の自分を見たら何と言うか考えてみた。まず、座席に腰を沈め、足でハンドル操作しながらの運転は真っ先に叱られるだろうな。めんどくさくてほつれたままの服も注意を受けるだろう。でも、買い換えるお金はありません。
では今の生き方については、どうだろうか。
誉められるだろうか?怒られるだろうか?
少し考えて、どちらでもいいと思った。
どっちにしろ、それは嬉しい事だから。


「ん?」
そんなこんなで道を進み、ある程度対向車も出てきたので幾分真面目に運転して
いると、前に見える橋の上に女性が立っていた。長い黒髪を風にそよがせながら端の手すりに体を預けてぼんやりと前を向いている。何もないただの橋だったので少し訝しんだものの、川でも見ているのだと考えることにした。
ただ、いくらスピードが出てないからと言ってぶつけてはいけないので女性と逆側に寄ろうとハンドルを少し傾ける。あいにく、クラクションは壊れている。別に強く叩いたからではない。断じてない。
その先にあった公衆電話にこんな場所にもあるのかと感心しながら進んでいると、前から何かが水に落ちた音が聞こえた。
慌てて振り向くが、橋にあの女性がいない。
「!!」
即車を飛び出し、下流に向かい走る。そのスピードはあの車より遥かに速い。
あの橋はそこまで川より高い位置にはなかった。落ちた衝撃で死ぬことはまずない。なら溺れる前に助けなければ。
幸いすぐに女性は見つけた。頭を打っているのか身動きが無い。急がなくては。
巴は腕の裾から御札を一枚引き抜き、流される女性に向かって跳躍した。この服装ではまともに泳げないだろうし、脱いでいる時間もない。
どぷん。ぶつかるように空中から流れる女性を掴む。意識が戻ったのか腕の中で女性が暴れ始めたが想定の範囲内だ。むしろ即死の線が消えただけ安心できる。
さて、このままでは二人共々流されてゆくだけだが、ここで巴は先程の御札を空に掲げ、狙いを河川敷の木に付けた。
(糸符“霊穴線縛”!!)
巴が御札に霊力を込め、札がそれに反応する。この御札は母の形見でもある霊筆によってしたためられたものであり、その霊筆に霊力を通して書かれた御札は様々な力を持つ。
かつて母は戦いの最中にすら札を書き上げ術を行使したと言われるが、巴にそこまでの技術はない。御札を書く時は正座しながら集中してお茶と共にが基本である。
ならば、と巴は考える。あらかじめ御札を作っておき、それを衣服に大量に仕込んでおけばいい。素力でかなわないならば、それを知恵と経験で補える事を巴は学んでいた。
札に充分な霊力が溜まると、狙いを付けた本に開く霊穴から札へと霊糸が伸びた。ロープくらいの強度を持つそれを腕に巻きつけ、長さを縮めながら女性を離さないように川岸へと近づき、やがて二人揃って川から出る事に成功した。
「はあ、はあ…あの、大丈夫です…か…」
安否確認の為女性のに声をかけた巴だったが、途端にに萎縮してしまった。それは何故かと言えば、睨まれているからである。言い換えれば、助けた女性が巴を睨んでいるのである。物凄く。親の仇のごとく。
「………」
「…あ、あの……」
「……ふう。ま、いいんだけどね。別に」
「は、はあ」
その女性は何か諦めたように溜め息混じりにぶーたれているが、助けられた身としてはなんとも図々しい奴である。そんな女性に戸惑う巴だったが、次の一言でさらに戸惑う事になった。
すなわち、
「あー!死にたいなーもうっ!!」
手足をばたつかせて叫ぶ、なんとも元気な自殺志願者であった。


「あの、お体の具合はいかがですか?」
「残念ながら問題ないわ。助けやがってくれてありがとう」
「ど、どうも…」
とりあえず車に戻ってタオルを持ち出し体を拭く事にした。一応これもビスクの一員である巴の仕事なのだが、如何せん相手から恨まれている気がする。
「あの、私、何かマズい事を…」
「あー、もういいわ」
本当にどうでもいいように手をひらひらと振る。
「で、アナタはどちら様?よくよく見ればなかなか面白い匂いしてるじゃない。悪くないわ」
「え、えと…柏葉巴と言います。民間の討伐隊の者ですが」
答えつつ自分の衣の匂いを嗅いでおく。そう言えば洗剤を使って丸洗いしたのはいつだったか…仕事が終わった直後なのでそんなに匂うのだろうか。だとしらゆゆしき事態である。それに自分が気付かないというのがまた質が悪いではないか。
慌てたように体をもぞもぞする巴をよそに、タオルを頭に乗せた黒髪の女性は値踏みするように巴を眺めていた。
「ふむ。ねえ、アナタ、巴と言ったかしら」
「え?あ、はい」
「じゃあ巴。アナタなら私を殺せるかしら」
「…え?」
「うん。貴女が助けたのだから、最後まで面倒見てよ。その服装…巫女だっけ。貴女なら私を殺せるかもしれないし、お願い。やってみてよ」
まるで、『お醤油とって』とお願いするくらいに軽く頼まれて困惑する巴だったが、いくらなんでも易々と承知するわけにもいくまい。
だが、こうした話しではその女性の方が長けていた。巴に向かい、こう言ったのである。
「もし殺してくれないなら、向こうにある街を壊しちゃおうかな」
「!」
巴の目が鋭く光る。女性は続ける。
「私なら出来るわ。そこにいる人を皆殺しにだってしてもいいし。ねえ、どうする?私はどっちでも構わないけど。だって、そうすれば貴女は私を殺してくれるでしょう?」
巴は今までの経験から、それが冗談ではない事を感じとった。また、その女性は僅かに話しただけで、巴の気質をあらかた見抜いていたのである。巴が臨戦態勢に入るのを見て、殺気はそのままに、内心安堵していた。
「では、ここで殺します」
「ん。頑張ってね」
一寸の間をおき、刀が、心臓を貫いた。

