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朝、私は目を醒ました。カーテンの隙間からは淡い太陽光が差し込んできていることから既に朝なのだということを再確認する。しかし起き上がる気もしないのでもう少しこのぬくもりに浸っていることにしよう。

ベッドの脇や扉の前には脱ぎ散らかした上着やショーツが確認できる。他にも毛布が何か緑色の物体に覆いかぶさっていてこのベッドルームの乱雑さがようやくわかってきた。

しかしそういう事に関しては私はあまり突っ込まない事にしている。元々家事、炊事洗濯に掃除、などは私の分野ではないし、言わなくたって妹の薔薇水晶が行っている。

……今、ニートとか怠け者だか思った輩は後で職員室へ来るように。舌入れていろんな意味で汚してやるから。

要は薔薇水晶=私の生活な訳だ。
彼女がいなければ私は多分今頃この家はゴミ屋敷としてマスコミが興味も無いことを過剰におもしろ可笑しくかき揚げが食べたい、じゃなく書き上げて私は近所から邪険に扱われるハズである。
というかそもそも食べるものが無いのだから私はマクドナルドのゴミ袋あたりを漁っているか、この身体をフルに、特に口や胸元、下半身あたりを使って仕事帰りの中年の男性あたりに御奉仕しているはずだ。それか私はもう死んでいる。

昨日だって皆を迎え入れる準備をしていたのは八割薔薇水晶だ。
私が一種の気の迷いで買ってきた本を枕に睡眠を貪っている時に彼女は料理をしていたし、私がモンスターをハンターしているときに彼女は辺りを掃除していた。

薔薇水晶はいい若奥さんな訳なのだ。

そうして今も私の隣ですやすやと可愛い寝息を立てている。背中越しに彼女の暖かさを感じるので間違いない。

どうも彼女は未だに一人では寝れないようで私と一緒のベッドでいつも寝ている。それに私を抱き枕のような格好が落ち着くらしく彼女のふくよかな胸が私の背中に体温を伝える。

羨ましいと思っても薔薇水晶は貸せないから真紅あたりで代用してほしい。多分無理だが。

私はそんな愛らしい彼女を見ようと身をよじった。スキあればあんな事やこんな事で薔薇水晶を羞恥の表情に追い込むことも出来……。

「むにゃむにゃ…うにゅー天国なのー」

why?

「うにゅーは雛のものなのーはらわたをぶちまけろなのー」

目の前には雛苺がいた。

?????

思考が停止する。

なぜ、私のベッドに雛苺がいるのだろうか。もしかしたら本当に越えてはいけない一線を越えてしまったのだろうか?

今の私は生まれた姿のままだし、雛苺は……パジャマだ。
……多分大丈夫だ。

雛苺を起こさないように静かに起き上がると周りの現実を確認する。

ベッドには雛苺。雛苺と私の足元には金糸雀が横になっている。
先ほどの毛布には翠星石と蒼星石が抱き合ったまま夢の中だろう。
真紅と水銀燈は反対側のベッド脇で薔薇水晶のくんくん人形を取り合ったまま熟睡。
薔薇水晶は……隅の方でジュンと仲良さそうに安眠していた。

あぁそうだった、と私はすべてを思い出した。

昨日、薔薇水晶が私に内緒で急に皆を呼び出して小さな食事会を始めたのだった。始めはただ、食事をしながら他愛のない話に華を咲かせるだけだったのだが、
「いいものもってきたのですぅ」
と翠星石が日本酒を取り出したのが間違いの発端だった。実際は水銀燈もワインを持ってきていたし、家にもアルコール類は多少備えがあったし
(誤解を招くようだから始めに言っておくがこれはあくまで料理用であり、決して薔薇水晶を酔わせて襲うものではない)食事会か一瞬にして酒盛りへと早変わりしたのである。

始めに酔ったのは意外にも水銀燈だった。
酔いが廻った水銀燈はしつこく真紅に飲ませようと絡み、次に張り合い飲まされた真紅が潰れた。
真紅が潰れた頃には蒼星石は翠星石に抱きついていたし、翠星石もまんざらでもない表情を浮かべていたはずだ。
金糸雀は扶養者から学んだ反骨精神というものなのだろうか、ジュースの方が良いといっており、雛苺にいたっては全く酔っていないような気がする。

それから水銀燈が真紅とバストがヒップがと言い合いになり互いに脱ぎ始めた時期に、顔を真っ赤にした薔薇水晶がジュンにちょっかいを出し始め、その頃から私の記憶もあいまいになり、翠星石が水銀燈と真紅に交ざ、混ざり始めた時くらいから私の意識が途切れた。


そして、私は朝、ベッドで目醒めたわけだ。案外、私はアルコールに弱いらしい。いや、やはり日本酒を一気飲みしたのがいけなかったのかもしれない。

ともかく、と私は薔薇水晶とジュンを見た。皆から信頼、というか愛情を集めているジュンに薔薇水晶までもが惑わされ、いや惑わすとは。私の中で沸々と嫉妬のような感情が生まれる。

いっその事、アレを引っ込抜いたり、切り刻んだ方が彼女達の為なのではないか、とも思った。
しかしだ、その行動を思い止めたのは隣で天使のような寝顔の妹だった。
やはり彼女はこの男を好いているのだろうか。
女性は恋をすると美しくなるとは言う。最近の薔薇水晶は鏡の前でおしゃれをしたり、少し髪型を変えてみたりと私では引き出す事が出来ない『恋する乙女』のような仕草がそういえば思い当たる。
そう、恋する乙女のような。

……そうか。

私は薔薇水晶を見つめる。

私は“本当に”気が付いてしまった。

彼女は、彼を愛しているのか。

そして私から離れていってしまうのか。

私は静かに妹に近寄ると優しく髪を撫でた。何故だか不思議だが彼女が、彼を好いている、ではなく、恋をしているのと気が付くと彼に対する嫉妬は浄化されるように消え、私の心に慈愛、とでもいうのだろうかそんな暖かい心が溢れだしてきた。
私は妹、薔薇水晶を愛している。薔薇水晶は大切な人だ。彼女が不幸になれば私も不幸だ。彼女が幸せなら私も幸せなのだ。
そして……彼女が愛すべき人が見つかった事は、私にとって憎しみや嫉妬ではなく、祝福なのだ。

私と共に歩んでいた彼女。
私を愛してくれた彼女。

今、その愛が彼女が本当に大事だと思う人に向けられるのだ、これを祝福せずに何になるというのだろう。
私は静かに薔薇水晶にキスをした。それは祝福のキス。彼女がオトナに近づいた証。

そして私も少しオトナに近づいた証なのだ。

私は薔薇水晶の傍からそっと離れると、もう一度よく周りを見た。
彼女らも恋をしているのだろうか、愛を知っているのだろうか。

……まだ皆が目醒めることはないだろう。私は再び惰眠を貪るためにベッドへと雛苺と金糸雀を起こさぬよう静かに横たわった。

私は目を閉じる。
暗闇の中で一瞬、薔薇水晶の幸せな見えたような気がして、私は小さく、小さく微笑んだ。
少し経ち、私は本当に夢の底へと堕ちていった。

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