※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

『楽しませてね、おねーちゃん!!』
 最初に仕掛けてきたのはベリーベル。
 目前まで迫って来たかと思うと羽をその場で羽ばたかせて強烈な突風を巻き起こした。
 激しく砂埃が舞い、風で体が吹き飛ばされるのを堪えるのに精一杯だ。
「チッ…邪魔臭いんですぅ!」
 それを止めようと翠星石は薄目でベリーベルに向けて二丁の拳銃を無造作に撃ちまくるが、うまく狙いの付かないそれは大したダメージを与えられない。
 それが分かりこれ以上は弾丸の無駄、と判断し攻撃をやめたと同時に上空から巨大な影が翠星石を覆った。
 上を見るとピチカートが自身をドリルの様に回転させてクチバシで突っ込んでくるのが分かり、翠星石は風にワザと飛ばされた。
 その場を離れると同時にピチカートのドリル攻撃がそこに突き刺さり、地面に大穴を穿った。
 あと少しでも遅ければ確実にやられていたに違いない。
 翠星石は空中で体勢を立て直し、後ろに生えていた巨木を足場にして更に宙へと舞い上がった。
「今度はこっちの番ですぅ!」
 空中で二丁の拳銃を構え、二羽に向けて鉛の雨を降らせる。
 今度はしっかりと狙いが付き、無数の銃弾が二羽の体へと吸い込まれていった。
『痛たたた! やったね!!』
『さすがだよおねーちゃん、これならもうちょっと力出しても壊れそうに無いね!』
 しかしそれだけではあまりダメージは与えられず、食らった二羽はますます楽しそうに吼えている。
 そしてピチカートが翼を振るって小さな竜巻を作り上げると、それは瞬く間に巨大化して宙にいる翠星石を飲み込んでいった。

 

「うわっ!」
 竜巻に飲み込まれた翠星石は完全に体勢を崩し、そのまま空高く舞い上げられてしまった。
 そして空中で無防備になった翠星石に二羽が迫る。
(やばっ…!)
 銃を構える間も無く二羽が翠星石と同じ高さまで上がってきて、目の前に現れたピチカートが翼で翠星石を叩き付けた。
「ぐあっ!!」
 弾き飛ばされた翠星石は強烈なダメージを喰らい、更に体勢を直す間も無く後ろに居たベリーベルに勝手へ向かって行ってしまう。
 ベリーベルへと近付かされてしまい、ピチカートにパスでもするかのように同じく翠星石は翼で弾き返されてしまった。
『ピチカート、君の番だよ!』
『ははは、それっ!』
 そしてまたベリーベルに弾き返される、まさに地獄のキャッチボール。
 何度も何度も二羽の間をろくに防御も出来ずに行き来され、この状態だと反撃はおろか銃を落とさないようにするだけで精一杯だ。
(この…! 私はボールじゃないんですよ…)
 そう思うが成すがままの状況ではどうしようもない。
 やがて何度弾き返されたか分からなくなったところでそれが終わり、今度はピチカートのクチバシに捕らわれてしまった。
 その翠星石をピチカートは地面に向かって投げ付け、地面との距離が猛スピードでゼロになっていく。
 だが不幸中の幸いか、次の瞬間、翠星石は激しい水しぶきを上げて庭の池へと突き落とされていた。
「くっ…!」
 深さはそれほどでもないが池に落ちたことで落下のショックは大分和らげられ、まだ体を動かせるだけの体力は残っていた。
 翠星石は体を起こすと、顔に付いた水草を手で払い落として自分の前にいる二羽を睨みつける。

 

『すごいや、あれだけやられてまだ元気だよ』
『これだけ元気ならお肉もさぞかし美味しそうだね。そろそろお腹も空いてきたし、もう食べちゃおうよ』
『そうだね、そろそろ飽きたからご飯にしようか』
『そうしようそうしよう!』
 あくまで無邪気に会話をする二羽。翠星石は銃がまだ手の中にある事を確認して立ち上がった。
「…完っ全に頭に来たですよ…子供とは言えもう泣いて喚いても絶対に許してやらんですからね!」
 堪忍袋の尾は完全に切れ、銃を二丁ともしまって如雨露を手に取って構える。
 その翠星石へベリーベルがクチバシで捕まえようと一直線で迫ってきた。
 翠星石はその動きを冷静に見切り、それを横に跳んでかわすとすれ違い様にベリーベルの胴体の羽を掴んだ。
 そのまま翠星石は手を離す事無く、ベリーベルにくっ付いたまま宙に上がっていく。
「やっと捕まえたですよ!」
『あれっ!?』
 腕に一気に力を入れて背中へと乗り上がり、如雨露を思いっ切り突き立てた。
 これはかなり効いた様で、ベリーベルがこれまでに無いような悲鳴をあげる。
『ピギャアアァァ!!』
『ベリーベル!!』
 如雨露と翠星石を振り払おうと激しく身を捩るベリーベルだが、しっかりと刺さったそれは抜けそうに無い。
 その動きが一瞬弱まったのを見逃さず、翠星石は如雨露を両手で持って力を入れる。

 