「んっ…!」
例えばである。女性が頬を赤らめ、息を上気させ、こんな切なげな溜め息を漏らすとしたらどんな時があるだろうか。まあ色々あるだろう。だが総称すれば、それは快感を得た時と言える。
だから断じて、断じて刀で心臓を貫かれた時に漏らすものではない。はずだ。
「な…」
巴は目の前の光景にへたり込んでしまった。手応えはあった。現に剣先は背中から飛び出ているし、衣服にも穴が相手いる。が、血もでなければ悲鳴もない。当の本人はと言えば刀を心臓にぶっ刺したまま恥ずかしそうにもじもじしているのである。
「あの」
「何?」
「痛くありませんか?」
一応、聞いてみた。実に動揺が伺える質問だった。
「うーん、最初の頃は…まあ一応。でも百年近く続けてると段々慣れてきちゃってね。今では…うふふ」
刀を少し動かしてみた。「あんっ」とか叫んだので止めた。
「それで?まだ何か出来るでしょう?こう、刀からすばーん!とか。ばひゅーん、きらきらー!とか」
「出来ます、けど」ようやく巴の頭が周り出した。「貴女は人間ではありませんね?」
巴が退治してきたのは何も人だけではない。時に猛獣も相手にしたし、妖怪とも戦ったことがある。
「元人間ってとこかしら。まあ今も人間だけど、人間はこんなことしたら死んじゃうわよね」
「ですね」
「でも妖怪とも違うのよ。そんな気配はしないでしょう?」
「…ですね」
刀を胸に刺した女性と巫女が河辺で真面目に話し合っている。なんともシュールな光景である。
その女性は、自分は幽霊みたいなものだと説明した。とある実験をしていたが失敗し、一度死んだはずであるが気付いたらこのような不老不死となっていたらしい。
「ぶっちゃけもう死んでるから、正確には不死じゃないんだけど」
直そうにも失敗の影響でどうすることも出来ず、今まで生きて(?)きたのだという。この体になって百年は生きたわねーとけだるそうに言った。
「もういい加減飽きちゃたの。欲しくもない永遠なんて辛いだけだと思わない?」
「そう…かもしれません」
実際、そんな状態になってみないと解らないが、漠然とそれは良くない事だと解った。
つまり、簡単に説明すれば目の前の女性は困っているのだ。そして巴は民間討伐隊ビスクの隊員であり筋がね入りの正義マニア、となっている。
よって、こうなるのである。
「あの」
「なあに?」
「私にはどうすることも出来ませんが、良ければその体を直す手助けをさせていただけませか?私は色々な場所を回っているので、何か手がかりがあるかもしれません」
「ホント?やったー!」
そうして巴はいい加減見慣れた刀を彼女から抜き、二人で車に戻ることになった。その際、巴はふと思いついて公衆電話に向かった。
『プルルル、プルルル、ガチャ…はーいこちら麗しき戦隊長草笛みつの私的電話でーす。久しぶりの休みを満喫中の私にこの電話で仕事の話だったらシバくぞゴラァ』
「度々すみません。柏葉巴です」
『あんれ巴ちゃんか。一体どうしたい?』
「えっとですね…」
巴は少し考えて、
「困っていたお化けを拾ったので、同行してもよろしいでしょうか」
『………あい?』
結局、この曖昧な説明が引きずられシングルとして動く巴は定期報告書の武装欄に『お化け×1』と書くしかなく、文句を散々言われる事となるのだが、どう考えてもただの自業自得だ。
「ふふっ、じゃあよろしくね巴」
「はい。あ…えと、お名前は?」
「あれ、そっか。自己紹介がまだだったわね。えー、コホン。私、柿崎めぐ。ラプラスの“ブレインズウォーカー”よ」
「………え?」

だから、みつに話しは最後まで聞けと言われるのである。
兎に角、こうして正義の剣士とブレインズウォーカーの二人(?)旅は始まった。
ブレインズウォーカーを呼ぶ名前は幾つかある。『世界の異端者』『生まれながらの罪人』『厄種』『欠陥生物』などなど。大した言われであるが、その中でも特に有名なものがある。
強力なブレインズウォーカーは何故か女性に偏った。一般人にその理由を知る術などないが、特に関係ないだろう。一度でも被害を受ければ嫌でもその力を身に刻まれることとなるのだから。
よって、やがて人々はそんな彼女達をありったけの敵意と畏怖を込めて、『魔女』と呼ぶようになった。

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