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 ドアを蹴破った先はL字の通路になっていて、そこには既にゴーレム達が待ち構えていた。
 翠星石は動じる事無く不敵な笑みを浮かべて如雨露を構える。
「良いところに現れましたね…こっちは今メチャクチャ不機嫌なんですよ!」
 絶好のストレス発散相手を見つけ、目の前にゴーレム達を切り伏せていく。
 怒りの篭ったその一振り一振りは重く、ゴーレム達は真っ二つに切り裂かれて通路に泥が積もっていく。
「まだまだそれぐらいじゃこっちの気は晴れないんですよ! もっとタフなの連れてくるですね!」
 最後の一体を二丁の拳銃で穴だらけにし、ボロボロになったそれを蹴り飛ばして通路にいるのは全て倒した。
 だがそれを見計らっていたのか、今度は窓を破って多くのハーピーが通路に入ってきた。
 そのハーピー達に銃を向け、口の端を歪め笑みを浮かべる。
「…良かった。まだまだ楽しめそうですね!」
 目の前に飛んできたハーピーを撃ち落し、それを蹴り飛ばして空中にいるハーピーへぶつけて打ち落した。
 それから銃で調子良くハーピー達を撃ち落していき、数分持たないうちに通路は泥と血肉で溢れてしまった。
 もう悪魔の気配は無く、翠星石は銃を二丁とも華麗に回転させてホルスターに納める。
「ふう、少しはスッキリしましたね。お相手ご苦労様でした」
 悪魔達を殲滅して気分も晴れ、通路先にある扉をくぐって先へと進んでいく。

 

 途中出てくる悪魔達をなぎ倒しながら進んでいくと、やたらと天井の高い殺風景な小部屋に着いた。
 何も置かれている物は無く行き止まりか、と思ったが壁に魔方陣のような物がはめられているのに気が着いた。
 なんだこれ、と思って良く見ると、紋章が時計状に刻まれていていてその隣には壁に「力を注げよ」と彫られている。
「力…? これですかね」
 この場合の力は魔力だろう。となるとあるのはこの如雨露。
 試しにそれで切りかかると紋章が一つ光り輝いた。
 だがそれはすぐに消えて行ってしまい、また黒くなってしまった。
「なるほど…」
 これを見て翠星石は合点が行き、如雨露を構えて何度もその魔方陣へと切りかかる。
 攻撃を当てる度に紋章が時計回りの順番に輝き、全ての紋章に光が宿ると魔方陣が光り輝いて部屋が振動し始めた。
「地震?」
 そう思ったがどうも違う。辺りを見渡していると不意に地面がせり上がり始めた。
「なるほど。これはエレベーターですか」
 一人納得し、エレベーターが止まるまでその場で待つ。
 しばらくしてエレベーターの上昇が止まり、目の前の鉄格子が開かれて中に入るとそこは広い図書室だった。
 本棚が壁際に立てられていて、その真ん中には小型テーブルとイスが幾つかある。
 図書室に来た翠星石はあの開かなかった扉を思い出した。
「…智の結晶…智って事は知識…知識ってことは本、じゃあここに何かありそうですね」
 単純な連想ゲームの要領で考えていき、結論が出ると図書室を色々調べ始めた。

 

