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目の無い蛇は光を探し、いつしかそれを喰らい尽くしてしまいます。


そして互いに交じわるとき、混沌という悲鳴が、またそこに・・・。


閉じ込めたはずの禁断の記憶。
それは心の底で新たな闇を孕むもの。


己の作り出した底無し沼から、逃れることなど出来ません。


現実を蝕む夢。


夢を縛り付ける現実。


氷壁に映るは怨の夢幻。



おや?


これは誰かの記憶のカケラ。
どこからか迷い込んできたようです。


お好きなだけ、覗いて御覧なさい。


その先に見えるものが、なんであろうと構わないと言うのなら・・・。



大通り。青信号。白と黒の横断歩道の上には、少女が二人。
手を引く銀髪の少女。後ろを歩くメクラの少女。
--水銀燈と真紅--
水銀燈の心は疲れきっていた。
長い間、盲目の真紅の手を引き続けてきたことで。
それは偽善でやってきた訳ではない。
しかし『親友』という肩書が残したものは、彼女には重すぎた。


そしていつからか、もうヒトリの彼女が囁き始める。耐え続ける必要なんて無い。と。


『もう、楽にさせて・・・。』


水銀燈は繋いだ手を解く。
『さよなら、真紅。』
そう心で呟き、一人歩いて行く彼女。


「水銀燈・・・?どこ?」
彷徨うしかない真紅。


探しつつける。いつも繋いでいた手を。時折手に触れた、水銀燈の長い髪を。


赤に変わる信号。


少し離れた頃、水銀燈の背中には悲鳴が突き刺さる。血の匂い。騒ぐ人。


涙は
出なかった。



【水銀燈】
約束の時間を過ぎて10分。女一人で駅前に突っ立ってるなんて、やな感じ。
ほんと、彼ってどうしようもない・・・
「悪い、水銀燈!姉ちゃんが起こしてくれなくてさぁ!」


あ、やっと来たみたい。
まったくレディを待たせるなんて、考えられない。
「いいわ。そのかわり、今日はたっぷり付き合ってもらうからぁ。」
始めてのデート。こんな気分、久しぶり。いつからか、楽しみさえ失っていた。


「わかってるって。じゃ行こうか。」
二人きりって、結構緊張する。気まずい・・・何か喋らないと・・・
「あの・・・
「なぁ、さっきから思ってたんだけどさ、待ち合わせの場所でお前に話しかけてた女の子、友達か?」


え?



「・・・何言ってるのぉ?私は一人だったじゃない。」
納得いかなそうなジュン。
「そうか。ずっと水銀燈の後ろに立ってたから・・・違うならいいけど。」


心が声にならない叫びを上げている。
思い出してはいけない何かが、記憶の底で蠢いているのがわかる。
私は怖くなりジュンの手を強く握り締める。その手は暖かかった。


とても。とても。



暗い森。辺りは霧で視界が霞む。
歩いても歩いても光は見えない。
気が狂いそうな程にその空間は、無。
焦りと恐怖が最高潮に達したその時、背中に何かを感じ取る。


何か?


それは記憶だけが知っている。


いつも私が手を引いてきた、いつも私の後ろに立っていた・・・。


耳の中に低く、唸るような『音』が染み込む。



「・・ぎ・・ぅ・・・こ・・・」



ガバっ


時計の音。ベッドの感触。
今のはただの夢?


嫌な汗が体に這っている。溜息をつき安堵する。


だって部屋には、
私しかいないんだから。




暗いくらあい井戸の底。


二人の少女、あなたと私


私は外の世界が見たい。


あなたを台にしてでも見たい。


空を見るのは私だけ。


あなたはそこにいればいい。


だってあなたに光は無いから
おもてで生きる価値は無い。


代わりに私が這い上がる。


目が見えないなら


ここにいろ



また夢を見ている。特異な感覚。すぐにわかった。


それでも押さえ込めない恐怖。胸のあたりに感じる痛み。
まるでそれらは現実のもの。


ここは七畳程度の部屋。
薄暗く、部屋の隅まで確認できない。出口のような物は見当たらない。


ただ天井に小さな電灯が点滅しているだけ。



天井に・・・?



何かが張り付いている。


暗くてよく見えない ゙それ゙ はぼとりと部屋隅に落ちた。


そしてずるずると引きずるような音をたて、近付いてくる。
本能で悟った。


見ちゃいけない


体中の細胞がそれを拒絶している。


部屋の中心。明かりの下に出てきたそれは・・・。



血に紅く滲んだブロンドの長髪。焦点の定まっていない、濁った両目。
忘れていた、しまい込んでいた記憶がフラッシュバックする。私が殺した、私が捨てた彼女。
真紅。
真紅真紅真紅真紅真紅真紅真紅真紅真紅真紅真紅真紅しんくしんくしんく


「ひぃいぃぃ!!」
狭い部屋。出口は無い。壁を叩き続ける。早くここから出たい。
「お願い!お願い!夢なら覚めてぇえぇ!」
しかし願いが届くより早く、真紅は私に近付いてくる。