「まだまだ、こんなもんじゃ済まないですよ!!」
 刹那、突き刺した如雨露を持ったまま胴体を走り抜け、ベリーベルの胴体を一閃に切り裂いた。
 切り裂かれた背中からドス黒い鮮血が噴出し、そこから真っ赤な肉と筋肉組織が見える。
『ピギャアァ…ッ!!』
 これが致命傷になったのか、悲鳴も弱々しく途切れベリーベルの体から力が抜けていく。
『ベリーベル!! …よくも!!』
 ベリーベルをやられた事でピチカートも本気で怒り、落下していくベリーベルに乗っている翠星石へと迫る。
 だが翠星石はベリーベルを足場にして高く舞い上がり、クチバシ攻撃を避け一気にピチカートへと如雨露を向けて落下していく。
 そしてピチカートの頭部に着地すると同時に如雨露がそこへ突き刺さり、それは頭蓋骨まで砕いて深々と貫いた。
『グギャアァ!!』
「これで終わりですぅ!!」
 振り落とされないよう如雨露を持って体を支えたままスィドリームを構え、銃口を頭部へ押し付けると無数の弾丸を撃ち込んだ。
 距離ゼロで放たれた弾丸は頭蓋骨を容易く貫き、それは脳をズタズタに引き裂いていった。
『ガアァ…!!』
 脳を破壊された事で痛恨のダメージを喰らい、ピチカートも力が抜けて行き地面へと落ち始めた。
 やがて地面に落下する前に翠星石は如雨露を引き抜き、ピチカートから飛び降りて華麗に着地した。
 同時に後ろから二回轟音が聞こえ、如雨露に付いた血を振り落とし腰に掛けてスィドリームを仕舞うとその方を向いた。

 

 そこには血に染まったピチカートとベリーベルが横たわっており、翠星石はそれを見て溜息を吐いた。
「これで少しは礼儀って物が分かりましたかね」
 両手を広げてやれやれ、といったポーズを取って笑みを浮かべる。
 それと同時に二羽が動き出し、翠星石はすかさず二丁の拳銃を取って構えた。
 だが二羽はもはや完全に戦意を失っているようで、翠星石に迫ってくる素振りは見せない。
『う…うぅ…痛い…ピチカート、大丈夫…?』
『…この人、凄い強い…ご主人様に報告しなきゃ…』
『うん…逃げよう…!』
 二羽とも弱々しく羽ばたいて飛び上がると、不安定な飛び方をして屋敷の裏側へ消えていった。
「せいぜいママに慰めてもらうんですね! それと、怖いいじめっ子が来たって事も言うんですよ!」
 いつもの軽口を二羽の後姿に言い、服に付いた埃を払うと屋敷の玄関へと向かう。
「…さて、手荒い歓迎も済んだ事ですし、首を洗って待ってるですよ蒼星石!!」
 玄関のドアを蹴破り、そのままつかつかと屋敷の中へと入って行った。

 

―※―※―※―※―

 

 翠星石が正門前で二羽と死闘を繰り広げている頃、屋敷の裏門から侵入を試みる者がいた。
 フリルが付いた紫のドレスを身に纏い、左目には眼帯を着けた翠星石と年端も違わぬ女性…。
 彼女は睨むように屋敷を見上げ、ゆっくりと口を開く。
「……帰ってきた…私は…」
 ボソボソとそれだけ言うと歩を進め、屋敷の裏口ドアに近付いて行く。
 しかしそれを開けようとした瞬間ドアが赤く輝き出した…悪魔に結界を張られたのだ。
 それに動じる事無くゆっくりと後ろを見ると、ゴーレムが何体も現れているではないか。
「……」
 しかし、彼女は何も思わないのかゴーレム達に少し目をやっただけで動こうとしない。
 そんな彼女を見て絶好の獲物だと思ったのか、ゴーレム達は武器を振り上げて飛び掛って来た。
 だが次の瞬間、そのゴーレム達を見て彼女は、腰に掛けられている片手剣を鞘ごと引き抜きゴーレム達へと殴りつけていった。
 空中で不意の攻撃を喰らったゴーレム達はバランスを崩していく。
 そのバランスを崩したゴーレム達を確認すると、彼女は鞘から片手剣を抜き一閃を放つ。
 目にも留まらぬ一閃に複数のゴーレム達は一気に胴体真っ二つにされて泥に還されてしまった。

 それからはもう戦いと呼べるものではなかった。
 着実に急所を見抜いたその攻撃は無駄な動きが一切無く、華麗に美しい、まるで舞を舞っているかのような動きだ。
 やがて数も少なくなり、残っているのは群れている三体のみ。
 ゴーレム達は一人一人では無駄、だと判断したのか三体一気に飛び掛って来た。
 彼女はそれを見て片手剣を腰に掛け、背中に背負っている長い筒状の物…ショットガンをゴーレム達に向け引き金に指を掛ける。
「…消えなさい…」
 それまでの華麗な舞とは一転、ショットガンの無骨な轟音が響き渡りゴーレム達は一瞬にして吹き飛んで消えていった。
 辺りを見渡してもう既に敵が消えた事を確認し、彼女はショットガンを戻し服に付いた泥を払って裏口へ向かう。
 結界は既に消えており、ドアは何の抵抗も無く開いた。
 そこで彼女は目を閉じて一つ息を深く吸い、息を吐いて目を開いて心を落ち着かせる。
「…全てに決着を付ける…。…待っててよ、きらきー姉ちゃん…いや、雪華綺晶…」
 彼女はこのパーティのもう一人の主催者、雪華綺晶の妹、薔薇水晶。

 

 翠星石と薔薇水晶…二人のデビルハンターが、このパーティで死闘を繰り広げる事になる。
 どんな結末が待ち受けているかも知らずに…。

 

MISSION2 Clear

|