 それから壁や本を調べていくと、一つだけやたらと重い本があるのに気が着いた。
「何ですかこれ…」
 全てが真っ黒い、金属の本…かと思ったがこれは本じゃない。何かのケースだ。
 それを本と同じように開くと、そこにメダルのような物がはめ込まれていてそれを取った。
 本の彫刻が施された銀色のメダル…恐らくこれがあの扉のカギだろう。
「まったく、面倒臭い真似しますね」
 やれやれとメダルを懐に仕舞って、出口の扉へと向かう。
 だがその前に来た時、扉に赤い結界が張られてしまって後ろを見る。
 何もいない、そう思った矢先に本棚が揺れて大判の本が幾つか飛び出し、それはまるで蝶のように部屋の中を飛び回り始めた。
 翠星石が二丁の拳銃を取ると本――アルアジフ――が翠星石に体であるページを開いて見せる。
「読んでもらいたいんですか? 悪いけどそういう難しい本は嫌いでね、蒼星石にでも読んでもらったらどうですか」
 それが聞こえたのか聞こえないのか分からないがアルアジフの体が赤く輝き出し、そこから火の玉が飛び出してきた。
 サイドステップでそれをかわすと火の玉は後ろの本棚に当たり、爆発して吹き飛んだ本の紙が雪のように舞う。
「…そういうヤバイ遊びなら大歓迎です。気が済むまで相手してやりますよ!」
 拳銃を腕の前で交差して構え、飛び回るアルアジフ達を見据える。
 今度は別のアルアジフがページを開き、紫色に輝きだし帯電し始めた。
 ヤバイ、咄嗟に横へ避けるとそこへまるで落雷のように電撃が走った。
「こりゃ気を入れて掛からないとちーっとばかし拙そうですね…。ザコばっかりでウンザリしてた所ですよ!」
 こっちの番だ、とばかりに引き金を引いて目の前のアルアジフに銃弾を打ち込む。
 何発も銃弾を喰らったアルアジフは悲鳴をあげることは無いものの、完全に吹き飛んだそれからは異形の魂が抜けていくように見えた。
 

 更に手を休める事無くそれぞれの銃で鉛玉を撃ち込んで行くが、目を放した一体がツララを錬成して翠星石に飛ばしてきた。
 それに気付いた時には対処が遅れ、腕を少し切りつけられてしまった。
 その傷を見て翠星石は少し表情を歪め、銃を仕舞い如雨露に持ち替える。
「面倒臭い、こうなったらこれで一網打尽ですぅ!」
 まずはさっきツララを飛ばしてきたアルアジフを真っ二つに切り捨て、振り向き様にもう一体切り伏せる。
 その時に後ろから火の玉が飛んでくるのに気が付き、それに向き合ってまるで野球のようにそれを如雨露で打ち返した。
 火の玉はそれを放ったアルアジフの元へと戻っていき、爆発を起こしてそのアルアジフを跡形も無く消し飛ばす。
 残るはあと一体、となったところでアルアジフはページを開いて魔方陣を作り出し、そこからゴーレムを数体召還してきた。
 だがそれは、増援にもならないで終わる事になる。
「…今更そんなの呼んだって遅いですよ!」
 一気に如雨露を振るって全てを切り捨て、如雨露をくるんと回転させて華麗に腰へ戻す。
 部屋の中の悪魔を全滅させた事で部屋の結界も消え、翠星石は意気揚々と部屋を出て行った。

 

 部屋の外は最初のエントランスホール二階で、右手側にあの開かなかったドアがある。
 やっとこれで先へ進める、そう思って懐からメダルを取り出してその扉へ近付いて行く。
 だがその前まで来た時、またあの不愉快な声がホールに響き渡ってきた。
『か~しらしらしら~! お使いご苦労様かしら~』
「…またお前ですか、デコ女」
 ウンザリといった様子で溜息を吐くが、それなどまるで届いていないようだ。
 まあ届いてやっている、と考える事も出来るが。
『思ったより早かったかしら~。意外とやるようかしらね』
「ふん、あんな奴等なら準備運動にもならないですよ」
『でもでも、あんなので粋がってるようじゃまだまだかしら』
 翠星石の眉がピクッと動く。
『そんな訳で、もう一つ試練を受けてもらうかしら!』
「試練?」
『その試練は…』
 瞬間、周りの景色が一瞬にして変化し、そこは幾つもの照明で照らされたコンサート会場の舞台の様だ。
 そしてその真ん中では金糸雀が日傘を差してくるくると回っている。
「カナのコンサート会場へようこそかしら~!」
 金糸雀は傘を肩に固定したままバイオリンを取り出し、それを首に当てる。
 翠星石もホルスターから二丁の銃を抜き取った。
「試練はカナを倒す事かしら」
「お前をですか?」
「何しろここから先は強敵揃い、こんな所でカナに負けるようなら招待状は取り上げかしら~!」
 また不愉快な高笑いを上げる金糸雀に、翠星石は苛立ちつつも不敵な笑みを浮かべる。
「…そういう事なら遠慮なく行くですよ。ちょうどお前にはウンザリしてた所ですからね!」

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