ずる、ずる、ずる、ずる
「すい・・ぎん・・と・・どこ・・・?」


彼女には、私が見えていない。だから捕まっちゃいけない。両手の骨が折れてまで壁を叩く。恐怖が痛みを超えている。
「真紅ぅ!許してぇぇ!!」
突然体温がガクンと下がる。真紅の手が、私の足首と髪を掴んでいた。


口を歪め、にやりと不気味な笑顔を見せる真紅。
「み つ け た ぁ ・ ・ ・ ♪ 」


・・・・・・・・・。
朝。そして夢。カーテンからは木漏れ日が差し込んでいる。
私は泣いていた。
足首には、生生しい手形のアザ。ベッドにはちぎれた髪。
安堵の溜息なんて出ない。
だって部屋にいるのは、私だけじゃないから。
誰かが いるから




【ジュン】
水銀燈は僕とデートした次の日から大学に来なくなった。
それはさすがに不安になる。


『怒らせるようなことしたかな・・ちょっとあいつの家に寄って行くか。』


商店街を出て、交番を過ぎる。
長い横断歩道に差し掛かり、信号を待つ。


以前、ここで事故があって人が亡くなったらしい。


どうにも、ここには長く居たくない。


早く水銀燈の家に向かおう。



「ここだな。」
表札には彼女の名前。どうやら間違いない。


インターホンを鳴らす。しかし応答は無い。
ドアノブに手をかけると、鍵は掛かっていない。


「水銀燈、入るぞー。」


家にはあかりが無く、暗かった。
奥のほうから何か聞こえる・・・・。


『水銀燈`s ROOM』
それは水銀燈の部屋からだった。
外からでは、よく聞き取れない。ただ嫌な予感がする。


「水銀燈、ここか? 入るぞ。」


ドアを開けると・・・



薄暗い部屋の中、
粉々に割れた鏡。新聞とカーテンで完全に遮断された窓。床中に散乱している銀髪。


水銀燈はベッドの上でヒザを抱えていた。
変わり果てたその姿。
頬はやつれ、目の下には大きなクマができている。何日間も寝ていないのだろう。


そしてあのロングヘアーは、肩まで無いショートヘアーになっていた。
切り揃えられたものではない。無造作に引きちぎったかのような状態。


「水銀燈!?おい大丈夫か!?」
肩をゆすると、初めて僕の存在に気付いたかのように反応する。


「・・・ジュン・・・?」
「おい、一体何が・・・
「ねむれないの。ねむっちゃだめなの。つれていかれる。あのこがわたしをつれていく。
 ゆめであのこがかみとあしをつかむの。だからかみをみじかくしたの。」


水銀燈の瞳は僕のそれと合わせることは無く、せわしなくきょろきょろとしている。


まるで、部屋の中にいる何かに怯えているように。



「わかった!わかったから落ち着け!!」


僕は錯乱する水銀燈を抱きしめる。
すると彼女は赤ん坊のようにすぐに寝息をたててしまった。
僕が来たことで安心したのだろう。


そうとう参っていたようだ。
かわいそうに・・・何が彼女をここまで追い詰めたんだろう。


部屋を見渡すと、あることに気付いた。
水銀燈のものと思われる銀髪の中に、まだらに金髪が混じっている。


『なんでこんなブロンドの髪が・・・?』


パサ


突然首筋に何かが落ちてくる。それを手にとって見てみる。
『ブロンドの髪?なんで・・・。』


ふと天井を見上げる。



「うわぁあぁぁ!!」


天井からは白目がちの少女が僕を見下ろしていた。
次の瞬間、僕は部屋を駆け出し、水銀燈の家から飛び出した。


震えが止まらない。僕は、泣いている???
道路から二階の水銀燈の部屋を恐る恐る見上げる。


窓、カーテンと新聞紙の隙間からは僕を睨みつける影。


あれは、水銀燈じゃない。


水銀燈はまだ中で眠っている。


彼女は言っていた。「眠ってはいけない」と。
でも僕は
にげた。



【水銀燈】
眩しい日差し、時計の音。


ベッドから飛び起き部屋を見回す。しかしそこはいつもの、綺麗な私の部屋。
あの夢も見なかった。


インターホンが鳴る。
ジュンが私を迎えに来てくれたんだ。大学に行く準備しなきゃ。


「おまたせぇ。さ、行きましょ。」


戻るんだ、日常に。
私は真紅にしたことを本当に悔やんでいる。だから、もう誰も離さない。誰の手も・・・。
そう想い、ジュンの手を強く握り、駆け出す。


白と黒の横断歩道の上、暖かかったジュンの手が、まるで氷のように冷えていく。


「ジュン?」


そこには濁った瞳、ブロンドの長髪。あいつ。


「つ か ま え た ぁ ♪」



全てが、夢



FIN



嫌な過去、忘れたい過去。


すべて、『心』という金庫に詰め込んでしまいましょう。


溢れ出すことを恐れずに・・・。


あなたの今目にしているもの、現とは限りません。


惑わされることもありますから・・・。


闇とは恐ろしい物。


凍て付く呪文にご用心。


氷の魔女の怒りに触れぬよう・・・。


それでは、ごきげんよう


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